コーチングスキルの解説


 このページではコーチングを実践しようとする方々に、コーチングの初歩的スキルを順次紹介して
 いきます。また、コーチングに限らず、リーダーシップや部下指導にまつわる効果的な手法、コミ
 ュニケーションを活発にするための手法もご紹介します。



                                                  

Mail01  積極的に聞く、そして効果的な質問をする

  「相手の自主的な行動を引出す」というコーチングの目的を実行するためのあたりまえすぎて、実はできて
  いないことも多いスキルです。



 
■ STEP1 「積極的に聞く」

  コーチングの基本は相手の話を「聞く」ことにあります。それもただ受身で聞くだけでなく「積極的に聞く」こと
  をします。 聞くと言うより 聴く = 聞いて理解する と考えるとわかりやすいです。

 < 沈黙、そして最後まで聴く >
  積極的に聞くためには、「沈黙」も大事です。自分のほうが上位職や先輩であったり、圧倒的に知識がある
  なら、相手が話している最中でも口をはさみたくなるものです。でも我慢します。
  「そんなことないよ」などといきなり相手の考えを否定したら、そこでコミュニケーションは終わります。

  相手が考えをまとめている間は特に「沈黙」が重要です。相手が、早く応えようとあせっているようなら、
  ひとこと言ってあげましょう。 「ゆっくり考えていいよ。」
  そして、相手の考えを吐き出させます。整理されてなく、矛盾やちぐはぐな部分があったとしても、最後まで
  話しをさせます。口に出して初めて自分の考えや強みに気づくことは多いものです。

 < うなずく >
  聞いている証拠、理解できている証拠に時折「うん」とうなずきましょう。腕組みしてふんぞり返るのはご法
  度です。人とコミュニケーションを行う態度ではありません。

 < 相手の言葉を繰り返す >
  うなずく代わりに「相手と同じ言葉を繰り返す」ことも、相手に安心感を与え、会話を促進します。
  自分の言葉が繰り返されることで、「自分の意図した通りに伝わっている」という安心感が得られるのです。
   「私は、○○と思っています。」  「そうか君は○○と思ってるんだね。」

 < 斜めに座る >
  面と向かってではなく斜めに座るのも相手によっては話しやすくなります。
  面と向かって、しっかりと目を見たとき時、自分が相手にどんな印象を与えるか、鏡に向かって確認してみ
  たことってありますか。今すぐやってみましょう。


 ■ STEP2 「効果的な質問をする」

  本来質問には目的があるはずです。目的を明確にして質問をすれば相手の思考をうながすことができま
  す。相手の考えを十分聞いた上で、例えば、以下のような目的を持って質問をしてみて下さい。


    @ 本人の考えを整理させる 
    
A 視点を変えさせる
    
B 気づきのきっかけを与える 

 「このプロジェクトが首尾よく達成できた状態というのは君の中では
ういうイメージかな。」
 「それは、
具体的にはどういう状態かな。」

 「君がその方法がいいと思う
具体的な理由は何かな。」
 「実際にその方法
を実施したら、どんな反応が起きるのかな。」

 「同じようなプロジェクトを成功させた
○○さんはどうやったのかな。」
 「いいアイデアだね。ライバル会社だったらどうやるかも考ようか。」

 「前に問題を乗越えたとき、うまくいったポイントは何かな。」
 「その時、
どうやって実施に移したのか思い出してみて」

 「3ヶ月でやるとしたら、どんな計画を立てる。」「2年だったら。」
 「1人だけでやるとしたら」「2人で分担するとしたらどうやる」 等々

 < 具体的な目的を持って質問する >
  相手に自分自身の強みに気づかせる、仕事を進める上でのポイントや使える資源(人、モノ、金、情報)を再
  確認させる、具体的ターゲットをイメージさせる 等 質問のより具体的な目的を考えておくことも効果的な
  質問を行うためには必要です。

 < 決め付けない >  ・・・・部下に貼られたレッテルは剥がす
  この流れを通して重要なのは、決め付けをしないことです。
  彼の考え方は○○に決まってる。 彼にはそこまでは出来ない。等のレッテルを貼って最初から絞り込んだ
  り、あきらめたりしないことです。
  レッテルを貼った時点で、コミュニケーションは終わります。相手の話も言い分けや不平にしか聞こえなくな
  ってしまうでしょう。 それでは、相手の可能性を奪うことにも繋がります。 

  コーチングは日常で使えるスキルが基本です。是非、日常のコミュニケーションの中で、お試し下さい。


                                                  

 Mail02  認  め  る

  コーチングの基本的スキルの一つに「認める」というものがあります。日常、誰もが使っているけど、効果的
  には使われていないと思われますので、ご紹介し
ます。


 ■ STEP1  誉める認める の違い

  「誉められると仕事へのモチベーションが向上するか?」 と聞かれれば、多くの方がYESと応えるでしょう。
  しかし、「ここ1ヶ月で誉められたことがありますか?」 と聞かれると思い出せなかったりします。

  例えば、自分の中で、「部下が成果を上げたら、誉める」ものと定義してしまうと誉める機会は減ってしまい
  ます。そもそも、そんなにしょっちゅう誉めるものではないと考える方もいらっしゃるでしょう。
  「誉める」ことに限定せず、広くとらえ、行動や存在を「認める」と考えてみて下さい。 もちろん「誉める」のも
  「認める」の手段の一つです。 認める = 確認、承認 と考えても結構です。

  コーチングでは、「認める」=相手の客観的事実に気付き、フィードバックする ことと言います。
  本人すら気づいていない能力が行動に現れた瞬間を見つけ、それをフィードバックします。


 ■ STEP2  認めるための観察

  認めるために必要なのは、相手をよく観察することです。  時間や締切の約束を守ったとき。ルーチン業
  務に変化をもたらしたとき。小さな創意工夫。他人に対する思いやり。気の利いた行動や動きの良さ等々。

  誉めるのではなく、行動の事実をそのまま伝えます。



 ■ STEP3   具体的な 「認める」 の方法

  具体的には以下のような方法があります。

  ● 成果や成長を指摘する
  ・「遅くまでがんばってるね」 「この報告書は見やすいね」
    「きちっと処理してるね」 「最後までできたじゃないか」

  ・指摘されることで、自分の進捗が確認でき、達成感が得られるでしょう。

  ● 挨拶する。観察したこと(気づいた変化)をそのまま伝える
  ・家庭を例にとれば、「おはよう」「お疲れ様」「髪切ったんだね。」という誉めではない会話が、いごこちを良く
    していませんか。

  ・「元気いいね」「楽しそうだね」「いいネクタイだね」そんな簡単な言葉が上司として関心を持っていることを
    示します。

  ・もちろん、部下の強み(長所)に気づいたら、はっきりとフィードバックしてあげましょう。
    本人の中でも強みが明確になり自信となるでしょう。


  ● 自分の感情として伝える
   ・「君の努力のお陰で、私は助かったよ。」 「皆喜んでるよ」
   ・「一生懸命やってくれたから、僕もやる気になったよ」
   ・お世辞が嫌いな相手でも、事実として伝えれば受け取れます。

  ● メール等に必ず返信(レスポンス)する。
   ・上位職からの返事は、クイックレスポンスであるほど、存在を認められた意識を受け取る側に与えます。
   
部下から上司への認めも出来ます。  「部長の一言で、みんなやる気になってますよ」


 ■ STEP4  注意事項もあります

 何も変化してないのに、とってつけたように言わないこと。下手なお世辞と受け取られかねません。
 また、以前と比較した言い方は、評価している雰囲気を強めます。気をつけましょう。


 人は、存在そのものを認められるだけで、安心感を得られます。
 さらに自己成長感につながるなら、やる気や自発性をうながすエネルギーを産み、人を結果重視型からプロ
 セス志向型に変化させもします。
  結果、仕事自体を楽しむ姿勢に繋がることにもなります。 (もちろん人によりますが。)


  今週は、部下をじっくり観察して、全ての部下に、何か一つずつ認めてみてください。



                                                 


Mail03  身振り手振りが意思を伝える



  STEP  言葉が伝えるのは全体の3割でしかない

  皆さんが誰かと対面でコミュニケーションをするとき、相手の身振り手振りによって、話の中身がよく判った
  ということはありませんか。言語学者B.ウィステルの説では、コミュニケーションにおいては、言葉が3割、身
  振り手振りが7割のメッセージを伝えているといいます。
  コーチングではよく、この言葉の更に8割くらいは、声のトーンであり、 実際の言葉が伝えるメッセージはせ
  いぜい6〜8%くらいともいいます。
  つまりは、言葉によるメッセージより、言葉以外のメッセージの方が、相手に伝わる割合が大きいのです。


  STEP  受け手のイメージが「言葉」に優先する

  
さらに、言葉で伝えたことも、言葉どおりに受け入れられるとは限りません。

  例えば、「QC」という言葉、
  具体的な内容を話す前に、相手にイメージが浮かんでしまいます。 極端に表現すると、役職者層にとっ
  ては「改善活動」、  中堅以下の社員には「時間のかかるつらい作業=忍耐」、  若年層には「なんだか複
  雑な活動」。 実際につらい経験をした者には条件反射的に、過去に自分が作業をした時の映像が 頭の
  中にイメージとして浮かんでしまうかもしれません。


  STEP  言葉以外のメッセージ

 自分の想いやメッセージを正しく相手に届けるためには、言葉以外での工夫が重要なのです。
 紙に書いて伝えちゃいけないのかという方もいるでしょう。補助的にはOKです。でも紙だけでは表情も、ニ
 ュアンスも伝えられません。ここでは、積極的なコミュニケーションという意味での解説をさせて頂きます。

 ★ 声のトーン ★

    ・「ふん」と短いより、「ふーん」と伸ばせば「納得」や「感心」を強調。
    ・「へえー」と長いとバカにした雰囲気、「へえ」と短く高いトーンだと  「興味」のある雰囲気。
    ・「あっそう」と「あーそう」もトーン、言葉の柔らかさで意味が変わります。

  当たり前じゃないか、何を今更と思うようなことなのですが、いつも効果的に使い分けられている方は意外
  と少ないのではないでしょうか。

  効果には個人差があります。普段自分が良く使う、言い回しや擬音の言葉を工夫してみて、人がどう受け
  止めるかを想像してみて下さい。


  ★ 身振り、手振り(ジェスチャー)★

  「OK」と言いながら出す、指での「OKマーク」、言葉が手振りでさらに強調されていると思いませんか。

  逆に、腕組み、足組みをしながら、「君の話を聞かせてくれ」と伝えても、
  相手には 「何か用があるなら、言ってみろ」 というメッセージが届くかもしれません。

  リラックスした姿勢、柔らかい表情で、「君の話を聞かせてくれ」と言えば「最近がんばってるじゃないか」
  とか 「何か手伝えることないかな」 というメッセージになるかもしれません。

  相手の目をちゃんと見たり、前のめりになって話すことも、相手の受け止め方に影響を与えます。


  STEP4 受け手のイメージの一致(ずれ)を確認する

  「あれ、どうなった。」「例の件、先方と進めてるか。」とか、メッセージの3割以下でしかない言葉の部分すら
  明確に言わないのでは、身振り手振りによる効果も薄めてしまいかねません。非常に危険だと思いません
  か。

  少なくとも仕事の話をするのならトラブルを未然に防ぐ意味でも「いま伝えた意味、わかったかな。」とか、
  「君は○○○と受け止めているんだね」と確認したり、そもそも「あれ」とか「それ」とか言わずに固有名詞を
  ちゃんと使う習慣をつけたほうが良さそうです。

  是非、今日、部下に伝えたことが、何%くらい伝わったかを振り返って、次回はどうやってみようかと考えて
  みて下さい。


                                                 

Mail04  効果的に叱る、効果的に誉める



  STEP1  効果的に叱る

  コーチングでは、誉める はよく出てきますが、叱るという行為はあまり出てきません。でも、上司と部下と
の関
  係ではコーチング が
通用する部下ばかりではないので、意味ある叱りをするためのヒントをご紹介します。


  ● 叱る目的を明確にする
    ・部下の成長、職場の秩序、同じ失敗をさせない等 叱る目的を明確にします。
    ・ハッパをかけるために叱るのは、それをバネに出来る人間なのかを良く観察してからです。たいがいは反
     感を持ちます。

 
 ● 叱るタイミングに気をつける
    ・些細なことで皆で気をつけることだから他のメンバーの前で叱る。深刻なことだから2人きりできっちり伝
     える等 相手の性格や状況に合わせて、タイミングと場所には気をつけましょう。
     他のメンバーの前で、プライドが傷つくような叱り方だけはやめて下さい。
    ・軽微なミスを時間が経ってから叱っても効果は薄くなります。  深刻な事態でないなら出来るだけその
     場で簡潔に叱りましょう。

  
● 叱る内容に気をつける
    ・人格の否定は絶対しない。行動や事実を問題にします。調整不足や命令不履行、勤務怠慢等の具体的
     な事実を問題にします。その行為が問題だという根拠も明確にしないといけません。
    ・上司の考えと違う行動だからといって叱る理由にはなりません。 行動を決定する権限を与えたのかどう
     か、よーく思い出して下さい。
    ・教訓は垂れない。教訓はあなたの考えでしかないのです。
    ・誰にでも不満はあります。不満は責めずにじっくり聞いてあげましょう。

 
 ● 叱り方に気をつける
    ・絶対に感情的になってはいけません。追い詰めたり、過去の出来事を思い出してねちねち叱るのもいけ
     ません。まったく逆効果です。
    ・「○○するな」(禁止系)ではなく、「今後は、□□でやろう。」と言うと、相手が受入れやすくなります。

  
● 明らかなミスをした部下にはキチンと釘を差す
    ・ミスをしたのに叱らないのは、君には興味はないよと言っているのと同じです。次も同じ失敗をして良いと
     いうメッセージにもなりかねません。最低でも、「次は気をつけよう」位は言いましょう。

  
● 叱れるだけの実力、人間関係を作る
    ・範となる行動、業務の知識、公平さ、また、決して嫌いで叱っているのではないと理解できる人間関係作
     りは普段から必要です。


  ある優秀な演出家の方は、稽古でダメだしする時の叱り方を俳優一人につき3通りずつ用意するそうです。
  叱って効き目のない時は、叱り方を変えてみる。  叱りはテーラーメイド、かつ奥の深いものなのです。



  STEP   効果的に誉める

  「誉め」は相手を認める行為の一つであることはご紹介しました。でも、誰にでも同じ誉め方が効果をあげる
  
とは限りません。相手によって効果的な誉め方は異なります。意味のある誉めをするには、相手をよく観察
  することが前提となります。


  ● 一般的に効果のある誉め方を紹介します。

    ・名前を呼んで誉める
    ・タイミングよく誉める
    ・感情をこめて誉める(自分も本気で喜ぶ)


  ● 能力のある優秀な部下に

    ・どこがどう良かったか具体的に誉める
    ・チームワークや部下育成に貢献している部分を見つけて誉める


  ● 発展途上の部下に


    ・ちょっとした努力の過程、成長の過程を誉める
    ・失敗した場合でも、進歩した部分があれば誉める
    ・みんなの前で誉める
    ・これからも期待してると告げる


                                                 


Mail05 アイデアを育てる環境



  上司と部下の関係は様々です。処理型の業務なら、上意下達方式でもうまくいくかもしれません。しかし、自
  で考え行動できる部下はどんな時でも一番の戦力です。


  また、一人で考えるより大勢で考えたほうが、豊富なアイデアが出るに決まっています。
  ではあなたの部下に会議の席で、 問題や課題解決のためのアイデアを出せといったら、使えるアイデアはどの
  くらい出てきますか? 不満ならいくらでも出るでしょう。でも実行に移せるものは結構少ないはずです。

  それは何故でしょう。
  決して頭が悪いわけでも積極性の無いわけでもなく、普段色々と言い分のあるような部下が、いざとなるとアイ
  デアを出せない。
  原因は単純です。
アイデアを出し、それが採用され、実行されていくような環境がないからです。

  先に立って部下を引っ張るというリーダーシップの考え方に対して、いいアイデアを出させるため、
部下が自
  
信を持てるように環境を整え、そっと背中を押してやる
 それをアイデアシップと言うそうです。

  コーチングの用語ではないのですが、極めてコーチング的な考え方です。では、そっと背中を押してやるため
  
に何をすればよいのかヒントをご紹介します。


 ■ STEP  部下との関係を見直す (そっと背中を押す関係)

  ● 部下を一人前に扱う
     部下を自分の使用人や子分のような扱いは絶対に避け、部下が将来こうありたいと思う扱い、例えば一
     人前の営業マンや経理マン、総務マンとしての扱いをする。

  ● 部下との距離をなくす
     よく知らない相手(上司)のために人肌脱ごうと思う者はいません。部下に興味を持ち、話題に入っていき
     ましょう。いつでも相談、助言できる、話し易い環境を作るのです。

  ● 失敗は自分(上司)の責任、成功は部下のもの
     現に、部下の失敗の責任は100%上司にあります。思っているだけではダメです。
     どんどん矢面に立ちましょう。どんどん責任をとりましょう。
     もし、自分が賞賛されたら、部下のお陰だと声を大にして言いましょう。
     「うちの部下はすごいんですよ。」

  ● 部下を信じて待つ
     結果を出すのは部下です。アイデアを出すのも部下。今さら解説は不要です。

  ● 部下を誉める
     成果を上げた部下はほめましょう。でもすばらしい成果でなくたっていいのです。1歩でも2歩でも前進
     ている部分を見つけて、どこがいいかはっきり告げてどんどんほめましょう。

  ● 失敗する自由を与える
     だんだん、結果ありきの世の中になりつつあります。が、ホームランを狙って大振りしたからといって部
     を責めてはいけません。本人なりに努力した結果なのです。努力してもうまくいかなかった部下の労を

     ぎらいましょう。
     「いい経験だよ。次はやってやろうぜ。」 仕事の借りは仕事で返すです。


  STEP2 自分自身を高く評価させる

  何度も言いますが、イメージは重要です。人は失敗すると思っていると失敗の可能性が高まります。同じよう
  に、自分に能力があると信じていない者には、ぜったいに今以上の働きはできません。
  能力の有無はこの際忘れ、自分を高く評価し、自分には能力があると信じさせる手伝いをしましょう。


  ● 部下に助けを求める
     部下の意見を尊重することを前提に、困ったときの助言を求めましょう。 自分が頼られる人間であると
     うことは自信につながります。でも、採用できない意見を断るときは理由を明確にしないといけません。

  ● いいアイデアは積極的に採用する
     いいアイデアはどんどん具体化しましょう。多少修正があったってかまいはしません。使えるものであれ
     ば、アイ
デアを出した部下を連れて、上位職に具申しに行きましょう。

  ● 簡単だと思わせる
     自分が若かった頃を思い出して下さい。経験の浅いスタッフに対して「難しい仕事だけどなんとか頼むよ」
     というと、不安を持つ者は多いものです。
     簡単だと嘘をつくわけにはいけませんが、「この問題はいろいろなアプローチを考えることが必要かもし
     れない。 君ならいいアイデアがだせるはずだ。」と信頼していること示しましょう。


