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Column450   2024/8/24up          

■ 報道の中の事実を見極める


この夏は、南海トラフ地震の注意情報やら、海水温の高さゆえの勢力が強い台風の相次
ぐ襲来など身に危険を感じる事態が続いておりますが、報道のあり方に疑問を感じる機
会でもありました。
敢えて1週間以内に対となる巨大地震が起きるような注意情報を発信した気象庁の勇気
には敬意を表しますが、それを報道する一部マスコミには正確さが不足し、いたずらに
警戒心を煽っていましたが、気象庁の資料にきちんと眼を通すと、過去の南海トラフ地
震では32時間後、2年後(正確には24か月後)、3年後(正しくは26か月後)に対とな
る南海トラフ地震が発生したことはあるものの、何百年も開きがあり対となる地震が発
生していないと思われる(もしくはデータがなく証明できないなどの諸説もあり)ケー
スも多々あり、決して高い確率で1週間以内に地震が発生するわけではないのに、ホー
ムセンターなどに備蓄品を買いに走る市民の映像を流したりと、煽り放題でした。
どうも南海トラフに限らず、東日本大震災の前に大きな余震があったり、能登でも、熊
本でも翌年に大地震が再び起きた話とがごっちゃになっているような。報道によっては
気象庁の資料に記載の数値とは異なり大きめの震度分布や津波予測を使用している報道
もあり、あれっ、このニュース何、気象庁の資料見てない。と驚いた次第です。
1週間たち、注意期間が終わっても対となる地震、つまり地盤のずれの割れ残りが割れ
て地震が発生する可能性がなくなったわけでもないのに、予測がはずれて一安心的な報
道も目立ちましたが、気象庁は大地震が非常に高い確率で起きると予測したわけでも、
1週間以内に大地震が来ると言ったわけでもないのですが。
また台風7号では、意味のわかりにくい台風の進路予想円を表示し、そろそろ千葉県が
暴風圏に入るとさんざん煽った報道をしていましたが、暴風圏は中心から西に95km、東
に165kmとも書かれていたので、台風が進路予測の最も西寄りを通ったとしても、内房
はおろか九十九里あたりも決して暴風圏に入らないことは明確なのに、これでもかとニ
ュースで煽り続け、大した強風でもないなと思っている間に台風は去りました。
実は、私の住む町の方々は何故か、何も台風の準備をしていないようでしたが、報道の
本質を見抜いていたのかもしれませんね。
ちなみに、5年前の台風で市原市のゴルフ練習場の柱が倒壊した映像が、今回もニュー
スで頻繁に使われていましたが、この影像をよく見ると、強風時には降ろすべきとネッ
トを何と下げていなかったようで、明らかに人災です。つまりこの影像は台風の強さを
示すものでお何でもなく、視聴者に恐怖心を与える煽りのネタでしかないのです。
同じ様な話で、地球環境問題を語る際、氷河が海に落ちる映像が使用されることが多々
あるのですが、とある旅行番組で、レポーターがこれは地球温暖化のせいですねと言う
と、同行する現地(チリだったか、アルゼンチンだったか)の氷河学者が一言のもとに、
いえ、氷河は最後は海に落ちる仕組みであり、地球温暖化とは何も関係ありません。と。
おそらく、氷河が山の上の方で減ってきていることは地球温暖化の影響なのでしょうけ
ど、地球温暖化問題を語る際に氷河が海に落ちる映像を使用する輩は、信用ならない。
もしくは不勉強ということです。先日NHKでも氷河が海に落ちる影像を使用していました
が。
大事なのは報道に限らず、目や耳に入る情報の中で、事実なのは何かを見極めること。
そして、予想・予測の根拠は何で、確度はどれくらいなのかときちんと見極めること。
今更ながら、そう思いなおした次第です。





いたず

Column449   2023/12/31up          

■ 今年も終わりです、反省はしてないですが

皆様、激動の1年が終わりますね。日本政府の新型コロナへの対応が終了、気候変動が
今迄以上に急激になる(国連グレーデス事務総長によると地球沸騰)、ハマスの奇襲に
端を発するイスラエルとハマスの戦い、パレスチナの惨禍、自民党のパーティー券収入
裏金化問題。ロシア・ウクライナの戦い。ガソリン高騰、円安。ジャニーズ問題。辺野
古の政府代執行。まあ色々ありますが、2024年に持ち越されることが多いです。
そう、他にも色々あるのに大事件が多すぎて、重大なことにも関わらず、マスコミに報
道されないことも多いのです。マスコミとは何を指すかにもよりますが。
かつてAIドローンを始めて国家間戦争に投入したとその手のジャンル(紛争、兵器、
AI、未来予想など)で話題になった、黒海とカスピ海、ロシアとトルコの間にある旧
ソ連コーサカス地域のアゼルバイジャンとアルメニアがナゴルノカラバフ地域の所属を
めぐる紛争にて、今年9月に再び激突があり、決着したことはTVでの報道はほぼなし、
ネットでもちょっとだけ。
皆さんもおそらく、えっそれ何?、それがどうかしたの?・・状態でしょう。
過去なんども領土紛争をしてきたこの2国はアゼルバイジャンをロシアが支援、アルメ
ニアをトルコが支援という図式です。2020年には圧倒的な軍事力を持つアゼルバイ
ジャンをトルコ製ドローンのバイラクタルTB2を大量投入したアルメニアが圧倒した
ことで話題となりましたが、今年の衝突ではアルメニアが大勝利、両首脳が平和条約に
合意し、紛争は解決したとも言われています。でもほとんどの日本人は知らないし興味
もない。アルメニアは日本の友好国だったのに。
マスコミが報道するウクライナやパレスチナ問題にはシンパシーを感じる人は多いのに、
マスコミが報道しないことには興味もない。明日は我が身・・・お笑い番組を見ている
場合では無いと思うのですが。
別にナゴルノカラバフ紛争のことをお伝えしたかったわけではありません。報道への疑
問。報道を鵜呑みにすることへの疑問。自ら情報を取りにいかないことへの疑問がある
だけです。冒頭に激動の1年と書きましたが、あくまで報道で眼にした激動でしかない
のです。私は報道に偏りがある新聞を購読するのはやめましたが、そろそろTVのニュ
ースを見るのも終わりですかね。
まあ、いずれにせよ2023年は終わりです。でも2023年に自分が行ってきた行動
に反省もない状態です。
2024年は何が起きるのでしょうかね。





Column448   2023/09/09up          

■ 結果を意識して行動する

Copylightの所を見ていて気づいたのですが、このホームページって、もう
少しで20年になるのですね。齢をとるわけです。
この20年弱、コーチングも自分自身に対して効果があったのかどうかと
振り返ると微妙です。でも自分の行動を何となくでなく、意識して活動で
きたようには思います。もちろん、何となく生きたほうが楽だったのでし
ょうけど、頑張っても頑張らなくても同じような結果に至るとしたら、ま
あ、後悔しない生き方だったと思えるほうが良いですよ。少なくともそれ
が私の生き方です。
いまだ働いておりますが、良かった時はもちろん、悪かった時も、あの時
こうして置いたらもっと良い結果になっただろうという思いは当然ながら
あります。でもSFではないので時は巻き戻せませんから、その時その時
の自分の判断は尊重しようと常に思っています。
・・・もちろん、タイムリープできたなら違う判断をしますよ。
でもそれは、いったん結果が出たからこそ言えることであって、途中であ
ればやはりその時その時で最善と思う判断をするしかありませんよね。
タイムリープして違う決断をしたからといって、今より良い結果になると
は限りませんし、たとえ、より良い結果になったとしても、更なる高望み
をするかもしれません。投資と一緒。・・・と言いたいところですが、私
は株はおろか投資信託もやりません。
そうそう、タイムリープしたら、知っている情報をもとに株でも買います
か、って、バックツゥーザフィユーチャーを始め、タイムトラベルSF常
套のネタですよね。






Column447   2023/05/14up         


■ 生活は変わっても人は変わらない

実に2年ぶりの更新です。5月8日に新型コロナの非常事態宣言も解除さ
れ、少しずつですが、マスク無しの姿が目立ってきましたね。
とはいえ、再び感染者が増えてきているので不気味ではあります。
また、少しばかり困っているのは仕事の場面というか職場において、非常
事態宣下だから許されたことが、今現在許されるわけではないということ
を理解できない方が多いことです。在宅勤務や時差出勤などは継続しては
いますが、感染防止の為に会社側からお願いしてしてもらっていたことと、
本人の利便性の為に制度として提供し、きちんと統制した上で許可するこ
との区別がつかない方がほとんどです。個人の勝手に対しては、ダメだと
いえば済みますが、実のところ経営側も区別がつかないのは同じです。
私が今、気になっているのは新型コロナ下でVPNN接続を使用し、個人
のインターネット回線の使用を許していましたが、会社の回線(内臓SIM、
通信機などを)ではないことは元より、自宅内Wi-fiの使用に無頓着である
ことです。VPN接続であっても、自宅内Wi-fiの暗号方式が古ければ、悪
意のある攻撃には堪えられません。というか、そんな問題提起をしても、今
まで大丈夫だったから大丈夫という裏付けのない安心感に支配された方が
多く、それどころか通信回線とW-fi(無線LAN)の区別がつかない経営層
が多くて、そのようなくだらない説明に時間がかかっているのです。
私は専門家でも専門部署でもなく、専門部署の方は私と同じ理解をしてい
ても、何故か改善には至らない。
立派な抵抗勢力である「今まで大丈夫=これからも大丈夫」という考えは
間違っていると理解できない限り、リスク管理は成立しないのですけどね。
結局のところ新型コロナのパンデミックを経験しても、結局、生活は変わ
っても人は変わらないということなのでしょうね。







Column446   2021/05/03up         


■ 今からでも変わりませんか

おっと前回より1年経ちました。
ともあれこの災いは、人の生活スタイル、仕事の仕方はもちろん、生き方そのものを
大きく変えていくでしょうね。・・・と1年前に書きましたが、昨年の最初の非常事
態宣言から1年たち、実際仕事の仕方、コミュにケーションの仕方が大きく変わって
ます。・・しかし、世の中には変わりたくないという想いを行動、つまりは変化への
抵抗、時には時代遅れのサボタージュで示したりと、仕事を根本から変えようとはし
ない方が多いのには驚かされた1年でもありました。
相手の出勤を待って、面と向かって仕事の指示を受ける時代じゃない。今決めて今日
から新しいやり方をやればよい。・・・そんな私の想いも従来の仕事の仕方に固執す
る方々には通用しませんし、パソコンやネットのセキュリティをどう向上させリモー
トワークに繋げるかという何年も前に済んでいるはずの議論を今だに繰り返し、なお
かつ抵抗を示す方をやたら見かけます。
まあ、文句を上げつらっていてもしょうがありませんので、前に進むしかないのです
が、今の流れに乗れない企業は淘汰される。それだけは厳然たる事実です。すなわち
この期におよんで抵抗勢力となっている方は、自分の職場を無くそうとしているとし
か思えません。
しかもしかも。周り仲間(※)と話していると、身の回りで起きていることは、今の
政府と似ているという結論になります。
事(=危機)が起きてさえ、鈍調にしか思考できず、中々前に進めない。新型コロナ
だけでなく、皆さんそう思うでしょ。
まあ新型コロナ禍はまだまだ続くでしょう。今からでも遅くはないので、変わりませ
んか。







Column445   2020/05/02up         



■ 禍いは始まりの時

ニュースは新型コロナのことばかりですね。人との接触を抑えると言っても、ある程
度仕事をこなそうと思うと難しいのが現実。実際、テレワークと言っても、ちょっと
だけ仕事をしてあとは家でプラプラしている方も多いのではないでしょうか。仕事が
できなければ死活問題となる方も大勢いらっしゃるでしょう。

こんな現実を前に思うことは、自分や周囲の皆さんは、普段どれだけリスクに備えて
いたのかということ。本日掲載のコーチング研修第16回「段取り力を鍛える」では
段取りにはリスクの想定が必要とも言っておりますが、普段の仕事の延長線上では流
石に新型ウイルスの脅威までは想定しないでしょうね。でも企業経営をする立場の方
の中には、最近流行りのテレワークだって、単なる働き方改革だけではなく、何らか
の自然の驚異に対応できるものだとピンと来てた方もいたでしょう。

でも震災や巨大台風は元より、新型インフルエンザの大流行だってそう昔のことでは
ないのですが、人は災いを糧にするよりも、忘れようとする生き物だと思ってしまい
ます。地震や台風なら映像に残りますが、インフルエンザって記憶以外には古いマス
クのの在庫くらいしか残らないですからねえ。

ともあれこの災いは、人の生活スタイル、仕事の仕方はもちろん、生き方そのものを
大きく変えていくでしょうね。単なる災い、不幸として嘆くだけではなく、自分や仕
事が変わるためのチャンスと考える方も大勢いるように思います。
マスクを売って儲けるなんて短期的なことではなく、もっともっと長い目でみて何か
の始まりの時がきたのだと思います。






Column444   2020/01/27up         



■ プランド・ハップンスタンス・セオリー再考

ブランド・ハップンスタンス・セオリーを一言で言うと「計画されたかのような偶然」
であり、前向きに生きたいのなら、「偶然をチャンスに変える」「偶然を必然に変え
る」ために「偶然を呼び込む為の行動」が必要なのだと私は思っています。

しかしながら、ブランド・ハップンスタンス・セオリーという言葉そのものはキャリ
ア開発、キャリアカウンセリングに関する用語であり若干ニュアンスが違っています。
正しく説明するなら
①キャリアの8割がたは偶然によって決まる。
⇒②であれば偶然をうまく活用してキャリア形成に役立てるべき。
⇒③その為には偶然を呼び込む行動をすべき。 ・・・という三段論法のようです。

天邪鬼な私はこのような三段論法の説明を聞くと、「無理に偶然を呼び込まずとも、
自然体でもいいんじゃないの、どこが悪いの」と思ってしまいます。
まあ考えるに今の世の中、弁護士になるんだとか、建築家になるんだ、投資家になる
んだ、なんて夢を持って、それを目指して努力して、自分が最初に思い描いていた将
来を実現するなんて方はごく一部の方であり、実際には、偶然の出来事や出会いが自
分の職業や職種を決めていくてケースの方が多い。というのがブランド・ハップンス
タンス・セオリーの基本概念なのですね。

この考え方、日本発の概念ではなく国によって職業観が違うし、夢を持つ最初の頃と
はいったい何歳頃なのかにもよって肯定も否定もできますよね。でも確かに大学進学
時に職業まで考えて学科を選ぶ方は少ないでしょうし、いい大人になってから、偶然
の結果として今ある自分の職業をなげいてもしょうがないですよね。
但し、今の世の中は企業や職業も衰退したり新しいものが誕生したりと変化が激しく、
子供の頃は元より大学生の時に思い描いた職業や技能だって10年後には存在しなか
ったり、新たな技能を用いたあらたな職業が生まれたりしますから、偶然や成り行き
がもたらした技能や環境・機会をうまく生かしていくという姿勢は生きがいを持って
生きる為には大切かもしれないですね。
あ、ちなみにここでいうキャリアとは文字通り持ち運べる技能のことであり、身に付
いた技術や仕事のことです。

またブランド・ハップンスタンス・セオリーでは偶然を効果的に活用する為には以下
の5つの要素が重要としています。
①好奇心(興味のアンテナを広げる)
②持続性(困難を避けたり、苦手意識を持たない)
③柔軟性(こだわりや理想にとらわれない)
④楽観性(どんな結果にもプラス思考を持つ)
⑤冒険心(リスクを恐れない)

うーん、好奇心以外は、心してかからないと難しいですよ。今、面倒くさいことはや
りたくないなんて思ってしまった方は偶然をうまく活用できないかもしれませんね。

たまに、組織的にブランド・ハップンスタンス・セオリーの考え方を社員のキャリア
形成にとりいれようとする企業を紹介いる記事をたまに見かけますが。それっておか
しいと思うのですけどね。だって社員が全員、楽観的であったり、全員冒険心に満ち
満ちていたら危険でしょ。そんな会社は変ですよ。色々な方がいないと企業としての
バランスが取れなくなっちゃいますよ。

ブランド・ハップンスタンス・セオリーの考え方を真剣に実践するなら、あくまで前
向きに生きたいと思う個人が自分で行い、誰にも強制することではないですね。







Column443   2019/07/28up         



■ 今こそ現場主義

営業成績が低迷した企業に送り込まれ、急回復を実現した若手社長の手記的な話がネッ
ト記事にありました。この手の話はドラマでも小説でも人気ですが、この記事は誰でも
その名を知っている企業の正真正銘現実の話で、私自身もその店舗の前を通るたびに今
の時代に誰が利用するのかなんて思っておりました。

低迷の原因や自分の改革案がうまくいかなかったことなどが色々書かれていましたが、
結果として「現場主義」を徹底し、現場の声に耳を傾けることでV字回復を実現したそ
うです。ドラマや小説の中でならそんな成功物語も面白いですが、現実の企業において
実際にV字回復を実現したこの若手社長はかなり苦労されたことでしょうね。

考えてみてください。どんなに急成長し、業界シェアを誇る企業でもライバルはすぐ出
てくるし、5年、いや2、3年ももたてば消費者のニーズやその背景となる社会情勢、
経済情勢、IT環境が大きく変わる昨今。事業すなわち商売や企業の有り方そのものを
日々見直していかなくては生き残れないのがの現実です。
しかしながら企業も大きくなればなるほど、古くなればなるほど、改革への抵抗勢力や
ら、お役所的組織が社内にはびこってしまい、その態様を変化させるのはかなり難しく
なります。

現に業績が悪化する中、的外れな指示や形だけの改革に右往左往する企業の中では、例
の有名なセリフ「事件は会議室で起きているんじゃない!」的な会話が日々飛び交って
いるのではないでしょうか。いやもしかしたら「そんなセリフはタブーだよ。」という
雰囲気が社内にあふれているとか。
それに、「今更自分が変わらなくたってこの会社はつぶれないよ。」とか。「そんなの
経営層の仕事じゃないか。」なんていう方は、実際に倒産でもしてみないと自分の務め
る企業が置かれた現実には気づかないものです。

ちなみに私の勤務先もある程度の大企業であり、たとえ業績が悪化しても、業績回復の
為に社内一丸となって努力しようなんて話は全く出てきません。私が「今行動しなくて
いつやるんだよ。」と林先生的に思っていても、ファイルの整理やシステムの変更、業
務監査の準備やら本業とは全く関係ない内向きの仕事にせっせと精を出す管理部門に一
般社員は逆らいようがないのが現状です。というかそんな社内秩序が構築されています。
今はそんな内向きの仕事をやってる場合じゃないだろ。と言おうものならむしろ社内秩
序を乱す者と位置付けられてしまいます。まあ10年以上前からコーチングを広めよう
としていた私はかなりの変わり者と見られているでしょうけど。

さて、話を元に戻すと、そんなわけで前述の若手社長の会社と同じく、多くの企業では
トップダウンで改革をしようとしても、「またか。きっとうまくいかないよ。」なんて
嘆き声が聞こえてきそうです。そして耳をそばだてればきっと、「ここをこう変えれば
ずっとよくなるのに、本社は何故認めてくれないのかな。」とか「ただでさえ忙しいの
に何で新しい仕組みを覚えなくてはならないんだ?現場は忙しくなるだけだよ。」なん
て言葉が聞こえてくるでしょう。おそらく、一旦成熟してしまった企業では現場主義と
は逆の動きが社内を支配しているのでしょう。コンプライアンスが重視される世の中と
なり企業ガバナンスなんて言葉が流行っていますが、間違った企業ガバナンスは確実に
企業を他社との競争から戦線離脱させてしまいます。

一時期、90年代初頭のハーバードビジネスレビューに端を発する企業経営の考え方と
して競合他社を圧倒的に上回る能力「コア・コンピタンス」に経営資源を集中して徹底
的に磨き上げて企業経営を盤石にし成長し続けようという考え方が流行りました。その
結果、盤石な体制となった多くの企業では内向きな行動が重視されるガバナンスに支配
されてしまったように思います。そして、コア・コンピタンスを重視するの企業経営の
考え方は、技術革新や情報化が進んだ現代では、思うに「他社に抜かれてもしがみつこ
うとする過去の栄光」でしかないように私は思います。

世の中には過去の栄光は切り捨てて、形態を変えながら生き残っている企業はたくさん
あるし、次々と消費者の購買意欲を誘う商品を生み出す企業もあります。誰でも知って
いる大企業が突然左前になるのが日常茶飯事の昨今、企業の有り方を大きく変えること
が出来た企業だけが生き残れているように思います。

トップダウンであっても、抵抗勢力の方々をきちんと腹落ちさせながら切り崩し、事業
形態を大きく変えることが出来るほどのリーダーシップがあればよし、もしそれが出来
ないのなら前述の若手社長のように、今最前線で頑張っている現場の声を吸い上げるこ
とに注力することが今やるべきことです。







Column442   2019/03/24up         



■ イノベーションは何の為

「オフィスのイノベーションを行うので参加してくれ。」と言われて2年間ほど携わっ
てきた勤務先社内のイノベーションが昨年末に終了しました。勤務先社内の話をネット
に書き込みことはご法度なので、その作業を通じて見聞した話や自分の考えを少々話し
ます。

