コーチングスキルの解説2
Mail27 相手を見極め、話の流れを作る
自分の主張を明確にし、相手に分かり易い手順で説明している。
自分ではそう思っていても、何故か相手の反応が今一。そればかりか、全く話が通じず、交渉が物別れになってしま
った。そんな経験はありませんか?
何故なのでしょう。
「相手を選んで話せ」なんてよく言いますが、少なくとも相手によって話し方(話法)を変えるのは、優秀なセールスマ
ンにとっては常識らしいです。
昔流行った飲み会のジョーク。覚えていますか?
A君 「ピザ・ピザ・ピザと10回言ってみて。」
B君 「ピザ・ピザ・ピザ・・・・・・。」
A君 「ではここは何?」 (と肘(ひじ)を指す)
B君 「膝(ひざ)。」
そんなジョークがあったなあと思う方。だから何なのと思う方。世の中には両方の方がいらっしゃいますが、前者の
方はこの手のジョークにひっかりやすく、後者の方はひっかかりにくい傾向があるようです。
今まで、これが単なるジョークだと思っていた皆様。
これは、心理学のテストを使ったお遊びなのですが、「YESセット」 と言われるこのテクニックは、相手の心理が一
方向に向かう流れを作り込み、次の答えを誘導しているのです。交渉術の基本でもあります。
似たようなテクニックにダブルバインドというものがあります。
「赤いのがいいですか? それとも白いほうですか?」 とそもそも商品を購入することを前提とした説明をされてしま
うのですが、こちらも相手の選択枝を絞って、答えを誘導しているのです。
何となく、相手の言うままに商品を買ってしまった。
後で考えると、やめておけばよかった。そんな経験はありませんか。 あなたは相手の誘導にはまったのです。
相手を騙すようなことは邪道です。
とは言え、私は、恐ろしい世の中だと言いたいわけではなく、詐欺師的テクニックだと言いたいわけでもありません。
自分の主張を相手に明確に伝える為、すんなり受入れて貰うためには、話の流れを作っていく必要があるのだと言
いたいのです。
でもその為には、相手がどんな人間か見極める必要があります。
ちょっと考えてみましょう。
■ 4つのタイプと2つのタイプ
コーチ21主催の研修に参加された方、鈴木義幸さんの本を読まれたかたならご存知の「タイプ分け」。
人は大きく4つのタイプに分かれ、タイプ毎に最適な接し方があるというものでした。
でも、自分の部下が4つのタイプのどれかというのは意識しやすくても、それほど親しくない取引先のCさんは、ど
のタイプか? となると難しい。
そこで、もっともっと話を単純にし、「決断」 という観点に限って、人を分けると、心理学的に2つのタイプに分けられ
るそうです。・・自己決断型 (Me) と 周囲誘導型 (We) の2タイプ。
端的に言うと、
Meタイプには、数字を示して納得させる。
Weタイプには、○○さんもこれでうまくやっている。とか、皆も望んでいる
という説明が受け入れられ易いのです。
では、2タイプそれぞれの特徴をもう少しご紹介しましょう。
■ 自己決断型 = 「私」 を大切にする Meタイプ
自分の頭の中であれこれ考える論理派です。
●特 徴
・このタイプの方は、感情表現が少ない為、何を考えているのか判らない、気難しいという印象を受けます。
・極めて論理的で、事実を正確に語ります。
●価値観
・仕事や人間関係は、自分の目標・夢を実現するための手段と考えています。
・心は未来にあります。中には自分が一番偉いと思っている方もいます。
●行 動
・常に個人をベースに考えて行動し、目標に向かって淡々と努力します。
・人との交流は必要最小限。記録を更新するような個人スポーツが好み。
●このタイプの方への接し方
・会議で意見を引き出すより、一人で考えさせたほうが良い意見がでます。
・雰囲気だけの言葉を受け入れてはくれません。
・完結に結論から説明し、現実のデータを根拠に説明しましょう。
・落ち込んでいても励ましは不要です。一人になる時間を与えましょう。
■ 周囲誘導型 = 「私たち」 を大切にする Weタイプ
人との触れ合いを大切にするフィーリング派です。
●特 徴
・周囲と打ち解けやすく、感情表現が豊か。
・抽象的な概念やデータでなく、具体的な実例で物事を理解したがる。
・論理よりもフィーリングを大切にします。
●価値観
・世の中の役に立てる、感謝されるがモチベーションの源泉です。
●行 動
・自分を抑える傾向があります。
・人に感謝されたり、頼られると嫌と言えない。不利な人を助けます。
・コミュニケーション好きで、チームプレーを好みます。
・反面、感情の起伏が激しく、ちょっとした言葉で傷つくこともあります。
●このタイプの方への接し方
・具体的なデータを事務的に説明しても、受け入れられません。
・リアルに存在する方を引き合いに出したり、ストーリー性ももって説明したほうが受入れられ易いようです。
・頑張りを言葉に出して評価しましょう。
・落ち込んでいるようであれば励ましましょう。
当然、全ての方が、Weタイプ、Meタイプにきっちり分かれるわけではありません。両方の要素が混ざっていて、
どちらかが強かったりするわけです。
■ MeタイプとWeタイプの見分け方
あなたの周囲の方であれば、前述の特徴から相手がどちらのタイプかを見分けるのは容易でしょう。しかし、初
対面の方がどちらなのかを見分ける方法もあります。(あくまで傾向にすぎませんが)
Meタイプ
@相手が自分の左側になるように立つことが多い
Aアイコンタクトが短い、少ない
B初対面の相手と距離をとって座り(立ち)ます
(この3つは、相手を受け入れやすくする方法とちょうど逆なのです。)
C右重心、カバンを右手で持つことが多い
D両手を組むと右親指が上になる
E文字が右肩上がり
Weタイプ
@相手が自分の右側になるように立つことが多い
Aアイコンタクトが長い、頻繁
B初対面の相手と手を伸ばせば届く程度の距離を保ちます
C左重心、カバンを左手で持つことが多い
D両手を組むと左親指が上になる
Meタイプの正反対と思ってください。
では、相手が複数で両方のタイプが混じっていたらどうするのか。両タイプに向けた説明をするしかないですね
え。でももう一つ手があります。
会議室などで、序列に関係なく自由に座った場合、発表者であるあなたからみて右側にWeタイプ、左側にMe
タイプが座る確率が高いのです。
右を向いて、事例紹介や感情に訴える説明、
左を向いて、データに基づく理論的な説明をすれば、 受けられ易いということになります。
手元資料も、セリフを右 (We) 向け、左 (Me) 向けに区別して作成しておけば、戸惑いません。
もちろん全ての集団には当てはまりません。
あなたの周囲の方々をきちんと観察し、相手を見極めた上で、話の流れを作ることを考えてみて下さい。
誰がMeで、誰がWeかということではなく、誰にはどんなアプローチが適切なのかが見えてくるはずです。
■ 共感の難しさ
部下指導やリーダシップの発揮においては、相手に共感することが必要と書いている書物が多いですねえ。
何故かうまくいかないと思っているコーチングにも、共感という要素を加えるとうまくいく。そんな紹介をされて
いたりします。私もいろいろ読みました、EQ(共感)関係の本。
でも、何だかしっくりこない。・・でも、どうすれば共感できるのかが書いていません。
だから相手の立場で考える。・・それが出来れば苦労しないでしょ。
私も部下指導のみならず社会生活には共感が必要という考え方には大賛成なのですが、 周囲の誰に対し
ても、共感が必要ですよと説くこと自体は全く無意味と思います。
最近では、そんなことをするのは、はっきり言って間違い、効果なしと実感しています。
もちろん、共感はすごく必要ですよ。
しかし、プロのコンサルタントやそれに類する職業でもない限り、自分と違う感性の方、まったく違う極から考
える方に共感するのは、極めて困難ですよね。
人に共感するのが得意。もしくは必要以上に共感しがちな方は確かにいます。
そんな方は、自分自身も、上司から今年はこの目標を必達することが我々の使命なんだ頑張ってくれ とで
も言われたら一生懸命頑張ってしまうし、そればかりか、電車で自分の周囲に立っている方が次の駅で降り
そうな気配がしただけで、ちょっと体をずらして道を明けようとするかもしれません。
(実際は降りないかもしれないのに。)
例えば、病気で苦しんでいる方に「頑張りなさい。」 というのではなく、「つらいよねえ。」 というのが
共感なのでしょう。
一歩進めて 「病気をやっつけようね。」 と自分のことのように言ってくれれば元気も出るかもしれません。
それが自然に出来る方が共感できる方なのでしょう。
でも、人に共感出来ない方は、共感という言葉の真意を理解できていないかもしれません。だって、ほとん
ど共感したことがないのですから。全く人に共感しない方なんて、実際にはいないと思いますが、疑わしい
方があなたの周囲にいませんか?