  ● 頭から却下しない
     使えないアイデアだってあるでしょう。でも、はなから使えないよと言っては、やる気を無くします。
      「がんばったね。でももうちょっとインパクトがあるアイデアも欲しいな。」

      「これは面白い。今回は合わない部分もあるけど、とっておこう。」


  STEP3 仕事を苦行に変えないためにすべきこと

  仕事は修業だと思ってませんか。もちろんそうです。でも苦行だと思うといいアイデアは浮かびません。

  ● 上司のあなた自身が仕事を楽しむ
     職場の雰囲気はあなたで決まります。あなたがつらいと思っていたら、部下もやる気を失います。仕事の
     ゴール、部下の成長。何でも結構です。楽しみを沢山見つけましょう。

  ● 頑張った部下に感謝を伝える
     成果を上げた部下には惜しみない評価を与えましょう。でも会社の制度上の評価となると単純ではありま
     せん。優秀な部下が複数いたらどうします。
     
昼食会でも慰労会でも結構です。費用がなければ、朝や昼に全員が集まって全体会をやっても結構です。
     プロジェクトの成果をお祝いしましょう。特に功績を上げた部下には皆で惜しみない拍手を、でもできる
     けチーム全体に感謝を表しましょう。皆に感謝していることをあなたの口から伝えるのです。


  人それぞれ部下の指導方法はいろいろあり、自分のやり方で上手く言っていればそれで結構なわけです。
  でも、アイデアにターゲットを絞るなら、気持ちの切り換えが必要です。


  こんな上司と仕事をしなければならない → こんな上司と仕事がしたい


  今回ご紹介したのはあくまでヒントです。
 
 部下指導にせよ、アイデアにせよ、あなた自身のやり方を探してみて下さい。


                                                 


Mail06  エッジ(極端)な部下を動かす



  皆さんの部下は自分で考えて行動することが出来ていますでしょうか。
  コーチングの特徴は部下に自分で考えさせることにあります。部下に自分で考えさせるスキルは色々ありま
  す。

  ・ダメだと決め付けない   ・沢山会話する   ・積極的に(きちんと最後まで)聴く
  ・効果的な質問をする    ・明確なゴールを考え、イメージ化させる
  ・認める(進歩・成長を確認) ・部下を信じ一人前に扱う   等々

   とは言っても、我々もプロのビジネスコーチではないので、例えば、

   1) 勝手に解釈して自分流を押し通す部下   2) どうしても指示待ちで動かない部下


  この両極端(エッジ)な部下をお持ちの方は、てこずった経験があるのではないでしょうか。
    (極端=エッジと呼ぶことに勝手に決めました。)

  コーチングでは無理だよ、と言ってみても、だからといって極端な人物をチームの中で効率的に活用し、後
  輩達を指導できる社員に成長させていくという上司の責任を放棄することは出来ません。
  一緒に考えてみましょう。


  STEP1 極端(エッジ)な部下は、何故エッジなのか

  何故エッジなのでしょう。 幾つか思いついたものをまとめてみました。他にも理由はあるでしょう。

  1) 勝手に解釈して自分流を押し通す部下

     ・能力がある    (経験がある、慣れている)
     
・自信がある    (自信過剰、思込み、成功経験がある、失敗経験がない)
     
・まず行動したい (俺の仕事だ、計画性がない、上司では判断できない)

  2) どうしても指示待ちで動かない部下

     ・能力がない    (教育・指導を受けていない、内容が分からない)
     
・自信がない    (臆病、経験がない、サポートが欲しい) 
     
・失敗したくない  (臆病、怒られたくない、上司・先輩・同僚が怖い)
     
・動きたくない    (誰かがやってくれる、面倒)

 性格は直せません。しかし、幾つかのことは、解決できることに思えませんか。


   特に2)の指示待ちのエッジな部下には  ・・・・動けない部下には

   ● 質問には質問で応じる。
     「どうすればいいですか?」に対し「君はどうしたい?」 とか 「何通りか対策を考えてみろ?」
   ● 成長を期待して君に任していると明確に伝える。 「君ならできる。」


   ● 必要な情報はどんどん与える。

   ● 失敗しても社内的影響で済む業務を担当させる。
     失敗したら上司・先輩・同僚が一緒になって原因を探っていく。

       (つまり、失敗に対しては、叱りではなく、サポートがあるのだと事実で示す。)

   ● ちょっとした成功は誉めるとともに、どこがどう良かったか確認する。

    小言はやめ、指示は具体的にする。
      「どうして結果が出ない。ぶつぶつ」→「相手の金融状況調べたか?」

   ● 先輩と組ませて、先輩の考え方、行動を学ばせる


  出来ることはやるとして、これだけではまだまだ解決しないかも知れません。


 ■ STEP2 部下がいやなことって何でしょう

  自分がいやなことは部下だっていやです。部下の気持ちになってみましょう。

   ● 回避したいこと
    ・叱られる       ・押さえつけられる    ・強制される
    ・意見を無視される   ・正しく理解されない   ・ごまかされる
    ・仕事のやり直し    ・同じ指示を何度も受ける


   ● 無視されていると感じる状態
    ・感謝されない     ・尊敬されない     ・軽視される
   
 ・重要視されない    ・笑われる      ・返事がない

   ● 他人からバカにされていると感じる状態

    ・命令される      ・一方的な強制    ・協力が得られない
    ・不平を言われる    ・服従させられる   ・無視される


  いろいろ思いつきました。(実際にあなたも考えてみて下さい。)
  ここでも多少は解決につながりそうな部分があります。



  特に1)自分流のエッジな部下には   ・・・・突っ走る部下には

  自分が一人前で、十分能力があると信じているなら、命令されたくない、強制されたくない。耳にタコが
  できた
という気持ちが強いかかも知れません。

 → こんな部下に命令を与える時は、
    ● ベテラン社員には、任せること、事前に報告・相談させることを区別し、何故報告・相談が必要な
       のかも出来る
だけ明確にして伝える。 それでも、突っ走るなら完全な命令違反です。
    ● 選択余地のない一方的命令は逆効果、常に選択枝を与える。

    ● 常に違った角度から新鮮な意見・提案をする。
    ● 本人が望む行動があるなら、その行動が重要だと思う根拠は何かを明確にさせ、上長として
       納得できるなら、
積極的に認める。YESにしろNOにしろ、お互い納得出来るまで話すことで
       す。


  もう少し考えてみましょう。


 


 ■ STEP3 部下にNOと言う

  世の中にはNOと言い出しにくい人、逆に軽くNOと言える人がいます。
  特に協調性が高い方は、NOと言い出しにくいとも言われます。でも、上司であれば部下に
  NOと言うべき時があります。


   NOと言う時のポイント

    ● はっきりNOという
       考えておくなどと曖昧にせず、NOはNO と早めに明確に告げます。
       「なるべく」 「できるだけ」 ではなく、「どこがどう悪い、だからこうしてくれ」 です。

    ● NOの理由を明確にする

       何故NOなのか理由を理論化、具体化し、出来る限り、データ、法的根拠、先例等で実証的
       に説明し、相手の納得性を高め
ます。


    ● 相手の言い分をしっかり聞く
       部下の話は十分に聞き、満足感を残す。 部下の不満はNOと言われることより、話を聞いて
       もらえなかったり、一方的だったりする部分にあることが多いものです。相手の人物ではなく、
       話している内容に集中して判断しましょう。

    ● 常にNOではない

       今回はNO。でもいい提案、意見がはどんどん受入れましょう。YESがあるからNOもある
       のです。


    
● YESの可能性も追求する

       プロジェクトの提案等でNOがYESに変わる可能性があるのなら、きちんとアドバイスを与
       え、一緒に考えてみる。それでも
無理ならしょうがない。



 ■ STEP 言い訳に対処する

  責任転嫁したり、意味のない言い訳をする部下には厳しい姿勢が必要です。 一歩でも前に
  進ませることを前提にきっぱりと対処しましょう。

  1st  質問攻めで対処
    ・「仕事が忙しくて出来ない。」  → 「一番重要なのは何か?」
    ・「○○をしなくてはならない。」 → 「最重要と考える根拠は何か?」
    ・「うまく進まない。」      → 「何が障害になってるんだ?」
    ・「でっ。君はどうしたい?」「解決策は考えているのか?」

   相手が思考し、前に進まざるを得ないような質問をして下さい。

  2nd  否  定
    ・「君はそう思うんだ。」 ( = でも僕はそうは思わない)
      「後は自分で考えろ」 「言い訳はいいよ」 と突き放すのも手ですが、それでも動か
     ない部下には、次の行動につながる具体的な指示と期限設定が必要です。

  3rd 具体的な指示
    ・「まずは君自信で解決策を3パターン考えて、明日15時に報告してくれ。」
    ・「今の状態で、君が対処出来る事、出来ない事を分類して見せてくれ。」
    ・「どういうサポートがあれば前に進めるのか、具体的に考えてくれ。」


  中々解決には至らないかもしれませんが、こいつはダメだと部下にレッテルを貼らずに、
  あなたが出来ることを考えてみて下さい。前に出てきた「認める」や、前項の「効果的
  に叱る」も参考にして下さい。



                                                 


Mail 07 ナレッジを活かす



  
ナッレジ・マネジメントという言葉、聞いたことありませんか。
  ナレッジ(=社員の持つ知的財産)を企業の競争力の源泉ととらえ、効率的に活用し、業務効率や生産性の
  向上に繋げていく経営手法のようです。

  コーチングとは関係ないじゃん。そんな声が聞こえてきそうです。もちろんコーチングと結びつけて説明され
  た例は私も聞いたことはありません。
  
しかし、コーチングで使われる
ソーシャルキャピタルという概念 = 社員間で、知識や経験を安心して共有
  していける関係。それを実現するのはリーダーの使命の一つです。

  知識や経験といえばナレッジ。というわけで、今回は部下指導としてのナッレジ・マネジメントについて考えて
  みます。
 (何か、横文字言葉が多いですね。)


  STEP1 ナレッジ(=知)って何

  ナレッジ(=知)はヒト、モノ、カネ、情報に加えて「5つの経営資源」とも言われます。
  では、知とは何でしょう、知は4段階のレベルに分類できます。

   
@データ (素材)
   
A情 報 (データを一定の目的に沿って加工、資料化したもの)
   
B知 識 (何かに利用できる情報、判断基準)
   
C知 恵 (知識を役立てるための独自のノウハウ・コツ・経験≒行動の成功パターン)

  部下指導の範疇で考えると、個人のナレッジをどう活用するかが大事です。例えば、独自の接客ノウハウ、
  顧客情報、人脈 等々

  全社展開なんて大きなターゲットでなくても、自分の部下がどう行動し、どううまくいったかというノウハウを、
  他の部下に伝授したり、他のチームに水平展開したり、物件の重要な情報や知識を共有したり、継承したり
  していくことは必要なことです。



  STEP2 ナレッジの収集、活用

  ナレッジの収集と活用を丁寧にやろうとすると

  
@)収集 →A)整理・餞別 →B)共有(シェア)、流通(アクセス) →C)活用 という手順になるよう
  です。


  それなら、コーチングスキルにも出番はあります。

  1) 同僚や先輩の好成績における行動パターンを自分の活動に取り込む
  2) 過去の成功体験からうまくいった理由を探り、現在の問題に適用する。


  会話例も含めて、何度も解説してきたやり方です。

  とりあえず、収集→活用で結構です。 部下指導として重要なのは、引き出したナレッジを再び誰かに取り
  込み、実体験を通じたノウハウに変えることです。


  STEP3 形式知、暗黙知

  例えば、報告や提案の書式は目に見える形で共有できる
形式知(エクスプリシット)です。共有ファイルやイン
  トラネット上での情報共有が可能です。
  これに対し、客先への商談の持っていき方や商談のノウハウなどの経験的な知恵は形式化しにくい
暗黙
  知(タシット)
です。

  ナレッジ・マネジメントというとIT技術による情報や知識の共有化が話題になりやすいですが、暗黙知をい
  かに引き出し、水平展開するかがナレッジ・マネジメントの成功の鍵を握っているようです。

  「沈黙は金」 「腹芸」 「暗黙の了解」、この3つの言葉が示すように
日本の文化は暗黙知を好んでいるよう
  です。
 
 知識の80%は暗黙知 とも言われ、20%の形式知の陰には 宝の山 (暗黙知) が秘そんでいます。

  暗黙知をうまく活用できれば、あなたのチームは確実にパワーアップします。




 ★ 暗黙知を引き出せ ★

  形式化できない知は人についています。社員とともに出勤し、社員とともに退社します。社員を雇えば流入
  し、社員が転職すれば外部に流出するわけです。

  また、社員が自ら知恵を絞って問題解決を考え、自ら行動すれば、暗黙知は最大限に引き出され、活用さ
  れます。そして共に行動した周囲の者もそれを経験として取り込めます。

  部下に自ら考えさせ行動させるコーチング手法は、暗黙知を引き出すツールとして、ナレッジ・マネジメント
  の実行に不可欠なのです。 
(多少飛躍していますが私はそう思います。)




  今までの説明を読み、大半の方は、
    「横文字は別としてだいたい知っているよ。」 もしくは
  
 「個人のノウハウを引き出すのが必要なのは分かってるし、普段やっている」
  
と思われるのではないでしょうか。

  しかし、意識してやるのと、そんなものだと思いながらなんとなくやるのでは効果が違います。


  STEP4 知識をうまく盗ませる

  若手新人をベテラン先輩社員と組ませ、営業に同行させる。昔からある指導方法です。が、コーチングを使
  って効果を上げてみましょう。前述のように上司が、ナッレジ・マネジメントを意識した行動をとり、若手新人
  に何を学ぶかというヒントを与えます。


  例えば、 何度か先輩と同行した新人A君に、

    「今日は、B君(先輩)は、お客さんと何を話してたかな?」
    「○○や、□□の件です。」  (B先輩の言葉の断片しか分かっていない)

    「○○の提案に対する要望はあったかな?」
    「 ・・・・ 」  (質問の意味が分かっていない様子)

     「そのお客さんに関して、どういう案件があるのか、
    訪問する前にB君に確認しておいたほうが、話の中身がわかって面
白いよ。」
 
  というように。


  もちろん、新人A君の年令や経験に合わせて、自分で考えさせる内容や、与えるヒントのレベルも異なるで
  しょう。A君のスキルはどれくらいなのか、観察する必要もあります。


  A君が全くの新入社員なのに、先輩B君自体が

    「3ヶ月も一緒に回れば、大体わかるでしょ。自分の時もそうでしたよ。」

  なんて考えでは、先輩B君はのんびり 3ヶ月を使って、

    「A君はまだまだですよ。ちょっと覚えが悪いんで。」 と言いかねません。


  右も左もわからない新人に自分で考えさせるのは難しいことです。
  新入社員にコーチングは不向きといわれる所以でもあります。でも、グループ内の教育を管理する。それは
  上司の役目です。
  先輩B君が同行営業で新人A君に何を教えようとしているのかを明確にさせなくてはなりません。



  まずは、先輩B君をコーチするのが先でしょう。

  
「A君を1年で、一人前にしたいんだけど、どうしたらいいと思うかな?」
  「半年で、客先と交渉できるようにする為には、何を覚えさせればいい?」
  「この間うまくいった交渉では、どんなノウハウを使ったの?」
  「3ヶ月で、客先を一人で訪問できる為には、何が必要かな?」
  「それをスケジュールに落としてみてよ。」



  必要な知識なら簡単に羅列できますが、必要なノウハウとなると先輩B君も頭をひねらなければなりません。

  もちろんこんな絵に描いたように会話が進んだりはしないでしょう。でも、そんな意識を持って、上司や先輩B
  君が行動することは必要です。


STEP5 ナレッジマップ

  自分の会社、部門、グループのどこにどんな知識、知恵が存在するのか を地図に描くことをナレッジ・マッピ
  ングと言うそうです。
  ○○課長は□□が得意。△△君は○○の処理は抜群。というようなマップが、ナレッジ(特に暗黙知)活用の
  道しるべとなります。

  部門長として、上司として、自分の部下の能力を頭の中で理解するだけでは、それはあなたの暗黙知となり、
  他では活用されません。あなたが異動すれば、後任の方が、一から部下の本当の能力を探るのです。

  部下の能力を企業として最大限活用したいなら、マップに描くことが必要です。それが、部下自身を活かして
  いくことにつながります。



STEP6 ナレッジの棚卸

  更新されない知識は陳腐化します。
  ナレッジは判断基準でもあり、古ければミスジャッジにつながります。上司として、収集されたナレッジを常に
  最新に保つことが必要なのです。

  ○○商事の情報は、最新か。
  ○○君のノウハウは今も使えるのか。

  常に問いかけを行うことは、あなたが、部下の収集した情報や、部下のノウハウを大事にしていることの表明
  にもなります。



                                                 


Mail08  ベンチマークで成功体験を盗め



 皆さんベンチマークという言葉を聞いたことがありますか?
 他社をベンチマーク調査するとか。元は測量用語で 「水準基標」という意味です。
 最近では、同種の機械の性能を比較したり、企業内容を比較したりする意味で使われることが多いようです。
 何故か、ケンタッキーウイスキー(バーボン)のブランド名にもなっています。

 人事用語でも、似た使われ方をしている言葉で
コンピテンシー(行動特性)という言葉があります。
 例えば、優秀な営業マン何人かのコンピテンシー(行動特性)を分析し、大きな成果に繋がった行動は何だっ
 たかを明らかにし、他の営業マンも同じ行動ができるように教育していく。そんな手法があります。

 ここまで読んでいると、うすうす感づいている方もいらっしゃるでしょう。
 コーチングでは、自分にはうまくできないこと、解決策が見つからないことについて、他部署や、他の同僚が
 どうやって乗越えたのかを考えることが、自分の問題の解決策のヒントや視点の転換方法として有効であると
 しています。


 ■ STEP1 自分自身の過去の成功体験をベンチマークする

 大抵の自己啓発本では、過去の成功体験は今は通用しない、過去のやり方の押し付けはよくないと書いてあ
 ります。

 しかし、過去の成功体験を事実関係できちっと把握し、現状にて適用できるかどうか分析した上で、部分部分
 を参考
にすることは問題解決の近道になります。


 またコーチングでは、何よりも
過去の成功による自信のほうを重視してます。



  
= 会 話 の 例 =

  仕事がうまく進まず悩んでいる部下に対し、

  「
今まで、君が、難しい客をうまく攻略できた時ってある?
  「そりゃ○○とか、何度かうまくいってます。でも今回とは違いますよ。」

  「そうか、○○の件はうまく契約できたじゃないか。
あの時、スムーズに契約するために何をしたのかな?
  「あの時は、商談になる前から色々話をしてて、先方のニーズをある程度把握できてたので、受注段階では
  簡単な仕様変更で契約できたんです。今回は修正が多くて、生産チームが思い通り動けないんですよ。」