イノベーションという言葉には色々な意味がありますが、ここで言う「イノベーション」
に一番しっくりくるのは、「働き方改革」という言葉です。
「働き方改革」は何だか社内が活性化しそうな気がして、言葉としてはカッコよいです
が、自社の作業の前に見学させていただきアドバイスをいただいた企業の方々の意見は
各社ともほぼ同じであり、実効性のある「働き方改革」を実現することは非常に難しく
「きちんとした手順」を踏まないと、改革どころか「単なるフリーアドレス化」や「単
なるレイアウト変更」で終わってしまうよというものでした。中には「無秩序なオフィ
スや勤務体制を生み出してしまい、修正に苦労した。」なんて話も出てきました。

そしてここで言う「きちんとした手順」とは、オフィスを利用する方々=オフィスワー
カーが何のためにオフィスが改修されるのか、何のためにオフィスや勤務に関するルー
ルが変わるのかを十分に理解し、かつ「働き方改革」そのものについて彼らに意見を聞
く機会を十分に設けることです。

中々難しいことではありますが、単純にいえばオフィスワーカー全員が「働き方改革」
の目的を理解し、自分の意見を言う機会が持てれば、多少自分の思いとは違っても、オ
フィスワーカーの多くは「腹落ち」し、新しいオフィスや執務ルールに文句を言うので
はなく、新しい働き方に自分をうまく適合させていく為の努力をしてくれるようになる
というのです。

「大事なのは社員の腹落ちですよ!」見学に行く先々の企業で同じことを言われました。
もちろん、どんな「働き方改革」をしたとしても、不平を言う方は決して皆無ではあり
ませんし、むしろ多くの方が不平を言うでしょう。そして反対意見を含む多くの意見を
聞くには相当な覚悟が必要です。また、改革後の働き方に無理があるのなら、いさぎよ
く修正することも必要です。
そして「働き方改革」を進める上での最大のハードルは、アドバイスをいただいた企業
でも、自分達の活動でも同じだったのですが、各階層に存在する今までの働き方から脱
却したくない方々です。そして、この方々を抵抗勢力として切り捨ててしまえば「働き
方改革」はそこで終了してしまいます。
各階層と言いましたが、よほどトップダウンの活動でない限り、大きな企業には「働き
方改革」に拒否権を発動できる立場の方は何人もいますし、その方々の賛同を得られな
ければルールの変更も改修工事も却下されてしまいイノベーションはそこで終わりです。

こんなことを書いていて思い出した言葉があります。ハーバード・ビジネススクールの
クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」という理屈です。一時期かなり流
行った言葉なので、聞いたことがある方も多いでしょう。
既存の市場シェアの確保にこだわり、既存技術の改良・向上、高機能化を優先している
と、時に、新興企業による破壊的技術革新により突然シェアは奪われてしまう。
つまりは、合理的な経営判断と思っているものが実はイノベーションの阻害要因である
ということを示した言葉です。

私流に言うなら、「今現在合理的と思っている考えは必ずしも未来を見通したものでは
ない」ということです。
転じて考えると、「働き方改革」の成功は、自分の慣れ親しんだ従前のビジネススタイ
ルが合理的であると信じている多くの方々をいかにスムーズに納得させて味方につける
のかにかかっているように思います。

仮にあなたが会議の場面で、「世の中はIT技術の革新により変貌を遂げつつあるから、
我々も世の中の動きに先んじて変わらなければならない。」とか、「働きやすさを追求
したビジネススタイルを早めに取り入れなければ優秀な社員が集まらず企業として生き
残れない。」というような理屈としては正しい演説をぶったとしても、古き良きビジネ
ススタイルでの成功経験のある方々は単純には納得しないでしょう。
それどころか、「働き方改革」を進めようとするあなたやあなたの仲間は、彼ら「古き
良き時代の人々」との間に大きな壁を築いてしまうことになるかもしれません。だって
「これからの時代にはあなた方はいらないよ。」とか「あなた方は古いよ」と言ってい
るようなものだからです。

仮に、音楽や映画の世界に話を置きかえてみましょう。過去、現在、未来という時間軸
は決して、作品のつまらなさ、面白さといった魅力の軸とは一致していません。従前の
ビジネススタイルを「古いよ」という否定系の言葉で括ってはいけないのだと私は思い
ます。

今までの説明で、イノベーションを「働き方改革」と言い換えてきましたが、「働き方
改革」の目的について私自身は当初、時間と場所にとらわれず、個々人の生活スタイル
や家族環境に合わせた働き方を可能とする働き方の実現をイメージしていました。

だって、単に「オフィスのイノベーションを行うので参加してくれ。」と言われただけ
ですからねえ。見学させていただいた企業から受けたイメージから、オフィスでのフリ
ーアドレスに限らず、自宅勤務や社外勤務を含めた色々な場所で効率的に働けるABW
の実現を強く意識したのです。

しかししかし、ある時から、イノベーションの目的は「時間や場所の改善」ではなく、
「関係性の改善」ではないかと思い始めたのです。このHPのブックレビューでも紹介
しているMITのアレックス・ペントランド教授が書いた「ソーシャル物理学」という
書籍の中で、とあるコールセンターにおいて、メンバーの休憩時間を同じにしているグ
ループは休憩時間がバラバラなグループに比べて生産性が高いというエピソードが調査
結果として紹介されていたのを目にしたのです。一見無駄に思える人との情報交換こそ
仕事の生産性を高めるという理屈です。
このような考え方には、イノベーションにおける他のメンバーも2年間の活動の初期に
は行きついていたようで、社内を説得する為のメンバー間の共通認識となっていました。

古いビジネススタイルをフリーアドレスやテレワークを取り入れた新しいビジネススタ
イルにするのがイノベーションの目的ではなく、我々が目指す関係性の改善を実現する
ための手段として実行したいのだと解いて回ったわけです。

私が携わったオフィスイノベーションがどうなったかというのは冒頭の理由にて割愛し
ますが、どうも企業というのは、必要だからやるという言うよりは、世間がやっている
から乗り遅れない為にやるという図式が蔓延しているように思いますし、大企業であれ
ばある程、今ある何かを変えずらいのは確かです。現在のビジネスモデルが5年後、も
しくは10年後も通用するのかなんて議論はビジネスが好調なうちは決してしないです
よね。だからこそイノベーションのジレンマという言葉が生まれたはずなのですけどね
え。






Column441   2019/02/06up         



■ インフルの季節こそテレワーク

いやあインフルになっちゃいました。予防接種をしていたのに効果なし。
いや予防接種していなければ、もっと重い症状だったかもしれません。

これだけインフルエンザが流行ると、電車やバスでの通勤、通学。そしてそもそも1か
所に集合して仕事をするというスタイルを見直すべきかもしれませんね。

ABW(Activity Based Working)とかテレワーキングとかが一部企業では実践されて
いるかもしれませんが、多くの企業はきっと手探り状態でしょうね。特に日本企業は、
単純労働でもないのに成果でなく時間で社員を拘束する傾向が強いので、自宅で働くな
んて体制は相当に制度を整えないとまだまだ難しいでしょう。

ちなみに私は出社可能となるまで、有給休暇で休んでいますが、iPhoneを使用して、業
務メールの確認と指示を行い、かつ各種書類の電子決済も行っています。
まあ、基本は体を休めてますので、テレワーク勤務扱いにならなくても致し方ないです
けど。

次にインフルインフルエンザが流行る時までに、日本の世の中の制度が自宅勤務やテレ
ワークにシフトしていると良いのですが。






Column440   2018/10/31up         


■アスペルガーへの上から目線、横から目線



このHPで何度も紹介しているアスペルガー症候群。
最近では自閉症スペクトラム(ASD)の一種としてきちんと分類されており、社会的
な認知度も向上しているように思います。
実際私の周囲でも、以前は「あいつはへんな奴だ。」とか。「しょうもないやつだ」と
疎外されていたような方に対して、「彼はきっとASDだからうまく付き合っていこう
よ」というような感じの方もおります。
とはいえ本人が「私はASDです。」とカミングアウトするわけでもないですし、本人
はそもそもASDもアスペルガーも知らないケースだってある中で、周囲が思い込みだ
けで勝手に決めつけるのも良くないし、周囲の方の多くは「仕方ないな」と自分自身や
同僚・部下を納得させる材料が欲しいだけのようにも思え、付き合いずらいなという周
囲の方々の思いそもののが変わったわけではないように思います。

また事実、ネット記事や書物でアスペルガーやASDが取り上げられることのを度々見
かけるようにはなりましたが、まだまだ、「取り扱いに苦労する方々とどう付き合えば
よいか」的な目線、つまり上から目線のものが多いのです。

ASDの方が自ら自分のことを書いている文献はかなり少ないので、本人がどう思って
いるのかは一般的には想像しにくいのですが、私も含めて、ちょっとばかしASDを理
解していると思い込んでいる方々にとって、「ASDの方には自分が周囲の方々とはち
ょっとばかり思考や感覚が異なるという点に自分から気づく方が少ない」為、ASDの
方自身は「何故自分は正しいことをしているのに周囲は理解してくれないのか。」と思
っているに違いないと決めつけがちになります。
その決めつけ故、一般の方と比べると「何か」が欠けている方に対する上から目線にな
ってしまうのはないでしょうか。まあこれも勝手な思い込みかもしれませんけど、少な
くとも、多様な個性や特性を持つ方々に、それぞれが持つ本人の長所の部分を活かして、
いかに活躍してもらうかという目線、いわば横から目線の方は少ないようにも思います。

実際、私の周囲にも、仕事の方向性が私の指示と全く違うことを指摘すると「私のどこ
が悪いのですか」とおっしゃる方が何人かいるのも事実ですし、書物やネットでASD
やアスペルガーについて調べてみると、ASD方のほとんどは自分を客観的に見ること
ができないと書かれてはいます。でも、だからと言って上から目線で接しているうちは、
ASDの方々に活躍してもらう環境を作るのにはほど遠いですよね。

だってよ~く考えてみてください。自分のことを客観的に見ることや、相手の気持ちや
受け止め方に配慮することができない単なる自分勝手な方は私の周囲にだって大勢いま
すし、電車の中で人の足を踏んづけたり、人を小突きながらスマホを眺めていても、謝
るような人は10人中1人いるかいないかです。
もしかしたら私の周囲だけかもしれませんが、今の世の中、自分を客観的に見たり、相
手の気持ちに配慮すること自体が「特殊技能」であるとさえ言えますよ。

私自身だって、多少のことには目をつむって、彼らの長所を生かしていくのが最善策だ
と上から目線で思うことはあります。でもそんな考えに基づく行動は周囲の方々から、
不公平だとか、彼だけ何でルールを守らなくて許されるのかとか、そんな感じの苦情を
招いてしまうのです。

だって、一般的になったと思われる育児や介護を理由にした短時間勤務ですら、企業内
の制度で認められているケースが多いのにもかかわらず、周囲の方が不満を持つのは普
通のことですよ。
逆に、「自分と対等な関係のはずの誰かが何かしら優遇されているのはずるい」という
思いは、まあまあ横から目線と言えるのかもしれませんし、実はいい傾向なのかもしれ
ません。

私は経験上、何か秀でた能力のあるASDの方とは、理解のある友人として接したほう
が、彼の能力をうまく発揮してもらい、周囲の方にもその能力(一面)をきちんと認め
てもらえれば、彼の居場所を作りやすいと思っています。

まあこんな私のもの言いも、そもそも上から目線なのかもしれませんが、今の世の中ダ
イバーシティというお題目を企業が掲げても、多様な境遇の方々の色々な能力を、色々
な働き方の中で生かすなんてことは難しいのがまだまだ現状です。
ABWやテレワークという言葉も流行っており、自宅や出先での勤務を試行している企
業も多いようですが、あの人だけずるいという考え方は簡単には払拭できないでしょう。

この「周囲の方の思い」つまり横から目線にうまく配慮できるかどうかが、色々な立場
・状況の方を活用する為には大事なことであり、その色々な状況のひとつがASDなの
だと私は思っています。

ASDの方の中には、社会経験を積んでいくに従って、自分は周りとはちょっと違うと
気付き、自らの行動を修正しようとする人が結構いるそうです。
私の周囲にもそんな方がいて、本人は十分に周囲の方に配慮しているつもりなのですが、
突然休んだりとか、うまくいかないと仕事を投げ出すとかいった彼の特徴的な行動がだ
んだん顕在化し、周囲の方のおおきな不満につながります。そんな時、私が本人にアド
バイスすれば、本人も気づいてくれて行動を修正し、周囲の方の不満を和らげることが
できるのです。

ここで私が気付いたこともあります。不満を言うのは何故かいつも自分自身が大した仕
事をしない方ばかりなのです。しかも自分は仕事が出来ていないという認識はない方々
です。何故か不思議なことに、一生懸命頑張ってきちんとした成果を出している方は同
僚への不満をほとんど言わないのです。自分と周囲を比較するのではなく、自分が頑張
ったことへの評価(色々な意味で)のほうが大事なのでしょう。理屈からすれば、チー
ムとして活動したほうが成果も大きくなるはずではありますが、往々にしてチームで活
動しようとすると足を引っ張る方もいるので、ハイパフォーマーな方は案外個人主義だ
ったりします。

まあ、他人への興味が有ろうが、無かろうが、職場には色々な性格の方がいるので、そ
んな色々な方に横から目線できちんと配慮することが、企業で仕事をしていくためには
必要なのだと思います。







Column439   2018/03/25up         


■ グループワークの効用

最近、社内外で研修やセミナーを受けると、何だかグループワークが多いですねえ。
最近というか、実際には私が研修をうける機会が減っただけで、ここ10年位はそんな
様相を呈しているように思います。きっと、参加者の理解を深めるとともに、寝かさな
い工夫でもあるのでしょうね。

とはいえ、見知った仲間ならともかく、初見の方々に混じり、「班ごとにリーダーと書
記を決めて下さい。」とかまで言われると、「おいおい、そんなことをしに来たんじゃ
ないよ。」と思ってしまいます。

私もいい年齢になってきて、「じゃあ年長の●●さんリーダーをやってくださいよ。」
なんて、他のメンバーの方々から仕切り役をお願いされることも多いのですが、若い方
がやったほうが勉強になるのになあとか、リーダーではなくてファシリテーターだろと
か思いつつも、初めて会った方々に冷たい態度をとるのも大人げないしなあという思い
から面倒な役を引き受けることになるわけです。

で、明らかにずれた意見を言うような方がいたとしても、自分の同僚や部下でもないの
に、「それ、テーマからずれてますよ。」と頭ごなしに言う気も起きないので、うまく
わかってもらうのに苦労したりします。

また役職者を対象とした社内研修時には、研修のタイトルとは関係なく、部下とのコミ
ュニケーションの練習と称して、2人1組でのコミュニケーションでコーチングを強制
する社外講師の方もいますが、今更やるの10年遅れてない・・という感じなのですよ
ねえ。そもそも、コミュニケーション術を理解していない方を役職者に取り立てる企業
にも問題ありますよねえ。

実のところ、勤務先も職種も違う方々との交流は、自社や自分の常識とは違う物の見方
や考え方に触れる機会でもあり、得るものも多いのですが、時と場合、出席者の顔ぶれ
によりけりです。
グループワークではなく、アイスブレイク目的のティータイムでも設けてもらって、グ
ループ雑談としたほうが抵抗なく気軽に話せるのになあ~と、セミナーに行く度に思っ
てしまいます。皆さんどーすか。







Column438   2018/01/27up         


■ ランクの力の影響力

かつてこのHP内に「スターバックス研究」なるページを作成しました。書籍を読み漁
った受け売りに自分の意見やコーチング的要素を足した記載内容に久しぶりに目を通し
ていたのですが、「スタバではランクの力が排除される」を読んでいて、はっとさせら
れるものがありました。

記載内容をざっと要約すると、
・スタバでは、どんな問題でも議論できる雰囲気が社内にある。
・スタバには、地位の高い者が決定権を持つという価値観(=ランクの力)に支配され
 るようなセレモニー的、ガス抜き的な会議は存在しない。
・ランクの力は相手が結論、決定事項に納得したような錯覚を与えるが、決してそうで
 はない。
・ランクの力こそが社員の自律神経を麻痺させ、成長を奪う最大要因である。そうなら
 ない為に大切なのは、地位の高い方々が、自分より地位の低い方々の意見に耳を貸し、
 自分とは全く違う価値観や考え方の存在を認めることである。
・・・というような感じです。

何にはっとしたかというと、企業の伸び悩みの要因はランクの力にあり、自分の勤務先
も例外ではないという、まあ世の中のおじさん方が誰もが気づいているような事実を、
10年以上前に自分で書いた文章で今更ながら再確認したからです。

決して、気づいていたけど目をそむけていた。気づいていたけど自分の立場では打つ手
はなかった。・・ということではなく、30年以上も同じ企業で働いているうちに「慣
れてしまった」というのが事実です。

いわゆる「ゆでガエル」状態です。「ゆでガエル」とは、カエルを熱湯の中に入れると
驚いて飛び出すが、水に入れて徐々に加熱するとその温度変化に慣れて、気づかないう
ちに 死んでしまうという話です。(実際にはまゆつばものですが。)

今更ながら思うのは、コミュニケーションスキルを幾ら紹介しようが、地位の高い方が、
自分はみんなの声に耳を傾けていると声高に言おうが、そこにランクの力がある限り社
員の口は閉ざされてしまうということです。

私も出向先や勤務先でコーチングを広めようと色々と情報発信しましたが、今は、人の
コミュニケーション力はあくまで道具であって、大事なのは、ランクの力に代表される
ような構造的な問題を排除することであり、そうしないとコミュニケーションは広がら
ないのだと思っています。

優秀な社員が大勢いるはずの多くの一流企業が、非道な行いに道を踏み外したり、多額
の損失を抱えて身売りしたりという結末に至るのも、このランクの力に原因があるので
はないでしょうか。

では、どうすればランクの力は排除できるのか・・・スタバの経営陣に聴いてみたいと
ころです。どんな答えがくるのでしょうかねえ。







Column437   2018/01/20up         


■ シンギュラリティ、再び

 コンピューターが人の頭脳を超える進化をする特異点(シンギュラリティ)が204
 5年にくるというレイモンド・カーツワイル氏が唱える話を1年ほど前に書きました
 が、昨秋、たまたまシンギュラリティに関する書物も書いている神戸大の松田卓也名
 誉教授(宇宙物理学者)の講演を聞く機会がありました。

 実のところ、聴講者のほとんどはシンギュラリティのことなど知らないだろうなと思
 われる方々でしたが、松田先生の話はとても興味深く、また、話し方もうまく、皆さ
 んかなり引き込まれておりました。私自身は興味を持っている旬な話題を生で聞ける
 機会を得たことに満足した次第です。

 で、その内容は、
 シンギュラリティの前に、プレ・シンギュラリティが2029年にはやってくると。
 おっと、10年ちょっとしかない。
 最近のAIや自動翻訳、自動運転技術の進展や、それに対する企業や各国政府の興味
 の持ち方を見ると、10年も経てば、世の中はガラッと変わるのかもしれませんね。

 当面の目標は「意識・感情のない弱い汎用型人工知能」のプロトタイプを2020年
 に完成させることのようですが、なんとあと2年ですよ、2年。

 松田先生は汎用形人工知能(AGI)の例として、アニメ攻殻機動隊に登場するAI
 戦車のタチコマを引き合いに出したので、これまた驚きました。出席者のほとんどは
 「タチコマ??何?」てな感じでしたけど。ちなみに攻殻機動隊は2030年が舞台
 なんですよねえ。

 シンギュラリティでやってくるのは、プログラム自体がプログラムを書き直す時代、
 脳の情報が取り出せる時代、その流れに乗って圧倒的な豊かさを手に入れる先進国と
 流れに乗れない発展途上国の格差が極限に達し、世界が分裂してしまう時代がやって
 くるのだと。
 しかもかつて、産業革命に成功した国と、そうでない国が帝国主義国家と植民地に2
 分してしまったくらいの違いとなってしまうのですと。

 先生によると、スーパーコンピューターの分野で、何故1番じゃないといけないので
 すかとの質問に対する答えは、2番目では後進国、へたをすると植民地になってしま
 うからだとのことです。中国は既にこの分野への高額の投資をはじめているようです。
 
 実際日本にはこの道の先駆者とも言えるスーパーコンピューター開発者である斉藤元
 章さんがいるそうですが、どんなに技術やアイデアが革新的であっても、どれだけ投
 資したかによって成果には大きな差がついてしまうようで、ネットで調べると斉藤氏
 は常々、1番になり中国に勝つ為には300億の投資が必要と発言したようですが、
 なんと昨年12月にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のメモリーデバイス
 に関するベンチャー支援助成金不正受給容疑で逮捕されておりますね。
 あせりすぎたのかもしれませんが、この事件を原因としてスパコンの開発が遅れるこ
 とを心配している方は多いようです。

 2時間にも及ぶ講演の間、私はびっしりノートを取ったので、話は尽きないのですが、
 一昨年くらいに流行ったヘブライ大学のユヴァル・ノア・ハラリ教授の著した「サピ
 エンス全史」の話にも結構時間を割いていました。こちらについては私も現在読んで
 いるところなので、いずれまた。







Column436   2017/10/15up         


■ 消化不良の会議をやっつけろ

 どこの企業でも同じでしょうけど、最近、会議のペーパーレス化が進み、資料のプロ
 ジェクター投影や、小さな打合せであってもモニターやipadを使用することが多く、
 紙の資料を配るということがほとんどなくなってきましたねえ。
 それ自体はいいのですが、何だか、主催者の方がノートパソコンに結果を記録するこ
 とはあっても、それ以外はメモを取らない方が増えてきたような気がしませんか?