〆〆〆
そんな方でも、TVや映画の主人公に感情移入することはあるはずです。
それは、TVや映画のドラマは特定の主人公の視点で描かれていることが多いからです。
そもそも、結構、自己中心的な視点だったりします。それでも感情移入し、一緒にハラハラしたり、怒った
り、悲しくなるんですよねえ。
そんな感情は、極めて共感に近い状態なのでしょうが、実際の生活の中では、誰かの視点のみで者を考
えるのは困難ですよね。
「俺が、あいつの立場ならこう考える。」 という考え方は出来ても、考えるのはあくまで 「あいつ」 で
はなく「俺」 なのです。これって、共感とはちょと違いますよね。
自分の主観からはちょっと離れても、相手の主観にはなりきれず、相手に対する客観性が残ってしまう。
だから、共感することが出来ていない。
〆〆〆
でも、いいじゃないですか、客観性はいつだって必要ですよ。だから、共感の一歩手前、相手を理解する
こと、理解しようとすることで満足しましょうよ。
相手の気持ちにはなれなくても、相手の立場は理解できる。それがスタートライン。
私はそう考えています。
■ YESセットとNOセット
それでは、冒頭のピザの所で出てきた「YESセット」について。
何故か世の中には、うん、うんと話を聴いてくれる方、いや、いやと話を否定したがる方とがいます。
いい悪いは別として、論理思考の構造に流れが構築されているようです。
YESを返せる思考の流れが得意な方には、相手がYESを返せる形で質問を積み重ねる、
NOを返せる思考の流れが得意な方には、NOで返せる質問を積み重ねてみて下さい。
それだけで、何故か話がスムーズになるのです。
● YESセットでの会話の流れ
「前期の業績は良かったですね」 「そうなんですよ (YES)」
「皆さんやる気になっているでしょう」 「概ねそんな感じになってますね (YES)」
「今期も新しいプロジェクトがあるのですか」 「そりゃありますよ (YES)」
「戦力アップを図りたいですよね」 「もとろん、そう思ってるよ (YES)」
「いいご提案があるのですが、話だけでも聴いていただけませんか」 「どんな提案、聴かせてよ (YES)」
● NOセットでの会話の流れ
「前期の業績はまずまずですね」 「あれじゃ物足りないよ (NO)」
「皆さん一丸となって頑張ったのでは」 「そんなにうまくはいかないよ (NO)」
「今お使いの機器が役立ったのでは」 「そうでもないよ (NO)」
「でもまだ新しい機種はいらないですよね」 「そんなの内容次第だよ (NO)」
「じゃあ、お時間もなさそうですから要点だけ」 「時間はあるよ (NO)」
そんなにうまくいくわけないだろう。その通り。
まあ、こんなにはスムーズにはいかないでしょうが、 ピザ、ピザと10回言ったときの効果は皆さんご存知で
しょう。
■ ダブルバインドで主張を通す
● それでは、まずは、ダブルバインドの例をご紹介します。
A君 「ちょっと時間あるかな、コーヒーと紅茶どっちがいい?」
B子 「あっ、えっと、じゃあコーヒーを。」
そう、コーヒー、紅茶のどちらがいいかという意識を持った時点で誘いを断るという選択肢は忘れ去られてい
るのです。
● では仕事における例。
上司 「○○の作業と、□□の報告書の作成を今週中にやって欲しいんだ。」
部下 「いや、両方を今週中にはちょっと ・・・・、もう1週間あれば。」
上司 「じゃあ、来週中ならいいね。」 or [□□だけなら出来るね。]
そうです。来週中には無理だと思った時点で、自分は○○と□□の仕事をやらないという選択肢は無くなって
しまっているのです。
話の流れをつくるというより、騙しているのではないかという気もしますが、話術の巧みな方は騙すなんてつもり
ではなく、相手を自分のペースに引き込んでしまうのです。
● もちろん、詐欺師も使っているテクニックです。
「今すぐ、500万円振り込んで下さい。」
「今すぐ、500万円はちょっと。」
「では、明日までに100万円を振り込んで下さい。」
今すぐは無理、500万円は無理と思った時点で、払うか払わないかという論点は見えなくなっているのです。
おー、怖いテクニック。
実は、ダブルバインド (double bind theory) の本来の意味は、統合失調症 (=精神分裂) の発生要因として
のコミュニケーション・パターン。一言で言うならパラドックス。
例えば、2人以上の間で
@ AさんからBさんに否定的な命令が出され
A 更にその命令とは矛盾する第二の否定的な命令が出されて、パラドックスを形成する
B そして第三の命令はその矛盾する事態から逃げ出してはならないというもの
C ついにこのような矛盾した世界の中に自分がいることをBさんが肯定してしまう心理状態を作りだす
という状態です。
ん。 何だか分からん。 うーん。 私も分かりませんので、分かり易い例を。
例えば、
「私は嘘つき。」 と言う方がいるとしたら、その言葉も嘘ということになります。
だから、彼は嘘つきではない。ならば自分は嘘つきということは本当。 ???・・・これがいわゆるパラドック
スです。そして論理的に考える限り、このパラドックスからは抜け出せません。
また、
「君は自発的に行動したほうがいいよ。」 という夫の言葉に妻が従うと、そのこと自体が既に自分が自発的
ではないと認める行為になる。という心理的パラドックスに至る。
そんな矛盾した状態を拒否できない状態が続くと、妻は精神分裂になってしまう。というような状態。
やっぱり、怖わーい状態。 それが本来のダブルバインドです。
Mail28 部下に語らせる
■ 新入社員にはティーチング
もう5月ですね。新入社員の方々は色々な研修を受けたり、先輩から仕事を教わったりと忙しくしているのではないでし
ょうか。 一日、一週間があっという間に過ぎ、3ヶ月もすれば、色々詰め込まれて、ちょっとは一人前に近づいている
ことでしょう。
この詰め込むという言葉が象徴するように、我々が新入社員に行う教育はコーチングではなく、ティーチングです。色々
なことを一方通行で詰め込みますが、仕事の意味を考えさせたり、処理を工夫させるのはもう少し先です。
仕事以前に社会人のイロハもわからない状態ではそれが最適な指導方法ではありますが、いつまでも言われたまま、決め
られたまま行動するのでは成長がありません。
■ 行動を変革する
以前にもご紹介した行動特性指標 (コンピテンシー)。 評価というよりは成長のための指標として、仕事の進め方が明確に
なっております。 >>> 行動特性評価基準表の例 Excelファイル
社員として求められる行動を大きく分けると2つ。
●若年社員 状況に従属した行動。つまり、何かが起こったときにその状況の中でできることをやる。
●中堅社員 状況を変容する行動。つまり、自分の置かれている状況を自分から変えて何かをする。
難しいですか? そう思えば難しいですが、一人前の社員としてなら、自分から状況を変えるくらいに成長してほしくはあり
ませんか?
コンピテンシーは、さらに細かくわけられ、例えば、行動力、率先、顧客思考、チームワーク、ネットワーク、組織のそれぞれ
の行動要素に応じてレベルがあります。 (もちろんそれを設定する企業によって違います。)
(例えば)
@受動的行動 言われたことをやる
A当り前の行動 言われなくてもやる
B判断を伴う行動 より良いやり方でやる
------------------------
C独自の工夫のある行動 疎外要因を排除してやる(状況を変える)
D独自の状況を作り出す 周囲が自分についてくる (パラダイムを変革)
CとDが状況を変容する行動なのですが、一方的に教えるティーチングだけでは状況を変えることのできる社員は育
ちません。
若い社員が自分で考え、工夫し、成功と失敗を経験しながら育っていくことが必要です。
そのためには、自発的行動をうながすコミュニケーションであるコーチングを活用することが近道なのです。
■ 気づきとやる気を産む
では、コーチングスキルを使って、どうすればよいのか。
【1】 自分が今、どんな行動をしているのかを気づかせる。
【2】 今と違う行動を自分で考えさせる。
この2つの働きかけを部下や後輩にしてみまよう。
【1】 部下に語らせて、気づかせる
あなたが観察した部下の行動を伝えるのが、直接的な気づきの方法です。
でも、ここに大きな危険が一つ。あなたが観察した結果にあなたの意見を加えてしまえば、そこには客観性はないのです。
例えば、「部門間調整がうまくないね。」
これは、他の誰かと比較したあなたの意見であって、客観的事実ではないのです。
ではどうするか?・・・部下本人に自分の行動を語らせるのです。
(単純な例)
・「行動特性の要素のネットワークに、部門間調整があるけど、○○の業務を進 める上で、他の部門とどんな調整した
の?」
・「調整ですか?・・・えーと特にはしていません。」
・「じゃあ質問を変えよう。この文書を出す前に他の部門の方と何か話したの?」
・「はい。○○部の□□さんと、△△部の××課長に要望を聴きましたけど。」
・「聴いた内容を何かに反映したの?」
・「各部からの発注書の書式に要望を加えて修正しました。」
・「それが部門調整だよ。そういう行動を他の業務でもやってみるといいよ。」
・「はい、やってみます。」
自分がどういう行動をしたか。その行動がどういう結果に繋がったのか。
若い社員は、案外気づいていないことが多いのです。
客観的視点を与える質問をして、本人に自分の行動を振り返らせる、良い行動があれば奨励しましょう。
【2】 成長と経験が変革を導く
● ラーニングコンピテンシー(学習能力)は変革の源
新たな行動を学ぶことは、新たな方法を受け入れることです。
つまり、今と違う行動をするために必要な能力とは、実は学習能力 (ラーニングコンピテンシー) なのです。
ラーニングコンピテンシーを持つ社員の行動特性とは、例えば次の3つ。
@ 環境の変化を敏感に感じ取る
A その変化を前向きに受け入れる
B 不慣れな仕事にも進んで挑戦し、本質的な構造をすばやく把握する
では、ラーニングコンピテンシーが無いとどうなるか、
@ 慣れない問題に直面すると固まる(動けない)
A 新しいことを習得するのが遅く、行動が変えられない
B すでに使っている間違いの無い方法から離れられず、不確実なことが苦手
C すぐに表面的な解決策に飛びつき本質を見極めようとしない
さて、それでは、ラーニングコンピテンシーはどうやって身に付くのか? その答えは、成長と経験です。
人の成長は、変革とともにあります。子供が少年に、少年が青年に、学生が社会人にと成長しながら変革を経験するの
です。
● ラーニングコンピテンシー(学習能力)の成長を阻むもの
では、部下が変革をいやがると言う上司の方が多いのは何故か。
ここまで説明すれば、答えは単純明快。
人は、社会人となってからは成長しにくいのです。皆さんが若手社員の頃、先輩や上司に言われたことはありませんか?
「言われた通りにやっていろ。」 と。最初に変革を否定されてしまったのです。
若手社員への教育を一方通行のティーチング形式で行った結果、社会人になって以来の彼らには、自分で考えたり、
自分で工夫したり、自分で決断する経験が圧倒的に不足しているのです。
本日の一番最初の説明で、やっぱり新入社員にはコーチングではなく、ティーチングだよな。と思った皆様。あなたの部
下は変化を嫌がっていませんか。
30才になっても、変革をリードできない社員が多いのは、彼らのアイデアや工夫を一笑に付してきた我々の責任です。
まだまだ彼(彼女)には任せられないよ。あなたがそう言う度にあなたの部下は経験と成長の機会を失っているのです。
● 成長と変革のため、部下に語らせる
@ 現在の能力より、ちょっと上の仕事を任す。
A 部下のアイデア・工夫を可能な限り受入れ、具体化を積極的にサポートする。
これが部下の成長と変革のスタートラインです。
しかし、我々には、行動特性指標という役立つツールがあります。
B 行動特性指標一覧表を使用し、成長のための具体的な行動を行動特性の要素
毎に、部下と話し合ってみましょう。
(例えば、率先行動)
・「君の仕事をどんな方向でやろうと思ってるの?」
・「そのために、後輩に何を任せる?」
(組織感覚)
・「どんな結果になると、社内全体として満足できると思う?」
こんな質問をしながら、部下に自分の考えを語らせてみてください。
● 部下に自分の考えを語らせる。
● 部下に自分で行動させる。
● 部下に自分の行動を語らせる。
一言でいうと傾聴(アクティブリスニング)と変わりはないのですが、あなたが聴いて、あなたが任すという視点から、部下
が語り、部下が行動する視点になることが、部下の客観的視点や主体的行動を導くのだと思います。
ちょっと長くなってしまいましたが、
たまには部下に語らせてみてください。自分の行動を自覚できるだけでも成長につながります。
Mail29 YESマンを卒業させる
最近、自分の意見をはっきり言える若者が増えてきましたね。
老若男女をひっくるめると、声高に意見を言う方が世の中に溢れてきたような気もします。
それでも、欧米からみれば、いまだに日本人はNOと言えない人種と思われているのでしょうね。
でも、自分の会社の中を見渡すと、おとなしく、モジモジしているような方も、まだまだ結構見かけます。
そこで、今回は上司、リーダーとして、おとなしいチーム員の意見をうまく引き出す方法を考えてみます。
■ 意見を言えない=相手にとってはYESなのです
たった今、「おとなしい方」 と表現しましたが、会議や打ち合わせで意見を言えない方が、意見を持っていないと考えるの
は早計です。
例えば、
・まだ、意見がまとまっていない。
・意見はあるが反対されるのはいや。 等
理由は様々ですが、彼らは意見を言えないだけであることも多いのです。
ここで大事なのは、意見の言えない方は周囲から意見の無い方と思われたり、下手をするとYESなのだと思われること
もあるということです。
>>> そんなの放って置けば良い。
いえいえ、チームやグループの仕事が失敗した後で、よくよく振り返れば、A君が意見を言いたそうだったけどモジモジし
て黙っていた、というような場面を思い出したりしませんか?