  「生産チームは、どういう状態ならば動きやすくなるのかな?」
  「先方の要望を小出しでなく、最初から全部把握できればなんとかなります。」

  「生産がニーズの全てを把握して仕事にかかるためにはどうすればいい?」
  「そうか、振出に戻って、生産の人間と一緒に、先方のニーズを洗いざらい聞いてきますよ。」

  実際には、こんな簡単なやりとりではないでしょう。じっくり時間をかけて話しをする必要があります。
  
答えを与えるのではなく、部下自身に考えさせることに焦点をあて、視点を変える質問をしてみましょう。


  ■ STEP2 誰かの成功体験をベンチマークする

  成功体験は自分自身だけにあるのではありません。周囲にも目を向けましょう。

  前述の会話例の中で、

  「似たプロジェクトで成果を上げた○○君はどうやってたかな?」       とか
  「私が担当した案件で、似たような問題が△△の方法で解決できたな。」  等

  ヒントを与えるだけで十分です。

  上司としての提案も選択枝の一つとして提示して下さい。決して押し付けはせず、自分で考えて答えを出させ
  るのが基本です。緊急の場合や失敗の許されない重大な意思決定を除いては部下自身に判断させましょう。



  ** お断り **

  ここでのベンチマークは、本来の意味とは使い方が違います。
  コーチングではベンチマークとは言わず、単に「視点を変える質問」としています。私が勝手に、ベンチマーク
  と言っているだけなので、よそで言うと笑われてしまうかもしれません。 ご注意を。


 ■ STEP3 ロールモデル(手本)を見つける

 コーチングの話ではないのですが、
手本となる上司、先輩を見つけ、そのまねをすることは、上達、成長の近道
 
と言われます。この場合のお手本になる相手をロールモデルと言います。

 ロールモデルは、人でなくても、チームや部署、他社であってもOKです。
 ロールモデルとなる相手が、どういう行動をしてどういう成果を上げているのかが細かく判れば、あとは真似るだ
 けです。

 とは言っても、1〜10まで真似ても、考え方の違う人間や、哲学の異なる企業を真似るのは難しいものです。


 ここで、ベンチマークの出番です。 
 ロールモデルとなる相手の行動や活動をじっくり観察しましょう。
 単純に、誰に対してどういうアプローチをしたとか、どういうタイミングで決断をしたとか、仕事を進める優先順位と
 か、チーム内での役割分担とか の仕事やプロジェクトの進め方における再現性のある断片的事実を自分の場
 合と比較観察する程度で十分です。

  この
「 再現性のある 」という部分が重要です。
  自分が意識して実施すれば、再現でき、同じような好結果をもたらす可能性のある行動をロールモデルの行動
  から見つます。あとは、ロールモデルと同じように、もしくは自分なりの工夫を加えてやってみる。ただそれだけ
  です。

  ロールモデルを見つけ、行動を真似ることは、自分自身についても、部下の指導にも使えます。上司として、は
  じめて業務を担当する新人の指導に、先輩をつけることもその一つです。

  企業によっては、優秀な若年層の社員にロールモデルとなる先輩とのペアを組ませ、社員の成長をサポートさ
  せるところもあるようです。 (メンタリングと言い、デュポン、アメリカンファミリーなどが導入)

  前にも同じような説明があった気がするな。という方も多いと思います。
  実は、効果的な質問をする ための手法の解説と同じような内容を、ベンチマークという切口で解説しているだ
  けなのです。


  コーチングのスキルはそれほど多くはありません。色々な使い方ができるのだとご理解ください。



                                                 


Mail09  部下との関係を楽しむ



  スキル解説じゃないじゃないか。そうおっしゃる方も居そうですが、部下との関わりを楽しむこと、会社という存在
  そのものを楽しむことは立派な部下指導スキル、セルフコーチングスキルだと私は思っています。


   STEP1  コーチングを楽しむ

  上意下達型の指示命令方法が馴染んでいる方にコーチングを紹介すると、どうしてそこまで部下中心に行動
  しなければならな
  いのかと思われるかもしれません。
  そう思うとコーチングは今までと全く違う新しい手法に見えてしまいます。

  でも、私自身も、別に部下に対して、がむしゃらにコーチングを活用してどうにかしようとしているわけではあり
  ません。

  仕事を頼む(任す)とき、報告を受けるとき、そして日常の中で、コーチングではどう言うんだったかなと思い出
  しながら、ちょっと言い方を変えてみたり、応えを急かさずに待ってみたり、積極的に声をかけてみたりしてい
  るだけです。

  だって、ある日急に上司の態度が変わったら変ですよね。


  「何やリたいの?」 「将来どうなりたいの?」そんな質問をしても、はじめは、部下からの明確な返答が中々
  有りません。
  「うーん」 という感じ。
  自分だって同じでしょう。 即答できますか。役付職だって答えられない。

  でも、何度か同じ質問をしていくうちに、部下のやりたいことも少しずつ形を帯びてくる。
  ちょっとずつだけど確実に変化している。
  そんなところがとても楽しいし、いつもの日常の中に進歩を感じる瞬間なのです。



  ■ STEP2  部下との間の「線」

  上司からの一方的指示ではないので、部下に主導権があるように見える。でも、主導してなくても、誘導して
  ます。
自主性=完全な自由ではありません。部下の行動の結果の責任は上司が負うのですから。

  部下との間の「線」が曖昧になる。そんな心配も無用です。線は部下のほうできちっと引いてくれます。そも
  そも「線」て何でしょう。

  管理職に昇格すると異動する。そんな会社があるようです。上司としての部下との線を引く手伝いをするた
  めに。


  でも、
  ・部下にNOと言う時は、理由を明確にした上で、はっきりとNOと言う。
  ・反対意見があれば理由と代案を言う機会は与える。
  ・採用できる案は採用する。
  ・任せたことは、細かく指示はしないが、状況確認は定期的に行う。

  そんな基軸さえ明確にし、一貫した対応をしていれば、線が曖昧になることはありません。決して。


  ■ STEP3  コーチングは会話を作る

  コーチング手法の活用で、部下と話しやすくなることは色々あります。

  例えば、部下のミスに対する注意。

  「何やってんだよ」 と相手に気軽に言えてしまう人も結構います。

  でも、中には、相手の気持ちを気にして気軽には言わない方もいます。特に女性の部下に対しては注意
  のタイミングや叱り方には気を使うかもしれません。

  きっと
  
ミスの注意 = 叱る ≒ 怒る ≒ 傷つける という図式 が頭にあるのでしょう。

  注意の仕方や叱り方がうまい・へた というより上司の性格なのです。
  良く言え
ば、「人を気遣う繊細さ」でも、部下から見れば無関心とも映りかねません。


  しかし、注意でも警告でも叱りでもなく、

  @ミスの事実の客観的な指摘 +A改善へのアドバイス +B自分で改善案を考えさせる 
   → 本人の成長

  という図式で考えれば、格段に言い易くなります。


  まして普段から、努力している点を見つけて承認(≒誉める)していれば、本人もミスを無くそうと積極的
  に考えてくれるはずです。


  ■ STEP4  会社を楽しむ

  「会社は楽しいですか?」 そんな質問をされてもYESと答える人はほとんどいないでしょう。
  「仕事はやりがいがありますか?」 なら、YESが増えるかもしれません。

  あなたの部下にとって一日のほとんどを過ごす、つまりは一生のかなりの部分を占める会社がつまらな
  ければ、モチベーションが上がる訳はありません。
  飛び回っている営業マンでもなければ、そのほとんどは上司であるあなたと過ごします。まず、上司のあ
  なたが、仕事を楽しんでいる。これは大前提です。

  どうやって楽しむか それは自分で考えてみて下さい。



  米国では、パーティやらイベントで直接的な笑いやユーモアを取り込む企業もあるようです。
  笑いやユーモアはストレスを和らげ、コミュニケーションを促進します。
  (別に、米国流をまねする必要はありません。)

  部下にとって「楽しいこと」ってなんでしょう。 例えば、ターゲットを 「やりがい」のほうに絞って、部下が仕
  事を楽しめるようにするにはどうしたらいいか考えてみてはどうでしょうか。

  これも米国の例で申し訳ありませんが、ある工場でブルーカラーの職人さんたちの生産性を上げるため
  の工夫として、各生産ラインを別々の会社にみたてて、
毎週の生産を利益として競わせたそうです。
  職長を「社長」、調達部門からの材料の受取りを「購買」、ラインとしての完成品を「売上高」、不良品を出
  せばマイナスし、成果を「利益」として貼り出す。
  優秀な「会社」=ラインには翌週の清掃活動を免除したり、優秀な成績が続いたら工場長とラインメンバ
  ーとの昼食会を行ったりしたところ、各ラインが色々と工夫して、工場全体の生産性が大幅に向上したそ
  うです。 
(「グレートゲームオブビジネス」ジャックスタック著より紹介)



  まあ、そこまでしなくても、同じ理屈で我々にできることはあります。
  
部下に、自分で考え、自分で行動し、結果を出す場を与える。 簡単そうで難しいですが。


  ● では当たり前の質問
          
あなたの部下は自分で考えてますか?
          
あなたの部下は自分で行動してますか?
          
あなたの部下は成果を自分のものとして喜べてますか?

  ● ちょっとましな質問
          あなたの部下は、あなたの職場を経営してますか?
          あなたの部下は、職場の動向、情報を経営者のように把握できてますか?
          あなたの部下は、職場での意思決定の主体となってますか?

  ● 最後の質問
          あなたの部下は能力が発揮できていると思っていますか?


  すべてYESの方なら、仕事にやりがいを持ってるはずです。

 


 是非、本人に聞いてみて下さい。

       「能力発揮できてる?」  (能力あると思ってるの?なんて聞かないで下さい。)
       「ぼちぼちです。」

       「やりたいことってあるの?
       「別にないです。」

       仕事をやって楽しかったこと、今まで何かあった?
       「うーん。ないです。」

       「一度もない? じゃあ、仕事を終わって、すかっとしたことは?
       「そういえば、○○を苦労して仕上げた時、すかっとしました。」

       「どこがすかっとしたの?
       「出来ないと思ってたのに、皆で手分けして仕上げて・・・・・。」

       「皆を仕切る能力あるじゃないか。・・・・任せたい仕事があるんだけど。


  まあ、こんなうまい会話にはならないかもしれませんが。
  過去に部下の方が、どんな時に、すかっとしたのか を知っていれば、やりがいを見つけるヒントにはなるで
  しょう。


  それ以前に、こんなやりとりが普通にできれば、上司のほうも楽しいはずです。







                                                  


Mail10  自分を見つめる客観性 メタ認知



  コーチングスキルを実践することによる期待効果の一つとして、「相手に気づきを与える」ことがあげられま
  す。
  効果的な質問をすることにより、相手に自分で考えさせる。答えは相手の中にあります。自分はどうしたい
  か、自分はどうするべきなのか、本人は中々気づかない、そのためにコーチがいるのです。
  
  同じことが自分自身にも言えます。大事な答えは往々にして、自分が知っている。
  でも自分では気づかず、人に言われてはじめて気づきます。私が大好きな言葉、「答えは自分の中にある。」
  のとおりです。
  
  あなたは自分の行動や発言を客観的に見つめられますか。
  
  自分自身、自分のチーム、自分の会社が、相手に、他のチームに、消費者(およびステークホルダー)にど
  う見られているのかを理解することは、CS(顧客満足)の基本でもあります。

  心理学では、より高い次元でものをみて修正することを メタ認知 と言うそうです。メタ認知の力を身につける
  ことは、あなたにとっても、あなたの同僚や部下にとっても必ずや有意義なことなのです。メタ認知の力をつ
  け、自分を客観的に見れるようにすることを考えてみましょう。



 ■ STEP1  何故自分が正しいなんて思えるのか? (フォール・コンセンサス)

  例えば、 「君は自分が絶対に正しいと信じているのだろう?」 と誰かに問えば、きっと誰でもNOと言うで
  しょう。
  この質問は、「君は自分が自己中心的だと思うか?」 とたずねているのとほぼ同じことだと私は思います。

  不思議なことに世の中には、自分の行動や発言が正しいと信じて疑わない方が結構大勢います。
  驚いたことに彼らは、 まだ試してもいない方法が絶対成功するとか、 皆も自分と同じ考えだというようなこ
  とをどうどうと主張します。いったい何故なのでしょう。

  たんなる自信過剰ではありません。多くの人は自分が多数派だと思っているのです。実は認知上の誤りで
  しかないのですが、これをフォール・コンセンサスと言います。

  古来より、人には群れる習慣があり、現代においても、性格が合う相手や、趣味が同じ相手と行動を共にす
  る傾向があります。だってそのほうが居心地が良いでしょ。
  その結果として、自分の意見や行動を多くの者が受け入れてくれると思い込んでしまう。
  言わば、井の中の蛙(かわず)なのです。自分の仲間以外は受け入れないなんて思ってもいないわけです。

  自分を客観的に見つめるには、自分が井の中の蛙であることをきちんと理解することが必要です。
  それができない方は、コーチをつける。

  特に、我々会社人は、自分の部門や自分の会社以外の方と深く関わることが少ないので、井の中の蛙にな
  りやすいものです。



■ STEP2  相手の立場から考える

  上司や部下の話を最後まで聴いてますか。
  相手の話に口を挟まず、きちんと最後まで聴くことはコーチングではシツコイほど取り上げられるテーマで
  す。でも中々聴けてない。

  相手の話をきちんと聴いた上で、自分の意見とは違うのだということが分かれば、たいがいの方が次にする
  ことは、きっと、何でコイツはこういう発言をするのだろうと考えることでしょう。

  誤った判断をしないためには、アイツはおかしいと結論つける前に、相手の立場だったら自分はどうするか
  と考えてみることが必要です。


  それでは、STEP1での質問 「君は自分が絶対に正しいと信じているだろう?」に換えて、
  「君は今言ったことが本当に正しいと思っているのか?」 と訊いたらどうでしょうか。「もちろん」と素直に応
  える方も結構いるでしょう。

  自己中心的であることは悪いこと。 自分に自信を持つのは良いこと。 そんなイメージがあるからです


  「周囲の人が自分をどう思っているか。 」 そう考えることは、自分が客観的になれているような錯覚を与え
  ますが、 実は自分の立場で相手の気持ちを想像しているだけであって、相手の気持ちになれてはいません。 

  相手の気持ちになる というのは相当難しいことなのです。
  客観的にものを捉えるスタートは、全く第三者として、自分達を見てみることです。

  例えば、あなたは、
  映画の中の恋人同士の会話のシーンを、男女どちらの側にも感情移入せずに見ることができますか?
  映画は、男女どちらかの目線で作られていることが多いので、結構難しいでしょう。

  電車の中で、2人の男性がお互いの言い分を主張し、言い合いをしている。そんな場面を向かいの席に座っ
  て眺めてでもいたら結構客観的になれませんか。
  2人ともかっかするなよ。とか、右の男性の言い分ももっともだけど、左の男性をそこまで攻めたってしょうが
  ないよとか。


 ■ STEP3  相手の無意識なシグナルを捉え、本音を理解する

  相手がどう思っているかを理解するのには、 相手が無意識のうちに発しているシグナルを捉えることが助け
  になります。わかりやすいシグナルの例は、話している話題に興味があると身を乗り出す。逆に、足組みは聴
  きたくない、もしくはやっかいだなという意思表示。
  
  よくみかける仕草の例をご紹介します。

   ・髪をさわる              落ち着かない、不安
   ・頬杖をつく              満足していない
   ・腕時計にさわる、腕を組む       緊張、不安
   ・足を組む               リラックスしたい、緊張
   ・人より先に足を組む          リーダーは俺
   ・頻繁に足を組みかえる         イライラしている
   ・舌を見せる              今は放っておいてくれ
   ・顎を突き出すしぐさ          相手を見下している
   ・早口                 不安、恐怖、あせり
   ・小さな声               自信がない
   ・自分の机を私物で飾る         なわばり意識、他には協調できない
   ・常にタバコに手を出す         緊張からのがれたい、ストレス過多
   ・タバコを灰皿に強く押し付けて消す   強い意志、納得していないのを隠している
   ・うなずきのタイミングが合っていない  興味がない
   ・身振り手振りが大きい         是非聞いて欲しい
   ・相手と距離をあけて話す        本音を言いたくない
   ・貧乏ゆすり              飽きた、欲求不満
   ・眉の付近を触る、隠す         不快な気持ちを隠したい
   ・口や鼻を触る、覆う          嘘をついている
   ・手を隠す、拳を握る          嘘をついている
   ・視線をそらす             辻つま合わせを考える(嘘をついている)
   ・視線を無理に合わせる(女性の場合)  嘘をついている
   ・電話中の落書き、コードさわり     忍耐
   ・自分は不幸だと言う          相手への嫉妬、ねたみ
   ・話し方が丁寧で堅苦しい        相手に反発している
   ・相手を呼びつける           なわばり意識、虚勢、不安

  もちろん誰にも当てはまるとは限りません。あなたの周囲の方が実際はどうなのかを観察することも、相手
  の仕草からわかる本音を理解することにつながります。

  相手が、あなたと親しく、あなたの考え方の間違いを適切に指摘してくれるのなら良いですが、そうでないな
  ら、相手がどう思っているかを考えることが、自分を客観的に見つめる手助けになります。



■ STEP4  背景を考える

  自分を客観的に見つめるには、単に、
なんだ○○と思ってたのかと思うだけではなく、何でそう思っているの
  かと背景を考えることも必要です。

  相手の立場や考え方の背景がわかってこそ、相手の思いが理解できるのです。あたりまえのことですが、
  中々相手の背景を考えるまではできません。 だからこそ、効果的なのです。

  なおかつ、常に相手の立場や考え方の背景を考えることは、自分を客観的に見つめる習慣を作ってくれます。


  彼の仕事は○○だ。だから△△という責任を負っている。 だから□□と考えて当然だ。でも全体最適で考え
  ると、私の意見と彼の意見の最大公約数を見つける必要がある。 というように考えてみませんか。

  当たり前だけど、できていないでしょ。


 ■ STEP5  修正することは恥ずかしいことじゃない

  コンプライアンス(法の遵守)という言葉が流行っています。
  企業が利益を追求していくと、どうしても法の逸脱という行為が起きやすい。 自分達の目線でしか、自分達
  の企業活動を考えていないからです。

  コンプライアンスを真剣に考える企業は、外部の方の監査を受けたり、社外取締役を配置したりしています。
  どうしても、社内の人材では、ものごとを客観的には見れないのです。
  
  自社の企業活動を客観的にみれない企業は、結局、摘発されマスコミにもたたかれる世の中になってきまし
  た。また、仮に、法律を守っていたって、社会に迷惑をかけていれば問題にされます。

  法の遵守が出来ない企業は、生き残れない。社会に迷惑をかける企業は、消費者から敬遠される。
  まあ、そこまで大きな話でなくても、あなたの活動が客観的にみて正しいかどうかを考えて、修正していきた
  いなら、社外のできるだけ多くの方とコミュニケーションを持つことがあなたの社会性を高め、客観性を向上
  させることにつながります。

  常に広範囲に意見を求め、より正しい方向に自分を導く。 つまりメタ認知による、常に自分を見直し修正し
  ていく行為は、決して恥ずかしいことではないですよね。







                                                 


Mail11 プラス思考を作る



  書店にてモチベーション啓蒙本を立ち読みしていると、一風変わった本がありました。
  プラス思考の是非、というよりプラス思考が否定されています。プラス思考は疲れる、から始まって プラス思
  考の者は物事を都合よく解釈してるだけで本質を見てない。プラス思考はリスクを見落としがちとまで、延々
  と否定の嵐です。