 資料をデータで事前に配付してもらい、その資料にデータ上でメモれれば良いのです
 が、ipadをはじめ、身の回りのIT機器もそこまでは便利じゃないです。
 延々パソコンにカチカチ打っている人もいますが、うるさい上に、会話が滞っちゃっ
 てますよ。・・・何か変!

 私自身は気になる部分や決定事項はノートにメモりますが、紙の資料がないので、今
 まで以上に書くことが多くて面倒で、既に次の話題に進んでしまったりすることも度
 々です。会議の時間短縮も流行っていますし、メモを取るのも面倒くさくなりますよ
 ね。

 またそんな中でも、だらだらと要点がわからない説明をする方がいたり、小さな声で
 ぼそぼそしゃべる方も相変わらず存在し、何だか消化不良の会議が増えちゃっていま
 す。

 時代の流れだからしょうがない。・・・いえいえ、このような消化不良の会議の行く
 末は、皆で決めたはずのことが実行に移されなかったり、次の会議の冒頭で、前回何
 決めたっけと確認する時間が必要だったりします。

 結論が出ているけど、不都合がないかを関係者に確認した。というような、要は主催
 者のアリバイ作りの為の会議なら困らないかもしれませんが、毎回似たようなことを
 話しているだけで議事が進まないワーキングや、結論が中々実行されない会議であっ
 たりすると、極めて効率が悪いですよね。

 ではどうすれば良いのか?
 もしあなたが会議の主催者なら、以下の6項目くらいはやってみましょう。
 1)会議の進行役が自分であることを確認する。
 2)会議の目的を再確認する。
   ①単なる伝達・情報共有、②意見出し、③業務の方向性など意志決定 等
 3)全員に発言を求める。
 4)進行役として、発言者に話の内容を明確にすることを求める。
   ①話の結論は何か、②他の出席者にどうして欲しいのか
 5)会議の結論を再確認する。
   ①何が決まったのかを確認、②誰に何をいつまでにして欲しいのかの確認 等
 6)会議終了後に出席者に対して、決定事項に関する議事録を送付する。

 また、あなたが招集された出席者であるのなら、
 自分の発言内容を他の出席者の記憶にきちんと残したり、メモを取らせたい場合には、
 だらだらと前置きから話すのであなく、例えば「伝えたいことは2つあります。」と
 明言した上で「一つ目は・・」「二つ目は・・」と区切って要点を伝えてみてはいか
 がでしょうか。
 そして主催者のケースと同じく、自分の説明に賛同が得られたら、「●●さんにはこ
 れをお願いしたい。」というように、相手の名前をきちんと呼んで、具体的な要望事
 項について話をするのです。

 消化不良にならない会議とは、すなわち、主催者や他の出席者が何を言いたいのか、
 自分にどうして欲しいのかが明確に分かり、自分がその発言に対し賛成・反対、出来
 る・出来ないを明確に主張できる場なのではないでしょうか。








Column435   2017/7/16up         



 ■ 人は繋がることで変革する

 最近、オープンイノベーションとかコネクティビティという言葉をよく耳にします。

 オープンイノベーションとは「他社の技術や特許のライセンスを手に入れて全く新し
 い技術開発につなげる」という狭義の解釈もあるようですが、もっと広い意味で「仲
 間内だけの限られた知見や資源にのみ頼るのではなく、協業先や関係先などに情報開
 示の門戸を広げて、多様な知見やアイデアを活用すれば新しい発展や大きな変革につ
 ながる」という解釈もあるようです。

 私の周囲では逆に、この広い意味をちょっとだけ狭く解釈して、「部門内の垣根をは
 ずして、多様な知見やアイデアを生み出す為には、オフィスや会議の場を他部門の方
 が入り易いようにオープンにしたり、立ち話が出来る場所を増やし、他部門の方々と
 FACE TO FACEかつ偶発的な意見交流の場を物理的に増やすのが良い。」と
 いう考え方が目につきます。そして、まずはオフィスを改修してコミュニケーション
 の場を作ろうという動きがそこここで見みられます。

 まあ周囲と言ってもオフィスデザインやオフィス什器・家具メーカー関連の企業など
 の仕事つながりの関係先だったりするわけで、考え方の方向性が各社の営業の方向性
 に沿ったものであるのは致し方ないでしょうね。とはいえ、これらの取引先のどこも
 が口裏を合わせたように似たようなオフィス作りをしているのには驚かされます。
 世の中の流れがあるのでしょうね。

 そして、コネクティビティとなるとパソコン周辺機器やネットワークへの接続しやす
 さのことであり、最近ではモーターショーでネットへのアクセス性を高めた車種が発
 表されたり、CMで外出先から広瀬すずや西島秀俊が自宅の空調や防犯システムにア
 クセスするシーンが出てきたりと、まさにこれがコネクティビティなのだなと感じる
 この頃です。

 また、コネクティビティを通り越して、インターネットを通じて色々なものを繋げる
 ことで新たなサービスをビジネスモデルとして提供するIoT(Internet of Things)と
 呼ばれる考え方もありますよね。

 この手の略語は嫌いなんですけどねえ。BtoBとかCtoCとか。

 オープンイノベーションとコネクティビティ。そしてインターネットオブシングス。
 端的に見れば、人間同士のつながりと機械同士のつながりとも言えますが、どちらも
 目指すところは、人が物事を考えたり生活したりする幅を広げることが目的ですよね。

 オープンイノベーションに関しては、「課題を抱える組織」と「その課題を解決する
 技術を持った組織」とを結びつけるビジネスなんていうのも登場しているようですし、
 何だかビジネスにつなげたがる世の中ですね。








Column434   2017/6/25up         



 ■ トートでの出社は有りかという議論、ずれてない?

 新入社員がトートバックで出社して怒られたとの書き込みに対しネット上で賛否両論
 が巻き起ったそうです。TPOとしてどうかという意見が多いようですが、賛否いず
 れが正しいかというよりも、色々な意見があるなという感じです。

 私自身は物を落とす可能性があるのでトートバックを使う気になれませんが、そんな
 の業種や職種にもよるし、最近ではビジネス向けデザインのトートバックもあるから、
 TPOによって判断は変わるので議論は無駄だよ。とは思っていましたが、とある事
 件をきかっけに私の勤務する職場ではトートバックは禁止となりました。

 その事件とは、電車の中でうとうとしていた社員のトートバックに収納した会社貸与
 のIpadが盗まれる事件が発生したのです。泥酔していたわけでもないのに気づいたら、
 バックはあるけど、Ipadはないという状況です。
 恐らく他人からIpadが見えていたのでしょう。ト―トバックからは彼の私物のIphone
 も消えておりました。

 なんでトートバックだったんだと上司から問い詰められた彼の言い分は、ビジネスバ
 ックでは客先に行くときに大きい書類が入らないというものでした。
 おいおい企業秘密の重要な書類を無くしていたら下手すると解雇されたぞ、てな感じ
 で彼のセキュリティ意識の低さが露呈しました。

 最近では中身を落としにくいようにチャックのあるトートバックも多いですが、ビジ
 ネスバックと違ってたいていは隙間がありますよね。物を落とす可能性があるものは
 少なくともビジネスの場面ではNGです。論争の余地はないでしょう。
 もちろん最近ではラフな服装で勤務する企業も見かけますし、通勤のみで使用し、業
 務に関係するものは通勤時には一切持たないというのなら好きにすればいいでしょう
 し、業務用の書類は専用の業務用バック(アタッシュケースか?)で運ぶという手も
 ありますが、それは一般論ではありません。

 見栄えや身だしなみがどうかというよりも、セキュリティとしてどうか。それが重要
 視される時代になっているのですよね。







Column433   2017/6/18up         


 
■ 3年生は何故辞める

 もう梅雨時ですが、毎年春になるとこんなタイトルの記事を色々なメディアで見かけ
 ます。
厚生労働省の統計では新卒者の3割前後が3年以内に会社を辞める傾向は19
 87年より続いているようですから、企業にとってはある意味永遠の課題とも言える
 状況です。でも本当にそうなのでしょうか。

 
退職の原因については毎年、職種のミスマッチとか、社風があわないとか、自分が成
 長できるようには思えないとか、残業が多いなどの理由が色々と分析されていますが、
 かつては「新入社員が入社3年で会社を辞める理由」というタイトルの本も出版され
 ていた位で、一般的な理由なら分析しつくされていると思います。

 
思うに、特にここ最近は何をするにせよ、情報や選択肢が豊富になってきているのに
 も関わらず、個々の企業の内部の組織や人間関係がどうなっているのかとか、勤務し
 ている方々はどんな思いで働いているのかなんて具体的情報はブラック企業への取材
 でもない限りほとんど見当たらないですよねえ。・・・であれば、ミスマッチを防ぐ
 ための企業側の情報開示が不十分過ぎるのではないでしょうかね。

 
もちろん質問されれば会社の状況を教えてくれるリクルーターの方もいるでしょうけ
 ど、学生側は企業受けする受け応えの練習はしていても、ミスマッチを防ぐためには
 何を知る必要があり、どんな質問すればいいのか分からなかったりしますしね。なん
 たってアルバイト以外では働いたことはないのですからねえ。

 
例えば、「1年もすれば一人前の営業マンだよ。」と会社側の方に言われたら、1年
 で一人前に育ってバリバリやれる企業だと思うのか、はたまた、十分な経験もないの
 にたった1年で仕事を任されて成績が悪ければ怒られる企業だと深読みするのか。
 まあ多くの学生は前者の想像をし、入社後の実態は後者であったりします。何と言っ
 ても学生が求めるのは「やりがい」のようですから、ついついバリバリ働く自分を思
 い描いてしまいがちです。
 これをミスマッチと言うのか、学生が浅はかと言うのか。まあどちらにしても就活学
 生に対して無慈悲な気がします。社内の恰好良いところだけ説明して、だまし討ちの
 ように就職を決意させるなんて時代でもないでしょうにねえ。

 
でも例えば逆に、「若いうちは残業も多いけど、先輩がサポートして育ててくれて1
 人前になるのは30才くらいかな。」なんて言われたら、果たして今の若者はその企
 業に魅力を感じるのでしょうかね?・・・難しいところですね。

 
実のところ、仕事が楽しいとか面白いという話はドラマの中以外では聞いたことがな
 いような気もしますが、皆さんはどうですか。企業はお金を払って楽しませてくれる
 遊園地や映画館ではなく、働いてお金をもらう場所なので、そもそも何のために就職
 するのかという部分を学生がもっともっと掘り下げられるといいのですけどねえ。

 
その上で、やりたくない職種・職業よりは、やりたい職種・職業に就くのがベターな
 わけで、大変かもしれないけれどやりたい仕事だからちょっと頑張ってみるか。
 ・・・なのではないでしょうか。

 
私も身近で、入社3年~5年位になって就職した企業での自分の将来像が描けてきた
 頃に転職を考える若者を見かけることがありますが、彼らの転職の動機が今の仕事が
 つらいとか今の仕事より楽そうという方の場合、ほぼ確実に転職先でも長続きはして
 いないですね。逆にやりたいことが見つかったので自分を活かしてみたいとおっしゃ
 る方は長続きしています。転職にもマイナス思考ではなく、プラス思考が必要という
 ことですかね。

 
そういえば勤務先の先輩で、定年に際して、ネットでノウハウを公開し、徴募してき
 た外国企業に移った方がいましたが、長持ちするのでしょうかねえ。







Column432   2017/6/13up         


 ■ 未来の記憶が背中を押す

 ゴールのシーンを映像としてしっかりイメージしろ。
 ・・・コーチングでは、目標を確実に達成する為のモチベーションを保つには、目標
 を達成した時に自分や仲間たちが喜んでいる様子などを映像として頭の中に描き、常
 にその映像を頭の中に見続けることが効果的であると言います。
 仕事はもちろんプライベートでも、我々の前には困難な出来事が幾らでもあり、少し
 でもマイナスな気持ちがあれば、目標達成意欲は簡単に潰えてしまいます。しかし、
 目標を達成した時に迎えるゴールの満足感、そして歓喜のリアルなイメージを常に持
 つことは根気、モチベーションの維持に貢献してくれるのです。

 また、コーチングスキルではありませんが、口癖として「自分なら出来る。」「大丈
 夫!」とか「このプロジェクトは必ず成功する。」というある意味「前向きなゴール」
 を示す言葉を自分自身や仲間への呪文のように唱えることで、モチベーションが維持
 できるとおっしゃる方もいます。


 このような話はこのHPを作った頃から知ってはおりますが、最近、ここで言うゴー
 ルのイメージを「未来の記憶」と説明する方の記事を拝見しました。

 実のところコーチングでは、ゴールの状況を単なる映像のみではなく、ゴールが訪れ
 た時にどんな場所で、どんな音がするのか、どんな匂いがするのか迄を細かくイメー
 ジしろと言います。そこまでやるとなると「イメージ」や「ビジョン」の領域を超え
 たリアルさがあり、確かに「未来の記憶」なのかも知れませんね。

 実際、自転車やバイクでもスピードが出たままカーブを曲がる際は、ハンドルを切っ
 て曲がるのではなく、曲がる方向を見ることで体がバランスを変えて、流れるように
 カーブをトレースしていきます。
 そして、レースやタイムトライアルのレベルになれば、事前に、自分がコースの各所
 を走る様子を頭の中にしっかりイメージしておくことがコンペティティブな速度で走
 る為の基本であり、正に「未来の記憶」です。

 今時では効果的だとして頻繁に見かける「綺麗に使っていただいてありがとうござい
 ます。」なんて掲示も、言葉やイメージでプラス思考の記憶を頭にしっかり刷り込め
 ば、それが実践できるという考え方の現れです。

 そう、私としては「未来の記憶」というより「プラスイメージの刷り込み」とでも言
 った方がしっくりくるのですが、皆さんどうですか?







Column431   2017/5/20up         


 ■ 星のやはフラットか?

 東洋経済のネット記事で星野リゾート代表の星野佳路さんが「星野リゾート」や「星
 のや」の経営について色々と語っているのを見かけました。右肩上がりの企業らしい
 経営哲学が色々と語られていましたが、その中で、気になった点が一つ。星野リゾー
 トでは従業員の高いモチベーションを維持するために、フラットな組織文化を形成し
 ているが、組織がフラットかどうかではなく、人間関係がフラットになるよう努力し
 ているそうです。

 組織のフラット化を目指す企業は多いのですが、形から入る企業が多い中、星野さん
 のやり方は単純明快。
 全社員が役職に関わらず同じレベルの経営情報を持つこと。そして同じレベルで議論
 して対等に意見を言い合い、代表である星野さんの意見ですらも社員の意見と対等な
 一つの意見として扱われるそうです。
 額面だけ受け取ると、役員の意見も社員の意見も同じ重みで扱われているすごい企業
 ですね。

 業績が上がって起業規模が大きくなればなるほど、末端までそれを浸透するのは難し
 いようにも思いますけど、それが徹底できない管理職には去ってもらうとのことです。
 まあ、かなり末端まで目を光らせていないと難しそうですが、今現在はきっとそれが
 できる企業規模なのでしょうね。

 他にも、社員同士を肩書ではなくさん付けで呼び合う、役員は元より代表といえども
 個室は持たない。ということをされているようですが、この部分は私の勤務先でもや
 っております。でも、だからと言ってフラット化にはなっていません。
 人間関係のフラット化というのはある意味、ベテラン社員と若手社員が対等に接する
 ことですし、時には役員と平社員が対等に意見を言い合うということなのでしょうけ
 ど、ベテラン社員や役員の側が、その気になって耳を傾けない限りは実現しませんよ
 ね。

 しかも、ベテランと若手、役員と平社員に同じ重さの責任があり、同じレベルの問題
 意識を持っていないと同じレベルで意見を戦わすことが出来るようなしっかりとした
 意見は出てこないと思います。
 自由に話してもらうと、面白いからやってみようよというような斬新な意見やアイデ
 アは出てくるのですが、将来を見通したり、リスクを考慮していなかったりする意見
 ばかりとなります。アイデア出しだけが目的ならそれも有りと思いますが、業務やプ
 ロジェクトを成功させるという目的なら極めて心もとない意見となります。

 まあ、そんなこんな考えると、私は責任(職責)とか、前述の同じレベルの情報を持
 つという言葉の重みを感じます。人は色々な情報が回りにあっても、興味のない情報
 は、右の耳から左の耳へ抜けてしまうかのごとく、頭を素通りしちゃいますからねえ。

 そこまで考えるとフラットな企業文化って言葉で言うのは簡単ですが、すっごく実現
 が難しいことであり、星野さんが本当にそれを実現しているとしたらとても素晴らし
 いことだと思います。







Column430   2017/5/14up         


 
■ 働き蜂にプライドはあるか?

 「働き蜂」。もちろん蜂の分業形態を表す言葉ですが、かつては日本人の働き方、そ
 して日本人そのものを指し示す言葉であったような気もします。でも「karoushi カ
 ロウシ=過労死」という言葉が欧米で一般化してきた最近では、逆にあまり使われな
 くなってしまいましたね。
 最近では、元々お役所による長時間労働の取り締まりが強まって来たところに電通過
 労自殺事件が切っ掛けとなり、長時間労働=犯罪という考え方に世の中が一気に変わ
 った感があります。

 「働き蜂」は日本人の働き方を表す言葉としてぴったりだなとずっと思ってきました
 が時間外協定(36協定)を超えると法令違反になるというレベルではなく、長時間
 働くことそのものが、いまや悪の権化のような扱いです。働き蜂=悪。みたいな感じ。

 長い休暇(バカンス)を取るのが普通とまことしやかに言われるヨーロッパ。特にフ
 ランスなどでは、そもそも「頑張る」に当たる言葉がないそうですね。
 でも日本には、生まれながらの職人階級だとか、移民だとかの社会階級はないので、
 だれでもその気さえあれば仕事を選ぶことが出来るし、欧米では底辺の階層の方々の
 仕事とされるような仕事でも日本ではニコニコしてやっている方も大勢います。

 少しばかり理論が飛躍しますが、日本はある意味「仕事へのプライド」があちらこち
 らに存在している国とも言えるのではないでしょうか。そしてそのプライド故、「5
 時になったから帰る」ではなく、「自分の仕事だから区切りがいいところまできっち
 りやり抜く」となるのでしょう。
 そういう意味では、職種にもよりますが、仕事の成果を気にするのは経営者の役割だ
 なんて言う方は、欧米と比べるときっと少ないのでしょうし、少なくとも我々日本の
 働き蜂にはプライドがあるのではないでしょうか。

 そして困ったことに、単純な仕事へのプライドではなく、周囲からの期待に応える為
 とか、人目が気になるからとかいう理由で懸命に働く方もいるかもしれません。これ
 は自分自身のプライドというより周囲に対する見栄であり、残業が減らない理由かも
 しれませんね。とはいえ、周囲から良く思われたいというのは集団の中で生きていく
 我々の本能であり、決して悪いことではないように思います。

 まあ、残業代が生活費の重要な部分を占める方も多いでしょうし、単純に、仕事はほ
 どほどで切り上げて余暇を楽しみなさいと言われても困っちゃう方もいますよね。







Column429   2017/5/13up         


 ■ スキル解説の真贋

 某新聞社のネット記事で、人に嫌われる聞き方についての解説がありました。書いて
 いるのは誰でも知っている女性アナウンサーの方で、この内容は本としても出版して
 いるようです。本の方は読んでいないのですが、ネット記事には、相手に嫌われる聞
 き方の共通点として、
 ①話を「最後まで」聞かない
 ②「自分の聞きたい」ようにしか聞いていない
 ③相手の話に「ズレた答え方」ばかりする
 ④どんな話でも「自分の話」に持っていってしまう
 ⑤「あいづち」「質問」「態度・しぐさ」が不愉快
 などの解説と、そのような聞き方をされると不愉快になってしまうというようなこと
 が書かれていました。

 この記事を読んだ私の感想は単純明快。「あれっ、この記事を読んで聞き方を改善す
 る人がたった一人でもいるのかな。」です。たった一人の役にもたたないというのは
 大袈裟かもしれませんが、何故そう思うかというのも単純明快です。
 ①この記事は話を聞く側の立場ではなく、話す側の立場でしか書かれていません。
 ②どんな聞き方が良くないのかは書かれていますが、ではどうやって悪いきき方を矯
  正すればいいのかという対策系がありません。
 ③そもそも人の話をきちんと聞けない方々がこの記事を読んで自分から変わろうとす
  るとは思えませんし、対策をするのはなら話す方の側で何かアクションをとらなけ
  ればならないでしょう。
 仕事上の話なら結論から先に伝えるくらいのことは最低限書いておいて欲しいですよ
 ね。

 人の話を聞けないことの問題点はこのHPでも何度も取り上げておりますが、仕事上
 の付き合いで、その方との会話をあきらめることができないのであれば、何か対策を
 打たなければなりませんが、非常に難しい問題です。
 最後まできちんと話しをさせてくれないのなら、この件はあなたには報告しませんと
 言いきれる相手ばかりではないですからねえ。