赤信号、皆で渡れば怖くない。
皆がそんな気運の時に反対したくても反対できないA君の意見をしっかり聴き、冷静かつ客観的かつ公平に判断して仕
事をすすめることは、リーダーの務めなのです。
■ 発言のトレーニング1 >>> 打ち合わせの仕方を変えてみる
世の中に一番多い会議での結論の出し方。それは地位が高い方。声の大きな方の意見が通るという仕切り方です。
こんな会議はファシリテーションの基礎知識を使って変えてみましょう。
@ 事前に、会議のテーマ、全員に意見を言ってもらうことを参加者に伝え、
発言を準備することを各自に求める。
A 実際に全員の意見を聴く。
B 発言の順番が本人に分かるようにして、発言への心の準備をさせる。
C 発言の途中では、他のメンバーに反対意見を言わせない。(絶対に)
たとえ、チーム内のちょっとした打ち合せであってもこの手順を遵守し、意思決定の場面では、必ず全員の意見を聴く
ことをチームとしての習慣にします。
リーダーであるあなたが実行することが必要です。
■ 発言のトレーニング2 根拠が明確なら意見も言いやすい
多少なりとも、メンバーがこの習慣に慣れてきたら、
発言の際、それが正しいと思う理由や具体的根拠を明確にするように求めて下さい。
「何で、そう思うんだ?」 なんて否定調で聴くのではなく、
「君がそう思った根拠があったら知りたいな?」 と発言をうながして下さい。
こんな場面では、人は自分が責められていると思いがちです。
その判断に至った経緯を、本人に客観的に振り返らせることを強く意識して質問して下さい。
@ 自分の意見をしっかり考える。
A そう思う理由を明確にする。
B 自分の考えた意見を発言する。
極めて当り前のこの3点が本人の習慣、会話のベースになれば、おとなしそうなA君も、きちんと自分
の意見を言えるようになるかもしれません。
はたからみれば当たり前のことが出来ていないことに、意外と本人は気づいていないものなのです。
■ 質問のレベルを変えてみる
「自由に意見を言ってごらん。」
数名での打ち合せ。 大人数でもはないのに意見が出てこない。そんな場面が頻発していませんか?
部下は、あなたに否定されること、何考えているんだと責められることを恐れているのかもしれません。
そんな場面で有効なのは、質問のレベルを変えてみることです。
例えば、より具体的に、
「○○を実行した場合の、メリットとデメリットを書き出してみてよ。」
また、場面によっては、思考の枠組みを変えることも発想を促します。
「君の好きにやっていいと言われたら、どんなやり方をする?」
言いたいのに言えない。発想そのものが出来ていない。どちらの場合もリーダーの質問の仕方次第で、
発言を引き出せる可能性があります。
■ そもそもYESマンは人の話を聴くことが得意なだけなのかも知れません
人の意見を尊重するあまり、チームとしての意見をまとめられない。
そんな状態をチーム員からみると、自分の意見が無い。リーダーシップが無いと思われてしまう場合があります。
そんな若手のリーダーには、
リーダーの仕事は、
@ 情報を集めて決断すること、
A 決めた方向に皆を走りだせるように背中を押すこと なのだと助言してあげましょう。
チーム員各案のメリット、デメリットを比較検討した上で、最後に決断するのは自分。
次は、結果を出すためにメンバーにハッパをかける。
そんな経験を積むことがリーダーを育てます。
■ あなた自身が客観性を重視する
リーダーのあなた自身が、部下やチームメンバーの意見に対して公平かつ客観的な判断を維持し、時にメンバーの発
案を実現することを強力にバックアップすることを事実として示せば、あなたの周囲では、活発な意見が飛び交う雰囲
気が形成されてきます。
文字にすると当り前かつ簡単そうですが、あなた自身が、強く意識して実行しないと決して実現しません。
例えば、部下の意見を否定する際も、
● NOの理由を明確にする(具体的根拠で納得性を高める)
● 相手の言い分をしっかり聞く(NOに満足感を残す)
● YESの可能性もきちんと追求する(本当にNOでいいのか)
等の積極的な努力が必要なのです
〆〆〆
あなたの周囲のモジモジ君を活性化するヒントがありましたでしょうか?
少しでもお役に立てれば幸いです。
Mail30 出来る社員に人を育てさせるには
有能な選手が必ずしも有能な監督にはなれない。有能なセールスマンが必ずしも有能なセールスマネージャにはなれ
ない。よく耳にする言葉です。 何故、そう言われるのか?
そこで、できる社員、かつ人を育てられる有能なリーダーを生み出すヒントを考えてみます。
■ できるって、つまりどういう意味なのか?
あいつはできる。あいつは良くやる。という場合の 「できる」、「良くやる」 とはどういう意味でしょう。
この表現は、「できない社員」 「やらない社員」 と比較した現状を表わしているにすぎません。
すなわちAさんは、BさんやCさんより仕事が速い、成果を上げている。という事実です。
しかし、
一旦、上司やリーダーが部下をできる社員とできない社員に色分けしてしまうと、他のメンバーも同じ色分けをしてしま
うので、できる社員にはより多くの機会と賞賛、サポートが与えられ、できない社員には「できないやつだ、関わらない
ようにしよう」というレッテルが貼られてしまいかねません。
■ レッテルが人を育てられない原因なのでは?
でも、よく考えて下さい。
できない(と思われている)社員の行動が本当に誤っていたのか? そんなに問題があったのか?
できない社員の行動は間違っていたのではなく、できる社員の行動とちょっと違っていただけ、ちょっとスムーズでなか
っただけだったりしませんか。
できない社員だって、周囲の協力があれば、 にがて・不得意な部分を克服し、できる社員に変身できる可能性がある
はずです。
まず、上司やリーダーが 「できる」 「できない」 というレッテルを貼るのはやめ、部下の行動のしっかりと観察して事
実 (過去ではなく、現在の状況) を把握する。それがスタートラインです。
チーム自体にそんな気運が高まれば、できる社員にも、できない社員の行動は、間違っているのではなく、自分と違う
だけ、アドバイスしてみよう。 という雰囲気が生まれるかもしれません。
■ 井の中の蛙 = フォールコンセンサス
自分が絶対に正しいと信じている方。できる社員に多そうです。
正しいと信じているから、人の話は聞かない。周囲の方は気にしない。
これは多くの場合、単なる自信過剰ではなく自分が多数派だと思ってるのです。
これをフォール・コンセンサス(認知上の誤り)と言います。
人は、性格が合う相手や趣味が同じ相手と行動を共にする傾向があります。 結果、自分の意見や行動を多くの者が
受け入れてくれると思い込み、自分の仲間以外は受け入れてくれないことには気付いていないのです。
言わば、井の中の蛙 (かわず)。
特に、我々会社人は、
自分の部門や自分の会社以外の方と深く関わることが少ないので、井の中の蛙になりやすいのです。
できない社員の考え方、行動を理解するには、自分が井の中の蛙である可能性を理解し、できない社員の行動にもき
ちんと目を向けることが必要です。 前向きで光った行動をしている事実が見えてくるかもしれません。
〆〆〆
では、ここから先、「できない社員」 とは 「できないと思い込まれている社員」 のことだという前提で話します。
■ 指示したことが伝わらない。何故だろう?
何を指示しても相手にきちんと内容が伝わらなければ、指示していないのと全く同じです。
できる社員が「できる思考回路」で指示、指導しても、できない社員にはきちんと伝わらない可能性があります。
くどいようですが、出来る社員とできない社員とは、思考回路が違うのです。
良い悪いではなく、違う思考回路が存在するだけ。
その時、自分は正しいことを言っているのに理解してもらえないと思ってしまえば、仕事ができるけど、人を育てられ
ない社員ということになります。
必要なのは、相手にわかる言葉・説明の仕方できちんと伝えることであり、
これは単純に上司と部下の関係にも当てはまります。
■ 仕事のストーリーを考えさせる
ちょっと確認します。 エンパワーメント (権限委譲) とは、目標 (目的) と方向性は与えるが、
「プロセス = 仕事の進め方」 は本人に任せる手法です。
部下に仕事を任せた。でもどうなったか気になる。それは当然です。
仕事を完成させるのは、リーダーであるあなたの責任なのですから。
でも一旦、任された仕事に、口出しされるのは、あなただってイヤなはず。 部下だって同じ気持ちです。
まして、できる社員とできない社員の仕事の進め方は、往々にして違うのです。
できる社員が仕事のやり方に口を挟んでも、一旦走り出した馬を無理やり方向転換させるようなものです。
もちろん、絶対に口出しはしないという選択肢もありますが、口出ししないと、全く違う方向に仕事が進んでしま
い失敗する可能性がある。 あなたは、それが心配なわけでしょう。
となれば、大事なのはエンパワーメントのスタートラインです。
心配なら、あなたの示した目標を達成するまでのストーリーを本人に訊いてみて下さい。
ストーリー = 仕事に着手して、目標を達成するまでの工程です。
そこでもし、
ストーリーなんて考えていません。そう言われたらどうします? 彼を仕事からはずしますか?
・・・・それでは、人を育てられないのです。
ではどうすれば良いか?
相手と一緒に仕事のストーリーを考えてみましょう。 いわばキックオフミーティングですね。
相手に自分で考えさせるためには、まずは質問です。
Q 「そもそも、この目標って、達成できそうかな?」
Q 「ネックがあるとしたら何かな?」
Q 「どうやったらボトルネックを乗り越えられるかな?」
Q 「それを実行するのに、どの部門に助けてもらえばいいと思う?」
Q 「君が不得意なことは?」
Q 「君にはどんなサポートが必要かな?」
Q 「それを誰に頼む?」
Q 「この期限に間に合わせるには、これをいつまでにやろうか?」
ここでちょっとご注意。
質問の後、答えをせかすのはNGです。
⇒ 我慢しましょう。・・・考え中なのですから。
あなたが結論を言ったり、いきなり否定するのもNGです。
⇒ 相手の話をじっくり聞いてみましょうよ。
間違っているのではなく、あなたとは考え方が違うだけかもしれません。
つまりは、しっかり相手の話を聴きましょう。時間をかけてあせらずに ということです。
ちょっとだけ承認(A=アクノレッジ)、そして要望(R=リクエスト)したっていいのです。
A 「なんだ、ストーリーは君の頭の中にあったじゃないか」
R 「紙に書いてみてよ」
R 「こことここで進捗報告してくれるかな」
A 「君ならできるよ」
どうです、思考を引き出せそうですか? 2人で話したストーリーは2人の共通認識となります。
でもあくまで、仕事のストーリーを考えたのはあなたではなく、仕事を任した相手です。
ストーリーの中身も、彼の考えで構成されている。
自分で考えた仕事の進め方を自分でやってみる。 ・・・それが肝心なのです。
■ 視点を変える
こんな保険会社のTVCMを覚えていますか。
給料の20%を貯金しろと言ったら、無理だと言う若者に対し、給料の80%で生活しろといったら、
やってみると約束した。
そうです。上司やリーダーの役目は相手の視点を変え、新たな気付きを与えることでもあります。
● 仕事がうまく進んでいないという部下に、
「○○の部分は進捗してるじゃないか。何をしたら上手くいったのかな?」
● 明日までには課題が終わらないという部下に、
「完璧でなくていい、骨子だけを明日示してくれ。」
● 自社の仕事の進め方が良くないと、なげく部下に、
「じゃあ、どうすれば良くなると思う? 君のアイデアは?」
どうですか。 視点を変えたら、答えが出たり、動けたりしそうな気がしませんか。
〆〆〆
できない社員はできないのではなく、自分が答えを知っていることに気付いていないだけ、きちんと考えたり、任さ
れて結果を評価された経験がないだけなのかもしれません。
是非、つまらないレッテルは引き剥がし、先輩が普通に後輩を育て、メンバーの本当の力が引き出されるチームを
作ってみて下さい。
Mail31 苦手意識を克服する
■ 苦手意識の克服は、「怖いもの無し」への道
この仕事は苦手とか、○○さんは苦手とおっしゃる方を結構見かけます。
口には出さなくても、苦手なことが無い方はほとんどいないでしょう。
苦手なことは、放って置けば一生苦手なままです。
しかし、もしあなたやあなたのチームが苦手を克服出来たとしたら、怖いもの無しになるような気がしませんか。
自分自身の苦手を想像しながら、苦手克服方法を考えてみて下さい。
■ 苦手意識って本当は何? 単なる思い込みでは?