  ふざけた本だと思いつつ、ぺらぺら見ました。でも、決してマイナス思考を奨励しているわけではない。結局の
  ところ、その本の筆者は、平常心やあせらず、あわてずコツコツやることを奨励してたのです。

  私自身は、プラス思考の方は尊敬しますし、自分も常にプラス思考でありたいと思っています。でもマイナス
  思考の部分もちらほらとして、プラスになりきれない。所詮は一般人。結局は平常心で、あせらずコツコツやれ
  ばいいやと、自分を納得させてます。先ほどの本の術中にはまったようなものです。

  しかし、どんよりとしたネガティブな上司がいるよりは、ポジティブで皆を元気づけるような上司のほうが、1日
  は楽しいし、部下がやる気になりやすいのではないかと思います。

  この項では、言葉(セリフ)を上手く使って、部下も自分もプラス思考になることを考えてみます。


  STEP1 やる気をうばうセリフ

  何が後ろ向きかって、一生懸命やっている部下の仕事の内容を否定することほど後ろ向きなことはありませ
  ん。絶対にいけません。 そんなことするはずないよって、皆さん思われるかもしれませんが、大事なのは、
  あなたではなく、部下自身が否定されたと思ったかどうかです。

  ● 部下の努力を否定するセリフ  
    例えば部下に作ってもらった資料を受け取って、

      部下  「大丈夫でしょうか。この内容で。」
      
上司A「
たいした書類じゃないからいいよこれで。」(中身も良く見ずに)

      上司B「頑張ったな。よく出来てるじゃないか。詳細はあとでチェックするけど、修正が必要な時は頼
           むよ。ありがとう。」 (嬉しそうな顔で)

    上司Aの応対は、何気ない一言であったり、安心させるための一言かも知れませんが、部下が次もきち
    んとした資料を作ろうという気を奪います。
    上司Bの応対なら、次もしっかり作ろうという気になるかもしれません。


  ● 失敗をした部下に対して、行動ではなく性格を否定するセリフ  
    「
そんな考え方だから、何をやってもだめなんだ
       → 本人は、「君の存在価値はない」 と言われた気がします。 


  ● やってもないうちから無理だと決め付けるセリフ

    「
まだ、君には無理だろう」  → 本人は、「君なんかダメだ」 と言われた気がします。
    今の世の中、上司の態度に怒り、発奮して頑張るような若者はめったにいないでしょう。
         
(これも立派な決め付けかも知れません。失礼しました。)

    何気ないセリフが、どう受け取られているか、日頃から注意しましょう。


  STEP2 やる気を引き出すセリフ

  部下にやる気を出させる。どんな会社の例規にも書いないと思いますが、上司としての義務でしょう。
  ほとんどの方は同意してくれますよね。でも、実際に部下にやる気を出させる行動をするのは結構難しいも
  のです。

  部下指導のスタイルは人それぞれあるのでしょうが、自己申告やヒアリングのを行えば一定の傾向が出ま
  す。上司の能力を認めている部下は多いものの、上司の指導力を認めている部下ばかりではない
  あなたの会社も同じでしょう。

  調査やアンケートの数字のマジックで、最高を求める回答者がちょっとでも気に食わなければ点数を低くす
  ることはあります。
  でも、部下がレベルの高い指導を求めている事自体は間違いないでしょう。贅沢な望みだ、そこまでは面倒
  見れないと考えれば、チームとして仕事の成果を出すことは難しくなってしまいます。


 ★ やる気にさせるセリフ ★

   コーチングのスキルを使って部下をやる気にさせるセリフを考えてみましょう。   

   ●
「君の
やりたいことは何だ。」「よし、やってみろ
     やりたいことをやってよいと言われたのだからやるでしょう。 定期的に報告を受けながら、進捗や脱
     線を監督しましょう。   

   ●
君に任せた。」 「大丈夫、俺がついている。まずはトライしてみてくれ。」
     任せるだけでなく、困ったときにはサポートがあることも伝えます。

   ●
「いいじゃないか。
良くまとまってるよ。
     「完璧ではないが、良く出来てるよ。
次も頼むよ。
     「ちょっと直せばいけるよ。」
     受入れられる結果であるなら、良い部分をみつけて誉めます。難があっても頭ごなしに否定せずに、
     「頑張ったね」等 努力した事実は誉め、ダメな部分はきちんと指摘して直させましょう。

   ●
「君はどう思う。」 「
いい意見だ。判断の参考にさせてもらうよ。」
     君は一人前だと認め、意思決定への参加意識を出来るだけ高めます。


 ★ 共感する ★

  最近、人事関係者の間で「共感」と言う言葉が流行っているのを知っていますか。 
  部下や、同僚の気持ちになって考える。「
EQ」とも言い、評価の尺度の一つにしている会社もあるよう
  です。

  例えば、部下の仕事がうまくいったとき、部下と同じように喜ぶ。それも共感です。
  コーチング手法の一つのペーシング(相手に合わせる、相手の言葉を使う)もその根底には共感が必要
  です。

    部下 「今日は大変だったんです。」
    上司 「そうだよね、大変だったよねえ。」

  相手に合わせるのは簡単ですが、相手の気持ちに共感もせず、心底大変だったと思ってなければ上辺
  だけのセリフになってしまいます。



 ★究極のセリフ「ありがとう」★

  部下の行為に対して、きちんと「ありがとう」を言う。単純明快ですが、心からの感謝を言葉で示すこと
  は、部下のやる気を引き出す上で重要です。感謝されれば誰でも、次も頑張ろうと思います。 奥様に
  も効き目のあるセリフかもしれません。が、本当に感謝していなければダメですよ。
  相手の行動を当たり前だなんて思っていたら、「ありがとう」はすんなり出てきません。思っていても口
  に出していない。言葉が相手に伝わってないということも多いものです。
  是非はっきりと相手に伝わるように 
「ありがとう」 を言いましょう。


  STEP3 自分自身のやる気をコントロールする

  席を立つとき、「よしっ」とか 「どっこいしょ」 と言うでしょう。これは自分の立つ気を後押しするセリフ
  なのです。人によっては口癖にもなってます。
  朝、布団の中で、「よし、起きよう。」言ったことあるでしょ。私も毎朝、丸山が「今日も一日V(ブイッ)と
  いこう」と言うスタミナドリンクのCMを思い出して家を飛び出してます。 (暗いうちに家を出るので)

  ちょっとしたセリフや口癖で、自分の気持ちがさらにマイナスになったり、プラスになったりするもので
  す。 高見盛が取組みの前に気合を入れるのと同じつもりで、強く自分を意識し、ポジティブなセリフを
  言ってみませんか。


  「今日はバリバリ働こう。」でもいいですし、
  困ったとき、「大丈夫、なんとかなる。」とか 「俺なら乗り切れる」とか、
  また、「不可能はない。」 と自分を勇気づけてもいいのです。
  総務マンとして行事運営の機会が多い私は、大きい行事の度に言ってきました。
  「ようし、準備OK。いってみよう。」

 


★ 自分の背中を自分で押す ★

  最近、ドラマやCMで時々耳にするフレーズ、 「自分へのご褒美に買っちゃいました。」 
  買いたきゃ勝手に買えばいいのですが、自分の背中を自分で押すセリフとして実は私も多用してお
  ります。

  そんなこと言わなきゃ何かを買えないのかと言われそうですが、今まで頑張ったやる気を次につな
  げる意味でもいいセリフだと思っております。



  STEP4 前向きな質問(オープンクエスション)

  
失敗を逆手に取って、それを反省、フィードバックの機会と考え、前進につなげる。
  かなりポジティブな行為です。 前向きな質問がそれを実現します。

  失敗した部下に 「何やってるんだ。」(詰問)ではなく、
    「何が原因で失敗したんだ?」 「君が思いつく改善方法は?」 
    「対策立案のいい機会だ。2度とやらないためには、何ができるかな?」 
    「今、君にできることは何がある?」 等の質問をします。前向きでしょう。 もちろん自分自身に対
    しても使うことができます。

  
失敗した時に使える前向きな質問
は色々あります。
    「どうなっちゃうのかな、考えてみて?」 「それで、困るのは誰と誰?」
    「謝って済まないのはどの部分かな?」 「どうすれば、リカバリーできるかな?」
     ・・・・「よし、何とかなりそうじゃないか、皆で頑張って信頼回復しよう。」 

  
部下に考える時間を与えながら、現実に対処するための質問をし、冷静さが取り戻せればしめたも
  の
です。


  STEP5 愚痴

  言ってもしょうがないこと。それが愚痴です。一日は愚痴にはじまって愚痴に終わる。そんな方も結
  構いるのでは。
  日曜の夜なんかは 「明日は会社か(やだな)」と、まだ起こってもいない未来に対する愚痴が出ます。 

  全く愚痴が無いのも変でしょう。何かしら行動して、社会と関わっていれば、思ったようにいくことばか
  りではありません。
  愚痴を言っている自分を客観的に見ると、一見してマイナス思考ですが、それでもものは考えよう、
  人前ではなく自分だけの時、 気に食わないことを愚痴として再確認する。そしてもう忘れる。
   「よし、次のことに取り掛かろう。」 忘れられなくてもくぎりをつけることで、次のスタートラインにな
  ります。

  斉藤茂太(作家・医者)さんは言っています。 
  「愚痴を言う制限時間を作ればいいんだよ。5分だけ愚痴を言って、忘れる。
  マイナス思考を逆手に取ってプラス思考に変える。いい考えです。
  でも、ある後輩が私に言いました。 「愚痴って、聞いてくれる人がいるからいいんですよ。」
  愚痴を聞いてくれる友人は必要ですね。








                                                 


Mail12  コミュニケーションの壁を崩す



  壁というのは、最近はやりの言葉です。
  人は無意識に心に壁を築き、外部との情報のやりとりにフタをします。興味のないことには、目も耳も向か
  ない。逆に言えば、 興味のあることの情報は積極的に取り込まれます。

  彼女の誕生日が近づけば、自然と周りの女性のアクセサリーやらファッションが気になってくる。
   (なりませんか。)
  車の購入を検討していれば、道を行く新車や、そのCMが気になる。でも、昨日同僚が着てた背広の色とか
  覚えてますか。

  コーチングの実践にも壁があります。コーチを受ける側の壁、コーチをする側の壁、この2つの壁について
  考えてみます。 (以下単純に部下の壁、上司の壁と呼びます)


 ■ STEP1 部下の壁

  コーチングは誰にでも効果があるわけではないと言われますが、さて、以下の@からDの方々でコーチン
  グで効果があるのは誰でしょう?

  @ 仕事のイロハ、会社の右左も分からない新人
        → 新人は、自分で考えろと言っても無理。イロハを無理やリ教えましょう。 

  A ある程度、会社や仕事の流れがわかり自分で考える経験のある者
        → 自分で考えて行動する経験が成長につながるでしょう。

  B 緊急の仕事、会社の命運を決する仕事を抱えている者
        → 危機に至らないように常に行動を監視しなければいけません。

  C 相当のベテランで、バランス良く行動し、成果が出せる者
        → ほっておきましょう。彼自身がコーチにだってなれます。

  D 自分流で突っ走るが、時には成果が出せる者
        → うまく成長に導けば、常に成果が出せるようになります。

  壁という点では、@、Dの方には壁があるでしょう。 コーチングの効果という見方では、AとDの方には効
  果がある。つまり、Dの壁は崩すべき手強い壁です。壁が崩れれば効果絶大です。

  コーチングを阻む壁というより
上司と部下の間のコミュニケーションの壁を崩すと考えたほうがいいかもし
  れません。



 ★ 20代の若者 ★

  紀元前のエジプトの遺跡から発掘された石碑に書いてあったそうです。
  「今の若いやつらは・・・」 

  笑い話ではありません、いつの世の中にも、世代間のギャップはあります。現代の変化のスピードからす
  れば、なお更です。
  大事なのは、意識の違いを責めることではなく、相手の感覚、相手の気持ちを理解することです。

  20代前半の方々を観察していて気づくのは、相手の会話に深く入ってこない方が多いことです。
  目と耳で上辺を観察してYes、No程度の返答をしている感じです。また、引き際がわからないちょっと強気
  の若者も多い。でも良く考えれば、自分も若い頃そうだったような気がしませんか? 

  彼らには経験はありませんが、時間・将来があります。彼らの行動を否定するのではなく、理解し、尊重し、
  育てましょう。彼らだって10年もすれば言いますよ。「今の若いやつらは・・・」と。



 ■ STEP2 部下の壁をくずす

  コーチング本等によると、1対1のコーチングでは、いついつからコーチングしますよと相手に言うそうです。
  さらに、一定期間のコーチングで気づいたことを本人にフィードバックする。
  でもそれは人からの指導を受入れる意思のある方に対するコンサルタント的な指導の場合だと私は思い
  ます。会社員の気持ちが分かっているとは言いがたい。

  コーチされる対象となる方が受ける第一印象は恐らく、「コーチング。何それ、新しいものか。新しいやり方
  で俺達をコントロールしようということか。」だと思います。第一印象が出来てしまえば、もう何を言ってもム
  ダです。どんな説明をしても、思考はイメージによって左右されてしまいます。


  そもそもコーチングは目的ではなく、手段ですから、コーチングをしようなんてわざわざ、相手に言う必要
  はありません。大事なのはコミュニケーションの原点に立つことです。例えば、

  
● 相手が興味のある話題について話す。
    そのためには、相手の気持ちや興味を理解することに努めましょう。

  
● 部下であっても、若手であっても一人前の社員として話しかける。
    能力が不足することと、人として扱わないことは別です。たとえば体の不自由な老人だって立派な大人
    として扱うでしょう。

  
● 自分がどういう人間なのか分かってもらう。
    仕事に関して公平で正しいやり方を常に考えていることを態度や行動で示す。
    また、仕事以外の部分で上司であるあなたが何者なのかを分かってもらうような会話を日頃からしまし
    ょう。子供のことでも趣味のことでもいいです。 仕事以外の自分と通じあう部分を作る。この人の言うこ
    となら聴くてみようか、と思う第一歩です。(でも相手の話を聴く時は、聴くに徹しましょう。)

  
● 便利だからといってEメールばかりに頼らず、直接話す。
    メールだけで、真意は伝わりません。ましてや心は通いません。

  
● 決して部下をバカにしたり、けなしたりしない。
    失敗したり、問題があったからといって人前でバカにしてはいけません。
    胸を張って言いましょう。「俺の大事な部下だ」って。

  何か、相手の居心地を良くすることばかりですが、相手が話し易い状態を作ることこそが、コミュニケーシ
  ョンの壁を崩す近道だと思います。


  注 意)
  それまでしかめっ面してた方が、コーチング研修の後、突然、ニタニタ(ニコニコではありません)と部下に
  話しかけるようになって、大丈夫かと周囲が心配したり、不気味がったりする例が世間には多いそうです。
  折角、講習を受けたのに何もしないよりはましですが、無理はせず、徐々にやりましょう。

  いままで低い声で言っていた「おはよう」のトーンをちょっと明るく変えることから始めればいいのです。
  ちょっとずつやっていきましょう。


 ■ STEP3 部下にとっての上司の壁

 ★ つまり、あなたの壁 ★

  あなたが部下にとっての壁になっているとしたら、あなたと部下の関係をあれこれ考えるより、あなたの上
  司とあなたの関係を考えたほうが分かり易い。あなたの上司は、上司としてのあなたの鏡でもあります。
  逆にあなたの部下も部下としてのあなたの鏡です。

  上司が積極的にはコミュニケーションしてくれない。あなたがそう思っているとしたら、あなたの部下もあな
  たが積極的にコミュニケーションしてくれないと思ってますよ。 きっと。

  そんなはずはない。そう思ってみても同じ。きっとあなたの上司だってそんなはずはないと思ってます。

  仕事の進捗や成果について上司に声をかけて欲しい。そう思うなら、あなたも部下に声をかけたほうが良
  いです。常に相手を自分の鏡にして自分自身を変えようと努力すれば、いつのまにか、あなた自身が作
  っていた壁は無くなるはずです。少なくとも、この人に言ってもムダとは思われないでしょう。


 ★ あなたの上司の壁 ★

  人間、個人差はあります。でもあなたの上司は、あなたより上司をやっていた期間が長いはず。 つまり、
  いろんな部下と付き合い、部下との付き合い方もあなた以上にわかっているのはないでしょうか。
  忙しい時でなければ、こちらからコミュニケーションをしようとすれば話を聞いてくれるはずです。
  それでも残るあなたの不満って何でしょう?