 次に沸き起こった感想は「何の為にこの記事を載せているのかな。」です。
 出版されている本にもリンクは貼ってありましたが、この記事を読んだ後に買う人は
 いないでしょうから逆効果です。スペースを埋める為でしょうかね。

 実のところこの記事とは別に「老後は月8万円の収入があれば大丈夫。」という記事
 もありましたが、興味を持って読んでみると、こちらも、老後は支出が減るとは書か
 れていましたが、年金とは別に8万円あれば暮らしていける根拠が全く書かれており
 ませんでした。

 どちらの記事もおいおい大丈夫かよ。・・てな感じです。
 もしかしたら、出版物のほうには詳しい対策があるのかもしれませんが、ネット記事
 ではそうしたことは一切触れられておりません。これらの記事を読んだ方々は、読ん
 だ気になっているけど何も頭には入っていない。ということになりますよね。それっ
 て人の話を聴けていないのとまったく同レベルのような気がします。

 巷にあふれるネット記事。とくに何かのスキル解説であれば、せっかく時間を割くの
 ですから、その真贋を見極める目を持ちましょう。







Column428   2017/4/15up         


 
■ 隠れアスペルガー

 吉濱ツトムさんの「隠れアスペルガーという才能」という本があります。
 皆さんの周囲にいる空気が読めない、コミュニケーションが出来ない、協調性が無い、
 融通がきかないなどの問題を抱える社員の中には軽度のアスペルガー症候群(グレー
 ゾーンアスペルガー)であるのに、それに気づかれずに単にダメ社員のレッテルを貼
 られている方が多いが、アスペルガー故のプラスの才能は色々あるので、彼らが働き
 やすい環境を作りもっと活用すべき。・・・すごく大雑把に言うとそんな内容です。

 グレーかブラックという呼び方には若干の悪意を感じるので、まあ本のタイトル通り、
 隠れアスペルガーという観点で考えてみますね。

 で。私の周囲にもアスペルガー症候群と思われる色々なタイプの方々がいます。
 皆それぞれ個性があって、コミュニケーションが取れないとか、融通がきかないとか、
 思い込みが激しいとか、報告ができないとか色々あります。
 私としては何とかうまく彼らを活用しようとは思っているのですが、う~ん、彼らを
 使う立場として考えると、彼らの問題は「指示通りに動けない」ことと「信頼性に欠
 ける」の2点に集約されてしまうのですよねえ。

 隠れアスペルガーの方々を「自由に考え、行動させると素晴らしい能力を発揮する。」
 という考え方も吉濱さん他世間には多々あるようですが、彼らの方向性を仕事の方向
 性とマッチさせるのはかなり難しいことです。
 また素晴らしい能力はあっても特定のことに頑張り過ぎたり、素晴らしいアイデアを
 他人は何故理解しないのかと悩んだりと心身ともに消耗しやすい面を有しており、仕
 事を任せるには信頼性が絶対的に不足しているのです。

 出来ることだけを任すという考えもありますが、本人は仕事が出来ていないことが全
 く理解できず、何故自分はきちんと出来ているのに仕事を外されなければならないの
 かという思いに捉われて不貞腐れるという悪循環にはまりがちです。

 中には全く消耗せずに我を通す方もいますが、そんな方は隠れアスペルガーどころか、
 グレーですらもなく完全なブラックであり、能力を発揮する以前に職場の大混乱を日
 々巻き起こしています。

 経験からすると、そんな方々を自由に勤務させていると、他のきちんと働いている方
 々は確実に怒りだします。だって同じくお給料をもらって働いているのですから公平
 感に欠けます。

 また、総じて考えるに、メンタルヘルスのプロの方々は、そうした職場の実情を全く
 理解していないように思います。彼らは心の問題は得意であっても、職場の管理者で
 はありませんからねえ。

 そして世間一般に人事部として括られる職務の方々の多くは、そもそもアスペルガー
 障害や自閉症スペクトラム(ASD)など近年その存在が認識されだした発達障害の
 ことを十分理解しておらず、変わったやつだけど他に行き場がないから面倒見てくれ
 というノリで配置して、所属人数としてカウントしてしまうような状態なのではない
 でしょうか。まあどっちもどっち。職場の上司・管理者がグレーゾーンアスペルガー
 の方をうまく活用するというのは非常に難しい環境なのです。

 とはいえ、後ろ向きに考えても何も始まらないし、放っておけば本人も周囲も苦痛が
 高まるばかりなので、できるだけイレギュラーなことが発生しない単純な仕事を任せ
 たり、能力があると思える方には出来るだけ雑事はさせずに一つの仕事だけを集中し
 てやってもらうような工夫をしております。

 でも、日々トラブルは起きるのですよねえ。







Column427   2017/4/9up         


 
■ フェイク情報を見抜く

 記憶にもまだ新しい米国の大統領選挙以来、ネットをはじめとする各種情報の真偽を
 疑問視する声が高まっていますよね。トランプ大統領自身も大手報道機関の情報は嘘
 だと決めつけているし、まあ、世界的に見て何が真実で、何が嘘かが極めて判り難い
 上に、その嘘か真か分からない情報があっという間に世界中に拡散してしまうのです
 から、全く性質(たち)が悪い世の中になってしまいましたね。

 例えば日本のことでも、慰安婦問題なんかも真実か何かという論点は飛び越えて、世
 界中が日本を悪者だと信じている状況であり、抗弁すればするほど、誠意がないとし
 て立場が悪くなる状況です。


 また、オレオレ詐欺だって手を変え、品を変えて被害者が発生しているわけで、つま
 りは明らかな嘘を真実だと信じてしまう方々が世の中にはほんとに大勢いらっしゃる
 という事実を示しています。
まあ、いわば言った者勝ち、やった者勝ちの世の中って
 ことです。

 こんな時代に我々が出来ることと言えば、自分が接する情報の真偽をきちんと確かめ
 ることくらいしかないのですが、私の防衛策(大袈裟ですが)は、第一に「推測や意
 見を挟み込むマスコミの報道は真に受けない。」ですかね。

 「北朝鮮がいついつミサイルを発射して、どこに落ちた。」マスコミはそんな事実の
 みを報道すれば良いのですが、勝手な推測をする国際情勢専門家やらなんやらが出て
 きて「新型ミサイルに違いない。」とか「米国の先制攻撃があるかもしれない。」な
 んて尾ひれがついてきます。時には他国のニュース報道を引用したりするので、もう
 事実なのか推測なのかが非常にわかりにくいですよね。

 たとえ、そんなニュースでも、この報道の中で事実として伝えられているのは何か、
 推測は何か、意見は何かと区分して受け入れることは必要だと思います。そして事実
 以外にはあまり意味はないわけです。

 そういえば最近読んだネット記事で事実を見極める単純な方法が紹介されていました。

 「主語の大きさ」に着目し、主語が大きければ大きいほど事実からは遠く、主語が小
 さければ小さいほど事実に近いというような考え方です。

 そりゃあそうです。最近の日本人は足が長くなったと言うなら、それはあくまで傾向
 値であって、当てはまらない方は大勢います。でもAさんは身長180cmだと言え
 ば単なる事実でしょう。

 同じように、

 「沖縄県人は米軍基地の辺野古移設に反対している。」・・・傾向としては当てはま
 っても、全員が反対だというわけではないでしょうから、このような決めつけ報道を
 するマスコミははなから信用できません。せめて賛否両方の意見を紹介してくれると
 良いのですが。

 でも、「辺野古移設反対の●●候補の得票は●●万票であった。」・・・これはきっ
 と事実でしょう。

 雑多なマスコミ報道については、決して目を背けるのではなく、事実のみをすくい取
 る。そんな姿勢が必要なのかもしれませんね。







Column426   2017/2/12up         


 
■ 5時に帰るということ

 残業ゼロでも業績が伸びているという化粧品会社の記事がネットに掲載されていまし
 た。事実とすればすごいお手本です。女性社長が自分の子育てに忙しい中、自ら陣頭
 指揮をとり、自社内の無駄と思われる慣例を徹底的に排除したそうですが、その方法
 とは。

 (1)社内資料は作りこまない
 (2)会議は30分
 (3)社内メールで「お疲れ様です」は使わない
 (4)社内のスケジュールは(スケジュール管理ソフトに)勝手に入れる
 (5)担当部署が明確でない仕事は少数精鋭のプロジェクト化で効率化
 (6)企画段階のヒアリングによる致命的問題の事前把握ルールを徹底
 などだそうです。

 私が受けた第一印象は「おいおい、今時そんなことはどんな企業でもやっているよ。」
 という感じ。

 もう少し正確に言うと、「やらなきゃいけないと気付いているし、たいていの企業は
 やろうとしているし、やれることはすでにやっているだろ。」という感じです。簡潔
 に言えば、目新しくはないということです。

 加えて言うなら(3)については、一例なのでしょうし、この社長さんには簡潔で要
 件が分かれば十分という思いもあるのでしょうけど、「お疲れ様」は美辞麗句、つま
 り上辺だけの言葉なのではなく、「直接会って話す」、「電話で話す」を省略した行
 為であるメールであるからこそ、必要最小限の事務連絡ではなく、「お疲れ様です。」
 や「お手数ですがよろしくお願いします。」くらいの気遣いの気持ちが少しはあった
 ほうが、お互いの気持ちを伝えあうための潤滑剤(ストローク)となるケースもある
 と私個人は思っています。別に手間もかからないし。
 もちろん相手や要件にもよるケースバイケースではありますが。ネットワークのメッ
 セージ機能を使用した「〇〇時、□□さんより電話あり」くらいの連絡なら省略もわ
 かりますけど。

 で、話を戻すと、やらないといけないと気付いていることと、実行できることの間に
 は大きな差がありますが、どうやってそれを実現したのかが前述の記事では掘り下げ
 られていなかったので、あまり参考にはなりませんでした。しいて書かれていること
 はこの女性社長がトップダウンで実践したということでしょう。

 私の経験では大組織になればなるほど、新たな試みをする際にトップダウンで実行で
 きるかどうかが成否を分けます。

 「トップが本気になっているのだからやるしかない。」というある意味諦めにも似た
 吹っ切りが、十分なコミュニケーションや説得に勝る抵抗勢力排除圧力になります。

 納得感(はらおち)がないと効果が上がらないという方も多いですが、経験上、たと
 え納得感があっても忙しい中で出来ることは限られているので、中間管理職任せにし
 ないで、トップが強引に進めるほうが効果的です。

 でも実は、多くの企業、特に大企業では「トップダウンで実行」という部分が極めて
 弱いかもしれません。

 組織が大きいので、たとえトップのアイデアであっても、トップは旗を振っているだ
 けで、実行に向けたマネジメントは実務レベルの役職者任せなんてケースでは何も実
 現しません。

 そもそも大企業では創業社長でもない限り、社長に絶対的な権力があるわけではなく、
 大企業になればなるほど組織の階層も関連部署も多いので、組織はタテヨコ両方に巨
 大化しています。その為、決裁権者も決裁の為の手続きも複雑で、当然会議そのもの
 も、出席者も多いし、色々な肩書の出席者の質問に答えられる資料も必要になります。

 もちろんそれが大企業病という弊害だということには、皆とっくの昔に気づいていて
 おり、クロスファンクショナルチームだの、カンパニー制だの組織改革だのなんだの
 を繰り返しますが、何をしようが組織がでかいのだから改善しないし、人が多ければ
 官僚化し、自ら仕事を作って成績を上げようとするやからまで出てきます。

 東芝や三菱自動車のように不正という旧来の悪癖を排除できなかったのも原因は同じ
 でしょう。むしろトップが悪癖の根源だったりもして。

 結局のところ、従業員を5時に退社させるというのも、その為に何をやめるのか(何
 を優先するのか)、マンパワー不足をどう補うのかという代替え手段まで含めて、時
 代の流れを読める経営者がトップダウンでやることを組織の末端まで徹底できるかと
 いうことにつきるのですが、難しいですよね。

 私の職場でも、「作業のやり直しや無駄な作業そのものを無くす」とか、「会議の時
 間や出席者を減らす」とか、「資料は新たに作らず日常の管理資料を使う」という活
 動や掛け声(スローガン)があったりもしましたが、その為の作業やWG自体が重荷
 になる上に、トップ自ら動かない為に結局効果が上がらなかったりしています。

 そういえば金曜日は15時に帰る(プレミアムフライデー)なんて話も出ていますが、
 仕事をして給料をいただいているという大前提を無視している気がするのは私だけで
 しょうか。

 勤務時間が過度に減れば、現在緻密に出来ていることが出来なくなり、企業の競争力
 は落ちてしまいます。そんなことに企業人ではなく政治家である方々は気づかないの
 でしょうね。もしくは気づいてはいるけど気にしちゃいないってか。







Column425   2017/1/28up         


 
■ 正常進化とは

 あなたの周りには、空気を読めないやつだとあきれられている方がいませんか?
 そんな方を前にして、きっと多くの方々が「その場の雰囲気や相手の言わんとするこ
 とを推測して行動するのが普通だろ。」なんて思っていることでしょう。もちろん私
 もそうです。

 でも、相手がストレートに言ってもいないことを勝手に推察して行動するのが本当に
 正常なことなのでしょうか? 自分が言いたいことを気兼ねせず言うのはそんなに悪
 いことなのでしょうか?

 実は、空気が読めて、人の気持ちを害することもなく、健常者と言われる一般人こそ
 が、障害を抱えているのではないか。そんな考え方があるそうです。

 手、足や内臓など体のどこかの具合が悪いわけでもないけれど、主にコミュニケーシ
 ョンや物事の認知の仕方が多くの方々とは異なる。そんな発達障害を抱える方々を一
 つの個性として扱って欲しい。近年、そんな意見を実によく耳にします。
 でも、障害を抱えているのは彼らではなく、大多数の一般人こそ正常でないという意
 見に出会ったのは私も初めてですよ。

 しかもこの意見では、コミュニケーションが極端に苦手な方々に障害者というレッテ
 ルを勝手に貼り、時には施設に入れて健常者と呼ばれる方々の行動をまねさせて、う
 まく真似出来たら褒めたりするのはおかしいとまで主張しています。
 犬や猫じゃあるまいしという勢いです。

 そこまでくると、正常か正常でないか、健常者か障害者か、発達障害だの自閉症だの
 というくくりでこの話を語ると本質は全く見えてきません。
 それどころか、もっとごく単純に、多くの方々はごくごく一般的で同じような意識の
 発達をしているが一部の方々はちょっと違う意識の発達をしている。そう受け止めな
 くては理解が進まないようで、取りあえずは、多数派か少数派かという区分で考えた
 ほうが分かり易そうです。

 しかしながら、確かに我々は、外国人はもとより、海外勤務経験の長い方や齢の離れ
 た若者の考え方をうまく理解出来ずに、あいつは宇宙人だとか新人類だとかまで言っ
 たりしますよね。
 当たり前ですが、地球には日本人より外国人の方が多いので、発達の仕方が変わって
 いるのは我々大多数の日本人なのかもしれません。そうなると日本人に多いAタイプ
 か、日本人に少ないBタイプかというような区分にするしかなく、話の本質は逆に分
 かりにくくなってしまうので、とりあえずは国内における多数派、少数派という区分
 の仕方でご勘弁願いたい。

 とは言え、日本的なコミュニケーションがうまく出来ない方の多くは、コミュニケー
 ション上の問題を他に幾つも抱えているので、少数派という枠をはみ出して色々と問
 題を抱えているように思います。そして、その問題さえ、我々多数派が問題だと思っ
 ているだけだということのようです。

 さてさて、実は大事なのはここからです。
 我々日本人の多数派は、人の意見を気にして言いたいことが言えなかったり、自分の
 考えがコロコロ変わったり、少数派に比べて実にぶれているという指摘があります。
 また、人の意見の正しさをきちんと見極めもせず、地位の高さや声の大きさで相手に
 従ったりもして、長いものには巻かれろなんて言葉で後輩を諭したりもします。時に
 はきちんと意見を言わないといけない場面なのに相手に遠慮して言えないこともあり
 ます。中には好きな人に好きだと言えずに大事な相手を失う方がいたりもして、うー
 ん、何とも歯がゆい。そして流行っていることがすごく大好きで、人の真似ばかりし
 ていています。

 さあそう考えると、自分が健常と思い込んでいる我々日本人の多数派は本当に人類の
 正常進化なのでしょうかねえ。そもそも人間が最初から言葉を話したわけでもないで
 しょうけど。

 我々多数派の特徴をそんな風にあげつらっていくと、話が戻ってしまいますが、健常
 か、健常でないかと言うよりは、集団で生きていくのに適合しているかどうかと言っ
 たほうが適切な気がしてきました。人によっては農耕民族の特徴だと決めつけること
 でしょう。

 また、年末年始に色々なTV番組がありましたが、芸能人が田舎町を訪問したりする
 と、誰でも知っていると思われる芸能人を知らない方が結構いたりするのに気づかさ
 れました。そうそう我々は都市部の多くの方々の生活習慣や知識が一般的な常識だと
 勝手に思っていますが、それとは異なる暮らしをしている方も結構いるのです。

 そんなこんな考えていくと、一見矛盾しているようですが、農耕型から都市型に発展
 し、もはや大多数かどうかもあやしい多くの方々の物事の認知の仕方を都度都度疑い
 ながら生きていくほうが極めて正常なような気がします。
 例えば、ドラマで見かける「何で自分の意見を言わないんだ。」なんてつっかかる場
 面が正常なのかもしれませんよ。きっと。








Column424   2017/1/7up         


 
■ 電通事件とトランプ哲学

 電通の女性社員の過労死から1年がたったそうですね。最近活発に繰り広げられる彼
 女の過労死に関する報道では、世間の目とか、一般の意見というものが何故だか見え
 ない気がします。

 若いのに可哀そうとか、死ぬくらいなら辞めればよかったのにとか、組織ぐるみでは
 ないかなどと勝手な憶測や意見が飛び交っていますが、電通がブラック企業かどうか
 という以前に、時間では測れない成果が必要となる業界は世の中にたくさんあるはず
 です。そう、報道するマスコミ自体も時間では成果が図れないと思います。
 例えば、芸術家や職人の弟子などは、勤務時間が規定されるような雇用契約は結べな
 いでしょうね。

 何が何でも時間外協定の時間は守らなければならない。そんなに忙しいなら社員を増
 やして対処すべき。日本人は欧米に比べて働き過ぎ。これらの意見はどれも正しいと
 は思いますが、いったい今の経済発展した日本を作ったのはどんな働き方をした人々
 だったのだっけなんて思ったりもします。

 電通が世界的に競争力がある企業かどうかは知りませんが、大企業であることは確か
 です。そしておそらくは電通の経営陣はもちろん幹部社員たちも社員を搾取したかっ
 たわけではなく、一流企業の社員としての自負として手抜き仕事をせず、企業間の競
 争に勝とうとしただけではないでしょうか。
 もちろん70年台までの高度成長期や80年台中盤以降のバブル期のように景気がよ
 い時期であれば社員を増やせばよかったのでしょうけど、景気の先が見えない現在で
 は、人件費増の問題もあるし、そもそも優秀な社員を集めるのにも限度があり単純で
 はないでしょうし、派遣社員などの不正規社員で対応できる業務も限られるでしょう。
 最近では若い方が仕事より生活を大事にするのもごくごく普通のことであり、もはや
 日本的働き方は限界にきているのでしょうね。

 しかし、欧米は日本人と比べると個人の生活を大事にして残業しないのかと思いきや、
 米国のオフィスワーカーなどは完全に成果主義なので、残業する方も多いと聞きます。
 日本もバブル終焉の1990年台以降は、年功序列ではなく、成果主義による評価を取り
 入れた企業が多いと思いますが、それが更に残業文化に拍車をかけたのかもしれませ
 んね。

 逆にフランスやインドなどは残業代が払われないのが一般的なので、只働きとなる残
 業はしないとか。国によっても、主要産業の状況によっても色々なのでしょうね。

 今回は若い女性社員の自死ということでマスコミ的にも当局的にも注目し、世間の知
 るところとなったわけですが、おそらく世間では目立っていないものの似たような事
 件は山ほどあるのでしょう。

 死ぬほど大変だとは思わずにその業界、企業に就職してしまったなんてことは幾らで
 もあるでしょうし、楽して楽しい仕事なんて世の中にはほぼないですが、仕事にやり
 がいや、ある意味楽しさを求めている若者はよく目にします。そんな中で、理想と現
 実のギャップがあった時に、ポイっと投げ出せない足枷(例えば責任感)があるとい
 うのは若い方々にはつらい状況でしょうね。

 ところで、トランプ次期大統領は著書「あなたに金持ちになってほしい」の中で、社
 長として仕切るビジネスに労働時間の制限はない。休まずに何日も働くのも常であり、
 最終的な責任はすべて社長に有るが、疲れるどころか、そんな責任感が自分にエネル
 ギーを与えてくれる。自分の船の船長であるために自分は一生懸命働くのだ。と語っ
 ています。