苦手意識には大きく分けて、次の2種類があります。
@やってみる前から苦手と思い敬遠する意識(つまり、食わず嫌い)
A過去のいやな経験、失敗から自分には難しいと思う意識
@の食わず嫌いについて考えてみます。
例えば、人前でのスピーチや会議の司会が苦手という方がいらっしゃいますが、これは実はスピーチの経験が少な
い、司会の経験がほとんど無いだけであり、何度も繰り返し経験すれば、慣れてしまう、もしくは案外得意だったなん
てこともあります。
パソコンが苦手とおっしゃる方も、実はパソコンの色々な機能を使ったことがなく、幾つかの基本操作を知らないため
にそこから先に進めないだけであり、系統立て使い方を教われば、楽しんで使いこなせるようになることも十分有り得
ます。
〆〆〆
食わず嫌いは、慣れ、系統立てた学習が解決する。 そう思って下さい。
■ 過去の失敗を再検証してみたら
では、Aの場合、
過去のいやな経験や似たような行為による経験での失敗から、苦手意識を感じる場合があります。
この場合に大事なのは、過去の失敗の内容について正確に思い出してみることです。
(ちょっとイヤなことですが。)
失敗した状況、失敗した原因をきちんとトレースしてみて、現在の状況は本当に当時と同じなのか、自分の技量や経
験を考えれば今回は問題なく乗り越えられるのではないかと、冷静に考えてみて下さい。
実はこの方法は、心の不調から、過大に不安を感じる方にも有効です。もし、あなたの部下が、頼んだ仕事に不安を
感じているようなら、一緒に原因を考えてあげて下さい。
冷静に考えてみて、今の自分なら出来そうな気がするのなら、
「よし、俺には出来る」と口に出してみることも効果があります。
〆〆〆
失敗は、きちんと検証する。覚えておいて下さい。
■ 小さな成功体験を積み重ねて下さい
過去の失敗が繰り返されるのではと、どうしても不安なあなた、人間は、日々成長するものです。
誰だって最初からベテランであったわけではないのです。
日々、自分の仕事や人間関係等のうまくいった部分を確認して下さい。
今日は○○がうまく出来た。この作業は一人で出来るようになった。というように、仕事の進捗や技量の向上を確認す
ることで、自分の成長を実感できるはずです。
この方法は、あなたの部下にやる気を出させる手段としても使えます。
ちょっとした成長を褒めても良いし、褒める部分が見つけにくくても、計算が合っていたり、処理がきちんと出来た時に、
「出来たね。」 と進捗の事実を伝えるだけでも良いのです。
〆〆〆
大事なのは、自分自身が成長や、小さな成功体験を実感しながら積み重ねていくことです。
■ リハーサルしてみましょう
それでも不安を感じる場合、リハーサルを行うのも一つの手段です。
大勢の前でのプレゼン、会議の司会、相手との会話、プロジェクトのリーダーシップ。どれでも方法は同じです。
話の流れ、仕事の流れを紙に書いて確認します。
大体の流れが確認できたら、その流れを頭の中で反芻します。
出来るだけ具体的なイメージとして、話している自分自身、意見を言い返す方々、それをきちんと説得する自分、会議
やプロジェクトが終了して喜んでいる自分やメンバーの姿を頭の中に思い浮かべます。
そんなことが、効果があるのかと思う方もいるかもしれませんが、
これが、F1レーサーもやっているイメージトレーニングです。
〆〆〆
イメージトレーニングによるリハーサルは、
リラックスして本番を迎え、本来の能力を発揮する為の合理的手段です。
■ 人と話すのが苦手なのは何故でしょう?
人付き合いが苦手、○○さんは苦手と思う方、結構います。
こんな場合は、苦手と思う理由を冷静に分析してみて下さい。
人のペースで話すのは苦手。○○さんは一方的に話すから苦手。自分の考えを否定されるのは気分が悪い。等々。
人付き合いの苦手の原因は色々ありますが、多くの場合、あなたが自分のペースで話せて、自分の意見を言えれば、
解決するものです。
しかし、よく考えてみて下さい。そんな状態になれば、今度はあなたの周囲の方が、あなたを苦手に思って敬遠するよ
うになりますよ。
人付き合いの苦手を克服する目的は、コミュニケーションを十分に取ることです。これでは本末転倒です。
そこでコミュニケーションに観点を置いて考えてみて下さい。
コミュニケーションの基本は相手の話をしっかり聴くこと。相手がベラベラしゃべっているのなら、相手の考えを十分に
理解するチャンスです。
また、相手と意見が違う場合だって、コミュニケーションの基本である「人の数だけルール(考え方)がある」という考え
方をしてみて下さい。
〆〆〆
人と意見が違うのは、苦手かどうか以前に誰にでも当り前のこと。
そう思えれば、相手の意見の中の自分の考えとの違いや、合意できる部分が見えてきます。
***
どうしても、しゃべり続けて意見を言わせてくれない方に対しては、いざとなれば最後の手段、相槌を一切打たない、
他所を向くという手もありますが、喧嘩を売っているわけではないので、手を上げて発言をさせて欲しいとの意思表示
をしてみて下さい。
そして相手が黙った時に、「私の意見を聴く気がないのなら、打ち合せは一時終了させて下さい。」と言うべきです。
もちろん相手を選んで。
■ 回り道も大切
どうしても苦手なことを克服出来ない方は、別の方法でカバー出来ないかと考えてみるのも一つの手です。
自分が得意な部分でカバーしようと考えたり、不得意をカバーする為に出来ることを確実にやろうと努力することは、
前向きな回り道です。
きちんと苦手の内容を確認し、例えば、ドライバーの飛距離が足りないなら、まっすぐ飛ばす技術や、パットに磨きを
かける等、出来ることを最大限努力するのです。
もちろん、はなから逃げていてはだめ、後ろ向きな回り道になりますよ。
人によってはくせになりかねません。
〆〆〆
いかがですか、
今回の内容を要約するなら、前向きな生き方が苦手を克服する。・・・ということになります。
前向きな考え方をすれば、苦手意識も十分、成長のバネになるような気がしませんか。
是非、苦手を克服してみて下さい。
Mail32 もっとコミュニケーションを深めるために
仕事が錯綜すると、どうしても周囲とのコミュニケーションがおろそかになりがちです。時にはそれがミスの原因となり、
悪循環を生むこともあります。そこで今回は、コミュニケーションの質をもうちょっと深めるためのおさらいをしてみます。
まず、中身のあるコミュニケーションを行うための基本を考えてみました。
@ 相手に伝えたいことがある
A それを伝えようとする意欲がある
B それを伝えるスキルがある ・・・・ この3つです。
では、相手に伝えたいことを伝える 「意欲」 と 「スキル」 について考えてみましょう。
■自分も相手も尊重すれば、伝える意欲が産まれます
会議・打合せの席で、あなたが自分には大した意見がないので発言してもしょうがないと思っていると、きっと周囲
の方もあなたを軽んじて、意見を聴くに値しないなと思うようになるでしょう。
逆に、あなた自身が相手を軽んじて、しっかり相手の意見を聴かないのなら、相手もあなたの意見を聴かなくなるは
ずです。
〆〆〆
相手に何かを伝えたいという意欲を高める基本は、
自分の考え方も、相手の考え方も、同じように尊重することです。
そんな会話のスタンスを保つためには、相手に対する決め付けはやめ、相手の立場や気持ちをアサーティブ(積極
的) に考えてみることが必要なのです。
例えば、講演会の講師の方が最初の挨拶で、
「忙しいところすみませんが、1時間だけ我慢してお付き合い下さい。」 と言うのと、
「せっかくの機会です。すぐ使えるスキルをご紹介しますので、覚えて帰って職場で使ってみて下さい。」 と言うのと
では、どちらの話を聴く気になりますか?
また同じように、セールスの方から、
「新製品を発売したのでご紹介させて下さい。」 と言われるよりは、
「○○を効率化するシステムを開発したので、お役に立てるかもしれません。」 と言われたほうが、
話を聴いてみるかという気になりやすいはずです。
〆〆〆
意欲ある会話に必要なのは、エクスキューズ(お侘び)ではなく、相手のメリットを考えることなのです。
■人は聴きたいことだけ聴いています
奥様が話しかけているのにぼんやりしていて怒られたことはありませんか?
また、会議の終了後に、会議の決定事項がよく思い出せなかったなんてことも、時にはあったりしませんか?。
人は相手が話すことを聴くのではなく、自分が興味のあることだけを聴いているのです。
ビジネスでも、初対面の相手との会話なら、相手の興味はどこにあるかを自然と探りますよね?
「早実の斉藤投手すごかったですね。」
「柳原ジャパンがキューバに勝ちましたよねえ。」
「タイガー、またやりましたねえ。」 なんて風に。
仕事以外の部分で、お互いの親近感を増すネタが見つかれば、仕事の話においても話しやすくなるからです。
これをクロージングと言います。
前述の例においても、
「○○のコストダウンを検討されてましたよね。
○○を効率化するシステムを開発したので、お役に立てるかもしれません。」
とこちらの興味を考えた上で言われれば、さらに話を聴きたくなるはずです。
そんなの当たり前じゃないか、知っているよと思う方もいるかも知れません。
ではあなたは、良く知った同僚や部下との会話の中で、相手が今現在、何に興味を持っているのかを探ろうとしな
がら会話をしていますか?