  例えば、自分たちのことを分かってくれないとか、一方的だとか言う批判でしょうか。それは、どこにだっ
  てあります。どこかに人間関係があれば、そこには理解と不理解は必ずあります。人のことを全て理解
  できるはずはありません。それを非難したってしょうがない。でも、もうちょっと分かって欲しい。もうちょと
  サポートして欲しい。そんなところでしょうか。

  この壁を崩す手が一つあります。


  そもそも不満って何でしょう。考えてみて下さい。
  理想と現実とのギャップ、それが不満の原因ではないでしょうか。 とすると、大きな不満の原因は、あ
  なたが上司に大きな理想を持っているからに他なりません。
    (つまり壁はあなたの側にあるのです。もちろん本当に困った上司の場合は別ですよ。)          

  自分の理想が高いことは結構なことですが、それを人に求めるのには無理があります。
    (何事にもほどほどがあります。) 

  ● 上司も一人の人間です。完璧ではありません。上司の良いところは何か?短所よりも、長所に目
    を向けましょう。

  ● どうしても気になる上司の悪いところがあるなら、上司がそういう行動をとる原因は何か?
    考えてみましょう。
    何か理由があるのかも知れません。原因をなくす手助けはできないか? また、あなたがその部分
    をサポートすることを考えてみましょう。

  自分中心ではなく、相手の立場に立って考える。それがスタートラインです。


 ■ STEP4 どうしても崩せない壁

  今回は、あなた自身の壁(上司の壁)、部下の壁を崩しコミュニケーションを増やすという解説をしまし
  たが、世の中にはどうしても崩せない壁はあります。

  何をしようが受入れない方、会話をすること自体がムダに思える相手って出合ったことはありませんか。
  コミュニケーションが成立しない、テコでも変わらない。どうします。あなたの立場として、無視したり知
  らんぷりして済むならそれでもいい。
  でも仕事を指示したり、命令されたりする関係であれば、そうはいきません。
  
最後は、仕事を通じた関係を確固たるものにするしかないでしょう。

  
● 例えば、命令の仕方、指示の受け方を明確にする。
    指示書や確認書に近いかなりきちっとしたメモにして、その上で「何を、いつまでに、どこまで」やる
    のか等の確認事項をメモに追記する。指示した場合もノートなどにきちっと控えておく。コミュニケ
    ーションの不足を補うわけです。

  
● 相手が他部門の方なら、部門間の取り決めとして仕事のルールを作る。
     (例えば、書類の回送基準等、最低限のルールを作りましょう。)

  
● そしてもう一つ、相手が困っている時には、最優先かつ積極的にサポートをする。
    そのためには、相手が困っていないか、観察も必要です。 コミュニケーションの不足による突発事
    項を防ぐためです。いい会話は成立しなくても、信頼の芽は生えてくるかもしれません。
    そこまでできないよと思う方も、仕事の責任の範囲内でなら出来ると思います。


                                                 


Mail13  相手を理解する心EQ



  皆さん、EQという言葉を聞いたことがありますでしょうか。
  感情知能(Emotional Intelligence=EI)というのが語源なのですが、IQ(知能指数)をもじって一般
  にEQと言います。EIQ(心の知能指数)といったほうが言葉としては正確なのかも知れません。

  EQ(心の知能指数)が高い方は、自分自身の感情や対人関係での共感をうまくコントロールし、人
  間関係を土台にした現代社会をうまく生き抜いていくことができると考えられています。


  EQとしてあげられる能力には以下のようなものがあります。 (一例ですが)

  ● 自分の感情の状態を正しく自覚し、適切な決断を行う力
  ● 自分にとってマイナスになる不安、怒りの感情をコントロールする力
  ● 自分のモチベーションを高めるプラス思考
  ● 相手の感情や心の動きを理解する力 (対人共感力)
  ● 集団における協調性                         




  また、IQは訓練してもほとんど向上しないとも言われますが、このEQは訓練を積めばそれなりに高ま
  ってくると考えられており、対話の失われつつある学校での教師と生徒の関係、家庭での親子関係の
  回復にも役立つのではないかと考えらております。

  処理能力(IQ)で個人を判断する時代から、EQを高める心の教育の時代への転換が叫ばれている
  わけです。
  まだ一部の研究者が提唱し、雑誌が取り上げる程度ですが、ニーズがあるのは事実でしょう。

  もちろん、会社における上司と部下の関係においても当てはまります。


  そして、このEQを高める方法について興味を持ち、色々ひも解いてみると、コーチングとの奇妙な一致
  を見つけました。以下の
EQ能力向上方法を見て下さい。

 
 <EQに関する能力を高める方法>

  ■EQの能力に関する要素      ■EQ能力を高めるためにすること 
  1)自分を客観的に見つめる     自分自身が何者なのかを整理してみる
  2)対うつ             自分の良い部分、出来た部分を前向きに確認
  3)対ストレス           リラックスを心がける
  4)感情抑制            口に出して怒る前に1分間待って考えてみる
  5)自分に自信を持つ        過去の成功体験を確認する
  6)精神的強さ           ビジョンを持ち、プラス思考で考える
  7)割り切り            失敗は成長の糧と考え前進する
  8)自分の感情を適切に伝える    意思や感情をきちんと整理して伝える
  9)身振り手振りによる表現     ジェスチャーや声のトーンに注意する
  10)自己解決            まずは自分で考えてみる
  11)コミュニケーション能力     相手の話を最後まで聴き、理解に努める
  12) 相手の考えを受入れる柔軟性   感情でやみくもに否定せず、的確に判断する
  13)人の感情を理解する       言葉以外の部分にも注意して相手を観察する
  14) 現状の客観的把握        周囲を細かく確認し、適切な判断をする


  どうです。
  コーチングにおいて、自分自身を確認したり、コミュニケーションを効果的に行うために実施することと
  全く面白いほど一致していると思いませんか。


  決して、コーチングスキルを磨けばEQ能力が高まるということではなく、コーチングを効果的に行うた
  めにはEQ能力が必要だし、EQ能力が十分に高い方は、コーチングということを特に意識する必要も
  なく、部下・同僚、家族など周囲の方や自分自身を深く理解し、その能力を引き出す手助けができると
  いうことなのではないでしょうか。

  ビジネスコーチングを行う最終目的は、部下を育成し、業務としての成果を上げることではありますが、
  成果そのものを目的とするのではなく、 部下や自分自身を理解し、その成長をサポートすること その
  過程を目的とする と再定義してみてはどうでしょうか。


  コーチングは手段であって目的ではありません。 
  また、コーチングスキルは、その性質上、身につけ使っていくものではなく、誰でも普通にやっている
  ことを意識して実行するだけのものであり、その根底には、相手や自分自身を育てていこうという真摯
  な思いが必要です。

  目的がなければコーチングスキルを部下育成に活用しようという気が起きるはずもありません。
  部下や後輩だって、単に成果のために育成してもらいたいわけではなく、例えば自己実現など多様な
  目標があるはずです。

  是非、EQ ≒ 部下や自分自身を理解する ことを目的にしてみませんか。
  
  会社や仕事に生きがいを感じるための究極の思考方法かもしれません。
  結果として、仕事の成果だってついてくるはずですよ。 きっと。







                                                  


Mail14  対人共感力でコミュニケーションの扉を開く



  ■ その場の空気を読む

  いちいち人の気持ちを考えてたら何も出来ない。
  そう考える自信たっぷりの方は世の中には大勢いるような気がします。
 
  でも少なくとも、客先や上司に話をする際に、相手が心に余裕がある状態なのか、いらいらしてたりし
  ないかと観察することは、その後の展開を左右します。

  対人共感力のある方は、積極的に人の気持ちを探ろうとしなくても、自然とその場の空気が読めるも
  のです。でも不思議なことに、全く空気が読めない方だって結構存在します。

  例えば、電車でドアのそばに乗っていて、駅に着くと一旦降りて、他の乗客に道を譲ることが習慣であ
  れ何であれ、自然にできる方は、対人共感力の芽があると言えます。

  マナーとしては当たり前のようですが、それが出来ない方も世間では見かけます。
  でも、一般的には、いい齢をしたまともな社会人なら、ある程度人の気持ちを考えられるでしょう。

  つまり、人との付き合いに慣れることで、対人共感力は鍛えられるものなのです。


  なのに、自分の部下や、仕事の相手に対しては、敢えて相手の気持ちを無視しているように振る舞う
  方をよく見かけます。対人共感力は相手を選ぶのかもしれません。

  言い換えれば、対人共感力には自分でフタをすることも出来る ということです。


 ■  「つー」「かー」に代わるコミュニケーション

  今時、上司と部下の線を引くため、そんな理由だけで部下の気持ちを無視したり、対話を放棄したり
  してはいませんよね。

  もちろんリーダーによって、自分のチームや部下の管理手法は色々あります。切羽詰ったときに取
  りあえず何も考えずに行動してもらうことだってたまにはあるでしょう。
  でも、きちっと納得せずに成果だけは確実に出す部下や、十分なコミュニケーションなしに、こちらが
  描いているような方向にきちんと進んでいく部下を見たことは一度もありません。

  「つー」「かー」の仲というのは、何年も一緒に同じ作業を繰り返して初めて実現できるのです。

  少なくとも、部下は機械でも歯車でもないし、自分自身の分身でもないので、かなり積極的にコミュ
  ニケーションをとらなければ、思ったようには動いてはくれません。

  断言しますが、十分なコミュニケーションのないチームは十分な成果は上げられないでしょう。
  1人で考えるより2人や3人、さらにはチームで考えたほうが最適な解がでる可能性は高いし、状況
  対応力も増大します。
  クイズ番組を見てても、きわめて難しい問題に、誰か1人くらい正解する人がいるでしょ。
  それがいい証拠です。ちょっと乱暴な理屈ですね。すみません。
  でも十分なコミュニケーションがなければ全員が同じ方向を向くことはできません。
  軍隊ではないのですから。


 ■ 対人共感力でコミュニケーションの扉を開く

 
★ 共感の第1ステップ オープンマインド ★

  相手の心を開くには、まず自分が心を開くことが必要です。
  相手が話しやすくなるように、日頃から自分のことを話すようにし、自分がどんな人間かわかっても
  らうとともに、話を聞くときはじっくりと耳を傾けて自分の主張をはさまずに聴き、かつ秘密は守るこ
  とを態度で示しましょう。要は安心して話せる雰囲気を作ることです。


 ★ 共感の第2ステップ 言葉に出さないコミュニケーション ★

  以前、コーチングスキル解説の中で、身振り・手振りによる意思伝達を効果的に行うことを解説しま
  した。また相手の無意識なシグナルを捉えることの有効性も解説しました。
  この2つのスキルに磨きをかければ、今まで異常に人の気落ちを理解し、積極的に自分の気持ちを
  伝えていくことも可能です。

   Mail03 「身振り手振りが意思を伝える」 
言葉で伝わるのは想いの30%だけなのです。
   Mail10 「自分を見つめる客観性 メタ認知」 
無意識なシグナルを捉える方法が載ってます。


  部下が思ったとおりに動かない、部下が勝手なことをしている と言う上司の多くは、部下との十分
  な対話が出来ていないような気がします。
  そして例えば、自分に反発する部下の気持ちが分かっていても、そんな共感にはフタをしてしまう
  のではないでしょうか。


 ★ 共感の第3ステップ  状況を把握する ★

  自分や周囲を客観的に観察することから始めます。 (コーチングでいうところのデソシエーション)
  ミーティングをしている時など、話が過熱してしまったら、話の輪から一歩下がって観ている自分を
  想像してみます。
  イメージが湧かないようなら、自分たちのミーティングをTVの画面で観ている自分を想像してもいい
  かも知れません。話が過熱した理由や、自分や相手が何故怒ったのかと映像を観ているつもりで想
  像してみます。
  自分の言い分、相手の言い分を第三者ならどう受け止めるか。
  そんな想像をすることで、次第に自分の置かれた状況を客観的にみる習慣がついてきます。

  常に客観的状況把握ができるようになれば人の気持ちも理解しやすくなります。


 ★ 共感の第4ステップ  相手と同じ気持ちになる ★

  相手の気持ちを理解する。といっても別にやっかいに思う必要はありません。
  例えば、相手の行動を興味を持って見つめ、ちょっとした感謝の気持ちを忘れないことがそのスター
  トラインです。

  頑張ってくれていることに感謝する。 書類を仕上げてくれたことに感謝する。 無理をさせた時には
  悪かったねと声をかける。 
  そんな心遣いをもう一歩進めて、忙しかったよね、大変だったよね、楽しかったよね と相手と同じ気
  持ちになっていく。それだけでいいのです。


  何だか人の気持ちが分かるような気がしてきませんか?

  まあ、そんなに簡単ではないかもしれませんが、あなた自身がその気になって、日々、共感力を育
  成していけば、コミュニケーションの扉は確実に開きます。

  繰り返しますが、
  いい齢をしたまともな社会人なら、ある程度は、人の気持ちを理解できる はずです。
  もう一歩踏み出すだけで、部下や同僚の気持ちがもっともっと理解できるようになるかもしれません。







                                                               


Mail15 
答えは相手の中にある



  答えは相手の中にある。 コーチングでよくいわれることです。

  何をすればいいのか、何をしたいのか、本当の答えは、本人の中あるということです。つまり、あなた
  自身の疑問や悩みの答えはあなた自身が知っているということです。
  でも、自分自身ではそれには気づいていない。だからこそ、その答えを引き出す効果的な質問をして
  くれる相手、例えばコーチが必要なのです。

  それでは、相手の中にある答えを引き出す方法を考えてみましょう。



 ■ 自分の考えを言わない

  あなたは、友人や後輩から相談を受けた時、どんな対応をとっていますか?

  例えば、会社の後輩があなたに相談に来た時、とくとくとあなた自身の成功体験や、問題を解決したや
  り方、今の会社でしたいい思いの経験を語ってはいませんか、次の項で説明しますが、彼が本当にあ
  なたと同じいい思いが出来るという確信や、客観的証拠が無い限り、彼にそれが確実に再現できるよう
  な言い方は避けるべきです。

  もちろん、客観的過去の事実として、こういうやり方もうまくいった。と言うのはいいでしょう。
  できるだけ客観的な情報を提供すること。それが、相談相手の彼が客観的に物事を判断するための前
  提になります。

  あなたがどう思うかというのは、相手にとっては、客観的な意見として受け取られがちですが、単なるあ
  なたの主観的な意見でしかない場合が圧倒的に多いはずです。
  あなたが賛成なのか反対なのか、客観性に欠けるそんな意見は相談してきた相手にとっては全く参考
  にはならず、意味のないことなのです。 

  客観的情報というものは存在しても、客観的意見を言える方は、まずいないでしょう。

  くれぐれもご注意下さい。あなたは、あなたの考えを言ってはいけないのです。
  相手の中にある本当の答えを聴きそこないますよ。

  そして、話をよく聞いた上で、彼自身の答えを引き出すような質問をする。コーチとしてのいつものやり
  方です。


 ■ 相談を受けた時点で答えは決まっている

  あなたが友人や後輩から相談を受けた時、すでに答えは判明しているって知ってましたか?
  例えば、会社の後輩が、転職を考えているがどう思うかという相談を直属上司ではないあなたに相談し
  てきたとします。そんな時はまず、あなたは自分の現在の境遇を思い出して下さい。
  特にその相手から、あなたはバリバリ仕事をやっていると見られているのか、まじめにコツコツやる社員
  と見られているのか等、どう思われているのかが重要です。


   たとえば、今の会社でバリバリやっている先輩のあなたに、後輩が転職の相談に来た。
    どう思います。
    → そう彼は、会社に残って頑張ったら、どんな感じかなと思っている。彼は、会社に未練があるの
       です。今の会社でのやりがいがどの程度の素晴らしさかを知りたいのです。もちろん本人がそ
       れに気づいているとは限りません。


   逆に、まじめでコツコツやっているあなたに、後輩が転職の相談に来た。特に、彼の転職先が
    バリバリやれるような企業だったらどう思います。
    → そう彼は、ほとんど転職先に想いが傾いている。 今の会社でまじめにやっているより、転職先
       でバリバリやってることの楽しさを確認したいのです。 こちらも同じく、本人はそんな自分に気
       づいていない。


 ■ 想いを聴いてみよう

  さあ、相談を受けた時、あなたは何て言いますか。
  今の会社もバリバリやれて楽しいよ。 それとも、今の会社はコツコツやっていれば認めてもらえるよ。
    ・・・・・ どちらも、コーチとしてのあなたの答えではありません。

  コーチがやることは、相手に客観的情報を与え、自分で判断させることです。仕事を進めさせるため
  に背中を押してあげるケースとは違います。 もちろん、転職先の企業の状況に詳しいわけではあり
  ません、あなたが彼より詳しいのは、今いる会社についてと、例えば、人生の長さから来る何かしらの
  苦労経験。

  「君は、転職に何を求めているの?」 そんな質問で相手の想いを再確認してください。
  相手の答えが何であれ、それが現在の会社で満たされるのか、無理なのか あなたの経験や知識で
  わかる範囲内のことを伝えるしかありません。 想像や憶測は無意味です。
  だって、彼があなたほどバリバリやれるのか、あなたほどコツコツやれるのか、将来はわからないじゃ
  ないですか。

  「君なら頑張れる」でもなければ、「君は苦労するよ」でもないのです。
  答えは彼の中にあり、それは最初から決まっているのです。

  「実際、君がしたいことは何なの?」じっくり考える時間を相手に与えながら。言葉やニュアンスを変え
  て、しつこく質問してみてください。

  「それって具体的にはどんなこと?」 「君が満足できる状態は?」というように曖昧な部分を具体化
  する質問をするのも、相手の本当の思いを引き出すのに効果があります。


  もちろん、上司として転職の相談を受けたのなら、彼が今後とも会社に必要な人間なのか、やっかい
  ものなのかを考えて前者なら、引き止める。それだって正解です。

  しかし、一旦転職を考えた人間を引き止めて、20年後に恨みを言われないと、あなたは保証できます
  か。また上司に相談しに来た時点で、彼の考えは固まっているでしょう。あなたは相談しに来たと思っ
  ていても相手は報告に来ただけかも知れませんし。

  あなたは、純粋に上司なのか、それとも純粋にコーチなのか、それはあなたの生き方次第かもしれま
  せん。
 
  でも、あなたが、部下との日常的なコミュニケーションを十分におこなっていたら、彼は今の仕事にもっ
  とやりがいを持っていたかもしれませんし、転職しようとは思わなかったかもしれません。
  そう思いませんか。


  どうですか、もちろんあなたにはあなたのやり方がある。その通りです。
  でも、相手の求める答えは相手の中にあるのです。 そして、同じように、あなたの答えはあなたの中
  にあるのです。







                                                 


Mail16  部下からのコミュニケーション



  このページの原型であるメール通信では、 上司、部下の双方向のコミュニケーションを奨励しているつも
  りなのですが、役付職の方々に部下指導のヒントとして配信しておりますので、結局のところ上司側から
  の働きかけを求める内容となっています。

  しかしよく考えると、部下や後輩の立場の方、つまり若手〜中堅社員の方々からも上司に対してコミュニ
  ケーションを求めたほうが効果が上がるはずです。

  今回は実際に、現状のコミュニケーションの問題点を探り、双方向のコミュニケーションを効果的に行うこ
  とを考えてみます。


 ■ STEP1  コミュニケーションの正体を探る

  そこで実際のところどうなのかと社内でヒアリングをしてみました。


 
★ Part1 若手層(20代)の方々 の反応

  「上司の方とは、ちゃんと会話してる?」    「毎日、話してますよ。」

  「今週、何回くらい2人きりで話をしたの?」  「うーん。 2人でというのは全くないですが。」

  「この1ヶ月でなら?」  「やっぱり全然ないですね。でも雑談はよくしてますよ。」

  「自分から話しかけて、将来こんな仕事がしたいとか、勉強がしたいとかは言わないの?」
  「えっ、自分から言ってもいいんですか?」  「当然だろ。君の上司なんだから。」


  複数の若手社員から、得られた応えはほとんど同じような内容でした。
  中には、自分からは、先輩や上司に真剣な話しをしてはいけないと思っていたという者までいます。

  もう一つ、「業務のマニュアルがもっと揃ってるといいのに」という要望も数多くあったのが気になった
  ところです。


 ★ Part2 中堅社員(30代)の方々 の反応

  「最近、上司や後輩と会話してる?」
  「上司と会話ですか。一方的にゴルフや野球のことを話してるので、相槌はしてますけど。」

  「どういう方向で経験を積みたいかとか、こんな勉強してみてはどうかとかは?」
  「無いですよ。上司にそこまで期待しても・・・。」 言葉が淀みます。

  「後輩に対しては、進路のこととか聞いてあげてる?」
  「話はするけど、そこまでいかないですね。 まだ真剣には考えられないみたいだし。」

  後輩の面倒をみる気はあるものの、中々深い会話にはならないこと嘆いている方がいる反面、この
  世代、この立場の方々は、全体的に白けているような印象がありました。 しょうがないよ と。


 ★ Part3 経験の長い役付職の方々 の反応

  「部下との会話。しょっちゅう声はかけてるよ。やることはやってるよ。
  でも、それ以上やったって、真面目な話になんかならないよ。 用件が済んだらそれでおしまいだよ。」


  声をかけることは、コミュニケーションの第1歩ですが、それだけでは、双方向のコミュニケーションが
  出来てるとは言えないでしょう。




  もちろん、中には中身のあるコミュニケーションを行っている方もいるでしょうし、義務感で部下と会話
  をしろと言っているわけではありません。
  そもそも、仕事の成果が上がればいいだろという価値観に固執する方もいるかも知れません。