 うーん、従業員が滅私奉公する日本企業はやはり変なのかもしれませんね。

 ちなみに「あなたに金持ちになってほしい」はロバート・キヨサキとの共著ですが、
 ロバート・キヨサキは有名な「金持ち父さん、貧乏父さん」の著者でもあります。








Column423   2016/12/18up         


 
■ 続、シンギュラリティ

 先日、シンギュラリティの話を書いた後、好きな番組でもあるテレビ東京「やり過ぎ
 都市伝説」の関暁夫緊急予言SP版を見ると、シンギュラリティ、そしてVR(バー
 チャルリアルティ=仮想現実)の話が取り上げられていたので、そのタイムリーさに
 少々驚きました。
 番組の中で解説されたフリーメイソン内の秘密組織と噂されているイルミナティが人
 間のサイバー化やそのための手段の一つとしてトランプの大統領選にも関与していた
 というくだりには興味があるものの、かなり眉唾なのでこのHPでは無視するとして、
 技術革新の行く着く先であるシンギュラリティにより、人間と機械の区別、VRと現
 実世界の区別がなくなってくるというくだりはまさに私がここで言わんとしたことで
 す。と言っても影響されやすい私が色々読んだ本の受け売りにすぎませんが。

 しかし実際、発展途上国を中心に爆発的に増加する人口や初歩的な経済発展を原因と
 する環境問題や食料問題に対しては、現時点の科学技術や政治的努力ではほとんど無
 力であり、悪化の一途をたどっている感がありますが、科学技術が急速の発展により
 シンギュラリティを迎える未来では、人体や脳のサイバー化によってある意味不老不
 死が実現することで更なる人口増は起きるものの、VRが切り札となり、人々が機械
 化された体でさえ不要と考えて、辛い現実世界ではなくおそらくは幸福だと感じるで
 あろう電子的な仮想現実世界の中で生きることを選ぶことが問題解決の切り札となる
 のではないかと言われると、説得力はあるものの、我々の未来はそら恐ろしいもので
 あるように思ってしまいます。
 人間というハードには限りがあるが、人の心(=精神や記憶)というソフトは永遠に
 なる。それがシンギュラリティの行き着く先。というような前向きなことを語ってい
 る方もいるようですけど。

 シンギュラリティという考え方の基本は次の100年の科学技術の進歩は前の100
 年の1000倍にあたるというものです。でも世の中を見渡すと、減ったとはいえ、
 いまだに癌でなくなる方はいるし、ミサイルや航空機が進化し、サイバー攻撃という
 概念も一般化していても、いまだに銃を打ち合って戦争している地域があります。
 そうそう、いまだに武力で現状を変えようとしている国家もありますしねえ。
 少なくとも人の心は前の100年の1000倍も進化していませんよね。
 それに対して個人が得られる情報量は1000倍どころか何百万倍にも増えているよ
 うな気がします。

 コンピューターのシンギュラリティ(進化の特異点)は2045年頃、いやもっと早
 くやってくるのではと議論されていますが、ふとTVを見ていてその下の棚に目を移
 すと2043年なにがしと背表紙に書かれた本があり、手に取ってみるとだいぶ前に
 何気に買ってしまった各種予言を解説する本であり、その予言の一つが2043年に
 は世界の80%が滅びるとかなんとかいうものでした。
 この手のネタは好きではあってもそのほとんどは眉唾なわけではありますが、「シン
 ギュラリティがくるのに滅亡するのか」なんて改めてあきれてしまいました。
 最近、深夜TVでやっているTV版の12(トェルブ)モンキーズも、細菌で人類の
 ほとんどが死に絶えた2043年から、細菌蔓延の原因がある2015年にやってく
 るというストーリーですが、何だか2045年前後がキーになる話題が幾つも周囲に
 転がっています。何でしょうね。

 あ、そうそう私は地球温暖化も眉唾だと思っております。生まれてから毎日(そこま
 では無理か)、自分自身の手で世界中の海水温度を測ったことがある方がいて、その
 方が温暖化していると言うのなら信じますが、子供の頃に小学校で推薦しており周り
 の子供の多くが読んでいた学研の科学雑誌に「地球は第四小氷河期に向かっている」
 と解説されていたのがどうしても頭に残っており、どうも近年の世の中の動きは情報
 操作のような気がしてなりません。
 産業革命の頃から平均気温は●●度上がっているなんて表現がありますが、200年
 以上も前に気温や海水温が正しく図られ、記録さていたのかは疑問じゃないですか。
 木の年輪からの推定・・。まあそんな話はどうでもよいかここでは。








Column422   2016/11/13up         


 
■ 2045年のシンギュラリティ

 記憶をたどると、CDが一般化し音楽をデジタルで聞くようになったのは1980年台後
 半頃。仕事で使っていた携帯電話の原型とも言えるショルダーフォンが重く馬鹿でか
 い上に無線局免許証が貼られていかにも無線機然としたサイズだったのに、多少携帯
 しやすいサイズに変わったのも1980年代後半だったはず。また職場でパソコンが普及
 し始めたのは1990年頃のWindous3.0の登場辺りから。
 いずれもバブルと言われた時代の出来事。世間でインターネットが普及するのはもう
 10年近く後だけど、職場のパソコンが本支店間の専用線で結ばれたのもこの頃でした。

 今思うと、現在の当たり前のようなネット社会の切掛けは、30年前の科学技術の進歩
 と企業の財布の緩み具合がうまくマッチして始まったのかもしれませんね。

 そして今。
 世間では、世の中で一般化し、新しい産業を生み出したり、特定の方々の商売に結び
 付くという意味で、インターネットの次に世界を席巻するものは何かという議論が盛
 んです。

 こと自分の職場だけを見るならVR(バーチャルリアリティ)技術、コンピューティ
 ングデザインが先端技術の大きなキーになっていますが、これも概ね実用化されてお
 り、その延長線上で技術を磨いて活用していくという感じでしかありません。

 では、もう少し先にならないと実用化しないかなと思う身近な先端技術と言えば、
 AI(人口知能)、そしてパワーアシスト技術です。何故身近かと言うと、この2つ
 の技術は私の勤務先である建設業界では顕著となりつつある人手不足を背景に期待大
 の技術なのです。
 パワーアシスト技術は医療・介護の場では試行されている例もありますが、私が見学
 した企業でもアイアンマンやエバンゲリオンの人と等身大のフィギアが飾ってあるな
 ど、SFチック満載で遊び心もある技術であり、ロボット社会の到来を想像させます。

 でもインターネットは単なる技術ではなく、人々の思考を変えるような大きな変化で
 した。それに匹敵するような変革って、近い将来に起きるのでしょうかねえ。

 実は、こんな話題に興味を持っていると、最近度々目にする言葉があります。
 シンギュラリティとか、2045年問題とかいう言葉です。シンギュラリティとは特
 異点という意味で、簡単に言うと、現在はまだまだ「真面目に演算を繰り返す」だけ
 のコンピューターが年々進歩を遂げ、2045年には「自ら考えることが出来る」と
 いう特異点を迎えるというのです。
 SFやアニメの世界では幾らでも見かける題材ですが、人間の脳が持つ140億個の神経
 細胞に匹敵する能力のコンピューターの出現は極めて現実味のある話のようです。

 その時何が起きるのか。それこそSFやアニメには幾らでも想像力をかきたてる題材
 はありますが、身近な現実社会でこのシンギュラリティが起きることを想像すると、
 何だかすごくネガティブで不安な気持ちになります。

 曖昧な使われ方をする言葉としてサイボーグ、アンドロイドというのがありますが、
 仮に今の言葉の定義として、義手や人工臓器など人工的な身体を持つロボコップのよ
 うな人間をサイボーグ、人に近い動きが出来る人型ロボットをアンドロイドという使
 い分けがあるとして、シンギュラリティが起これば、両者、つまり機械化した人間と、
 人間化した機械の境目は非常に曖昧なものとなってしまいます。

 『インターネットの次に来るもの』の著者ケビン・ケリーは、科学技術が発展し、新
 技術に伴うコストの低下が進む中で、唯一コストが増加するのは「人間の経験」だと
 書いていますが、シンギュラリティが起これば、誰かの経験を電子化した人の脳や人
 間化した電子頭脳にコピーすることも可能になり、そのコストもいずれは低下してく
 るかもしれません。
 それこそ映画にもなったフィリップ・K・ディックのSF小説「トータルリコール」
 の世界です。

 今でも、自分の子供達(20代)に「免許を取れ」とか「外国でも行って来い」という
 と、「面倒くさい」「車に興味ない」「外国は危険」などとネガティブな返答が返っ
 てくる始末ですが、自分で経験するよりも家(≒内)にこもって、ゲームやネットに
 はまる若者が多い中、世の中の流れとして、経験や知識、技術の移転技術の話は現実
 味を帯びてきます。というかそういう社会に違和感を抱かないように社会や産業に誘
 導されているのではないかとまで思ってしまいます。

 科学技術の世界で次に何が起こるのか?・・・興味津々というより、何も起きなけれ
 ばいい。いやもとい、病気や怪我で苦しむ方々の機能を回復できるような技術や化学
 の進歩はあってもいいですね。それだって大変なことですが。

 でもきっと、次なる科学技術の進歩は人の心や気分の仕組みを、実際に脳内から変え
 てしまうのかもしれませんね。まあ2045年というのは近未来ではあっても近い将
 来ではないわけですし、逆に実際のシンギュラリティはもっと早く来るかもしれませ
 んけど。








Column421   2016/09/25up         


 
■ 最近褒められましたか?

 ふと思いました。「最近褒められていないなあ。」と。
 褒められるとやる気が出る。コーチングスキルとしては常識中の常識なのですが、企
 業では人を褒めるのが苦手な方って非常に多いですよね。自分なりにその理由を考え
 てみると、人を褒められない原因は2つ。

 まず、一つ目はビジネスの場面で人を褒める習慣がないことです。
 近所付き合い、親戚付き合いなどビジネスとは関係のない場面では、どうでもいいこ
 と、つまらないことでやたら褒められたりしませんか。これは当然ながら社交辞令。
 決して心から称賛しているわけではなく、褒められた側も「いやあそんなことないで
 すよ。」と取りあえず否定しておかないと、陰で何を言われるかわかりません。
 仕事の場面でも同じで、やたらめったら褒めれば「お世辞」としか受け取られません。
 大袈裟かもしれませんが、それ故に日本のビジネスシーンには褒めを連発しないよう
 な文化があるように思います。

 二つ目の理由は企業の評価制度。
 当然ながら上司は部下を評価することを求められますが、ハロー効果とも言われる勘
 違いにより、威勢のいい部下はそれだけで実際の成果以前に評価が高くなるのが日本
 の社会。ルールを無視して周囲に迷惑をかけながら成果を上げた者が頑張っていると
 思われたりすることもあるでしょう。
 TVドラマの影響もあるでしょうけど、「ルールは破るためにある。」なんて勘違い
 発言が格好良いと思われたりする世の中です。
 つまりはきちんと部下を評価できるスキルを持った上司はそんなにはいないのですよ。
 仕事の過程、行動と成果に加え、業務改善や後輩の指導状況などもきちんと把握して
 評価しなければならないというストレスに晒されれば、おのずと褒めるハードルも上
 がってきます。
 そして、頑張ったから褒める。成果を上げたから褒める。という基準であれば褒める
 機会はおのずと減ってしまいますよね。
 きっと、結果がなかなか出ない地道な努力なんて褒められることはないでしょう。

 そうそう、直接本人を褒めない方も多いですよね。やっぱりハードルが高いのですか
 ね。周囲から本人伝わるのを良しとする考え方もありますが、伝わらない場合だって
 ありますよ。褒めるなら直接本人に伝えるべきです。

 まあ、そんなかんだで、仕事の場面で褒めるのが苦手な方って結構多いのですが、コ
 ーチングには褒めるのではなくアクノリッジ(承認)というスキルがあります。
 考え方の基本は相手の存在そのものの承認なのですが、実際には相手のちょっとした
 良い行動や進捗を本人にフィードバックするだけです。
 早めに資料を仕上げてくれたら、「早いね。」
 朝から元気そうだったら、「元気だね。」
 効率的に作業をしていたら、「テキパキしてるね。」・・・もうそのまんまです。

 人は集団で生きる生き物なので、誰かに気を掛けてもらえて、その存在がきちんと認
 識されるのが、すごく心地よいのです。

 簡単そうですが、アクノリッジを効果的に行う為には相手の行動をきちんと興味を持
 って見ていないといけないので、職場であれば上司は部下の行動をきちんと把握する
 という大前提が必要となるわけです。

 このアクノリッジ(承認)というスキル、使い方次第では、家族や友人との関係にも
 良い結果をもたらします。
 奥さんに「このおかず美味しいね。」「髪切ったね。」とかいう定番のセリフもアク
 ノリッジですし、子供に「早く起きれたね。」とか、友人に「愚痴を聞いてくれて助
 かったよ」など、事実をそのままフィードバックすれば、次もそうしようかなと思っ
 てくれるかもしれません。もちろん1回くらいアクノリッジしたくらいではだめです
 よ。アクノリッジする側には地道な努力は必要なのです。

 しかし、自分自身がアクノリッジしてもらう方法ってあるのでしょうかねえ。








Column420   2016/09/20up         


 
■ 両面確認しようよ

 私もTVを見ない日はないのですが、相変わらず、人が興味を抱くことばかりを面白
 おかしく紹介する番組が多くて、見ていてイライラしますね。見なきゃいい。そりゃ
 あそうなのですけどねえ。でもそれでは情報から途絶しちゃいます。

 例えば、終わってしまったオリンピック、パラリンピック。色々な競技があるはずな
 のに、どのチャンネルも同じ競技ばかり。フェンシング、アーチェリー、射撃とかっ
 てなかったのでしたっけ。
 日本選手が銅をとったカヌーは俄かに注目され、その羽根田選手の既に終わってしま
 った試合が放映されていましたが。まあその程度。

 まあそれはさておき、極論すると政府や政治家は悪者、庶民は正義の味方。マスコミ
 は万事がそんな感じで一面のみしか紹介せず、物事には良い面と悪い面、もしくは明
 るい面と暗い面などきっちり両面があることをきちんと紹介するTV番組もめったに
 ないですよねえ。そう、マスコミは中立ではないのですよ。

 今更そんなことに気付いたのかと言われるかもしれませんが、きっかけは、最近ニュ
 ースやCMで頻繁に取り上げられる3Dプリンター。
 どんなに素晴らしい機械・技術であるかが頻繁に語られて、以前に起きた3Dプリン
 ターによる拳銃密造事件のようなマイナス面はとっくに忘れ去られ、将来の可能性ば
 かりに目がいきますが、今では、イメージを現実化するのに如何に役立つかという面
 が強調され、すごくお手軽に実現出来るかのように紹介されているのに疑問を抱いた
 のです。
 ビートたけしさんが3Dプリンターで製作したと思われる林檎を手にするCMしかり。
 あのリンゴを作るのにどれだけの時間と費用がかかっているのかは紹介されません。

 しかししかし、職場で3Dプリンターの購入の検討をして分かったことがあります。
 まず3Dプリンターを使いたがる・・つまり私に買ってくれというう方々は、今すぐ
 にでも欲しい、使いたい、だってなんでも立体的に印刷(?)出来るじゃないか。
 ・・という方々ばかりなのですが、具体的に何に使うのかがいまいち掘り下げられて
 いません。正にマスコミが紹介する事例に踊らされているのです。

 でもって購入に向けて調べると、個人向けの安価な機種が出回っていると報道されて
 いましたが、業務に耐えうるも機種は本体価格も500万円~1千数百万円とやけに
 高いうえに維持費も半端ではありません。なのに、日進月歩で技術革新するこの手の
 機械は1年も経てば旧式化するようで、単年度のコストはかなり高額。

 そもそも3Dデータを現実化するにはディフォルメも必要でその為の適切なデータ変
 換のノウハウが必要です。印刷時間は製作物によっては10時間以上にもなるし、製
 作後には立体を維持するのに使った補助剤を除去したり、機種によっては補助剤の産
 業廃棄物としての処理も必要で、まあまあ全然気軽に印刷出来るしろものではないよ
 なってな感じなのです。

 そして、極めて故障が多く途中で止まることも日常茶飯事。なのに外国メーカー製品
 には十分な修理対応体制がないという現実があり、多くの3Dプリンターが倉庫の片
 隅に眠っていることを知りました。勤務先社内の別の部門でも何台かがそんな運命を
 たどっていることが判明しました。おいおい幾らすると思っているんだ。

 比較するのも変ですが、スポーツカーを買った方がはるかに安くて、使いこなせます
 よ。故障しても直せますしねえ。

 話が長くなりましたが、TVではそんな裏側の事実に触れることはほとんどありませ
 ん。同じようにマスコミが取り上げる色々な話題、政治、経済、国際情勢なども同じ
 く片面しか報じられていないように思います。

 とは言えTV(マスコミ)を批判しても何も改善しないので、TVに限らず、新しい
 情報に触れた際に、興味があることや気になることがあれば、物事に色々な側面があ
 ることを念頭にきちんと情報収集をしたほうが、より正しい判断につながります。
 ビジネスの場面であればその積み重ねがあなたの信頼度の向上にもつながってくるの
 です。私はそう信じます。

 是非、物事の両面に興味を持ってください。








Column419   2016/09/04up         


 
■ 本を勧めるな!

 「人から勧められた本を読むことほど馬鹿げたことはない。」

 まがりなりにも書評らしきものを掲載している私がこんなことを言うのもあきれた話
 ですが、勝手ながら私の持論です。弁解するなら、私は本を勧めているのではなく、
 ただ紹介しているだけです。

 どの本を読もうかなと考えた時に、世の中に多数の本が有り、日々新たな出版が有る
 中で、小説、HOWTO本に限らず、自分以外の誰かが読んで感銘を受けた本だけに
 興味の対象を限ってしまうと実に狭い範囲でのサーチとなってしまいます。
 言い換えれば、「人から勧められた本だけを読むことほど馬鹿げたことはない。」で
 しょうか。

 だから書評は「こんな本も有るよ」的でいいのではないかと思いますし、「この夏お
 勧めの10冊」なんてタイトルを掲げてアマゾンへのリンクを貼ってあるようなネッ
 ト記事には、どんないい本が紹介されていてもそのタイトルにあきれてしまいます。

 誤解しないでください。私は新聞・雑誌でもネットでも、書評が目に止まれば一応目
 を通します。
 特に、書評の中で自分が好きなジャンルの小説が紹介されている場合、こんな作家、
 こんな作品があったのかと、結構参考になります。しかし、興味のないジャンルであ
 れば話は全く変わります。私自身が満足するハードルが高くなってしまうからです。
 私が自主的に購入したのではなく、たまたま読んだ本で、ごく稀にこれ面白いなと思
 うような本は、ふと自宅に置いてあった娘(2人とも成人)の本だったりします。

 そしてHOWTO本。とくにマネジメントやスキルに関するものは、実のところ手を
 変え、品を変えて次々に新作が出版されているようにも見えますが、既存の書籍と内
 容が似通っているものが多いのです。本屋で手にとって、これ読み易すそうだとか、
 これ面白そうだと思って購入しても、結局のところ、既存の誰かの考え方を言い換え
 ているだけの書籍が結構あるのです。
 例えば、コーチングとは一言も言ってはいないけど中身はコーチングだったりとか。

 まして「これ役に立ちますよ」人から勧められた本だと、内容以前に読みにくかった
 り、頑張って読んだらまったく目新しくはなかったりということも極めて多く、勧め
 た本人には良くても、残念ながら、私には不要という結果に終わることが多いのです。

 そもそも勧めた方本人にとって、本当にその書籍が役だったのでしょうかね。たとえ、
 ちょっとばかり考えが目新しかったからといって、役立ったとは言えませんからねえ。

 私も以前はマネジメントやスキル、指導法等の書籍を数多く読みました。本屋でちら
 ちらと斜めに目を通し、良さそうだと思えばまずは購入し、何とか時間を作って読み
 ました。当時は費用も時間も自分への投資だと思っていたのですが、でも結局のとこ
 ろ、あまり身についた気はしません。

 例えば一時期、小説仕立てのマネジメント手法紹介本が流行っていましたが、その手
 法を役立てて企業を変えるなんてことは限られた経営者クラスにしか出来ないのです。
 つまり、読み易く知識としては理解することは出来たとしても実践にはつながらない
 のです。
 それならと私自身は、難しい理屈を学ぶよりも、普段の職場のやりとりの中で簡単に
 実践できるコーチングに目を付けたのです。大改革ではなく、身近なコミュニケーシ
 ョンの活性化です。

 そんなコーチングスキルでさえ、向かない方には向きません。私がコーチングスキル
 についてまとめた部分がある小冊子がメンタル的観点から勤務先社内に配付されたこ
 とがあるのですが、「企業は上意下達が全て」という土壌で育ち、人の言葉を平気で
 遮るような上司や先輩方にはコーチングは決して使いこなせないスキルなのです。
 コーチングには、まずは相手の意見をしっかり聞くという想いが必要なのです。

 だから私もこのホームページを周囲の方に紹介することはほとんどありません。
 一つには自分の覚え、そして自らこのページを見つけて、自分に合うなと思った方が
 役立てればいいのです。

 書評も同じ、人に勧める必要は全くなく、ちらっと見て、面白いなと思う方が参考に
 すれば良いのです。








Column418   2016/08/28up         


 
■ 真の指導者はコーチングを選ぶ

 青山学院陸上競技部を箱根駅伝優勝に導き、一躍有名になった原監督の興味深い記事を
 発見しました。記事中ではコーチングという文言は一切使用されていないのですが、原
 さんの成功要因は、従来のティーチング的指導をコーチングに切り替えたことのようで
 す。

 記事からの引用ですみませんが、そもそもスポーツなのでコーチングが行われていても
 良さそうなものですが、従来の青山学院陸上競技部では部員が意見も言わずに黙々と監
 督の指示に従って練習を行うというスタイルだったそうです。つまりティーチング。

 しかし、原さんは、部員の意見を聞き、自分たちで練習法を考えさせ、それを部員の状
 況に合わせて実行していったようです。

 それが何故、効を奏したのかについてはこの記事では触れられていませんでしたが、教
 えるのではなく、部員たちの潜在能力をうまく引き出していくことに徹したことが、チ
 ームを優勝に導いたようです。

 原さん自身、選手時代に指示された練習メニューをだらだら繰り返すのがいやだったそ
 うですが、自分が嫌なことは部員にも求めたくはなかったのでしょうね。

 これがサッカーやバレーボールのようにチームワークに徹する競技だったら結果は違っ
 たかもしれませんし、コーチングを採用し、同じ手法で指導したからといって誰でも同
 じ結果になるとは限りませんが、指導される方々がコーチングに適した成熟をしている
 かどうか、そして最後はやはり指導者としての素質が結果を導くのでしょうね。

 ちなみに原さんは青山学院の監督に就任する前はサラリーマンだったそうです。部下の
 指導のコツをスポーツの指導に応用したのでしょうかね。
 いずれにせよ、青山学院陸上競技部を優勝に導いたのは、原さんのコーチングです。








Column417   2016/07/02up         


 
■ データの真偽(うつは増えている?)