〆〆〆
日常の仕事での打合せの場面においても、
当たり前のように自分の指示や考えを一方的に相手に伝えるのではなく、
相手の話をしっかり聴き、相手の仕事上の興味や考え方を再確認した上で、仕事の進め方を話し合えば、
仕事の成果も違ってくるはずです。
■質問がコミュニケーションにメリハリをつける
例えば、仕事が進まない部下に対する2種類の声掛け。
「何やっているんだ?」 と言えば、相手は詰問されたと思います。
「うまくいかない原因は何だ?」 と言えば、思考が促されるでしょう。
話し方次第で、相手に伝わるニュアンスは変わってしまうわけです。
過去に何度もご紹介したスキル、オープンクエスチョンは、
考えや会話を広げるのが目的なので、自分の経験や考えを押し付けてはいけません。
「前にこうやったら、うまくいったけど、どう?」
「こうなんじゃないの?」
というような質問はYESかNOしか選択肢がない上に、上位の方から言われれば、YESと言わざるを得ないでしょう。
これでは、質問でもコミュニケーションでもありません。
(もちろんそんなアドバイスが必要なこともありますが、コミュニケーションを深めたいのならNGです。)
コミュニケーションにおける効果的な質問とは、短く簡潔であり、相手の言葉の中にある真意や、問題意識の核となる部
分を客観的に気付かせる質問です。
例えば、
「先日、会議はいやだって言ってましたね。どこがいやなのですか?」
「うちの会社の会議っていつも長いんだよね。」
「つまり会議を効率よく進めたいわけですね。何で長いのですか?」
「すぐ脱線するし、皆、思いつきで意見を言うからまとまらないんだ。」
「どうしたら、うまくまとめられますかね?」
「会議の議題を事前に伝えて、簡潔に意見を言ってもらって、最後に結論を確認すればいいのかな。」
「じゃあ、次の会議はそのやり方で仕切ってみましょうよ。」
「そうだね。やってみるか。」 ・・・・・ 何て感じです。
答えを誘導しているようにみえますが、問題を再認識し、解決手段を考えたのは相手です。
納得感も高いでしょう。
〆〆〆
一見遠回りにも思えますが、
相手に自分で考えさせるのは、伝えたいことをしっかりと理解してもらう近道なのです。
■自分の第一印象って知っていますか?
突然ですが、15秒で自己紹介してみて下さい。そう言われたらどうします?
「はじめまして、○○部の○○です。
えっと今度の担当は○○ですが、まだよく分かっていないので、ご指導よろしくお願いします。」
15秒はあっという間です。ありきたりの内容を伝えても、あなたがどんな人間かは、相手に伝わりません。
ほとんど記憶に残らないかもしれません。
でも実は、人が集中して聴けるギリギリの時間が15秒なのだそうです。
では、新プロジェクトの顔合わせを想定してみて下さい。
「おはようございます。○○部で○○を担当している○○です。
○○の経験を活かして、皆さんのお役に立ちたいと思っています。一緒に頑張りましょう。」
(はっきりとした口調で) + 笑顔(or真剣な顔) + 他のメンバーとのアイコンタクト。
実はここで大切なのは、「」の中の伝えたい内容ではなく、口調や笑顔、アイコンタクトなのです。
あなたのやる気や誠意、人柄を伝える為に言葉以外の部分が果たす役割は非常に大きいのです。
これは初対面でなくても同じ。
相手の顔をみてちょっとうなずくだけで、元気か?とか、もう一息頑張ろうという気持ちは伝わります。
〆〆〆
目は口ほどに物を言う。この言い古された諺を、日々思い出して下さい。
■具体的でなければ伝わらない
部下に指示したのに思うとおりの結果が出ない。相手に伝えたはずが伝わっていない。そんな原因の多くは、
あなたの思い込みにあるかも知れません。
伝えたことを相手が理解しているとは限らないのは、伝言ゲームの例でも一目瞭然です。
しかも、伝言ゲームで責められるべきは、聞く側ではなく、話す側なのです。
〆〆〆
コミュニケーションにおけるすれ違いを防ぐため、簡潔かつ具体的に話すくせをつけましょう。
具体化(チャンクダウン)の例をご紹介します。
×「悪くはないと思うが。ちょっとね。」
○「○○の部分はいいですね。でも□□の部分には改善が必要です。」
×「つめが甘いよ。」
○「○○には、○○の裏付けが必要だよ。」
×「もう少し頑張ってくれ。」
○「明日までに、コストと納期に的を絞った対案を2つ考えてくれ。」
具体的に伝えることで適格な指示が出来るだけでなく、出来る・出来ない、反対意見やその根拠についても会話が掘
り下げられ、問題点を事前に把握することにもつながります。
〆〆〆
コミュニケーションスキルは色々知っていても、効果的に使用するのは難しい。
そう思う方は多いようです。
しかし、大切なのはスキルを駆使しようと思うことではなく、自分の想いを相手に伝えようとする意欲や、相手の立場・
気持ちになって考えようと思う気持ちだと思います。
もう一歩踏み込んで、相手のことを考える。そんな気持ちがコミュニケーションを深めるはずです。
試してみて下さい。
Mail33 ちょっと変わった方々を見直す
ちょっと変わっている方、付き合いにくい方って世の中には大勢います。
それが部下や後輩だったりすると、アイツはダメなやつ。というレッテルを貼って、指導を放棄する方も中にはいるよう
です。
でもそれでは、社員の成長や組織のパワーアップは望めません。限られた人員を生かすために、貼られたレッテル
を再検証してみます。
■ 言い訳をする人って、ダメなやつなのか? 見直してみよう!
職場で上司や先輩に注意されたら、言い訳せずに謝るのは当たり前。
そう思う方もいるかもしれませんが、なんだかんだと言い訳して非を認めない方も結構みかけます。
訴訟社会アメリカの影響。 ・・・・・ ではすまされません。検証してみましょう。
まず、最初に考えるべきは、言い訳しないのが本当に良いのかどうか。
例えば、よく考えて自信を持って行動した者は、ダメだと判断された理由を知りたいでしょう。
言い訳は、実は判断基準を求めているのかもしれません。
きちんとした議論の上で判断に納得すれば、もう間違いは繰り返さないはず。 言い訳による議論は、成長につなが
る大事な機会でもあります。
でも、「すみませんでした。」「次、気をつけてな。」で済ましてしまうと、一見潔い態度には見えますが、ダメと判断さ
れた基準をきちんと理解していないので、似たような間違いを繰り返す可能性があります。
もちろん、十分コミュニケーションが取れていれば、お互いの価値観や判断基準はよく理解できているでしょうが、
往々にして相手を十分解っているというのは上司や先輩の側の思い込みだったりします。
〆〆〆
では、再確認。
部下・後輩を注意する場合は、理由は解ってるはずと考えずに、良くないと判断した理由を明確に伝えましょう。
それでも、言い訳をする方がいた時は、言い逃れ・ごまかしなのか、 それともきちんとした判断基準を知りたいのか
を見極めましょう。
■ 仕事ができないやつって本当にできないのか? 見直してみよう!
部下に仕事を任せたのに中々進まない。部下が自分の範ちゅうでしか仕事をしてくれない。よく聞く悩みです。
徐々に仕事の量や責任の大きさを増やしながら経験を積ませ、本人の能力の向に合わせてアドバイスの質を高め
ていくのが一般的な指導法。一朝一夕には解決はしません。
(つまり忍耐は役職者の必須条件なのです。)
でもそんな指導だけでいいか? 他に問題はないか? と検証してみましょう。
【リンゲルマン効果が起きていないか?】
知らない方と2人きりの時に相手が倒れれば助ける方も、電車や街角で倒れた方を見かけても誰かが助けるはず
と考えて、自分は助けない。それがリンゲルマン効果(集団的怠慢効果)です。
この怠慢効果は、大勢が参加するWGやプロジェクトでなくても、上司が指示をし過ぎる場合にも発生します。
結局のところ自分の意志で動けていないので上長指示を待たないと2度手間になってしまう。
だから仕事を進められないのです。
この手の怠慢は本人も自覚していないので、明確な権限委譲や責任の付与で解決することもあります。
(もちろん、能力を見極めた上ですが。)
判断は自分だけに任されている。自分が正しい判断をしないと仕事が頓挫する。
そんな思いが、本人の自主性や計画的行動を誘導するわけです。
【カマス的無気力症ではないか】
簡単に言えば、無駄な努力をしないことへの慣れです。
心理学ではよく、カマスの水槽に餌の小魚を放ち、両者の間に透明な仕切りを置くと、カマスが小魚を追っても無
駄なのを学習し、例え透明板をはずしても小魚を追わなくなるという事実で説明しています。
同じ失敗が何度か続けば、動物は努力を止めます。人だって同じです。
以前、とあるプロジェクトに上司の指示で集まったメンバー大多数に、やる気になれないのでやっつけ仕事で形だ
け整えたいと言われて理由を確認したところ、幾ら成果を出しても、それを活用してくれないのでは、真剣にやれる
わけがないと、皆の理由が全く一致していたことがあります。
つまり、ほぼ全員がカマス的無気力状態だったのです。
カマス的無気力の解決方法はただ一つ。
彼らの成果を会社の成果としてきちんと受止めて活かしていくことです。
〆〆〆
社員が自分の仕事に意義・達成感を感じ、主体的に行動できるかどうかは、上司、部門長や会社の組織風土その
ものの問題なのです。
■ 面倒な役割を嫌がる方 何ででしょう?
WGや面倒な役割をいやがる社員は年齢に関わらず存在します。
内容によっては、協調性がないとか、マネージメント力がないとかの評価につながる場合もありますが、
例えば、直接評価には結びつかない忘年会の幹事を依頼されて断る社員、更には忘年会そのものへの参加を拒
む社員は世の中では増える傾向にあります。 ・・・・ これは個人主義の偏重なのでしょうか。
まず、個人主義が強いことと、責任感が無いことを混同してはいけません。
会社や上司の意向に従って、直接評価に関わりのないことでも一生懸命やっていれば、 定年時までの地位と報
酬が保証されるという時代は既に過去のものであり、個人の価値観を大事にして行動したり、 直接担当業務に関
わらないことを任されるのをいやがることは、残念ながら 価値観が多様化する現代にかなりマッチした行動でもあ
るのです。
とはいえ、実際の業務では困ってしまいます。
普通の会社では、忘年会への参加を評価ポイントにする訳にもいきません。
しかし、よく考えてみて下さい。
報酬等の見返りを求めるのは、仕事への外発的動機付けでしかありません。
仮に、忘年会の幹事をしてマネージメント力が高まったり、多くの方とのコミュニケーションができるよと人から言わ
れても、それすら外発的動機付けです。
これに対して、
行事そのものが面白い。仲間と幹事をすることが楽しい。WGでの想像的仕事によって能力が拡大し知己も増えた、
またやりたい。
本人自身のこんな思い。 つまり内発的動機付けが明確であれば、報酬や高評価 等の見返りなどがなくても新し
い仕事やWGをやりたがるはずです。
〆〆〆
仕事を任され、自分のアイデアで仕事のやり方を考え、その成果が会社の成果として認められ、 自分自身の成長
にもつながる。 そんな会社が良い。
採用面接にくる学生さんに、企業に期待することは何? と質問するとほぼ確実にこんな返答があります。
間違いなく、内発的動機は外発的動機より強いのです。
■ キレるの本質って何でしょう?