  しかし、私の目の前にいる現在の中堅、若手の社員の方々が、10年後に部下や後輩を効果的に育成
  している姿を想像することは、どう考えても無理な状態です。

  彼らはある日突然、退職するかも知れませんし、実は既にストレスに蝕まれているのかも知れません。
  そして、誰もそれには気づいていないだけなのかも知れません。誰の責任なのでしょう。

  社内の管理職との意見交換会や、アンケートをとってみたりした結果は一様でした。
  「部下とは、十分なコミュニケーションができている。」 5段階評価なら、ほとんど 5 か 4。

   → でも、これが上司側から見た 「十分コミュニケーションできている」 の正体です。

      アンケートは5割以上差し引いて考えるべき との教訓です。


  そして気になったこととして、若手社員が欲しがっているのは、 「上司や先輩との中身のある会話」 
  より「業務の手順や詳細が分かるマニュアル」なのかも知れないということです。
   (決め付けてはいけませんが。)


 ■STEP2  ノルトの詩に学ぶ

  先日、皇太子様が誕生日の挨拶の中で、ドロシー・ロー・ノルトの詩を紹介していました。

  「批判ばかりされた子どもは、非難することを覚える。
   殴られて大きくなった子どもは、力に頼ることを覚える。 (中略)
   しかし、激励をうけた子どもは、自信を覚える。寛容に出会った子どもは、忍耐を覚える。
  ・・・・(まだ続きます)」


  皇太子様の言いたかったことは別として、
  心理学上も、体罰を与えられた子供は大人になってから自分の子に体罰を与えることが多いそうです。

  同様に、前向きな教育をされたことがない社員は、部下や後輩の教育を系統立ててできるような上司
  や先輩には育だちにくいでしょう。
  彼ら自身が将来、自分の技を盗めとか、叱咤激励することが教育だ。という上司や先輩にもなりかね
  ません。


  もし、あなたが上司や先輩に叱咤激励されて、相手の背中を見ながら仕事を覚えた経験があるなら、
  自分が無意識のうちに同じことをしていないかどうか、チェックしてみて下さい。



 ■ STEP3  グッドリスナーは興味を持って聴く

  Part3のヒアリングの中で気付いたこともあります。

  部下にはよく声をかけているが、担当業務に関する指示・報告以外で深い話にはならないとおっしゃる
  方の次のセリフは、大抵「コーチングは役に立たない」なのです。

  皆さん、部下にコーチングをしていた様子はないのですが、自分から声はかけた、でもそれ以上のこ
  とは何も起きなかった。(場合によっては会話すら成立しない。)
  そして、やはりコーチングは役に立たない。 と思われているのではないでしょうか。


  声をかけたけど、会話にはならないよ。 そんなこと言わないで下さい。
  あなたの会話が一方的 かつジャストミートな話題でないのは、上司であるあなたの責任なのです。

  もしかしたら、部下の発言を遮ったことも一度や二度ではないのでは。そりゃあ、部下のほうだって必
  要以上に会話をしたくはないでしょう。 時間のムダですもの。 そういう上司ってまだまだ多いんです。


  コミュニケーションの基本は、何度も解説しているように、相手の話を聴くことです。
 
  もし、相手から話してくれるような関係ではないのなら、相手の興味のあることについて話すことです。

  自分の興味のあることを一方的にしゃべっても、相手にとっては無意味です。
  一方通行の会話をコミュニケーションとは言いません。

  だからと言って、今まで部下に仕事以外で全く興味を示さなかった方が、ある日突然、親しげに話か
  けてきたら、自分を懐柔しようとしているなと怪しむのが普通でしょう。


  
何も、急に変わる必要はないのです。

  ★ 4月は入社や異動で、顔ぶれが変わる時でもあります。新しいメンバーに対し、ミッションを与え
    たり、業務に対する動機付けを行う機会もあるでしょう。

    今まで、どんな業務を担当し、どんな経験をつんだのか、じっくり聴いて下さい。
    「しっかり聴いてくれる上司 (≒ 何かあれば話そう)」 そんなイメージを作ることも大事です。

  
★ 6月には、目標設定面談や評価面談の時期です。 (会社にもよりますが)
     「今与えられている仕事以上にできそうに思えることは何かある?」 と問いかけてもいいし、
     「自分自身を成長させるために何か考えてるの?」 と質問してもいいです。

    単に、業務上の目標や評価を話すだけではなく、部下が自分自身のキャリアや人生の目標をどう
    考えているのかを、興味を持って尋ねてみてください。

  機会を捉えて、少しずつ会話を増やしていく。 まずはそこからスタートしてみて下さい。


 ■ 会話のスイッチを入れる

  Part1のヒアリングで分かったこととして、入社数年になっても、自分から上司に話しかけられない人
  間もいるということです。
  そんなんじゃ、今の世の中生きていけないよ。と思われるかも知れませんが、現にかなりの割合で
  存在するのです。文字通り冗談ではありません。


  もし、あなたの部下が全く、自分からは話してこない方なら、試しに、次のセリフを業務の打ち合わ
  せの合間にでも言ってあげてみて下さい。

  「疑問があったら、君から質問したっていいんだよ。」 とか、
  「仕事以外の話しをしたっていいんだよ。」 とか。

  「15分だけ雑談しようか。」 なんてセリフも実は効果的かも知れません。

  大事なのは相手の
会話のスイッチを入れてあげることです。


  若い奴は何考えているか解らない とか おとなしいやつが増えてきたな と言ったところで何も解
  決はしません。とりあえず何か仕掛けてみましょうよ。

  双方向のコミュニケーションは、あなたのチームを活性化してくれます。







                                                 


Mail17 
人の数だけルールがある(否定しない)



 ■ 人の話が聞けない理由 (何故相手を否定するのか)

  私が会社に入った時、私をリクルートした先輩は言いました。
  「世の中には色々な考え方をする人がいる。 一々否定していたら前には進めないんだ。」

  社会に出て色々経験し、私も同じような意識を持ちました。
  私の場合は、「人の数だけルールがある。」 人の意見や行動に疑問を持ったときの口癖にしています。

  誰にでも自分自身の考えがあり、自分のルールがあります。そのルールを否定していては、仕事を進め
  るどころか、その前提となるコミュニケーションすらまともに出来ません。

  双方向のコミュニケーションを育む最大のコツは、相手を自分と対等な一人の人間であると認めること
  にあると私は考えています。 自分と対等な自分の考え方(=ルール)を持った一人の人間 と思うわけ
  です。

  逆に言うと、一方的に命令したり人の話を最後まで聞けない方は、相手が自分と対等だとは思えていな
  いのではないかと思える節があります。

  決め付けるのは非常に良くないのですが、そう考えるとつじつまがあうことが多いのです。

  「俺はこう思う。」とか、「そんな考え方はおかしい。」と言って相手を否定してしまえばコミュニケーショ
  ンはそこで終しまい です。

  でも、「そう思う根拠は?」と聞かれるのなら、コミュニケーションはさらに続きます。
  例え、その根拠の中にある間違いを否定されたとしても、理屈がはっきりしていれば、納得感が高まり
  ます。

  話しは大きくなりますが、最近の我国と周辺諸国との軋轢もお互いに否定しあう前に、
  「そう思う根拠を示して欲しい。」と意思表示出来れば、だいぶ良くなるような気がします。

  でもそれが出来ないのが世の中です。


 ■ TEST あなたは相手を対等に見れてますか?

  相手を自分と対等と見ているかどうか、自分自身を振り返ってみる方法があります。

  例えばあなたの部下のAさんが遅刻することを想像して下さい。
  あなたは、Aさんをどう思いますか?

   @ 生活が乱れている
   A ルーズな人間だ
   B もう30分早起きすればいいのに
   C 何か理由があるのか聞いてみよう

  もちろんあなたにはあなたの正解があるのですが、もし、遅刻したのがあなただったとしたら、あなたは上司
  にどう思って欲しいですか。

  決め付けではありませんが、C以外の方はいないでしょう。 Cが相手を一人前として認めている唯一の考
  え方だからです。

  もし、Aさんがあなたの大事な友人だったなら、
  「遅刻せざるを得ない原因があるなら助けてあげられないか。」 と思うこともあるかも知れません。

  対等と思えばこそ、相手の行動の理由を考えることができるのです。
  あなたは、自分の部下が自分と対等だと思えていますか?

  人生経験や仕事経験の長さは違っても、自分と同じく一人前の人間。 自分と考え方が違ってもそれには
  理由がある。 是非一度そんな考え方であなたの部下を見てみませんか。
  1週間だけでも試してみて下さい。 コミュニケーションが増えると思いますよ。


 ■ 相手を否定しない (相手の存在を認めるコツ)

  相手を自分と対等な人間と認めることにもコツがあります。

    ● 常に相手の考えや行動の根拠、原因、背景を探る努力をする
    ● 価値観は多様だと理解する
    ● 自分が思うあるべき姿を人に追求しない
    ● 上下関係はその場での社会的役割に過ぎないと考える
    ● 感情的になりそうな時こそ、理性・理論でものを考えてみる
    ● 自分と考えが異なる相手をおかしいと思う自分をおかしいと思う
    ● 自分が正しいと思う理由を分析してみる



  どうです、そう難しいことではないと思いませんか?

  私の場合、前述の通り単純に 「人の数だけルールがある」 と思うだけです。 コミュニケーションを続け、前
  に進むために。







                                                 


Mail18 
今までしてきたことが報われる・セカンドメッセージ



  小学生低学年の子供が遊びでたわいもない新聞を作っていました。
  覗いてみると、 「今までしてきたことが報われる。」 今日の占いという囲みにひらがなで大きく書かれてい
  ます。

  「報われるってどういう意味か分かるの?」  私は聞いてみました。
  「頑張ったね ってことでしょ。」      ・・・・・ 正直びっくりしました。

  子供でも、 「報われる」 ≒ 「頑張ったね」 だと知っているようです。

  よくよく聞くと、腕時計型の犬飼育電子玩具「リストわんこ」 (たまごっちみたいなもの) の占いコーナー
  に出てくる言葉の一つが「今までしてきたことが報われる」な
のだそうです。


  さて我々会社人は、社内で「頑張ったね」と声をかけたり、かけられたりすることがどれほどあるでしょうか。

  コーチングではちょっとした成果や進捗を認め、本人に気付きを与え、やる気を出させることが一つのスキ
  ルとされています。
 (承認=アクノレッジとも言います。)

  進捗を認めるのなら機会は結構有りますが、仕事の成果を誉めようとすると機会が少ない。
  だからこそ、ちょっとした進捗を認める。
それがコーチング流の考え方なのです。

  でも、やっぱり「頑張ったね」と言われたほうが、 「出来たね」と言われるよりずっと嬉しいと思いませんか。


  そこで、私流の提案。 「進捗を認める」 + 「セカンドメッセージ」 です。

  単純な進捗や成果を見つけて認めるのは一般的なコーチングと同じ。
  
でも、セカンドメッセージとして 「頑張ったね」 や 「ありがとう」 を出来るだけ付け加えるのです。

  このセカンドメッセージは、あなたが心から誉めていることや心から喜んでいることを率直に伝えます。

  例えば、

    「できたね」      → 「できるようになったじゃないか、頑張ったね

    「計算合ってるよ」  → 「間違いがなくなったね、
頑張ったね

    「助かったよ」    → 「君のおかげでうまくいったよ、
ありがとう

    「間に合ったね」   → 「間に合ったじゃないか、
努力したんだね
   と一工夫。


  ちょっとやリ過ぎかもしれませんが、もしあなたが本気なら、どういうシチュエーションならどんなふうに誉め
  るか。考えておいてもよいの
です。

  そんなことを考えることも、部下指導を一つの楽しみに変えてくれます。

  そして、単に誉められた ではなく、自分がしたことが報われた。 そんな気持ちを与えることが、あなたの部
  下のモチベーションを格段に高め
てくれるはずです。

  もちろん、上辺だけで言うのでなく。 本当にそう思う誠意が必要なのですが。


  ところで、辞書を引いたところ、 アクノレッジ (=承認) には定評という意味もありました。

  たまたまではなく、必要とするときには常にパフォーマンスが発揮できる。

  それがあなた自身の定評につながるのではないかと思います。


                                                 


Mail19  部下のニーズを把握する感受性



  最近、モチベーションやリーダーシップに関する新聞や雑誌の記事を見ていると EQ(心の知能指数)とか
  対人共感力という言葉をよく見かけます。

  一般にEQの能力として上げられるのは、自覚力、決断力、自制心、プラス思考、対人共感力、協調性など
  です。

  だまって言いなりになるような上下関係が崩れてきた昨今、EQ能力を高めて、部下や周囲の方々の感情
  を正しく理解し、 適切なタイミングと表現で自分の意志を伝えていくことが、 部下指導やチームワークの向
  上には欠かせなくなっています。

  相手の感情を正しく理解するだけでなく、自分自身の感情も正しく理解・コントロールしていくことが、人間
  関係を向上には必要なようです。


  今回はわかりやすい例として、対人共感力をうまく活用し、部下指導に役立てることをご紹介します。


  
例えば、お客様がタバコを吸おうとしたら火をつけたり灰皿を用意する 
  社会人なら普通に出来る気配りです。

  この気配りでは、

    @ 相手の要求・要望を察知する
    A それに応える行動を考える
    B 適切なタイミングで実行する    という作業が自然に行われています。

    つまり、対人共感 ⇒ 判断 ⇒ 行動 という流れです。


  では、あなたの部下が、最近よくミスする そんな時はどうですか。

  
(1) 今までのやり方
     ⇒ 単に叱咤激励する。 ・・・それでミスがなくなればそれもOKです。

  (2) コーチング的に考えると
    
 ⇒ ミスを攻めるのではなく、ミスの原因をクローズアップして対処する。

  
(3) EQ能力を活用すると
    
 ⇒ 部下がミスにいたる行動をとった原因を考えていく
       @ 何故その方法をとったのか、考え方の背景に何があるか、生活に問題があるのか、心配事
         があるのではないか
       A それを無くすために自分にできること、サポートできることは何か
       B 行動に移す


  
どれが正解ということではありません。 あなた自身やあなたの部下に合ったやり方があるのです。

  
但し、
  
ここで大事なのは自分のためではなく、相手のために何ができるか≒相手のニーズは何か
  
を考えることです。

  一般に、お客様や目上の方のニーズを考えることはあっても部下のニーズを考えることは少ないのでは
  ないでしょうか。

  相手の気持ちを考える思考や行動が、ひいては部下のストレスを軽減させ本来の能力を発揮させること
  につながります。


  人のことを考えるのは苦手だなというあなた、
  第一歩として部下を観察し、部下が苦手なこと・いやなこと、今して欲しいことは何かと想像してみるだけ
  でも、あなたの感受性は強化されていくと思います。

     
・・・・・ 今日一日試してみてはいかがでしょうか。






                                                 


Mail20 
イメージの悪循環を断つ



  イメージはとても恐ろしいものです。
  私は「もみじ饅頭」を見ると必ず、広島で二日酔いになったことを思い出してしまい、なんだか気持ちが悪く
  なります。(そこまで言うとちょっと大げさですが)

  私の勤務先の方々も、TQMとかQCという言葉を聞くと、つらい資料作りの経験がよみがえるので、会話に
  出しただけで渋い顔をされてしまいます。(QCって考えや行動の整理にも結構役立つのですけどねぇ。)

  
特定の言葉が、ある一定のイメージとしっかりと結びついているのです。


  さて、あなたは、部下や上司、同僚に対して、どんなイメージを持っていますか。

  例えば、     ・ あいつは無責任。仕事は任せられない。
             ・ 言うだけムダ。人の話は聞いてくれない。

  もし、誰かにそんなイメージを抱いているとしたら、
  たった何回かの経験からくる決め付け、つまりレッテルではないと、あなたは言い切れますか。

  仕事での付き合いは、近所付き合いとは違います。
  
部下や同僚が100%の能力を発揮できてこそ、あなたのチームや会社の実力が発揮できるのです。


  レッテルを剥がし、無心で接する。
  そんなお題目では無理です。イメージは強いですから。

  もし、あなたが人を使う立場なら、相手に対するマイナスイメージについて、一つ一つ、本当にイメージ通り
  なのか、検証してみて下さい。

  検証の大前提として、

   1.人に仕事を頼む時は、
     いつまでに、どのような形で仕上げてほしいのか、注意点は何か、という情報をしっかり与えること。
   2.相手が上司なら、
     あなたの説明や提案の利点、コスト、他との比較、提案のタイミングをしっかり考えること。

  そして検証の結果。
  問題なく部下の仕事が出来上がったり、上司が話しを聴いてくれて提案を受け入れてくれたりした時は、
  あなた自身がその結果に喜び、満足し、その感覚を自分の記憶にしっかり残すことが重要です。


  イメージを拭い去るには、
  イメージと異なる事実を更に強いイメージとして上書きするしかないのです。

  是非、部下や上司を見直して、
  あなたのチームをパワーアップしてみて下さい。




                                            


Mail21
  部下が動かない理由


  「部下が思うように動いてくれない」とか「笛吹けど踊らず」とか言って
嘆いている方をよく見かけます。

  そんな方は一度、部下の立場になって考えてみましょう、 「部下が動かない」 は、実は 「部下が動けない」
  であったりもします。

  今回は部下が動けない原因を考えてみます。


  最初にちょっと脱線します、
  
小学校低学年の頃、近所の仲間で草野球をやった時のことです。

  バッターが結構いい当たりを打ちました。 しかし、彼は走り出しません。

  「回れ、回れ」 皆が叫びました。

  次の瞬間。彼は3塁側、つまり時計周りに走り出しました。彼はその日最初のヒット。しかもはじめての野
  球だったのです。
  もちろん監督なんかいませんが、打ったあとは1塁に走るんだよ、と教えた者もいません。

  文字通り彼は動けませんでした。


  彼のことを思い出し、 動けるバッターと動けないバッターの違いを考えてみました。

  動けるバッターは、
   ・ 動こうと身構えている
   ・ 動き出すタイミングを知っている
   ・ 動き出すタイミングを観察している
   ・ 動く方向を知っている
   ・ どこまで動けばいいのか知っている
   ・ 動けという指示が(監督から)出されている
   ・ 自分の意志で動いていいよと(監督に)言われている
   ・ (自分の意思で) 状況に合わせて機敏に行動修正できる


  大体、こんなところでしょうか。

  つまり、
  
ルールを理解し、準備を整え、最後の判断は自分で行う
  それが動けるバッター=動ける部下です。




  では、自分の部下に置き換えてみて下さい。 部下は何故動けないか?