 うつ病患者が急激に増えているという記事を何件か見つけました。いずれも厚生労働省
 が公表したデータに基づくものですが、1996年から2008年までの経年推移を示したもの
 で、若干、いやこのご時世にしてはかなり古いデータと思いました。厚生労働省は3年
 に一度、患者調査というのを行っているので、古い資料の引用なのではと思って厚生労
 働省のHPを覗くと確かにこの期間を元にした分析が最新の情報として掲載されていま
 す。残念ながら今は毎年の調査というのは行っていないのかもしれませんね。
 患者が増えたと分析しておきながら、あまりにもやる気なさげで、残念です。

 で、その内容ですが、1996年に43万人程度だったうつ病患者が2008年には104万人と2.4
 倍に急増しており、かつ一貫して女性が男性の2倍おり、年齢別では、男性は40代がピ
 ークのほぼ正規分布となっているのに対し、女性では何故か60~70代の患者が特に多い
 状況です。

 これをどう読み解くか。
 ある記事では、抗うつ薬の販売を伸ばす為に、少々元気がない方、疲れた方をうつ病と
 診断してしまう傾向が増しているとまで断言されていました。

 まあ、その判断は専門家に任すとして、私が思うに、この21世紀以降は企業を中心に精
 神衛生対策が強化され、ちょっとした悩みもカウンセラーに相談しやすくなり、また心
 療内科という言葉が一般化して、心の悩みを専門家に相談する門戸が広くなってきた時
 期でもあるような気がします。私がこのHPの前身であるブログを始めたのが2002年頃
 ですから、まあ世間一般にそんな時期だったのですよ。

 心の病までいかないグレーゾーンの方も含めて、きちんと話を聞いてもらえて、必要な
 ら医師の診察も受けられるそんな時代に変わったのでしょう。

 でも、女性患者が多い理由についてはもっと遡ったデータがないと判りません。想像す
 るに女性の社会進出が増えたことなどとも関係がありそうですが、そもそも女性は男性
 に比べ、心の安らぎを生む脳内伝達物質であるセロトニンの分泌が少ないらしく、故に
 女性は男性に比べると悲観的になりやすいのではないかと思います。一部勝手な憶測が
 入っていますが。

 しかし、高年齢化したことに関しては、一般論として言うなら、元より高齢者は比較的
 元気がない方が多く、うつだと気付かれなかったり、症状が似ているため認知症と誤解
 されたりしていたのが、深い知識はないものの、うつ病の存在そのものは世間一般で知
 られるようになり、あなたはうつ病だと判ってもらえるようになったという背景により
 数字上増えているようです。

 なおかつ女性高齢者のうつ病患者は多いのですよねえ。一般論からすると出産後と更年
 期に女性はうつ病になりやすいという傾向があるそうですが、子供の独立による喪失感
 も男性に比べると格段に強いでしょうしねえ。これからは女性の社会進出が格段に進む
 と思いますが、それも拍車をかけるかもしれませんね。








Column416   2016/07/17up         


 
■ 相手の考えの背景を考える

 今回はワールドワイドなコンテキスト(考え方の背景)の話。
 以前、近所に住む40代の知人が仕事の場を中国に移すという話をしていました。日本で
 身に付けたとある技術を、その技術が発達していない中国で大きく展開するのだと意気
 揚々でした。彼は日本の勤め先を辞し、なけなしの貯金を取り崩し、足りない部分は借
 金もして資金を用意して中国に乗り込んだのです。

 決して無鉄砲に、まったく見ず知らずの国で何とかなると思ったわけではなく、彼は頻
 繁に中国に出張し、しっかりとした目算を持ち、仕事を通じて知りあった共同経営者と
 して事業を進める意志のある現地中国人の知己を得ての行動でした。

 多くの方々はこの手の話の結末があまりにもありふれた話として想像できるでしょう。
 ずばりその通り。1年もしないうちに彼は大きな借金を抱えたまま日本に戻ってきまし
 た。事業に失敗したわけではありません。事業が軌道に乗りつつあった時、中国人の共
 同経営者が資金を持っていなくなったのです。これもよくある話。おそらくこの共同経
 営者はどこか別の都市で同じ事業を展開して儲けていることでしょう。知人は資金を盗
 まれたのではなく事業を盗まれたのだと思います。

 でもどうして、こんなありふれた事件が起きてしまうのでしょう。人を簡単に信用した
 から、いや簡単には信用しないでしょう。脇が甘かったから、いや注意はしていたでし
 ょう。考えるに、この手の事件が起きるのは中国人の考え方やその背景にあるものへの
 理解を怠ったからではないでしょうか。

 まあ簡単に言うと、知人はその中国人が事業を進めるのには必要なくなったのです。
 既に資金もノウハウも放出し、中国語も片言な日本人なんか中国での商売には不必要で
 す。自分が相手に必要とされているのかどうかは相手の立場に立って考えてみれば分か
 ることです。

 でも、色々話を聞く限り、中国人にはドライな考え方をする方が多みたいですね。十羽
 ひとからげにするのは申し訳ないですが、そもそも職業観が日本人とは異なるようです。

 道義を重んじ、一つの企業や一つの職業で頑張ろうとする日本人がまだまだ大勢いるの
 に対し、中国の都市部では、自分自身の技術や労働力も含めて、自分が投資したものに
 対する見返りがきちんと有るか無いかで、職業・商売をどんどん替えてしまう方が多い
 ようです。きっと、そんな中国人は人を騙すのを何とも思っていないのではなく、彼ら
 は騙しているとも、犯罪だとも思ってはいないのでしょう。
 いつまでも儲けを山分けするのではなく、ノウハウが吸収できれば自分で事業を起こす
 というのは、競争が激しい中国では当たり前の考え方なのかもしれませんね。

 もちろん、日本人にも上昇志向で点々と職業を変える方はいますが、きちんと技術やノ
 ウハウ、経験を積み重ねて成功する例はごく僅かでしょう。

 よく言えば、国や市場の可能性としては中国は底しれません。まあ悪く言うと、明日ど
 うなるかも知れない国です。故に、中国人にとっては自分自身が大事な資産なのでしょ
 う。「職業」を選ぶというより、「投資先」を選ぶという考え方がドライな判断の背景
 にあるのでしょう。

 これも以前の話ですが、私の勤務先の近所に人のいい中国人のおばさんが経営する料理
 店がありました。安くて概ね旨いのですが客は少ない。理由は単純です。本土から来た
 多少料理の出来る者に調理を任せるのですが、慣れてきて日本人向けの味付けを覚えて
 評判が良くなると給料の良い他の店に移ってしまう為、味が安定しないのです。で、何
 度か同じようなことがあった後に店を畳みました。右も左も分からない日本で面倒を看
 てくれた店で頑張るのではなく、スキルが上がれば自分を高く売れる店に移る。中国人
 でなくても普通の考え方かもしれませんが、全く逡巡せずにそれが出来るのが彼らなの
 でしょう。そこには道義などありません。

 もしかしたら、それが変だと思う我々の方が世界的には変なのかもしれませんよ。








Column415   2016/06/20up         


 
■ 蟻のコロニー(20:80の法則続報)

 とても面白い記事を発見しました。
 まずは大前提。何度かご紹介しておりますが、皆さん、ヴィルフレド・パレトの20対
 80の法則(80対20とも2対8とも言う)というのを知っていますか。イタリアの
 経済学者にして、20世紀初頭、ファシズムの基盤ともなった社会学者であったパレト
 は、大雑把に言うと「結果の8割は2割の要因に基づく。」というような学説を唱えま
 した。
 この理屈のもとでは、会議で意見を言うのは2割。集団の中でリーダーシップを発揮す
 るのも2割ということになります。これは私もさんざん教わったQCで言うところのパ
 レート図でも同じで、原因の大どころを解決すれば問題のほとんどは解決されるという
 更に大雑把な解釈をされています。

 ならば、残り8割は駄目なやつらかというと、8割の方々のみで集団を形成するとやは
 りその中の2割の者が優秀な働きをする。逆に優秀な2割の者で集団を形成すると、こ
 れも優秀な働きをするのはその中の2割だけとなってしまうというのです。
 何とも不思議ではありますが、統計的事実のようです。

 さて、ここまでは前置き。何が面白い記事なのかというと、
 この法則が集団生活を営むことで有名な蟻(アリ)にもあてはまるのかということ。過
 去、蟻でもこの法則は当てはまると断言するような記述を何処かで見たような気もしま
 すが、この記事を書いた北大で生物生態を研究する長谷川准教授によると、実はそんな
 学説はどこにもないのだとか。ならば自分が実験してみようかという気になったそうで
 すよ。

 では長谷川先生の実験結果。働き蟻のうち常に2割~3割の個体は働いているが5~7
 割の蟻は労働をしていない時間があり、長期的には2~3割の蟻が全く働いていないと
 いうことが分かったそうです。記事には書いていませんでしたが、巷で言われる2対6
 対2の法則がホボほぼ当てはまっていますね。そう2割は全くダメというやつです。働
 き蟻とは実に名前倒れでしたね。

 まあそれは置いといて、長谷川先生の実験の面白さは、8割の蟻がせっせとは働かない
 理由は、それが巣(種族)の存続を守るためではないかと考察し、シュミレーションし
 たことです。結果、全ての蟻が働くコロニー(巣)では全員が疲れて休む瞬間が訪れ、
 その時、面倒を看てもらえない卵が死滅し、いずれコロニーは滅びるというものです。

 それでは人間界に目を戻しましょう。企業ではノーワークノーペイ。全員が働くのが大
 前提です。

 種々の病気で全くお休みしている方もいますが、1割すらもいないし、彼らは交代で働
 いているわけでも、いざという時に助っ人となってくれるわけでもなく、蟻の話でいう
 なら員数外でしょう。

 一応、働ける方の中では優秀な方2割、普通~ローパフォーマンスの方8割。うーん、
 納得できる数値かもしれません。しかしふと思いましたが、多くの企業の評価制度では
 2割もの方に良い成績は付けられないでしょうね。ある程度優秀な方も普通の部類に括
 られてしまうのが一般的ですからねえ。評価も20対80の法則に従って欲しいですね。

 で、蟻のコロニーのように、企業の人員のうち何割かを敢えて楽させたり、休憩させた
 りしておいて、交代で働かせると、企業は存続できるか。なんて想像したりもできます
 が、今どきの企業は人数に余裕がないので、参考にするのなら、仕事が一段落した方に
 有休休暇を取らせてリフレッシュさせると業務効率が上がるのかと考える位ですかねえ。

 まあ休みの間、誰かが仕事を代わってくれるのならゆっくり休めますが、出社したら仕
 事が山積みなんていうのが現実社会でのオチかもしれまんよ。








Column414   2016/06/16up         


 
■ 未来を見据える

 「我々が売るのは製品ではなく、サービス。」
 「大事なのはお客様目線でものを考えること。」

 物を作っているだけでは売り上げが伸び悩む昨今、多くの企業、特に製造業が上記のよ
 うな社内スローガンを掲げながら業態を大きく変えつつあります。

 想い起こせば、
 ①誰もが欲しがる月収より高いが生活を劇的に改善する便利な工業製品を、長期間の月
  賦で購入する時代
 ②企業が作りたい物を作り、消費者はその中から自分が使えそうな物を選ぶ時代
 ③品質管理が一般化し、工業製品の故障が激減する時代
 ④多くの消費者には不要な高機能商品を企業が高価格で販売するガラパゴス時代
 ⑤消費者が欲しいと思うようなものを企業が作って売る時代
 ⑥物ではなく、物とともにあるサービスを売っていく時代
 ⑦サービスがネットと融合する時代

 というように時代はどんどん変わっており、その流れに乗り遅れた企業はあっという間
 に赤字をかかえ事業縮小や外国資本への身売りをする羽目に至っております。

 でも実は、
 「製造業のサービスは製品のおまけではない」と50年以上前、日本であればまだ①の
 時代に主張していた人物がいます。ハーバード大学のセオドア・レビット教授です。
 彼のもっとも有名な言葉は「お客は4分の1インチのドリルの刃ではなく、4分の1イ
 ンチの穴を欲しがっている。」です。この言葉の意味は解説するまでもないでしょう。
 すばらしい先見性です。決して製造業だけでなく、いや企業だけでもなく、官公庁も含
 めて全ての対価(税金も含め)を得て何かを提供する仕事に携わる人々に理解して欲し
 いセリフです。

 また、特にここ20年くらいは、それまでコンピュータ―メーカーやソフトメーカー、
 ゲームメーカー位しか存在しなかったIT業界がSNSやらクラウドサービスなども提
 供するようになり、⑤物ではなくサービス、しかも⑥ネット上で展開という図式が急速
 に浸透しつつありますが、まあ、そのような商売ですら、あっという間に飽和状態とな
 りつつあり、競争激化しそうな気配が漂っていますよね。

 では、次に出てくる考え方は何でしょうか?

 環境技術? ロボット技術? 色々思いつきはしますけど、すでに世の中に紹介されて
 いるものか、はたまたSF映画やA.アシモフやフィリップ.K.ディックの小説に出て
 くるようなSFチックなものしか思い浮かびません。

 でも今世紀は、SFの世界にのみ存在した技術が何だかもうすぐ手が届きそうな気がし
 ていませんか。もちろんその背景には、SFそのものが我々の想像の範囲からそう遠く
 ない内容に過ぎなかったこともあるのでしょう。

 思うに、「売るのは製品ではなくサービス」と同じく、何かしらの物を欲しがる物質文
 明は、何かしらの経験を欲しがる時代にかわりつつあるのは確かです。でも日本から海
 外に目を向ければ、いまだに世界には争いが絶えず、日本だっていつまでも平和でいら
 れるか先が見えない昨今、物質、経験の先にあるのは、平穏無事(安全、平和)を最優
 先で求める時代なのかなとも思います。
 また、既に日本は少子高齢国家となってしまっておりますが、平和になればなるほどこ
 の傾向は高まるので、きっと日本以外の諸外国でも同じ道をたどるでしょう。すると齢
 をとっても働ける、いえ、若者のように働かされる技術が進展したりとか。想像しちゃ
 います。

 いすれにせよ、商売だって、生き方だって未来を見据えていないと、どんどん置いて行
 かれちゃいます。








Column413   2016/06/14up          


 
■ 5月28日の出来事(真実を見極める)


 しばらく前、沖縄県議選の結果、米軍基地県内移設反対を主張する与党が過半数を占め
 たとの報道は皆さん目にしたでしょう。

 1月の宜野湾市長選挙で、とにかく普天間基地返還だと訴えた現職佐喜眞市長が翁長知
 事支援の基地県内移設反対派の志村候補を破って以来、対案なくただ反対するばかりの
 翁長知事の勢力が弱まったとの観測もありましたが、何といっても米軍属による女性殺
 人を切掛けに米軍基地反対の機運は一気に高まった感があります。

 いつもの通り政治論議自体はこのサイトの主眼ではないので割愛しますが、5月28日、
 子供も含む米軍関係者100人近くが炎天下の国道58号線に並び「沖縄のために祈る」
 という主旨のプラカードを掲げて頭を下げ、今回の卑劣な殺人事件のお詫びの気持ちを
 彼らなりに示していたという話題がネット上をにぎわしました。

 しかしながら、この件を琉球新報以外の新聞が報道することはなかったようで、TVで
 もこの話題に触れた気配はありません。

 実は以前も同じようなことがありました。米軍駐留に感謝する沖縄県民が「守ってくれ
 てありがとう」という主旨のプラカードを基地周辺で掲げている話題がネットでは取り
 上げられているのに、TV・新聞では一切報道されていませんでした。

 また5月23日、嘉手納基地の外でたった1人「Thankyou US Military」というプラカ
 ードを持った日本人が目撃されたということもネットにしか掲載されていませんでした。
 そういえば6月8日起きた中国潜水艦の接続水域航行を受け、米軍駐留に反対する意味
 が解らんと嘆く石垣島漁師の方々の声もネットでしか報道されていません。
 本当に新聞・TVは解せません。

 いずれかの意見が正しく、他方が間違っているということではなく、色々な意見がある
 こと、反対の方は実際どれだけの迷惑を被り、感謝する方々はどんな恩恵を受けている
 のかの両方を報道してくれると、沖縄から遥か遠くに住む身としては、もう少し真剣に
 考えることも出来るのになあという感じです。

 総じて、今のマスコミはフェアな報道ではなく、自民政権への批判に手を貸しているよ
 うな印象を受けます。と思えば一転、時には報道規制されたかのように足並みを揃えて
 政府批判を避けることもあるし。とても不思議です。

 新聞は各紙で論調の違いがありますが、TVはだいたい同じ路線の論調でチャンネルを
 変えても違いがない感じですよね。

 まあ、マスコミって決して公平なものではないのでしょうね。
 今回の件は、報道したからといって、選挙の行方は変わらなかったと思いますが、報道
 しないのは片手落ちです。一つの問題に賛成と、反対があれば、両方の意見を聞く、そ
 れが正しい判断をするための最低限のルールだし、その情報を公衆に伝えるのがマスコ
 ミの役割だと思うのですけどねえ。

 そんな中で、私個人としては、ネットの情報の中には想像や思い込みを客観的事実であ
 るかのように記載するいいかげんなものが多いなと思っていたのですが、ネットそのも
 のにも色々な意見、考え方はあるわけで、今回の新聞・TVで報道されない情報をネッ
 トなら知ることが出来るという事実により、想像、推測、意見を挟まず、客観的に起き
 た事実な事実を掲載しているだけなら、ネットニュースも参照する価値は十分はあるな
 と思い直しました。








Column412   2016/06/10up            


 
■ 人は変えられるか?