以前はキレると言えば、仕事が出来ると言う意味でしたが、
最近は、文字通り神経がプッツンする意味での 「キレる」が一般化してきました。
若者に「キレる」が発生する状態は概ね、「注意される」 「叱られる」 「対立」 といった相手と意見が一致しない状
態、しかも自分では解決できない状態に至った際に、何をするか判らない態度・行動として現れます。
心理学的には、欲求不満耐性が低いことが原因とされています。
欲求不満耐性が低いと、 ちょっとした衝突で発生するフラストレーション (欲求不満) に対して、合理的な判断が
出来なくなってしまうのです。
キレるの最大の表現は暴力ですが、先輩や上司に食ってかかるのも、基本的に暴力を振るうのとそう変わりがない
行動と解釈されています。
実は、 泣く (退行現象)、 もういいですと黙り込む (固執行動) も基本的には全く同じことの違う方法での表現
だと言えば、キレル若者の多さに驚かれるかもしれません。
欲求不満耐性が低い原因は、成長期に衝突状態を克服するモデルケースが周囲に無かったり、フラストレーション
に耐える経験を積まなかったことです。
つまり、大人になってから改善するにはかなりの根気と時間が必要なのです。
かといって反社会行動でもある「キレる」を放って置くことは出来ません。
叱るべき時に叱らなかったり、腫れ物に触るような扱いも教育上は好ましくありません。
キレた相手に対して、「やる気がないのなら帰れ」と言うべきだとおっしゃる方もいるかもしれませんが、少しでも成長
を期待するのなら、頭ごなしに怒るのは、コミュニケーションの放棄でしかありません。
〆〆〆
となれば、まずやってみることは、感情を抑え、言葉を選んで叱ることです。
怒るのではなく、叱る。責めるのではなく、間違いを指摘する。 そんなスタンスでちょっとトーンを落としてやんわり注
意をするようにしてみましょう。
実は、欲求不満耐性の低い方は、叱られたことを過大に受け止める傾向があるので、
「ちょっと違ったみたいだね。」 とやんわり指摘するだけでもかなり叱られたような効果があるのです。
相手に反省する気持ちがあることがわかれば、間違った部分をより具体的に確認し、再発防止策を一緒に考えるこ
とも可能です。
何故、部下や後輩をそこまで大事にして、細かく指導しなければいけないのか、 自分が若い頃はそんな扱いは受け
てこなかった。 ・・・・・ そう思う方はかなりいらっしゃるでしょう。もちろん私も同感です。
しかし、若者の価値観は多様化し、例えばホリエモンのように、一見、地道な努力などせず、既成概念や社会のルー
ルを無視し自分のアイデアや行動力で勝負に出て行く者が英雄視される時代なのです。
そんな昨今では、社員の多様性を否定するのではなく、理解してうまく活用してくことが、組織のパワーアップを図る
近道なのです。
自分にできる身近なことからでやってみませんか?
Mail34 時間を守れない4つの理由
■ 時間を守れない = 約束を守れない ということです
待ち合わせの時間がいつも守れない方っていますよねえ。
毎日のように遅刻してきたり、中には常に書類の提出期日が守れない方もいたりします。
仕事に関わることであれば、遅刻を見越して早めの待ち合わせにしたりと、その方のために他の方々の予定まで
が左右され、迷惑がおよびます。
そもそも時間を守るということは約束を守るということです。
必ず約束の時間より早く待合わせ場所に着いて時間調整するのが習慣の私にとっては、そもそも理解できないこ
とですが、放っておく訳にもいかないので、時間を守れない方の心理を考えてみます。
■ 時間を守れない理由1 守るべき約束などしていない・・という思い
勝手に日時や期日を決められた。
そんな思いがあれば守るべき約束などそもそもないと思う方もいるのです。
特に問題なのは、自分では意識してなくても深層心理でそう思っている場合です。
・ 一方的に会議の日時を指定された。
・ ○○日までに書類を提出するよう要請された。
約束の意思決定に関わっていなければ、仮にその場で同意したとしても、その方の心の奥深くでは、誰々と守る
べき約束をしたという認識はされていないのです。
そろそろ会議の時間だという思いも、目の前の仕事の区切りが付かないと、ちょっと位遅れてもいいやという思い
のほうが強まってしまいかねません。
でも、そんな方でも自分で主催した会議や自分で主導権を握って決めた期日は守るはず。
「○○日なら大丈夫ですか?」と事前に声をかけたり、
「会議の冒頭で□□について報告してくれませんか。」と作業を依頼したり、
期日や会議の意味を、その方の深層心理に刻み込めれば、時間を守ってもらえる可能性は高まります。
■ 時間を守れない理由2 そもそも物理的に無理なのかも
常に仕事を沢山抱えていて締め切りを守るのが困難。
普段はなんとか綱渡り的に仕事をこなしていても、締め切りが重なれば守れない。
また、朝に強いわけではないのに、多忙で帰宅が遅く睡眠時間も不十分、だから遅刻常習犯、なんて単純明快
な理由も考えられます。
本人にしてみれば、仕事上の理由なので、悪気は全くないでしょう。
こんな方は、遅刻の心配より、仕事の心配の方が大きいはずです。
でも、自分では気付かなくても、ストレスは絶大です。
当然、一寸先にはノイローゼやうつ病に苦しむ日々が待っています。
もし、
自分の部下が、あきらかに仕事のし過ぎで不安定な生活を送っているのなら、上司にはそれを助ける義務があ
ります。
この仕事は彼に任している。 ・・・・・ なんて言って逃げるのではなく、
本人の能力に合わせて職場における仕事配分を考える。
職場での悩みがないかを探り、本人の相談にのり解決に導く。
他部門との調整を上位職が行い問題を解決する。
といった手助けをしてみて下さい。
■ 時間を守れない理由3 単にルーズな性格なのかも
仕事や家庭の問題があるわけでもないのに、常習的に遅刻するような方にとっては、
眠い、会社に行きたくないという気持ちが、起きなきゃいけない、出社しなきゃいけないという気持ちにうち勝っ
てしまっているのでしょう。
そんな方はたとえ、明日の朝はもう10分早起きしようと決意しても、朝になったらそんな気持ちは消え失せて
いるのです。中には、まあ遅れてもいいやという気持ちの方もいるでしょう。
つまりは単にルーズな性格なのです。
単にルーズなのであれば、時間を守ることの大切さを伝え、社会人としてのそんな簡単なルールさえ守れな
い者に信用して仕事を任すわけにはいかないので、
それなりの仕事しかやらせないよと本人にはっきり伝えるべきなのです。
それでも時間が守れないのなら、残念ながら、それなりの評価をするしかありません。
そんな方に、締切りのない簡単な仕事を与えられ、しかも他の同僚と同じ処遇を受ければ、周囲の方々は決
して納得しないでしょう。
人の行動はある程度変えられる可能性がありますが、性格は決して変えられないのです。
■ 時間を守れない理由4 自爆的怠慢行為には理由がある
朝には強くても遅刻する。特定の会議の時間や締切りをどうしても守れない。 そんな方もいます。
これには第一の理由と同じく深層心理に原因があることが多いのです。
頭では行かなければならない、やらなければならないと分かっているのですが、いざ、行動に移そうとすると、
障害が起きてしまうのです。
本人に約束が守れない理由を問いただせば、一見正当な理由が返ってきます。
忘れ物をした。電車の時間を間違った。トラブルで仕事が進まない。等々。
でも、よーく観察してみると、
電車の乗り継ぎ確認、仕事のスケジュール調整、他部門との調整といったあきらかに必要な作業を行わず、
自分で障害の原因を作っていたりします。 ・・・・つまりは自爆的怠慢行為。
時間を調整すれば、待合せ時間や締切は守れるし、他部門との調整をすれば仕事は順調に進むはずなので
すが、それをしない。そんなことをしたら、待合せ場所に行かなければならないし、仕事をしなくちゃいけない。
だから本人も気付かないうちに自爆的怠慢行為を引き起こし、仕事をサボタージュしているのです。
こんな深層心理によって約束が守れない方には、会議がいやな理由、会社に来たくない理由があるのです。
ルーズなのとはちょっと異なるわけです。
単に仕事が錯綜していたり、性格がルーズな場合との違いをよく見極めなくてはなりません。
本人と色々話してみて、会社に来たくない、仕事がやりたくないという気持ちがあることが本当に明確なら、
じっくり話を聴いて真の原因を探る。 そして取り除ける原因は取り除く。 そんなスタンスで相手と接すること
が必要です。
そして、深層心理が自爆的怠慢行為を引き起こす原因として、大きく2つの可能性があります。
(他の原因の場合もありますが。)
〆〆〆
1つ目の可能性は、今の仕事と本人の性格のミスマッチ。
これはやっかいです。遅刻や仕事の遅れが会社としての業績に影響を与えるような極端な状況であれば、
担当を変えて違う仕事を担当させる必要もあります。
とは言え、簡単に結論は下せないので、人事部門と相談しながら本人を十分に観察していくしかありません。
〆〆〆
2つ目の可能性はストレス。
恒常的かつ高負荷な仕事への従事によるストレスだけでなく、人間関係の問題や仕事の成果、自分の将来
への不安等、ストレスの原因は色々あります。
これも、仕事配分を考慮したり、スキルアップや将来の配置に関する相談に乗るなど、本人が前向きになれ
るように協力してあげる等、取り除ける原因は取り除き、場合によってはカウンセリングや神経科・心療内科
の治療を受けることを本人に勧めることも必要になるかも知れません。
例えば、問題の原因が特定人物で、その方に会いたくないという深層心理があるのなら、その方のどこがい
やなのか、本当に相手が原因なのかと一緒に考えてみることも必要でしょう。
いずれにせよ、
自爆的怠慢行為への対処は、自部門だけで解決できると過信せず、人事部門や、カウンセラー、医師等の
関与も考慮しながら検討するべきなのです。
時間 = 約束を守れない理由を4つに分けて解説しましたが、解決できそうなこともあれば難しいこともあ
ります。
でも、いずれの原因にも共通なのは、時間=約束を守れないことを放置せずに、何か原因があるはず、解
決できることは解決していこうという前向きな姿勢で相手に接することです。
自分に出来ることをやってみましょう。
Mail35 出来ない理由、出来る理由
皆さん、仕事上で上司や客先から無理難題を言われたらどう反応しますか?
出来ない理由を探すのか、出来る理由を探すのか?
もちろん、世の中には、出来ない理由を探す方、出来る理由を探す方の両方がいます。
しかも多くの場合は、
ただやみくもに、そんなこと出来ない、やりたくないと言う方。
上司に言われたのだから、やらなければいけないと思い込んでいる方。
・・・何故か、そんな両極端な方が世の中には多いような気がします。
勝手な考えを言えば、不可能を乗り越える道は、幾らでもあるような気がします。
凝り固まった発想を大きく転換してみれば、出来ない事なんて実は少ないはずです。
そりゃ、明日、月に連れて行けと言われれば無理ですが、
地球を持ち上げろと言われれば、逆立ちをして、地球を持ち上げてますとだって言えます。
ちょっと極端ですが、それが発想の転換というものです。
〆〆〆
ビジネスマンである以上、可能な限り、「出来る理由」を見つけることは必要です。
出来ない理由、出来る理由について考えてみましょう。
■ 出来ないは、勝手な思い込みではないか?
中には、出来る、出来ないと考える以前に、自分が意見を言ってもしょうがない。 と思っている方を時々見か
けます。
恐らくは、本人の想いの中に、
「自分の意見が社内で通るわけがない」というバイアス(心理理的な落とし穴 = 勝手な思い込み)が生じ、
行動にブレーキをかけているのでしょう。
@上司から何かを任されたことが、一度もない。
A以前に提案をしてみて、却下されたことがある。 そんな経験がバイアスの原因となったりもします。
例えば、 近々、事務機器を入替えようと思っているのに、
こちらが呼ばなければ、○○社の営業マンが顔も出さない。 ○○社は売る気がないのか?