 ■ Case1 全く動かない、動きが足りない

   @その仕事をやれという指示がなかった (と思っている)
   Aいつまでに、どこまでやればいいか指示がなかった (と思っている)
      ⇒ そもそも、本当に指示をしたのでしょうか? (最も大事なことです。)
        相手に伝わらなかった指示は、しなかったのと同じです。
         ※何を、何時までに、どんな方法で、どんな形のゴールで、を わかりやすく正確な言葉、できれば
          書面で伝えましょう。


   Bそれが自分の仕事とは思わなかった
   Cそこまでやらなければいけないと思わなかった
      ⇒ 仕事を任す場合、権限や仕事の範囲は明確にしましょう

   D必要な情報が足りない
      ⇒ 仕事に必要な情報は最初に全て伝えましょう

   E障害があってうまく進めない
   Fやっても、そこまでできなかった (能力不足)
      ⇒ 困ったときに相談できるコミュニケーションを部下との間に確立していますか?
         難しい仕事をさせる時には、いつでもサポート出来ることを最初に伝えましょう。

   Gやる気がない
      ⇒ 必要なのは責めることではなく、問題と解決策を探ることです。
          やる気のない理由を本人に直接聞いたことがありますか? ケースバイケースですが、あなたに解
        決できることだってあるかもしれません。



 ■ Case2 動いたけど期待と違う結果になった

   Hどう動けばいいか知らなかった (経験不足)
     ⇒ 経験や能力の不足が判っている場合、求める成果の方向性は一番最初に明確に伝えましょう。

   I方向性について指示がなかった (と思っている)
   Jやり方は自分に任されたと思っている
     ⇒ case1@、Aと同じく、指示は明確に伝えましょう。

   K任せた上で、細かな指示をしなかった
     ⇒ 任せたはずなのに文句を言ってはいけません。
          一度文句を言えば、次は自分で考えることが出来なくなります。  制限があるなら、最初に伝えましょう。


  どうですか、
  もちろん、他にも理由はあるかも知れませんが、「部下が思うように動かない」というあなたの思いを解決する鍵は、
  どんな場合でも、あなたと部下のコミュニケーションにあります。

  部下が思うように動いてくれない原因を部下のせいにしても前には進めません。「部下が動けない理由」があるなら、
  一つづつ潰していきましょう








                                                 


Mail22 
部下のやる気を奪う10か条




  部下のやる気を引き出す と言っても、
  コーチングスキルを紹介するのは簡単ですが、実際に効果を上げるのは難しかったりします。

  常に部下のことを考えたり、部下が自分で考えるのを待つことには忍耐も必要で、結局のところ、地道にやるしか
  ありません。

  何かヒントがあれば、苦労も軽減するのですが。
    ・・・そこで今回は、コミュニケーションのべからず集。
       励ましているつもりが部下のやる気をそぐ。そんな失敗にほとんどの方は気づいていません。
       ちょっと気を付ければコミュニケーションは一歩も二歩も向上するはずです。


 〆〆 ありがたいはずが、実はちょっと迷惑なパターン 〆〆

 ■1 アドバイスする ■

  任せた仕事へのアドバイスは要注意。 ・・・・・・ 部下にとって上司からのアドバイスは強制とも受け取れます。

  ⇒ 単純に自分の成功体験と重ねてはいけません。部下は部下、 あなたはあなた。ベストなやり方は違うのです。
     どうしてもアドバイスしたいなら、現状を十分把握した上で、あくまで選択枝の一つであること、選ぶのは部下
     本人であることを明言しましょう。


 ■2 叱咤激励する ■

  相手次第、特に腰の重い相手には効果があるかもしれません。
    ・・・しかし、現に能力のある中堅社員に対してはマイナス面が大です。
       じっくり考えて問題点を解決したいときに進軍ラッパを吹かれても、急かされた気になり、落ち着かない
       だけです。 また、ストレスの溜まった相手に「頑張れ」と言うのも逆効果。追い込むだけです。


 〆〆 部下の本当の能力を引き出したいなら止めましょう 〆〆

 ■3 レッテルを貼る ■

  若いから、女性だから、以前失敗した君だから、性格だから
    ・・・ そんなレッテルは多くの場合、只の先入観に過ぎません。
       部下の公平感を奪うだけでなく、あなたの判断も鈍ります。

  ⇒ 心配なら本人に聞きましょう。 「君には○○ができるか?」 
     大事なのは、本人の本当の能力を確認し、成長に繋げることです。


 ■4 批評する、評価する ■

  口に出して批評・批評しなくたって、気持ちが評価していれば部下の話を先入観無しには聴けなくなります。

  ⇒ 評価ではなく、理解することを念頭に部下の話に耳を傾ければ、コミュニケーションのすれ違いも減るはずです。


 〆〆 部下の成長を期待するなら止めましょう 〆〆

 ■5 小さな失敗を叱る ■

  子供が勉強や稽古事を投げ出す原因の一つです。ましていい大人が何度も細かく注意されたらやる気は確実に減
  退します。

  ⇒ 同じ失敗を繰り返さない限り目をつむりましょう。
     失敗は挑戦の代償。部下を成長させたい時、能力以上の仕事を任せるのは当然です。


 ■6 任せたはずのことに注文をつける ■

  任したことに注文をつけるのは、暗に、君には任せられないのだと宣言したようなものです。

  ⇒ 任すことに制限事項があるのなら、最初にキチンと言いましょう。
     定期的な進捗報告をルール化し、制限事項から脱線しない限りは任せる。それが、やる気につながります。
      (もちろん相手によりますが。)



 〆〆 これではやる気を出せと言うのは無理です 〆〆

 ■7 ○○すべきとの思い込み ■

  思い込みや自分の意見の押し付けは、前進や革新を阻害します。

  ⇒ 頭の中を一旦白紙に戻して、本当にすべきこと、その判断基準、価値基準を一から考え直してみましょう。


 ■8 上司自身にやる気がない ■

  「そこまでやらなくていいよ。」 「簡単にすましとこ。」 
     ・・・こんなセリフは、頑張っている者ほどやる気をそがれます。

  ⇒ 「簡単な仕事だからこそ手を抜かずにやろう」そんなセリフが、気持ちだけでなく、上司と部下の関係をも引き
     締めます


 ■9 能力や知識ではなく地位で指示する ■

  上司が指示・命令するのは、一見当たり前。
     ・・・でも、経験や知識、判断力があると思うからこそ部下は従うのです。
        経験豊富な部下や年齢差が少ない部下を地位で動かすのは、人事評価を楯にとった威嚇や強迫に
        もなりかねません。  特に、自分が感情的にでもなったら、部下の信頼は無くなります。

  ⇒ 部下も自分も対等な人間なんだと理解しましょう。
     その上で、部下を凌ぐ深い知識、総合的判断力、先見性に磨きをかけ、正しい理屈や熱意で部下を動かし
     ましょう。


 ■10 完結しない ■

  何となく仕事を頼まれ、何となく完了する。 部下の業務が日常の1コマにしか見えなかったりしませんか?
    ・・・部下もそう思っているはずです。仕事に張り合いなんかありません。

  ⇒ きちんと仕事を依頼し、きちんと完了を確認し、感謝する(誉める)。
     それだけでやりがいは生まれるのです。



   「部下のやる気を奪う10か条」どうでしょう。

  今週1週間の行動を振り返り、部下がどんな反応を示していたか思い出してみて下さい。私にも思い当たるところ
  は沢山あります。

  当たり前だと思っていたり、何気なかったりする上司の行動が、部下のやる気を奪っている可能性は大きいのです。

  もちろん、相手の受止め方にもよりますが、自分の行動を点検しておいても損はありません。





                                                  


Mail23
  心理的ブロックを取除け



 
■ 相手の心理的ブロックに対処しよう

  人は無意識のうちに人との関わりをブロックしています。

  例えば、腕組み、足組みは相手をブロックする態度とよく言います。例え無意識でもあなたが、ふんぞり返ってそん
  な態度をしていれば、相手の話を聴く気がないことの表明になってしまいます。相手の口だって重くなります。

  
では逆に、相手が腕組み、足組みをしていたらあなたはどうしますか?

  ● スタンダードな対処法 ・・・ 相手に資料を手渡す。

  ペーパー(資料やメモ)を見せれば、相手は前のめりにならざるをえません。手渡すような仕草で相手の目の前に
  出せば、相手は腕組みを解いて資料を受け取
ろうとするでしょう。結果として、相手の無意識のブロックは崩れるの
  です。
 いつも腕組している相手との打合せには、資料やメモを用意して臨みましょう。




  では無意識ではなく警戒してブロックしていていた場合はどうするか?

  ● 優秀なセールスマンの対処法 ・・・誰でも興味を持つ小物を準備。


  あくまで例ですが、
  相手の年齢層に合わせ興味を持ちそうなビジネス小物を常に幾つか用意するセールスの方がいるそうです。
  例えば、高機能な電子辞書。外国製のタバコだったらあげちゃってもいいし、 私に対してならコーチングの記事が
  掲載された雑誌等。

  何でもいいのですが、相手の趣味や興味に合って、目を引き、手を伸ばしたくなるもの。
  そこまでやるのがプロです。生保の方も似たことをしてますよね。

  もちろん、毎日顔を合わせている社内の方となると話は違います。既投稿 「交渉のテクニック」 で解説したように、
  日頃から自分が誠実でありWin-Winを前提としていることを行動で示しておくことが必要でしょう。

  とは言っても、打合せコーナー等で腕組みしているような相手には、紙コップのコーヒーでも差し出せば、腕組みを
  解かざるをえないでしょう。




  
■ 物理的障害物が心をブロックする

  では、では。せっかく相手と向かい合って話を始められる段になって、テーブルの相手との間にグラスや灰皿があ
  ったとしたら、あなたはどうします。

  ほっといて話を始める。まあ普通はそうです。でもこのグラスや灰皿は相手と話をする上での2人の心の障害物に
  なるって知ってましたか?
  心理学的事実なのです。ある意味、見えない壁。

  例えば、タクシーの後部座席に乗った男女の間に彼女のバックが置かれる。

  これも同じく無意識のうちのブロックなのです。

  さあどうしましょう。

  ● 簡単です。そんな心の障害物はどかしてしまいましょう。

  あなたがちょっと前のめりになって、グラスや灰皿を見れば、先方だって邪魔かなと思います。
  その瞬間に「ちょっとよけておきましょう。」と言ってどければ良いのです。これだけで、お互いの心理的ブロックが
  一つ無くなります。

  逆に、あなたが、口のうまいやつに丸め込まれたくないぞと思うなら、 わざと心の障害物として、 テーブルに物を
  置いたりするのも一つのサポートになるのです。
  「忘れるといけないのでちょっと置かせて下さい。」 なんて言いながら。そして相手の手渡す資料は受け取らない。

(もはや、交渉のテクニック心理戦です。)




  ■ 情報不足が心理的ブロックを作る

  誰にでも、どうしても苦手な方って、1人や2人いるものです。
  でも、特に気まずいことがあったわけでもないのに苦手な方、とっつき難い方っていませんか。だからといって避
  けていては仕事が進みません。

  では、どう対処するか?

  
●一歩づつ相手と知り合う。・・・・まずは、苦手な方に対して興味を持つ。

  苦手な相手に興味を持てと言っても難しい。・・いいえ、その方と過去にトラブルがあったのなら別ですが、
  その方に、どんな家族がいて、どんな趣味があり、
どんな経験を積んできたのかと興味を持ち、本人に直接聞い
  てみましょう。 
たわいない話題だと思えば声もかけ易いでしょう。

  相手がどんな方か分かれば、少しは苦手意識が薄らぎます。ちょっとでも打ち解けられたら、仕事の話を交渉
  としてではなく、相談として持ち込みましょう。相談されたのにつっけんどんにはしないでしょう。

  一歩づつ近づき、一歩づつ苦手意識を無くすのです。




  
■ あなたが敷居を高くしていませんか?

  敷居を高くしているつもりはないのに、周囲が自分に声をかけづらいのかな?
  と思う方はいませんか。つまりは前項で何となく苦手だと思われている方。 そんなあなたの敷居は事実高いの
  です。立派な心理的ブロックです。

  実際に周囲に攻撃的な方は仕方ないとして、(仕方ないことはないですが)
  何となく視線や態度が恐い。声が低い。誰かを叱っているのを見かけた。多くはつまらない理由だったりします。
  そんなあなたの態度と地位や立場の奏上効果が相手をブロックしているのです。

  さあどうします。

  ●アイスブレイク・・・・緊張をほぐしましょう。

  相手に緊張を与えていることを自覚し、特に目下の方と話す際には 「緊張しちゃうね。」 と相手の気持ちを声
  に出します。  ・・・・・ 心理学ではアイスブレイクと言います。

  加えて、真正面の正対ではなく、斜めに並ぶように座って話します。どうしても向かい合うなら、相手と自分が
  お互いに右側になるようにちょとずれる。
 (以前、アプローチは右側が受入れられ易いと解説した通りです。)

  昨晩のTVでも宝石店の店員が客と正対しないようにと指導されていました。

  ちょっとは進歩するかもしれませんよ。




  
■ その誉め方、おべっかと思われていませんか?

  部下を誉めるのは、部下にやる気を出させる効果があるのはもうご存知でしょう。
  でも、あまり誉めてばかりいると、相手からはお世辞やおべっかだと思われる事だってあります。そう思われ
  てしまえば、もうそこには心理的な壁がそびえ立ち、あなたの言葉は伝わらなくなってしまいます。

  ではどう誉めればいいのか?

  ●大事なのは客観的事実や具体的な進歩や進捗を「承認」することです。


  つまり、誉めるポイントを明確にするのです。

     「結構量があったのに、1時間で仕上げるなんてすごいね。」
     「この資料、
見やすく仕上っているじゃないか。」

  また第三者の言葉として誉めたり、第三者を通して誉めるのもいいでしょう。第三者に自分の部下を自
  慢していれば、巡って本人にも伝わります。

   ・第三者の言葉 「○○部長から君の作った資料は論点が明確だって言われたよ。」
   ・第三者から   「○○課長が、君はよく頑張ってるって誉めてたよ。」

  どうです、お世辞とは思われないでしょう。





  心理的ブロック。取除けそうでしょうか?

  こんなことばかり書いていると、小手先で勝負するのかと言われそうですが、前向きな気持ちでの行動の
  積み重ねが、あなたの地道な部分をサポートするのです。

  出来ることからやってみて下さい。あなた自身とあなたのチームの為に。






                                                  


Mail24
 
分かる状態と出来る状態の違い



  分かっているはずなのに実行しない。きちんと教えたはずなのに出来ない。そんな部下や後輩にいらいらした
  ことはないですか? まあ、よくある話です。でも、部下や後輩にも言い分があるかもしれません。
  ちょっと原因と対策を探ってみましょう。




 
■ 原因1 教えたつもりが教えていないのでは?

   「1年も経つのに一人前にならない。」そうなげく原因は実はあなた自身にあるかも知れません。あなたが教
  えたつもりでも、相手は何も教わっていないと思っている。 そんな行き違いが実は大きな問題なのです。

  あなたは部下や後輩に何を教えようと思っていますか?  何故それが必要なのですか?
  どういう方法で教えようと思っていますか?  ・・・つまり、教えるターゲットを明確にするということです。

  仕事の処理方法、客先とのビジネストーク、マネジメント手法、何でもいいですが、まずは、教える側のあなた
  自身の考えを整理してみましょう。

  一緒に行動しているだけで自分のやり方を盗んでくれるはず。今時の部下や後輩にそれを求めるのは無理と
  いうものです。教える内容があなたのノウハウに近いものであれば尚更です。
  何をやらせてみて、どのタイミングでアドバイスをするか等の教え方も大事な点なのです。

  そんなの必要ないよと思っていると、あなたの部下は中々育ちませんよ。
  最低限、教える内容、教える方法、スケジュールは明確にしましょう。言わば、あなたの教育戦略です。




 
■ 原因2 教えたけれど理解出来ていないのでは?

  相手がうなずいているからって、理解できているかどうかは分かりません。

  「理解できたかな? ちょっと試してみよう。」 そんな確認が結構大事なことなのです。

  自分はこのやり方で教わって仕事をマスターできたのだから相手も大丈夫。そんな思いはあなたの判断を誤
  らせます。自分の経験を押し付けるのはやめるべきと、かなり前にもご紹介しました。

  あなた自身とあなたが教える相手とは違う人間なのです。うまく行くとは限りません。相手の考え方や個性、
  現在の能力に合わせるのは、人にものを教える基本です。つまりテーラーメイド。




 
■ 原因3 相手に考えさせていないのでは?

  やり方は分かったはずなのに、中々うまく実行できない。何故でしょう?

  複雑な数学問題の解き方を教えても、自分で考えた解き方でなければ再現できないのと同じです。何故その
  やり方が良いのか自分で答えを出させましょう。自分で考えて頭で理解するのです。

  部下や後輩はあなたには逆らえません。考えを押し付けて相手の思考を奪うか、自分で考えさせて
  成長させるか。 ・・・・あなた次第なのです。

  1) 何度も繰り返せば、体が覚える。・・・もちろんその通り。時間に余裕があり、素直な部下がいるなら。
  2) 自分自身で考えて、あなたがアドバイス。自分で納得したやり方を自分の意志で何度も繰り返してみる。

    どちらがベストか考えるのは上長であるあなたの役目です。




 
■ 原因4 実行するために必要なものが足りないのでは?

  自分で仕事の進め方を考えさせた。でも何故か先に進まない。何故でしょう。

  理由は色々あります。
  例えば、必要な情報がそろっていない。 必要な道具がそろっていない。 必要な人脈がない。
  どこまで任されたのか明言はされていない。 判断材料が足りない。
   ・・・・・ つまり、何か必要なものが足りないのです。

  何でも手伝うのは教育のためには良くないかもしれません。
  でも、ちょっとだけ聞いてみましょう。 「サポートして欲しいことがあれば言ってくれ。」

  仕事を確実に進めるためには、上司や同僚をうまく使うことだって必要なのだと覚えさせる機会でもあります。
  
  例えば、
   「何やっているんだ。」 ではなく、
   「先へ進めない原因は何か?」 「どうしたらその原因を取除けるのか?」と、思考を促す質問で、
  うまく背中を押してあげてもいいでしょう。

  少しずつ、自分で前に進めるようになるはずです。




 
■ 原因5 ゴールや方向性は明確ですか?

  部下が行動に移れない時に、ゴールや方向性が不明確なのが原因という例についても以前解説したことが
  ありましたね。

  ゴールやゴールまでの道筋を部下と一緒に考えるのも一手ですし、
  あなたの意図するゴールを明確に伝えて、やり方は全て任せる方法もまた一手です。
  仕事の与え方、教え方は、相手の能力や経験を十分に理解・考慮した上で、考えましょう。


  どうですか、今週も考えてみれば結構当り前のヒントでしたが、
  部下や後輩の 「分かる状態を、出来る状態に変える」 ヒント となれば幸いです。






                                                  


Mail25
 
忘 却 の 裏 技



  ドイツの心理学者エビングハウスの忘却曲線というものをご存知でしょうか?
  人がものを忘れるスピードは最初が急で、次第に穏やかになるそうです。
  「人は最初の20分で42%を忘れる」 
と言えば分かり易いでしょう。

  つまり、学習したことをきちんと記憶したいのなら、20分以内に復習するのが効果的なのです。
  試験勉強をするとき、人の発言をきちんと記憶したいときなどは、是非20分以内に記憶を反復して下さい。

  


  ここまでは当たり前のお話。
  実はこの忘却曲線を逆手にとった職業の方がいらっしゃいます。分かりますか?