 社員をどう指導すれば成長させられるか。部下を抱える方の永遠のテーマですよね。

 若手社員を先輩社員にペアで指導させたり、管理職予備軍には権限移譲して責任感を持た
 せたり、はたまた、社員それぞれに成長目標を持たせてみたりと、きっと皆さんやれるこ
 とは既にやっていますよね。でもその結果、皆さんの抱える人材は十分に成長しています
 でしょうか。

 もちろん、たとえ新入社員だって半年もすれば担当業務を覚え、1年もたてば後輩に仕事
 を教える位のことは出来るようになるでしょう。

 でも、イレギュラーなことが起きた際に的確に判断が出来たり、部門や会社の将来像を自
 ら考え、その実現の原動力となって実行するような方は皆さんの周りにいらっしゃいます
 でしょうか。

 仕事を安心して任せられる社員を育てるのって本当に時間がかかりませんか。私の感覚で
 は10年くらいじゃ決して一人前にはならない。へたすると20年でも無理。そんな感じ
 です。何故でしょう。

 以前読んだ本にヒントがありました。かつて大企業となり、21世紀も生き残こり、更なる
 成長を続けている多くの企業の共通点は、優秀な者を社員として迎え、彼らに自社の舵取
 りを任せた企業である。逆に自社の社員を育てようと努力した企業は、かつてどんなに隆
 盛を極めようが今は消えてなくなっている。と書かれていました。

 要は、人の能力は周りが育てようとして育つものではなく、そもそもの素質が大事だとこ
 の本の著者は言っているのです。人は他人が思った方向には変わらないよ。ということで
 しょうか。

 まあ私が勝手に付け加えると、本人が自ら自分を伸ばそうと思って努力するのなら、結果
 が付いてくるのでしょう。でも、それを人が変わったとは言わないでしょう。

 この本は米国の書物ですが、日本にだって、あてはまる例は多いし、消え去った企業も、
 衰退した企業もぞろぞろあります。

 歴史ある日本の大企業は、役員を社外から招くことはあっても、中堅幹部を社外から招く
 ことはそうそうありません。たとえ同業種の企業から管理職経験者やベテランを転職採用
 しても、プロパーの管理職より下の待遇で受け入れるのが関の山でしょう。多くの企業に
 とって、中途採用の目的は決して新しい風を入れることではなく、人数不足の補てんなの
 です。

 やはり古くからある日本的企業の基本的考え方は「成績優秀な人材を採用し育てていく」
 なのでしょう。ある意味、「人は変われるよ」という思いが日本企業には息づいているの
 です。

 コーチングの基本概念は、人の性格は変えられないが行動を変えることは出来る。ですが、
 コーチングにしてもアメリカ文化、特にカウンセラー文化の産物です。

 そしてもう一つ。コーチは対象者に何かを教えるのではなく、対象者自身に気づかせる手
 伝いをするだけです。つまり答えは対象者本人(自分)の中にあるのです。

 最近ではライザップの衝撃的なTVCMがバージョンを変えつつこれでもかと放映されて
 いますが、食事から運動まで専属のトレーナー(指導員)がみっちり指導をするらしいで
 すね。ライザップの成功者は専門家による適切な指導を受けることで衝撃的な体に生まれ
 変わっているわけですが、決して他力本願というわけではないでしょう。美しい体を手に
 入れるという目的に対して何十万円もの費用を払うという重大な決断をしているわけです
 から。お手軽な気持ちでダイエットに成功したなんて話は耳にしませんよね。

 人は変えられるか。答えは一つではありませんが、自分から変わらなければ、何一つ変わ
 らない。そんな気がします。








Column411   2016/06/05up              


 
■ ルールを守れない原因

 東芝の次は三菱自動車。そして今度はスズキも。
 法律やルールを守れない企業が後を絶ちません。何故でしょう。

 上役に逆らえない企業体質、成果主義など、マスコミは色々書き立てますが、サラリーマ
 ンを長くやっている私にとってはこの原因は明確です。

 企業が何とか実現しようとするプロジェクトを進める上で、法律や条例等が制約となる状
 況に直面した時、上層部が社員に求めるのは「法律に抵触するのでこのプロジェクトはこ
 れ以上進められません。」という否定的な回答では決してありません。目の前の法律の条
 文だけを確認してそんなことを言えば、「お前は馬鹿か、他のやつに頼むよ」と言われ、
 終生役立たずのレッテルを貼られてしまうのが企業です。

 社員が求められているのは、あれこれ考えて法律をクリアする方法を上司に提示し、プロ
 ジェクトを成功に導くことです。当然ながら法律違反が求められているわけではなく、法
 律すれすれのところで法律違反とはならない解釈や法律の抜け穴を必死で探すことになり
 ます。

 法律は難しい言葉で書いてありますから解釈が難しい場合もありますし、基準が一目瞭然
 の数値ではないことも多々あるので、しかも国で作った法律を地方行政で運用するケース
 も多々あります。同じことを、Aというお役所に聞けばOKなのに、同じ法律を施行して
 いる別の都市のBというお役所に行けばNOと言われることだってあります。また前例と
 して明確な法律の解釈があれば、お役所はそれに従います。

 そんな中で、難しい案件であればあるほど、法律に違反せずに実現する抜け道を日々考え
 ることが社員には求められているのです。

 微妙なところで法律に違反しないと思える方法(でも解釈によっては違反しているかもし
 れない方法)を誰かが考えて実行し、長い間、法律への抵触を再確認せずに実行し、何の
 疑問も抱かずに慣行となってしまう。そしてある日、その法律の内容と最新の解釈をよく
 知る外部の人間が見て、何だこれと疑問を抱き、法律違反を指摘する。

 当初は確かに法律違反ではなかった。でも最新の解釈では是正を求められる。そんなこと
 は世の中にはいくらでもあるでしょう。

 一つ引っかかるのは、法律に触れなければ何をしてもよいのかということ。
 法律的にはOK。でも倫理的にはNG。そんなケースもあるかもしれません。

 例えば騒音、明らかにうるさいと思う近所の騒音も基準値以下なら法律違反ではありませ
 ん。選挙時期の候補者の連呼だって駅前ならともかく、住宅街であっても取り締まられは
 しないですよね。

 自宅の郵便受けに投函されるちらしの類も同じ、やめさせるには郵便受けを塞ぐしかあり
 ません。

 でも、企業倫理が重視される今の世の中、ちゃんとした企業は法律に触れなくても世間の
 迷惑になることはしてはいけないのです。「法律をクリアする方法を考えろ」なんてセリ
 フがいまだに横行している企業は生き残れない時代になりつつあるのかもしれませんよ。

 もちろん。「バレなきゃいい。」そんな思いを持つ不届き者は問題外ですよ。








Column410   2016/05/15up              


 
■ プレッシャー

 プレッシャーに強い人なんていない。
 よく聞くセリフです。

 まあ、その通りでしょう。
 でも、若いスポーツ選手など、世の中には、一見大舞台と思われる場面ですら、ストレス
 をほとんど感じていないように見える方もいます。

 「まあ」と言ったのには意味があります。
 ストレスを感じてないように見える方々はきっと、プレッシャーに強いのではなく、プレ
 ッシャーそのものをあまり感じていない、もしくはプレッシャーの基準が違うのでしょう。
 彼らだって一定以上のプレッシャーを受ければ、きっと強いストレスを感じてミスを連発
 したりもするでしょう。

 スポーツ選手の中には五郎丸さんのように、ここ一番の場面でルーチンを行う方がいます
 が、彼の場合、ルーチンとはただのゲン担ぎではなく、プレッシャーの高い「ここ一番の
 場面」を、プレッシャーが低い「日常の場面」もしくは「落ち着いた素の状態」に近づけ
 る工夫、例えば「鍵」のようなものなのではないかと勝手に想像しています。

 また、リハーサルによる慣れはプレッシャーを低減させます。
 このHPでも何度か書きましたが、F1レーサーは規則で限られた時間しか試走が許され
 ない中で、足で歩いてレース前にコースの現状を細かくチェックした上で、どのコーナー
 のどこでギアを何速にする、今日のこのコーナーはこのくらい滑るなんていうような状況
 を頭の中に描きながら徹底的にイメージトレーニングをします。
 本番環境を試せる音楽家のリーハーサルとは大きく違いますが、想定しずらいレース中の
 展開を色々と想定してイメージを重ねることはある意味リハーサルであり、想定外を極力
 減らし、プレッシャーが極限に達する本番のレースにおいて、可能な限り正しい判断を維
 持するための努力なのでしょう。

 身近な話にしましょう。
 私は仕事で人前で話すことが度々あるので、プレゼンやら説明会のような場面でアガルこ
 とはほとんどないのですが、同僚や部下の中にはものすごくアガッて、何を言ってるのか
 わからないような者を度々見かけます。

 慣れていないのだからプレゼンの場面でアガルのは当然で、恥ずかしいことでも何でもな
 いのですが、出席者に伝えるべきポイントがきちんと伝えられていないのはいただけませ
 ん。ある意味説明者、出席者の双方にとって時間の無駄ですらあります。

 そんな彼らの発表場面を冷静に見ていると、共通のミスに気づきます。限られた時間の中
 で出席者に必ず伝えるべきことが絞りこまれていないのです。また、伝える順序、話の流
 れもほとんど検討されていません。
 当然ながら資料にはどうでもいいことが色々書いてあって見にくいし、説明もだらだらと
 長くてポイントが不明確です。時には、もう終わるかと思ったらまだ前置きだったなんて
 こともあります。
 それに、限られた時間内で色々しゃべろうとすると焦るでしょうし、ポイントを忘れない
 ようメモを見ながら読み上げていてはぎこちなくなってしまいますよね。

 大事なのは、聞く側の立場になって、話し方、資料などを考えることです。
 ①会議やプレゼンを想定するなら、まずは、誰に伝えるのかを明確にして、相手のニーズ
  を考えてみる。
 ②次に、本当に伝えたいポイントを絞り込む。
 ③その内容(結論)をインパクトをもって相手に伝える為には、結論を先に言うか後に言
  うかを考え、前置きがある場合は出来るだけ簡潔にして、何故それを伝えたいのかとい
  うことがわかるように伝える。
 ④資料を使う場合は見易さを重視する。
 ⑤想定される質問に対する回答を考えておく。

 そこまで準備しておけば、プレッシャーはかなり軽減されるでしょう。
 付け加えるなら、出席者全員の顔をきちんと見ながら説明する。しっかり声を出すなんて
 ことも基本中の基本です。
 これらのことは、プレゼンでなくったって、上司に重要な報告をする場面だって同じです。
 コミュニケーションが重要だと誰もが言う昨今であってさえ、たどたどしい説明を長々と
 していれば、しびれを切らした上司に「結局何がいいたいんだよ。」と一括されるでしょ
 う。

 私が気になるのは、私が今書いたことくらい、HOW TO本にだって、ネットにだって幾らで
 も書いてあるのに、経験豊富なわけでもないのに、その手の参考文献を紐解こうという意
 志がない方が多いことです。

 面接試験のような場面でも同じく、学生などは一応よく研究しているようですが、それで
 も自分の考えではなく、お手本の真似レベルの話しか出てこないし、社会人では、おいお
 いもう少しきちんと準備しとけよという印象です。
 当たって砕けろとでも思っているのでしょうかね。文字通り砕け散るだけで、付き合う側
 は話を理解しようと努力するだけ時間の無駄です。

 少々プレッシャーの話から脱線気味となりましたが、準備やリハーサル、練習によってプ
 レッシャーのハードルを下げたとしても、本番では想定外のことが色々起きます。私自身
 も想定外の質問に声を失うことが入社30年を過ぎた今でもあります。その度に後悔した
 って時間は巻き戻せませんので、またひとつ経験を積んだと思うしかないのです。

 十分な準備しないで開き直るのではありません。しっかり準備した上で、それでも駄目な
 ら次回はその失敗を糧として作戦を考えるのです。

 それしかないでしょ。








Column409   2016/05/01up              


 
■ 日本人の生産性

 毎年この時期に新入社員のタイプなどを発表する日本生産性本部が日本人の生産性の低さ
 をレポートした為、各所でネタとなっていますが、私も一言。

 日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)に加盟する34か国中21位だったとか。
 日本の生産性はギリシャよりも低いと嘆く方も多いようですが、大事なのは何を指標とす
 るかだと思っちゃいました。

 今回の指標は大雑把にはGDP(国民総生産)÷就業者数ということですが、失業率の低
 い国と失業率の高い国を同じ土俵で比べるのはおかしいですね。

 だって、どう考えても日本より失業率が高く、年金受給者もやたら多いギリシャは計算上
 の分母である就業者数が低めになり、故に本来の数字より生産性が高めになってしまった
 のではないでしょうか。
 日本は欧米諸国と比べても失業率は低く、60歳で定年した後も働いている方は多いです
 からねえ。

 ちなみに日本の失業率は昨年で3%台なのに対しギリシャは26%台、ここ5年で一番低
 い時の比較で日本は5%程度に対してイタリア12%、フランス10%、イギリス8%と
 いうのが実態です。
 きっと、その国の産業の主体が不況の影響を受けやすいかどうかによって大きく左右され
 ますよね。

 少なくとも「日本人」の生産性ではなく、「日本」の生産性を限定的な指標の中で示して
 いるだけだと思います。でしょ。

 まあここは、細かな数字を上げつらって比較する経済記事のページではないし、実際の数
 字で比べると違う結果になるかもしれませんので感覚的なお話としてご理解ください。

 で、本題は、比較ではなく日本企業の生産性の低さの原因についてです。

 企業内でも生産性の高い部門と生産性の低い部門がありますが、例えば製造業の工場部門
 と管理部門を比べれば生産性が高いのは直接的に付加価値を生みだす製造部門でしょう。
 日本的経営と言いましたが、本社や管理部門の人数が多い企業、社員を時間をかけて育て
 る企業、高齢者を抱える企業の生産性は低いでしょうね。そんな企業の生産性を高めるに
 は、本社機能などを減らすこと、即戦力を採用することなどが必要ですが、本社機能を減
 らせばポストが減りますし、今の日本で生産性の低い人員を切るということは認められま
 せん。

 逆に今の世の中は1人当たりの労働時間・残業時間を減らして、高齢者や女性の就労を促
 しており、同じ量の仕事を大勢でやろうという動きであるために、外見的な数字からする
 今後さらに生産性が落ちてくるように思います。

 生産性において日本企業とよく比較されるのは発展途上国ではなく欧米の企業ですが、休
 みがいっぱいあって1人当たりの労働時間は短く生産性が高いとされますがほんとうなの
 でしょうか。日本以外の先進国には多くの移民がいますが、彼らの失業率は高く、就業し
 ても低賃金です。

 いつもそうなのですが、我々が報道から目にしているのは物事の一面にすぎないのではな
 いかと思ってしまいます。とはいえ、欧米で買い物や飲食をすると日本ほど店員をみかけ
 ないし、サービスに手間をかけているようには思えないのも事実です。
 もしかして日本企業はサービスに時間をかけすぎて生産効率を下げてしまっているのでし
 ょうか。

 目を日本に戻して、日本企業の生産性の低さの原因を考えてみると。

 ・いまだに手当目当ての残業が横行している。
 ・会社側の人員配置も残業が前提になっている。
 ・生産性の低い社員を解雇できない。
 ・雇用の流動性が低い。
 ・社員の教育に時間をかける。
 この5つはつながっています。
 社員は即戦力とはならず、一人前になるのに時間がかかる上、一旦雇えば能力の低い社員
 でも解雇できないから、油が乗ったバリバリの社員は、もっともっと働かないと企業がか
 かえる仕事をこなしきれません。

 原因は他にもあります。

 ・社内のルールや手続きにこだわる企業が多い。
 ・意思決定は即決ではなく何度も何度も会議を経る。(経営層は守りに入っている。)
 ・本業以外の業務が多い(上記決裁のための資料作り、各種WG、業界団体の活動など)
 ・IT化を進めてはいるが手作業に頼る部分が多い。
 ・会社は大人数を抱えているので、会社の利益が頑張った社員の処遇に中々直結しない。
 ・パートタイムの労働者が単純労働でしか活用できない。派遣社員も3年以上は雇えない。
 ・いまだにモチベーションを上げるのではなく、怒鳴って部下を働かせようとする上司が
  いる。
 ・ゴルフや飲み会、行事など生産性に直結しないイベントがある。(いい面もあるけど。)

 うーん、適当に上げただけでもいっぱいありますね。
 皆さんの職場でも同じようなことが幾つもあるでしょ。
 かつて日本経済を急成長させた時代にあった終身雇用制の名残のような気もしますね。

 もちろん、急成長している企業では事情は全く異なるのでしょう。
 でも、某自動車会社のように歴史があって硬直化した企業では、会社が掲げた目標を達成
 するためにルールそのものを曲げてしまうことだってあり得るのです。

 そう、日本の社会そもののが硬直化しているのでしょうね。
 今は歴史ある大企業だって消えてなくなる時代です。時間はかかるでしょうけど、一つ一
 つ変えていかないと日本の生産性が見かけだけでなく本当に落ち込んでしまい、日本その
 ものが消えてなくなってしまう日が来るかもしれませんね。








Column408   2016/04/16up                 


 
■ 自分が正しいと思いすぎる方々

 自信満々の方を見かけると、私はいつも不思議な気持ちになります。

 会議で自信満々に自分の意見を押し通そうとする方。自分の考えに沿ったYESマン1
 人か2人の意見を鵜呑みにして皆の意見と勘違いしている方。過去の成功事例と同じや
 り方にこだわる方。経費が潤沢に使えた時代のやり方にこだわる方。逆に経費が全く使
 えなかった時代のやり方にこだわる方。

 中には一緒に訪問先に向かう際に、明らかに違った方向を指して「こっちだ」と譲らな
 い方もいます。案内図がいいかげんで目印となるビルや店舗を発見できないような時、
 太陽があっちだから訪問先はこっちですよなんて言ったって聞く耳を持ちません。

 そんな方々の発言を聞くたび、不必要に強い意志を見るたびに、「ずれてる。」と私は
 思ってしまいます。

 彼らに共通しているのは、人の意見をきちんと聞くこと、色々な情報を咀嚼して総合的
 に判断すること、その2点が全く欠落していることです。

 もちろん中には、プラスマイナスを判断して方針として決めたことだから細部の問題に
 は我慢して協力して欲しい。と思っている方もいるでしょう。
 でもたとえそうであっても、そんな説明をしてくれる方は皆無です。きっと、自分が大
 きな声で押し通せば、周囲がついてくるという経験則があるのでしょう。

 でも考えてみてください。
 優秀な部下に色々な情報を収集・分析させている一国の指導者や企業の経営TOPです
 ら判断を間違うことは多々あるのです。その時その時に複雑な因子を考慮して最適な結
 果を求めて判断した結果が、必ずしも理想の結果につながるとは限らないわけです。

 言い訳は幾らでもできます。
 同じような出来事は過去になかった。故に十分に先を読めなかった。時代の動きが早す
 ぎた。判断した時点では最良の判断だったのだから仕方ない。

 ・・・でも、失われたものは2度と戻らないかもしれません。

 とあるネット記事で見つけた話ですが、かなり酔っている方は「俺はそれほど酔ってな
 い。」と言い、あまり飲んでない方は「少し酔ったかな。」と自分を冷静に見ていると
 か。うーん、そうかな。ま、冷静さを失えば正しい判断は出来ない。という点には同感
 です。

 現実を冷静に見られない方はもとより、周辺情報を確実に収集して、自分自身で適切な
 判断を下すことをしない方はいつかは大きな間違いをします。今まで何も起きていない
 のは運が良かっただけ。そう思ったほうが良いでしょう。

 もし、俺は失敗したことないよ。なんて言う方がいたら相当危険です。小さな失敗を積
 み重ねた方なら、ある程度リスクを考えた判断が出来るでしょうけど、失敗したことが
 ない方に教訓はありませんので。

 自分の判断はいつも正しいなんて言うのはある意味錯覚にすぎません。
 私はそう思います。








Column407   2016/03/21up                 


 
■ 報告にも見える化が必要

 本日はまんまコミュニケーションのお話。
 私ごとですが、最近、自分のチームの方々から報告を受けて、話がちんぷんかんぷんで理
 解できないことが多いのです。私自身が全く初めての部署に異動して仕事が十分に分かっ
 ていないことも原因にありますが、数か月がたってもこの状況が改善されません。

 そこでじっくり考えてみると2つのことが原因にあることに気づきました。

 ①報告がビジュアル化されていない、もしくは数字は示されているが数字の意味するとこ
  ろが複雑で分かりにくい。結果、私が質問すると言葉で説明しようとするので更に判り
  難い。
 ②報告に関する業務の背景が端折られており、判断材料がない。この2つです。

 絞り込めば①も②も共通のコンテキスト(文脈=背景情報)がお互いの間にないというこ
 とでしょう。

 私が勉強すればいい。一言でいえばそういうことになるのですが、勉強するネタすらない
 ので、業務の基本やフローを説明する資料はないかと聞いたり、根ほり葉ほり質問しなが
 ら解明に努めているのですが、結局のところ皆さん、言葉で説明しようとするので、遅々
 として理解が進みません。
 数人から聞き取った内容を図表やフローとしてまとめ、彼らに確認しておりますが、そう
 いう意味ではない、そういう流れではないと言われて何度も修正しています。
 しびれを切らして、おいおいお前らが資料を作って俺に説明するべきだろと求めても、待
 てど暮らせど分かり易い資料は出来てはきません。

 そもそも人が誰かに意志を伝えるのに言葉そのもので伝わる部分は3割だと言われていま
 す。それ以外の部分はイントネーションや身振り手振りで伝わるのです。コーチングでは
 初歩中の初歩の話であり、「目は口ほどにものを言う」なんて言えば意味合いは分かって
 いただけるでしょう。

 まして耳から得た情報だけでは、よほどスムーズな説明であるか、インパクトがあるかで
 もしないと記憶には残りにくいのです。

 では、何故私のチームの方々は業務をビジュアル化して説明することが出来ないのか?

 結論からいうと、人に業務を説明するような資料作りには慣れていない。その一言につき
 ますが、もう少し考えてみました。

 飲み会の席でのたわいない会話や議論では、別に資料がなくたって会話が弾みます。これ
 は参加者の間に、会話のネタに関するコンテキスト(共通の認識、背景情報)が存在する
 からです。

 しかし、色々な部署が集う会議の場や客先を交えたプレゼンの場で口頭だけで議論はしな
 いですよね。共有できるコンテキストが少ない場合、議論がぶれない為、理解を補う為に
 最低限の資料が必要なのです。そして、その資料にあれもこれもと盛り込むとかえってど
 こを読めばいいのかわからなくなります。よって理解してもらいたい要点に絞ってペーパ
 ーや映像で資料を作ることで理解を促したほうが理解は容易になります。

 仮に会議の場面でそれまで資料を用いて順番に説明していて、次の発表者が口頭のみで説
 明しようとすると出席者がどこを見ていいのか困っていたりします。発言者の顔を見てい
 ればいいのですが、なぜか皆さん、何も映っていないか、または前の発表者の資料が残る
 スクリーンを見ていたりします。Ipadを使用している会議だと目のやり場もなく困ったり
 メールのチェックを始める方も出てくる始末です。

 既に十分な情報を得ている場合を除き、人は理解を促進するため、共通の土俵で意見交換
 する為に、ビジュアルな資料、見える化された情報を求めているのです。

 しかしながら、個別に現在の私のチームのメンバーにヒアリングしてみると、彼らは皆、
 日々ルーチン的な作業をこなす業務に携わってきており、会議や発表の場で何かを説明を
 したり経験がほとんどないことがわかりました。

 同じ社内でも私が以前いた部署では、新入社員の時から学んだことを定期的に発表させた
 り、中堅社員になってからも業務の改善や工夫の内容や1年の反省や豊富を部員の前で発
 表させたり、トラブルがあれば報告書を作成させるのは当たり前のことでした。
 私も当時の自分のチームには全員に業務マニュアルを作成させ、業務内容に変化があった
 り、担当者が代わる毎にメンテさせておりました、つまり多くのことが見える化されてい
 たのです。

 私自身がそれを目の当たりにしてきたために、見える化が全くされず、ビジュアルな情報
 が不足する説明では頭に入ってこないのだと思います。
 私自身の頭の思考が、ビジュアルな情報をそのまま頭に焼き付け、要点だけ理解するとい
 うスタイルとなっており、大量の情報をしかも言葉で頭にインプットし、頭の中で何らか
 の形に再構築するというスタイルには慣れていないのです。まるでロゴブロックを頭の中
 に大量に保管し、必要な時に必要なロゴブロックを取り出して組み立て直す。
 そんな印象を受けています。

 多くの方が私と同じような思考で仕事をこなしているのだと思うのですが。でないと定期
 的に異動なんて出来ません。

 地道ではありますが、見える化を進めていくしかしかないですかねえ。








Column406   2016/01/23up                 


 
■ マイナス感情は吹っ切れるか?