・・・そんな思いをしたことはありませんか?
つまり、
○○社の営業マンの側からみると、仕事をくれそうもない客先には訪問してもしょうがない というバイアスが
あるのでしょう。本当は仕事があるのに。
これもAと同じ原因による、勝手な思い込みである可能性があります。
まずは、行動してみる。
それが、このバイアス(落とし穴)に落ちないための第一の方法なのです。
■ 出来ない理由は自信の無さなのでは?
まずは、行動してみると言ってもそれが出来ないんだよ。 そんな方もいるかもしれません。何故でしょう。
自分には自信が無い。
例えば、人前で歌を歌えと言われて、恥ずかしいからいやだという方も、原因を掘り下げれば、自分の歌に
自信が無いからではないでしょうか。
自信が無いというのは、裏を返せば、自分には足りないものがある。 ということでもあります。
「自分には出来ない。」 という想いを、
「自分に足りないものは何か?」 という疑問に変え、
「どうすれば手に入るのか?」 という思考を始めることが、出来ない理由を無くすことのスタートラインです。
自分に足りないものは、勇気とか言われてもちょっと困りますが、
例えば、
仕事の知識・経験、仕事を進める上で必要な情報や人脈なら、社内で見つけられる可能性は大です。
もちろん、普段からそうした人脈作りをすることもビジネスマンとしては必要なのですが、上司や先輩の力
を借りるという手だってあります。
「○○に詳しい方を知りませんか?」
「□□の経験がある、○○さんを紹介してくれませんか?」
そう言われて、知らないよ自分で探せと言う上司は、まずいないでしょう。
自分に足りないものは、調達すればいいじゃないか。まずは、行動してみよう という気を持っていただけ
ましたでしょうか?
■ 発想の転換って難しいのか?
出来ないを出来るに変えるためには、発想の転換が必要。
とは言え、発想を転換するのってかなり難しい。そう思う方は多いはず。
発想の転換は、自分の経験や考え方を否定することでもあるからです。
でも、オーストリアの経済学者シュンペーターの「創造による破壊」という言葉は誰でも聴いたことがある
でしょう。
経営者の方は、売上を5%伸ばすためには、社員に発破をかけて何とかしようと思うかもしれません。
でも仮に、売上を50%伸ばそうということになれば、事業の内容や製品を一から見直すのではないでし
ょうか?
今までの自分ではダメだという開き直りの気持ちが、創造による破壊の原動力になるのです。
こんな話があります。
つぶれそうな酒屋の主人が開き直って、2千円前後だった地酒の値札を6千円、7千円に付け替えたとこ
ろ、何故か客足が増え、売れはじめた。
さらに、いつでも入手出来るはずの酒の入荷予定を貼紙し、予約を募ったところ20件近い予約が入った。
また、
60年代のフロリダで、酔って騒いで留置場に入る学生が後を絶たずに困った警察が、留置場の食事をベ
ビーフードにし、それを公言したところ、騒ぎを起こす学生が激減した。
この例はどちらも、
・どこでも売ってる安物 ⇒ 手に入れ難い貴重品 (高い付加価値)
・留置場入りで箔がつく ⇒ ベビーフードを食べさせられた笑い者
という心理効果の結果なのですが、発想の転換としても分かりやすい例です。
シチュエーションを変えて考えることも発想の転換につながります。
まず、自分が社長だったら、お金を無限に使えたら、時間が幾らでもあったら、どういう方法が可能かとシ
チュエーションを大幅に変えて思考します。
次に、思いついた方法を、今の自分が実現するための具体的手段を検討してみるのです。
1億円と1年が使えたら、○○の方法で目的実現が可能。 では、○○を1千万円と2週間で行うとしたら
何か手はないかという2ステップの思考です。
〆〆〆
世の中には、ふと思いついたアイデアが逃げないように、部屋の扉を閉めたりする広告マンが本当にいた
りするのです。アイデアは無限ですよ。
■ 判断軸も必要
でも、多くの方が大事なことを忘れています。
仮に無理難題を実現出来る発想が浮かんだとして、本当にそれをやっていいのか? という発想です。
やるべきことなのか、やっちゃいけないことなのか?
その判断をする際に必要なのが、自分自身の行動軸・判断軸 = 譲れない価値観です。
価値観は人それぞれに違います。
そして、
仕事や私生活における目標 = 実現すべき将来 = ビジョンがあれば、無理難題を実現して得られるもの
と、失われるものを天秤にかけることも出来るかもしれません。
自分自身の行動の軸と、自分自身の将来ビジョンが明確なら、やるかやらないかで判断に迷うことは少な
いでしょう。
そしてもう一つ、
価値観もビジョンも人それぞれに違いがあるのですから、同じ迷いに対して、違う判断結果があっても不思
議ではありません。自分の考えを人に押し付けても、中々動いてはくれない理由は理解できるでしょう。
あなたがやるべきだと判断して、出来る方法を探したとしても、やるべきでないと判断した方は、出来ない理
由を見つけて拒むでしょう。
彼らを納得させて行動につなげるには、早く実行しろと命令することではなく、 やるべき必要性を理解して
もらうしか手段はないのです。
〆〆〆
冒頭に申し上げた、やみくもに出来ないと言う方。上司に言われたからやると言う方。
そのどちらも、なぜやるのかという明確な考え方がなければ、行動に説得力はないし、実際に行動した成果
も、それによって得られる成長も十分ではないはずです。
自分自身の出来ない理由、出来る理由を掘り下げることで、周囲を巻き込んだ行動・成果を引き起こしてみ
ませんか?
Mail36 葉隠(はがくれ)のストローク(宥和)
皆様、葉隠(はがくれ)という書物をご存知でしょうか?
江戸時代中期の鍋島藩士 山本常朝 の武士道に関する言葉をまとめたものなのですが、 その一節、
「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」 という言葉は結構有名ですよね。
第二次大戦中は、日本の軍国主義にも利用され、多くの自決につながったとされ、戦後は悪書の扱いをされて
いましたが、実際の中身には、武士の日々のお務めの中でのHowToやマナーの解説が多く、1600年代後半
から1700年代の「サラリーマン役立ちマニュアル的」な内容であるのが、本当のところのようです。
「武士道と云ふは死ぬ事と・・・。」 も、
本来は死んだ気になって頑張れとか、世事の細かなことに執着するなと、自省を促がす言葉であって、
決して、死を潔いとしたり、死をうながすような意味の言葉ではないのです。
事実、別な一節では、自分は死にたくはないというような記述もあるようです。
大いに曲解され、悪用された書というわけです。
また、江戸時代には、武士の基本的な考え方ではなく、世渡りを重視した偏屈な考え方だとして、
決して重視はされてなかったような書物なのです。
■ 葉隠の時代も、挨拶は礼節の基本だった
さて、葉隠れの中の一節に、
「人に会う時は、その人の気質を早く理解し、相手にあった挨拶をすべきである。
理屈っぽい方には自分から折れ、角が立たないようにして、相手より高い理論で説き伏せ、
その後も遺恨を残さないように。」
というような挨拶に関するくだりがあるそうです。 やはり、立派な処世術。
ではここで、自分の身を振り返ってみましょう。
● 今朝、周囲の方にどんな挨拶をしたでしょうか?
● 相手に併せた挨拶なんてしたでしょうか?
人にお願い事をする時に、おべんちゃらを言うよりも、なによりも、 日頃のきちんとした挨拶の積み重ねのほ
うがずっと効果がある と力説する心理学者の方もいるのです。
相手に併せた挨拶とまでは言いませんが、元気のあるきちんとした挨拶は、周囲の方まで活気づけるはずで
す。元気な朝の挨拶であなたのチームを明るくしてみませんか?
■ 挨拶はストローク (関係の潤滑、宥和) になります
ではもう一歩、挨拶を極めてみましょう。
挨拶の基本は、相手の存在=相手が今そこにいることを目で確認してきちんと挨拶することです。
つまりは相手の方を向くことがスタートライン。
それでは、再び確認。
● 今朝は、周囲の方々に相手に身体を向けて挨拶をしましたでしょうか?
まさか、
顔を下げたままや、他所を向いたままで挨拶していたりしませんよね。
もし、自分が目上なら許されると思っているのなら、挨拶による部下とのコミュニケーション効果は半減してい
ますよ。挨拶はコミュニケーションの第一歩なのですから。
また、きちんとした挨拶は、
仕事上での交渉事においても、ストローク (関係の潤滑、宥和) となります。
どんな相手であっても、交渉を行うときはきちんと挨拶して、最後に遺恨を残さず、Win−Winの結果を求め
ることが大切です。いわば、しゃんしゃん。という後味が大切なわけです。
〆〆〆
では、ストロークについてもう少し掘り下げてみましょう。
■ 傾聴もストローク (関係の潤滑) になる
葉隠にはこんな文章もあります。
「人を超えるには、自分のことを他人に批判させ、意見を聞くのが一番良い。
自分の考えだけでは飛躍は出来ない。 人の意見が飛躍の根源となる。」
相手の話をしっかり聞くことは、かなり効果的なストロークなのです。
また、自分を客観的に理解することにもつながります。
時には、きちんと時間をとり、反論したり、口を挟みたくなるのを我慢して、相手の話を聴いてみて下さい。
たとえ、あなたが興味の無い話でも、あなたへの批判であったとしても、しっかり聞いて、会話を成立させな
ければ、関係の潤滑にはつながりません。 もちろん、簡単ではありません。
例えば、
あなたは普段、自分の親の話を真剣に聴いていますか?
「わかった、わかった。」
なんて煙たがっているようでは、全然、ストロークにはなっていませんよ。
親の話を真剣に聴くことは、いい練習になるかもしれません。
たとえ、あなたにとってつまらないと思える話でも、話の骨子を理解しながら、聴いてみましょう。
同じ話が2回目、3回目だって同じ気持ちで。
それが出来るくらいじゃないと、苦手な取引先との交渉事には臨めません。
はなからケンカ腰の交渉なんて、決して、うまくは行きません。 今回、相手を打ち負かしたとしても、
次は打ち負かされるかもしれません。
■ 「同じ」 は立派なストローク (関係の潤滑)
もう、何度となく紹介していますが、相手と同じ部分を見つけることも立派なストロークになります。
但し、相手と同じ部分というのは案外少ないものです。まして、完全に意見が一致することなどほとんど
ありません。だからこそ、大事なのは、相手と色々話すこと。
「俺はアクション映画が好きなんだ。」
「私は、アクションはちょっと。」
「そうか・・・。」 ・・・で終わりではなく、
「じゃあ、君はどんなのが好き?」
「うーん、恋愛物ですね。」
「例えば?」
「プリティーウーマン。」
「俺も見たよ。」 ・・・と「同じ」糸口を掴むよう、自分から積極的に努力する。
〆〆〆
ビジネスの場面だって同じです。
「この案でやってみたいのですが?」
「その案には反対だな。」
「そこを何とか。」
「ダメだ。」
「そうですか・・・。」 ・・・ではなく。
「どこの部分が問題でしょうか?」
「納期がギリギリだな。予算もオーバー気味だよ。」
「じゃあ、その2点を見直ししてみます。 その他の部分は、賛成だと思ってよろしいですね。
「ああ、頑張ってくれ。頼んだよ。」
・・・ と 「同じ 」部分を切り口に前進しましょう。
そんなうまく行かないよ。
その通り、突然やったってダメです。普段から相手とのストロークを意識して行動することが大事なのです。
葉隠をヒントにストローク (関係の潤滑、宥和) の基本を確認してみましたが、まあ普段やっていると思って
いることと基本は同じはずです。
でも、自分の行動を再点検してみると不十分だったりもしませんか?