  ・・・占い師なのです。



 ■ 占い師のテクニック (時間の巻き戻し)

  一説によると、ほとんどの占い師の方は、以下の2つの手法で、相談者の信頼を得るそうです。

 
@掴み
    誰にでも当てはまる質問をする
 
A絞込み
  
相手の悩みが「人間関係」、「金銭」、「夢」、「健康」のいずれなのかを、パターン化された質問で確かめる

  例えば、こんな質問。
   「あなたは自分の考えをしっかり持っていますね。どうでもいいことにはルーズでも、大事なことは譲れないの
    ではないですか?」  ・・・大体の方には当てはまってしまいます。

  当てはまらない方でも、誰だって譲れないことの一つ位はあるので、当てはまるような気がします。これが占い
  師の「掴み」なのです。

  また人の悩みの大半は、「人間関係」、「金銭」、「夢」、「健康」のいずれかに関するものであり、仮に恋愛や仕
  事の悩みであっても人間関係や夢などに分類可能です。
  そこで、順番にカマをかけた質問をすることで当人の悩みを絞りこむことは可能なのです。


  例えば、次のように。
  占い師 「人間関係で悩んでいますね。」  客 「いいえ違います。(・・的外れ)」
  占い師 「金銭や健康(ストレス)も人間関係が原因だったりしますよね。どうですか?」

  鍵は、「何かお悩みですか?」 と訊くのではなく、「○○でお悩みですよね?」 と具体的に指摘することらしい
  です。 具体的な質問により話の流れを作ることで、相手からヒントを引き出せます。

                (すみません。この辺は忘却曲線とは関係ありません。)



 
B時間の巻き戻し
  しかし、あまりにも的外れな質問をした場合にはせっかく掴みかけた相手の信頼を失いかねません。
  そこで占い師が使うテクニックが時間の巻き戻しです。

  先程の続きが完全な的外れだった場合、唐突な話題転換をします。
     客 「今日の相談は、金銭や健康のことでもありません。 (・・・完全な的はずれです)」
  占い師 「芯の強いあなたでも、仕事で無理をすると体を壊しますから、ほどほどにして下さい。
         さてそれでは、本題に入りましょうか。 先程の・・・・。」

  そしてこの話題には2度と触れません。
  思い出して下さい。20分以内に同じ話題に触れなければ相手が忘れてしまう可能性が高いのです。


  占い師のテクニックを単なる「騙し」だと思えばそこで終わりです。
  でも、見方によっては、素晴らしいコミュニケーション術だと思えませんか?

  例えば、
  @ 初対面の方と打ち溶ける
  A 営業相手のニーズを絞り込む
     ・人間関係 ⇒ 社員、 金銭 ⇒ 利益 ・ 経費 ・ 投資、 夢 ⇒ 事業展開、 健康 ⇒ トラブル
      と置き換えてみてください。
  B 会議や商談での不注意な発言、失言をしてしまった時の話題転換

  もし、その気があればコミュニケーション術として試してみて下さい。




 
■ TVCMに学ぶ忘却の裏技

  忘却曲線を逆手にとった裏技をもう一つ。TVCMが何故記憶に残るかご存知ですか?
  もちろん、何度も何度もCMが流れれば、反復学習の効果で記憶に残ります。

  でも実は最大の理由は、1分弱のCMが突然途切れて、先程のドラマに戻るという、突然の場面の切換えなの
  です。

  もちろん、忘却曲線の理屈から言うと20分以内に同じCMを見れば反復学習の効果が起きます。
  でも、20分以内に同じCMを見なければ、そのCMを見たことはほとんど忘れてしまいます。

  ここが実は裏技。
  ほとんど忘れたことは、実は潜在意識には残っているのです。
  トヨタの○○という新車のCMを見たことはほとんど覚えていないのですが、街角でトヨタの○○を見た時に、
  潜在意識と繋がりどこかで見たなと親しみが沸くのです。

  大事なのは、CMで無理やり見せられた・・ではなく、どこかで見かけたという記憶になることです。

  無理やり売りつけられたのではなく、自分から興味を持ったという感覚が芽生えるというのがこの裏技の鍵な
  のです。

  人に売りつけられたものには反発できますが、自分から興味を持ったことには反発しようがありません。
  半信半疑かも知れませんが、心理学的事実です。




  では、日常にどう役立てるか。

  例えば、営業の際に、自分の商品を直接的に誉めたりせずに、一般論として同様な商品の利便さを謳い、そ
  の後、わざと脱線して話題を別な話に変えてしまいます。しかも当分その話題には触れないのです。
  相手はその商品のことを忘れますが、潜在意識に刷り込まれるのです。

  あくまで例ですので、真似しないで下さい。永久にその商品が売れなくても、私は責任を取れません。


  逆に考えてみましょう。
  あなたのところに商売にきた営業マンが、自分の商品を積極的に売り込まないとしたらどうですか?
  やる気の無い営業マンor相当な切れ者のいずれかの可能性が大です。ご注意下さい。

  引っかかりたくなければ、相手はその商品を自分に売り込もうとしているという記憶を自分に反復して植え付
  けて下さい。その上で損得を冷静に判断すれば良いのです。

  このテクニックは社内外の調整の際に、相手に興味を持たせて味方につける裏技としても使えます。




  忘れたいことは20分以内に思い出さなければ記憶にほとんど残りにくい。とは言うものの、忘れようと意識
  した時点で復習となり、自分の記憶に焼きついてしまいます。難しいですね。

  忘れたいことがあったら、何か他のことに打ち込む。それが正しい選択です。
  失恋したら、仕事に集中してみて下さい。




  今回は騙しのテクニックだらけだなと思われるかも知れません。
  でも、詐欺師と占い師の大きな違いは、相手の気持ちや悩みを探って相手を勇気付け、力になろうとするの
  か、文字通り騙して儲けようとしているかの違いだとの説もあります。

  このHPのテーマはもちろん、コミュニケーションやリーダーシップですから、あなたの周囲の方、部下や後
  輩の役に立とうという気持ちで考えてみて下さい。






                                                 


Mail26
 
見える化の効用



  最近TVで見かけるCM。覚えていますか?
  車検の内容(整備や金額の内訳)が分からないと嘆く妻に「当社の車検は中身が一目瞭然」とポスターやパン
  フレット見せるCMです。「見える化」 はお客様に対して安心を生むという訳です。

  「見える化」という言葉を最近、経済誌や新聞でよく見かけるのですが、どんな効用があるのか、仕事で使え
  ないのかを考えてみます。




 
■身近な見える化

  見える化というと、トヨタの工程管理や改善活動の専売特許のようにも思われがちで、皆さんよくご存知のQC
  七つ道具も、現状把握、問題・原因分析、対策立案を考える事を目的とした見える化の好事例です。

  でも実は、見える化の例は身近にも沢山あります。

  例えば、
    ●スピードメーター (目的) 危険・違反の防止(現状確認)
    ●通信簿      (目的) 結果の確認
    ●スコアボード   (目的) 相手の点数確認(情報提供、現状確認)
    ●道路の停止線   (目的) 停止位置=基準の明確化
    ●道路信号     (目的) 流れの制御(効率化)




  見える化が生活(?)の役に立っていることがわかりますよね。




 
■見える化は透明性

  あるべき姿との現実とのギャップが見える。これが見える化の第一歩です。

  でも、昨今の企業では、顧客満足活動やリスク管理活動が盛んなので、数多く雑多な情報が集められる仕組
  みをほとんどの企業が用意しております。
  その中で、各種の情報を見極める感度・感性の良さが社員に求められているのが現状です。
  つまり、一生懸命見ようとしたり、問題意識を強く持つことが重要視されているのです。

  見えることには対処するが、見えないことは放って置く、それが人の心情です。
  火が上がって初めて水をかけるわけです。

  そこで、見える化において重要なのは、見ようとして見るのではなく、伝聞情報を聞くのでもなく、
  以下の2点です。

    @ タイムリーに、悪い状態・真の状態が、自然に目に入ること
    
A 目に入った問題点・異常に自立的に対処し、問題解決につなげること

  つまり、見える化が実現するのは
  誰が見ても火がついているのが分かる、黙っていても火が見える仕組み。
  見えた火に水をかけるように促す仕組みなのです。

  見える化の真の目的は自律的問題解決と言えるのです。




 
■問題の見える化 (見える化のPDCAサイクル)

  問題解決のステップとして有名なPDCAサイクル。皆さんご存知でしょう。
  もちろん、Plan⇒Do⇒Check⇒Actionです。

  では、見える化による問題解決のPDCAサイクルというのを聞いたことがありますか?

  roblemFinding (作業における問題・異常を感知する)
  
isplay        (問題や異常が関与する全員に見えるようにする)
  
lear          (問題を認知した者が自律的に解決策を考え、実行する)
  
cknowledge    (問題が解消されたことを確認する)


   というサイクルです。

  問題が現実に自分の身近なものとして見え、当事者が危機感・問題意識を持たない限り、
  Plan⇒Doというという行動は起きようがないのです。

  今、自分の家が燃えている。今、雪崩が自分に襲いかかろうとしている。
  そんな状態が目前にあれば動かざるを得ません。大袈裟ですが、見える化による問題解決のPDCAは、強い
  当事者意識を引き出すためのサイクルなのです。





 
■原因の見える化

  問題を見える化する真の目的は、当然ながら問題解決です。
  であれば、原因を見えるようにする必要があります。

  パレート図、連関図法や特性要因図(魚の骨)。QCをやったことがあれば、使ったことはありますよね。
  思い出して下さい。いずれも問題を層別し、原因を浮き立たせるための見える化です。


  それでは事例紹介。
  OA機器メーカーC社では、部品製造下請の生産が後れ気味で混乱していました。
  製造ノウハウが必要な部品なので発注先をむやみに増やすことも出来ません。そこで、機種毎に分かれた製
  造部門や各工場が個別に発注した内容を、下請け毎にデータ管理し、納期も含めた発注MAPを各部門のワ
  ークステーションで閲覧できるようにしました。 見える化による納期管理と次工程の準備が目的でした。

  すると、機種別の同じ種類の部品発注が、同じ下請けに同時期に集中していることが判明したのです。
  製品の販売サイクルが同じ為、違う製品でも生産サイクルが一致していたことが原因だったことも判りました。

  M社は、機種毎に組み立て順序を変更し、発注を平準化するとともに、毎日更新される発注MAPにより、納品
  の遅れや下請けの余裕等の情報共有を実現したのです。

  今では当たり前の生産管理のような気もしますが、
  原因の見える化、状況の見える化が同時に行われた例です。




 
■状況の見える化

  顧客の見える化の事例を基に説明します。
  企業が顧客の声の見える化に挑む例は結構あります。

  ワタミでは、店舗に準備した葉書で本社宛に送られるアンケートを集計せずに生の状態のコピーを関係者に配
  布し、事実確認をすると共に、毎週の検討会で顧客サービス向上につなげる改善案を出すそうです。

  また、トヨタ系販売店では、商談進捗ボードが壁に貼られ、対応した顧客への提案状況、現在の商談の段階が
  誰にでも見える形で分かる状態にあるそうです。

  ヤマト運輸では宅急便の配達状況(自分の荷物が今どこに在るか)がHPで確認できるのはご存知でしょう。
  患者の声(投書)への対応状況を待合室に貼り出している病院もあります。

  
状況の見える化で大事なのは、やりっぱなしにしない という点なのです。




 
■基準の見える化

  同じことが別の立場では違って見えたりしないように、共通の判りやすい物指し(メジャー)を作り、できるだけ標
  準化することも見える化の目的です。

  前述の制限速度(スピードメーター)や道路の停止位置はもとより、絶対守る品質、安全や工場の作業手順にも
  用いられています。

  例えば、
  トヨタの工場では、この作業は右手で行うとか、Aを確認してからBのボタンを押すというようなベテラン工員のノ
  ウハウが作業手順として見える化されていたり、工具は箱や引き出しにしまうのではなく、決められた誰でも見
  える位置に置くように見える化し、整理整頓をしたりもしているそうです。

  
○○しなさいではなく、見える化により○○が自然に行われる仕組みなのです。




 
■知恵の見える化

  ちょっと、脱線。
  知識・経験の「無い」ことの見える化として、「研修中」という名札の着用の例がよく見られますが、サービス品
  質が不十分なことを言い訳しているようで、私は好きになれません。
  研修中の方が接客した場合は、商品が安いというのならば納得もしますが、言い訳をぶら下げる前に、従業
  員の質的向上に力を入れるべきかとも思います。
  実は私の会社も、新入社員はバッチ (社章) の色が違うのですが、これは主に社内向けの見える化のようで
  す。 「面倒みてね。」とでもいうような。

  同じように、「知識、経験の見える化」についても、きちっとした目的があるはずです。
  特定の誰かの卓越した技術、技能や経験に基づいた工夫を誰でも同じように使えるようにするということです。
  昨日ご紹介したトヨタの工場のボタンの例などまさにそのものズバリ、経験を機械とマニュアルに置き換えた
  見える化です。


  では、知識、経験を見える化で共有している例をご紹介しましょう。

  ゼネコン大林組では、文書の関係性や文書の利用頻度の見える化が実施されています。
  例えば、品質トラブルについて検索すると、トラブルの事例に関する文書、その原因に関する文書、対策例
  に関する文書に辿りつくことが可能だそうです。
  過去に利用された頻度に応じて辿られた状況をデータ化し、文書を点としてではなく、線や面として活用可能
  にするナレッジマネジメントのようです。実際にどのように焼くに立っているのかまではわかりませんが。

  また、 松下電器の顧客修理対応問答事例の全店共有化。
  機器の故障に対する問合せ電話や、顧客との会話に対して、実際にベテランがどのような質問をして故障箇
  所を見つけたか、場合によっては故障でないことを見つけたかを、実際の言葉のやり取りの問答集として社
  内展開して、初心者も含めて活用しているそうです。

  米国ゼロックス社もこのような修理ノウハウを活用し、例えば機器の内側を白く塗り汚れから故障やトナーの
  漏れが判明する仕組み、つまり故障が見える状態。を作り上げたりしています。

  大手スーパーのイズミにおける他店舗売上上位商品のタイムリーな情報の共有。
  店舗でどのような商品を揃え、どのような陳列をしたら売上が伸びたというような実例を全店に展開し、全国
  各店で閲覧できる状態にしているそうです。

  〆〆〆
  知恵やノウハウを研修で教育、マスターするのではなく、即見える形で社内に展開する例は増えています。
  しかも、この即見えるの「即」がキーワードです。
  皆さんの身近に沢山ある各種マニュアル。開いて見ていますか。どこにあるかと探して、やっとこ開いている
  ようでは「見える化」ではありません。
  マニュアルを作るだけなら、単なる情報収集や経験の収集でしかありません。見える化で大事なのは、先人
  ・ ベテランの知恵やノウハウが誰にでも自然に使えることなのです。

  自分でこの文章を書いていて、私も社内で何か見える化をやってみたいなとワクワクしながらネタ探しをする
  ようになりました。仕事って工夫できるから面白い。そんな感じです。
  皆さんも考えてみて下さい。




 
■経営の見える化

  ビジョン、計画、4半期目標値等を掲げることで、多くの企業で経営状況の見える化を実践しているつもりにな
  っています。
  でも、あなたの部下の一人に会社の営業目標や部門の運営方針を訊いてみて下さい。きちんと答えられるで
  しょうか?

  知ろうと努力しなければ目に入らない目標や経営ビジョンでは、社員の行動を喚起することはできません。
  そこで登場するのが見える化です。
  黙っていても見えてしまう。努力しなくても見えてしまう。自分が何をすればいいのかつい考えてしまう。
  そんな状況が企業には必要なのです。

  では、どうすれないいのでしょう。

  効率良い見える化には、分かり易さとシンプルさが必要です。
  情報を大量に流せば、大事な情報には目がとまりません、逆にセキュリティが高すぎれば、見たい情報が見
  れません。

  
社員に伝えようとする情報は絞り込み、見たいと思う社員には門を開く、そんなバランスをきちっととる
  ことが、経営の見える化のポイントなのです。

  そもそも、何の為に経営状況を見えるようにするのかも考えて下さい。大概は、社員のモチベーション向上が
  目的ですよね。

  では、実例を交えて具体策をご紹介します。





 
■会社の情報を判り易く開示する

  極秘事項で無い限り、会社の情報は積極的に社員に伝えましょう。部内や課内のちょっとした打合せの際、
  会社の状況を判り易く知らせるのです。
  売上高や営業利益、経常利益の目標と実績を説明したり、経理部門が作成した細かな表を配ったってダメ
  ですよ。せっかくの経営情報も右の耳から左の耳に、目から入ってお尻(失礼)に抜けてしまいます。

  私の場合は、出来るだけ判り易い表を作って説明しています。
  もちろん細かな数字もありますが、知らせたい部分。例えば商品がどれだけ売れたか、経費をどれだけ減
  らしたか、来年に繰り越す(残る)金額はどれだけか という数字を大きく書いて、目標に対して上がった、下
  がった、去年と比べて上がった下がったを矢印で表示して説明します。
  あとはみんなの努力のお陰とか、もう少し頑張ろうとか言っているだけです。
         (実際には物を売っている業界ではありません。念の為。)

  また、会社の方向性に関する情報。役員会等の経営会議で話し合われた内容を要約して伝えています。
  もちろん、会社の動向に興味を持ってくれる方には、流せる範囲で正確な情報を早めに伝えます。
  私自身の持っている情報と皆の持っている情報はごく一部分を除いて同じだよ。という姿勢が必要です。

  セキュリティに関しては賛否両論あるかもしれませんが、
  本当に重要な経営を左右する極秘情報を除いて、社内に積極的に開示すべきと思います。




 
■各自の行動目標をシート化する

  成果主義偏重として、目標管理(MBO)による評価制度が嫌われる世の中になりましたが、仮に短期的な
  目標であっても、自分が会社の一部分を担う仕事をしていると感じ、 自分自身の成長につながると確信す
  れば、やる気を出してくれる方は大勢います。

  例えば、経営方針の展開表を作ってみて下さい。
  経営方針(社長方針) ⇒ 部門長方針 ⇒ 課・グループの方針 ⇒ ○○さんの担当 (○○さんの具体
  的行動目標、いつまでに何をやるか)
  ・・・・・ こんな感じで、できるだけシンプルに作成して、机回りに貼ったり、机上ガラスの下に入れたりして
       いつでも見れるようしむけてみて下さい。
       雑多ある仕事の一部分だけでも、経営と繋がっていると思えれば、確実に積極性は増します。

  これらを断片的にやるのではなく、
  社員個人の仕事の悩みやスキル向上への要望とかいったヒアリング等も含めて総合して行うことで、ちょ
  っとずつではありますが、社員が会社を自らの成長の場、自己実現の場として関連付けてくれる気持ちが
  高まるのです。

  えっ。 一気に会社の経営状況に興味を持ちやる気を出す方法。
  そんなの、お給料が個人業績に厳しくリンクし、しかも上昇し続けでもしなきゃ無理ですよ。

 


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  ちょっと長くなってしまいましたが、「見える化」の本質が多少なりともご理解いただけましたでしょうか?
  ご自分の業務の中で、何かシンプルな見える化をやってみようかなと思っていただければ幸いです。






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