 とある記事を読んでいると、失敗を引きずらない方法が書いてありました。
 結論から言っちゃいますと方法は2つ書かれていました。。

 一つ目は、失敗した時の後ろ向きの感情を切り替える自分なりのスイッチを持つこと。
 放っておけばいつまでも続く、怒りの感情や後悔の念などの後ろ向きの感情を早く終わら
 せ、スパッと断ち切るための自分なりの切っ掛けを持つべきとのことです。それも旅にで
 も出て環境を変えて吹っ切れというのではなく、記事の方自身は輪ゴムでパチンと痛い思
 いをして断ち切るとのこと。

 ・・・おいおい、それができれば苦労しないよ。気持ちの切り替えが早いことの自慢かよ。
    てな感じです。ねえ。

 二つ目は、起きたことを素直に受け入れる素直さを持つこと。
 良いことも、悪いことも、うぬぼれず、卑屈にならず、素直に受入れれば感謝の気持ちが
 生まれると。
 ・・・だから無理だって。開いた口がふさがらないような気になってしまいました。実際
    には口はふさがったままですが。

 人は中々性格を変えることができません。戦争に行って死に直面するとか、刑務所にもの
 すごく長く入って世間と隔絶するとかでもしないと無理でしょう。いやそれでもほとんど
 の方は無理。といってもどちらも経験したことがないので想像に過ぎませんが。
 まあ最低限、出家でもして何十年もつらい修行をしないと無理でしょう。出家も私は未経
 験ですけど。

 だからこそコーチングがあるのです。
 性格は変えることはできないけれど、コミュニケーションや考え方のスキルを学んで意識
 して行動を変えることは可能である。それがコーチングの考え方です。

 実のところ私自身は、失敗や後悔の念を引きずる性格なのです。それも、あの時こうすれ
 ば良かったとの思いを何十年経っても思い出します。だって印象の強かったこと、ショッ
 クだったことって記憶に残りやすいですよね。それは一般人にとって普通のことだと思っ
 ていますけどね。逆に、すぐに気持ちを切り替えることができるようでは普通じゃないよ
 うな気がします。

 もちろん普通人である私のそんな性格も99.9%変わることがないので、メンタルヘル
 スのページでも何度かご紹介したように、事件(?)が起きた時にまずは、「この失敗で
 命まで奪われるわけじゃない。」と考えることにしています。それにより失敗や事件・事
 故という出来事が発生したことによる自分への将来への影響を過大評価しないように予防
 線を張るわけです。
 そしてもう一つ、まあ失地回復に多少は苦労するけど、ある程度は回復可能に違いないと
 根拠のない展望をいだくことにしています。

 それでも、あのときこうすれば良かったのにという後悔の念は引きずります。それは仕方
 がないのですが、私はそこであきらめず、マイナス感情を引きづりおろすために、自分に
 とって良かった最近の出来事を幾つか思い出して、頭の中でプラスの出来事とマイナスの
 出来事を天秤にかけます。まあ、長い眼で見ればプラスの出来事が勝ったかなとか、損よ
 り得が多かったかなとか。そんな感情になれればとりあえずはマイナス感情をふっきれま
 す。私は競馬はしませんが、負けても負けても、大勝ちの夢を見ながら賭け続けることが
 出来る方は或る意味素晴らしいですね。

 前述の通り、私には記憶に残ったマイナスの出来事は何度となくよみがえりますが、当然
 ながら古い出来事から順番に、そんなこともあったなあという感情に変っていきます。
 失敗や事件の思い出は消えなくとも、その時の衝撃は時間と共に薄れていくのです。

 私には、瞬時に感情を切り替えるスイッチもないし、すべてを受け入れるほど素直にもな
 れませんが、まあまあ生きていけてます。きっとマイナス感情とは吹っ切るものではなく、
 妥協するものなのでしょう。
 例えば新車に傷がついたらショックですが、だんだん傷が増えれば多少の傷はたいして気
 にならなくなります。もちろん程度によりますけどね。
 人は過去ではなく現在に、そして未来に向かって生きているのですから。








Column405   2016/01/15up                 


 
■ ポジティブにいこう

 とあるネット記事を読んでいると、仕事のできる方は、会話の中でネガティブな言葉をポ
 ジティブに言い換える能力に長けている。というような話がありました。
 クラブのママにどんな客が来るかを取材した記事での話です。

 そんな方は「忙しいんだね」とは言わず「人から必要とされているんだね」とか、「落ち
 着きがないね」の換わりに「いつも元気だね」とか、会話上手の方は、自分が観察したこ
 とをうまく表現を変えて相手に伝えてしまうそうです。

 この記事を読んで思い出したことが2つあります。

 一つ目は、10年以上前、ビジネスコーチでもある秋田稲美さんが「上司になったら覚え
 る魔法の言葉」という本の中で、やり手のセールスウーマンだった自分が部下を抱えたと
 たんうまくいかなくなり、ポジティブな言葉を使うことでそれを乗り越えたと語っていた
 ことを。
 この本の中で一番印象に残っているポジティブな言葉は確か「大丈夫!」。仕事がうまく
 いくかどうか心配している部下にかける一言です。

 もし、心配している部下と一緒になって「大丈夫かなあ?」などと心配していたら、きっ
 とその仕事はうまくいかないでしょう。「大丈夫!」の一言で部下は勇気付けられて前に
 進める。というようなことです。

 楽観的というのとは異なり、厳しい状況を十分理解した上で、俺が(私が)ついているか
 ら大丈夫と言える上司になりたいものだと当時も部下を抱えていた私は思ったものです。
 でも、こういうのって、意識して言うのって難しいのですよね。心からそう思っていない
 と中々自然には言葉が出てこない。

 私的には「失敗しても命を取られるわけじゃないから、思い切ってやってみ。」というフ
 レーズを連発して、チームをできるだけポジティブな行動に導くように努力しています。
 それでもって、うまくいけば、「できるじゃないか!」と褒め、ダメなら「うまくいかな
 い原因は分析しておいて、仕事の借りは仕事で返せばいいよ。」てな感じです。

 そして2つ目に思い出したのは、以前、某県主催の商工会の研修でアスレチックトレーナ
 ー岩﨑由純さんから教わったペップトーク。単純に言うと、野球で「空振りするな」とい
 うネガティブな言葉を「打っていけ」というポジティブな言葉に置き換える。

 人はネガティブな言葉をかけられると、何故かその言葉の通りの行動をしてしまう。
 いい例がトイレ。汚さないでくださいと言われれば、何故か汚してしまうけど、綺麗に使
 ってくれてありがとうと言われれば綺麗に使う。
 そう、人は言葉に行動を左右されてしまうのです。だからこそ、できるだけポジティブな
 言葉を使おうというものでした。

 その時実は、ネガティブ、ポジティブという以前に、人は単純に、相手の言葉のわかりや
 すい部分に反応してしまうのではないかと私は思いました。「廊下を走るな」ではなく、
 「廊下はゆっくり歩こう」。日本語は英語と違って、否定の部分が冒頭ではなく語尾にく
 るので、「廊下を走るな!」の「廊下を走る」に反応してしまうのではないかと。
 きっと「廊下を走ったら死ぬぞ!」と否定の部分を「死ぬ」まで強調して言われれば、走
 らないのではないでしょうかねえ?などと考えたものです。

 でも、冒頭のクラブのママの話に戻ると、きっと、表現がポジティブかどうかではなく、
 自分自身がポジティブな存在、重要な存在と相手から認められているように思える言葉(
 存在承認)を周囲の方々にかけてあげられることが大事なのでしょうね。またそんな存在
 承認につながるポジティブな言葉をタイムリーにかけれる方は、先天的にポジティブなの
 でしょう。

 皆さんもポジティブな決め台詞(?)を幾つか用意してみてはいかがでしょう。
 準備しておかないと、咄嗟には出てきませんから。








Column404   2016/01/11up                 


 
■ 雇用される価値

 日本人は欧米先進国に比べると仕事へのモチベーションが低い。
 勤勉といわれる日本人をそう評する米国の経営コンサルタントの方がいます。
 よく考えると私も欧米人と仕事をした経験がないので、日本人が勤勉で、機械だけでなく
 サービスを含む品質の追及に余念がないというイメージがある為、当然、他国の方々より
 優秀だろうと思い込みにつながっていました。

 しかし、振り返ってみれば、終身雇用の時代は終わったと言いながらも、大企業はまだま
 だ多くの従業員を抱え、仕事ができない方であっても解雇などできずに雇い続けています。
 また、転職してステップアップするのが前提の成長企業でもない限りは、自ら自腹で系統
 的に知識・技術を身につけて自分自身の価値を高めようという意欲のある社員を数多くは
 見かけませんよね。少なくともわたしの周囲では皆無です。あきれているわけではなく、
 過去、終身雇用を続けてきた企業においては、たとえ、雇用状況が変わりつつあると言っ
 てもまだまだそれが普通でしょう。

 皆さん自身も系統的な教育というのは企業が業務上の専門教育や入社○○年次教育として
 考えるものであって、社員が自分自身の価値を向上するために自ら考えるものではないと
 思ってはいませんか?

 少なくとも私の知る多くの方は、会社のお仕着せの教育と業務上の実務経験によって成長
 した方や、もしくはこれから成長しようとする方、そして一部の方はお仕着せの教育にす
 ら付いてはいけません。
 当然ながら企業の中で、今後どう育って、(昇進という意味でなく)どのような役割を担
 っていこうと真剣に考えている方はほとんど見かけません。優秀と言われる周囲の方々も、
 単に経験が長い方、頭の回転が速く決断が早い方、声が大きい方、物おじしない方という
 ような方々であり、まあそれだけでも十分とも言えますが、自ら目標を定めて系統的に業
 務や知識を学習しながら成長した方という方はほぼ見かけません。

 しかし、ここで言う自分自身の価値とは、「雇用される価値」と言い換えることも可能で
 あり、好景気に向いつつある現状が崩壊しても、リストラから逃れて生き残る価値でもあ
 るのです。

 欧米と一括りにするのは問題があるかもしれませんが、来月、来週の雇用が保証されない
 ような企業に勤めていれば、もっともっと自分の「雇用される価値」しかも社外に通じる
 知識・技術・経験を高めようと思うのでしょうね。

 前述のコンサルタントの方は、成長する企業は、社員が自分の能力を高めるために留まり
 たいと思う企業だと述べています。また日本企業の問題点の一つとして頻繁な人事異動が
 あることを上げています。時には興味のない仕事、自らの成長にはつながらない仕事に配
 属されることもあり、こばむことはできないと。
 また日本人の愛社精神は自らの付加価値により企業に貢献することではなく、単に忠誠心
 があるだけだと述べています。うーん。そうかも知れません。

 もちろん、全ての日本企業、欧米企業がそれぞれ同じ制度や風土を持っているわけではあ
 りませんが、傾向的には当てはまることばかりのような気もします。

 自らが「雇用される価値」。もっと真剣に考えないと生き残れない時代はすぐそこまで来
 ているのかもしれませんよ。








Column403   2016/01/03up                 


 
■ ネームコーリングの効用

 人は自分の行動を褒められるとモチベーションが向上し前向きになる。誰でも知っている
 新人や後輩を指導する際の大原則です。
 
 でも、褒める理由を探すとなると難しいので、ちょっとした進捗を見つけて本人にフィー
 ドバックしてあげれば、褒められたのと同じく、モチベーションの向上につながります。
 これはコーチングで言うところの承認行為であり、本人に対し、あなたが努力しているの
 に私は気づいていますよという表現でもあり、また本人に自分自身の進捗や成長に気付か
 せてあげる行為でもあります。
 
 承認行為がモチベーション向上に効果を上げる理由は、人は、人と人との関係の中で自分
 の存在を認められることを欲しているからだと心理学では考えられているようです。

 きっと、行動の承認はその人の存在そのものの承認でもあるからなのでしょう。

 そして、てっとり早く相手の存在を承認する方法があります。
 ・・・・・相手の名字や名前をきちんと呼んであげることです。

 「ねえ、そこの君。」ではなく、「ねえ、斎藤さん。」とか、「おはよう田中さん。」と
 いうように、都度、都度、きちんと相手の名前を呼ぶようにするのです。

 自分の名前を呼ばれる。イコール自分の存在を相手にきちんと認識してもらえていること
 であり、もっとも身近な存在承認行為なのです。
 このように名前をきちんと呼ぶことで相手に存在承認を与えることを心理学ではをネーム
 コーリングというそうです。

 ちなみに工場や建設現場などでも、「君、それ(その行動)は危ないよ。」というより、
 「佐藤さん、○○したほうが安全だよ。」と名前を呼んで、かつ、すべき行動を具体的に
 示したほうが、災害発生を防止する効果があるそうです。
 名前を呼ぶこと、プラス、行動を具体的に指示することで相手の当事者意識を喚起するこ
 とが出来るのです。

 是非、あなたの周囲の方々に声をかける時、きちんと名前を呼んでみてください。
 あなたのチームの一体感も徐々に向上してくるかもしれませんよ。
 
 そしてもう一つ。調べ物をしていたらネームレター効果というのが目にとまりました。
 とある心理学のテストにおいて、ひらがな50音の中で好意的に感じるものは何かという
 調査をしたとこころ、人は自分の名前にある文字に行為を持つという傾向が認められたそ
 うです。そんなこと思ったことないなあ。と私は思ったのですが、事実だそうです。

 物や商品に対しても同様な傾向があるそうですが、会話の中で「山田さんはどう思います
 か?」というように自分の名前を呼ばれることでも、好意的に感じる傾向があるそうです。
 ネームレター効果はネームコーリングの効用をも裏付けるものなのかも知れませんね。

 ということは自分と名前が同じ方には行為をもつということなのでしょうかね?
 (この真偽は不明。)
 まあ、試しに、あなたが好意を持つものは何か、もしくは誰か。と考えてみてください。








Column402   2015/11/28up                 


 
■ イメージの罠

 いやあびっくりしました。(これ私の口癖)
 とある小冊子を見ていると、ある有名作家のエッセイが載っていました。これが黒と赤の
 インクを使用しカラーっぽく印刷してあるのですが、載っていた食べ歩きのタン麺の写真
 が何とも赤くて毒々しい。
 実はそれより前の白黒ページに病気のことが書いてあったり牛肉の部位のイラストがあっ
 たりしたので、パラパラめくって発見したタン麺の写真を一瞬、手術の写真かと見間違っ
 た次第です。

 もちろん、編集者のセンスの問題なのですが。これ、同じことを表現、説明しようとして
 も、前後の脈絡次第では相手の受け止め方は大きく異なるという教訓でもあるような気が
 しました。

 講義や会議でせっかくためになる話しをしても、単なる雑談で終わったり、何の話だった
 か覚えてもらえていないとか、時には善意の話が悪意に伝わるみたいに真逆に伝わって誤
 解をまねいたりと、そんな経験ないですか?

 話の流れや、時には話し方そのもので、聞き手が受ける印象は大きく変ってくるのです。
 また相手の興味のある話題でなければ相手の記憶には残らなかったりもします。ただただ
 漫然と話しているようでは効果的なコミュニケーションは出来ません。

 例えば、
 「大変な仕事だったけど、良い経験になった。」と
 「良い経験になったけど、大変だった。」とを比べてみてください。

 このような表現。似てはいますが、前者は、良い経験(プラス思考)、後者は大変な仕事
 (マイナス思考)が強調されている気がしませんか?

 「ダメだったけど頑張った。」
 「頑張ったけどダメだった。」これも同じでしょう。

 同じようなことを伝えているつもりでも、表現を工夫することで、相手に伝わるニュアン
 スは大きく違ってしまうのです。

 これは商品販売のキャッチコピーでも同じ。

 例えば賞味期限が短い食品を高く売ろうとする方は、「このプリンはとても美味しいので
 す。でもその分賞味期限が短めで、お値段も少し高めです。」などとプレミアム感で食品
 の欠点をごまかしたりします。
 このテクニックは両面表示といいます。でも何故か、「美味しい上に賞味期限が長く、リ
 ーズナブルなプリンはないのか?」と聞く方はいません。
 「美味しいものは高く、多少の制約や希少性がある。」というイメージが既に我々の頭に
 刷り込まれている上に、この売り手がそれを思い起こさせる売り口上をしているからです。

 おっとそうだ、
 最近M乳業のアイスクリームのCMで出演している木村文乃さんが「高くて美味しいのは
 当たり前、美味しさだけプレミアムにするのがメーカーの仕事でしょ。」言ってましたね。
 このCMだけで、「美味しくてもお手頃価格。」というイメージが皆さんに刷り込まれる
 かどうかはわかりませんが、ビールやラーメンのCMでも(値段は変らず)美味しくなり
 ましたというのが最近多いですね。
 でも、試してみると美味しくなっているようには思えないのは私だけでしょうか?
 CMが人に与えるイメージは大きいですから、期待した後の落差は絶大なんですけどねえ。

 本題に戻ります。私は常々「コミュニケーションは伝わったことが全て」と思っています。
 だからこそ、自分の意思を確実に伝える手段としての効果的な表現やコミュニケーション
 術を身につける必要があると思っているのです。損をしないためにも皆さんも自分の話し
 方、表現方法をしっかり考えてみませんか?








Column401   2015/11/8up                 


 
■ そこそこの実力

 行動力がない、自分で決められない、学生時代は仲間内でわいわいやっていただけ。

 今年の就職戦線を企業側から振り返ると、そんな若者が増えているそうです。中々、企業
 の将来が見えない中、自分で道を切り開ける若者を求める企業側の思惑にどストライクな
 学生は、昨今中々いないのでしょうね。私も周りの若手社員を見回すと頷けるような気が
 します。

 でもそれって20代前半の方々だけでなく、30代、40代の方々だって同じようにも思
 えるのですけどね。仕事はもちろん遊びでも自分で考えてバリバリ行動できる者が普通に
 企業に就職する時代はとっくに過去の話なのかもしれません。

 だってTV番組を見ていたって、ネット記事を見ていたって、夢を追いかける若者が結構
 取り上げられていませんか?
 もちろん、そんな夢追人の中で夢を実現させることが出来る方ってごくわずかでしょうし、
 きっと夢が実現してもその活動を維持・向上させるのに苦労している方も多いでしょう。

 だから、特に強い希望も夢も想いもなく、安定していると思われる企業の門戸を何となく
 叩き、何となく受かった企業に入社する若者が多いのでしょう。企業の将来に役に立つか
 どうかとかというより、口の立つ学生が幾つもの内定をもらい、その中でより自分の肌に
 合いそうで安定した企業に入る。そんな感じでしょうか。
 (もちろん、自分の夢をしっかり追いかけて、どんな仕事に就くかをきちんと考えている
 方もいるのも事実ですが。)

 そして逆に企業側だって、バリバリの行動力を持つ新入社員が入ってきたとして、まだ若
 い彼らの意見を採用して改革したりすることが出来るのでしょうか?

 企業というのは、どんな合理的で素晴らしいアイデアであっても、それを発言した方の立
 場・地位によって可否判断が大きく左右されるものです。発想はいいけど、そんな急には
 変えられないよ。とか、君はまだ経験が浅いからなあ。そう言われてアイデアがぽしゃる
 ことが何度か続けば、優秀であればあるほど自分の仕事の内容や勤務先そのものに違和感
 を抱き、転職を考える者もいるでしょう。
 だからこそ、多くの企業は、バリバリではないかもしれないけど、そこそこの若者で我慢
 し、入社後の育成に力を入れているのです。
 
 まっ、社員の平均年令が20代なんていうベンチャー企業や急成長企業でもない限り、多
 くの企業がこのそこそこの実力がある社員たちによって支えられてきたのは事実なわけで、
 何とも先が見えない10年後、20年後の企業の行く末を新入社員の将来性に頼るのは何
 とも高望みな気がします。

 やはり、最終的に企業の舵取りをするのはTOP経営層の仕事ですよね。







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