是非、効果的な関係の潤滑となるように、ストロークを意識した行動をしてみて下さい。
■ その他、葉隠の教え
最後にもう一度「葉隠」に戻り、現代にも通じる文章を幾つかご紹介します。
● 固定的な考えを持ち早合点するのは良くない。精進を重ねて基本を身に付け、さらに成熟するために、一
生修行することが大切である。
● 自分から手本を決め練習するのが良い。礼儀作法は誰に学ぶ、勇気は誰に学ぶ、発言は誰に学ぶ、品行
の正しさは、律儀は、度胸は、と相手を決め、 多く方の長所や良行を学ぶのが良い。
● 物事がうまく行くと、自慢、贅沢が多くなり見苦しい。苦労を経験しないと不運の時、役に立たない。
若いうちに苦労を重ねたほうが根性が座る。
● 翌日のことは、前の晩に考えて書き付けるのがよい。万事、人に先んじて予定を立てておくべきである。
● 究極の恋は忍ぶ恋。口に出して告げるものではない。主従の関係もこのようにありたい。
● 覚 (さとり) とは、経験から物事を自分のものにすることだけではない。事前に色々検討しておき、いざと
いうときに見事に決着をつけること。事前に覚悟するのが覚 (さとり) の士である。
● 失敗した者を切り捨てると、優れた人物は出てこない。失敗した者は、それを後悔し、慎み、役に立つよう
になる。
● 自分の器量、欠点を知るのは難しい。ちょっと物が分かるようになると、自分が能力や欠点を自覚してい
ると思い込んでしまい、自慢が昂じる。
● 勝つというのは自分に勝つことに他ならない。自分に勝つというのは、強靭な意志で不利な状況を有利
に変えていくことである。
どうでしょう? なるほどと思う文章も幾つかあったのではないでしょうか?
Mail37 仕事が間に合わない部下の教育法
部下や後輩に仕事を任していると、イライラすることが時たまあります。
こちらが急いでいるということや、任せた仕事の重要性が十分に理解されない場合です。
「最優先で、1時間以内には必ず仕上げてくれ!」 と コーテーションマーク付で指示するような場合はもちろ
んOKですが、
「明日中に完成させてくれ。」だとか「今週中に仕上げてくれ。」と ちょっとだけ余裕をもって指示した場合が問
題です。
もちろん、依頼した時点では緊急ではないのですが、次の仕事との兼ね合いで締切設定したり、
その資料を元に役員に報告するアポをとっていれば、部下にも締切は厳守してもらわなくてなりません。
しかも、きちんと中身がチェックされた状態で。
しかし、往々にして、頼まれた本人は、締切に間に合えばいいやとたかを括り、ぎりぎりまで作業をしていなか
ったりします。
そんな時に限って、もっと緊急の仕事が発生したりするわけです。
「これ緊急で昼までにやってくれ!」
「でも、こないだ頼まれた作業をやらなくてはなりません。」
「頼んだのは3日前だろ。まだやってないのか?」
「でも今日まででいいっておっしゃったので。」
とりあえず、こんなヤツとは議論しても無駄です。
「この仕事は11時までに仕上げて、俺に見せてくれ、修正をした上で12時までに完成版にしてくれ。
先日頼んだのは3時半にチェックする。 修正して4時から資料として印刷してくれ。」
そうまで言っても、ゆっくり昼食を取る者もいますので、
更に深刻な状態であれば、
「悪いが、昼食は抜きで進めてくれ。」 とでも、言わなくてはなりません。
もちろん作業終了後にごちそうしてあげますが。
でも、もし、
「無理です。」 とでも言うのなら、
「Aの作業は○○君、Bの作業は□□君。すぐにかかってくれ!」 と いうように、
一方的に指示を出さなくてはなりません。
また、金曜日の夕方に外出先から戻ると、依頼した資料が置いてあるような時も危険です。
確かに今週中といった仕事。間に合ったかと安心してめくってみると、
頼んだ主旨とは違ったり数字が間違っていたりしても、本人は帰った後だったりします。
月曜日の会議に使うので、結局残業して、自分で一から作ったりして。
こんな部下や後輩に対して、どう手を打てば良いのか?
もちろん、締切を一日早めて伝えるという手はありますが、それでは、その場しのぎでしかありません。
また、
完成版を何時までに仕上げて欲しいという指示を十分理解できない部下を怒ったって、無駄です。
それはあなたの考えであって、部下の考えではないのです。
部下とあなたの考えが違うのは当たり前です。 別な人間なのですから。
部下や後輩は、じゃあ、具体的に言ってくれればいいのにと思うだけでしょう。
その通り、具体的に言えばいいのです。
そして、そのベースとして、
本人に、他の仕事も含めたスケジュールを自己管理して期日までに完璧な資料として仕上げるという意識を
持ってもらうこと、そして仕事の優先順位という感覚も持ってもらうことが必要です。
その2点をしっかり意識することが、本人の成長、チームとしての前進につながるのです。
「この資料を完成させ、今週中に○○部長の承認を得る。
おおざっぱなドラフト(叩き台)を明日の昼までに見せてくれ、
方向性が良ければ、水曜日までに仕上げて持ってきてくれれば内容を確認する。
修正をして、木曜日中に○○部長に見せる。
そこでも修正が入るかもしれないから金曜も作業を予定していてくれ。」 と 具体的に指示します。
そして、出来れば、
「○○部長への説明には、君も同席して、資料の説明をしてくれ。」 と 明確に伝えます。
この仕事は、上司から頼まれた仕事なんかじゃなく、自分自身の仕事であるという気持ちになってもらうため
です。
実際こんなこともあります。
「○○の件、順調に進んでるか?」
「やってますよ。」
「そうか、あと1週間だから頼むよ。」
「はい。」
で、期日の2日くらい前になって、
「今出来ているところまででいいから見せてくれ。」 と 言うと、どうにもこうにも使えない資料や成果だった
りします。
「おいおい、1ヶ月以上前に頼んだのに、これは何だ?」
「ダメですか?」
「マニュアル作成を頼んだのに、これは単なるチェックリストだろ。」
「えっ、そうですか?」
「5ページ位でこんな風にしてくれってメモ渡したろ。」
「・・・(覚えてない様子)」
で 結局、残業してやり直したりしているわけです。
『緊急の仕事ではないが、このマニュアル作成は重要な仕事』 という理解が彼には出来ず、いいかげんに受止
めていたのです。
しかし、指示した内容がきちんと理解されて伝わっていなかったことには、指示した私の責任もあります。意思疎
通の問題でもあります。
部下だって、悪気があって手抜きをしたわけではないでしょう。
原因を上げれば色々あるはずです。
@ 意思疎通の問題。
A 経験や能力の不足により、結果形が十分にイメージ出来ない。
B 成果物がどう使用されるか、知らない、想像出来ない。
C スケジュール管理が出来ていない。仕事が多い。
D 緊急性、重要性が理解出来ていない。
E 仕事に優先順位がつけれないので、日々漫然と仕事をこなしている。
@〜Bは指示の仕方(or本人の理解)の問題、C〜Eは本人の仕事の進め方の問題
ということになります。
● 指示に関する問題なら、前述の通り、かなり具体的な指示をして、本人が内容を理解出来ているかをきち
んと確認すること。
● 本人の仕事の進め方の問題なら、本人が抱えている仕事を常にリスト化させ、優先順位や納期が一目で
分かるように印をつけ、自分で管理していくようにしむけること。
そんな仕事の進め方にちょっとずつ慣れることで、あなたの部下は一歩一歩成長していくはずです。
もちろん、いつまでも面倒を見ていたら自立しませんが。
Mail38 コミュニケーションのフィロソフィー
今まで、コミュニケーションについて何度か解説してきましたが、双方向のコミュニケーションや傾聴が必要だと
は言われても、何故自分から声をかけなくてはいけないんだ、何故こちらがしっかり聴いてあげる必要があるの
か、と疑問に思う方も多いでしょう。
そこで今回は、コミュニケーションを、自分側のニーズという観点から掘り下げてみます。
■ 人は部分的な情報で判断されています。
多くの方にとって、「人の目」 は気になるものです。
もちろん、全く気にしないという方もいるでしょうが、一人で山篭りをしているのでもない限り、自分の行動が周囲
にどう受止められるかによって、自分自身に影響が返ってくることも多いはずです。
また、「人の目」 が気になる背景として、あなたの発言や行動が周囲の方々にきちんと理解されていないのでは
ないかという疑念もあるのではないでしょうか?
事実、人は部分的な情報で判断されているのです。
普段の自分を振り返ってみて下さい。 「忙しい、忙しい。」 というあなたの忙しさの中身を周囲の方々は、きちん
と理解しているでしょうか?
社内外と 切った 貼った (?) の打合せをして、担当業務を何とか軌道に乗せるあなたの努力を、周囲の方は判
ってくれているでしょうか?
仮に、
「今回もスムーズにやってくれたね。ありがとう。」
という言葉をかけられたとしても、
「どうなるかと冷や冷やしたよ。君の努力のお陰だよ。」
とまでは思ってもらえてないかもしれません。
結果、あなたは、正当な評価を受けていないかも知れないのです。
■ コミュニケーションの目的は理解してもらうこと
もし、この仕事には苦労しているんだという主張が上手く出来れば、周囲のサポートがスムーズに得られ、個人
としてではなく、チームとして全力で問題解決に取り組めたり、チームとしての成果や後輩も含めた成長も期待
できるかもしれません。
周囲の方々に、部分的な情報からだけではなく本当の自分を理解してもらうためにも、積極的なコミュニケーシ
ョンをすることは重要なのです。
但し、
自己主張の多い今の世の中、人の話をきちんと最後まで聞ける方が少ないのも事実です。でもここで、聴く耳持
たない方には何を言っても無駄。 と諦めたら終わりです。
まずは、コミュニケーションの目的は、聴いてもらうことではなく、理解してもらうことと、視点を変えてみましょう。
■ 先に入った情報が全てを決める(?)
経歴や背景を丹念に調べてから相手を判断する方なんて、人事マン以外に聞いたことありますか?
第一印象や、噂だけで人を判断する方はものすごく多いのです。
もちろん、人事マンだって、今の相手と話してみて、今現在の相手を知ろうとするでしょう。
でも人の印象だけに限らず、情報判断は、先入観に左右されがちなものです。
例えば、
「日本はアメリカと戦争状態に入った。」 という報道が、スポーツ紙の一面に掲載されているのと、朝日新聞の一
面に載るのとでは、受止め方が違うと思います。
朝日新聞の報道は信用できる、スポーツ紙の報道は信用できない。・・という先入観が、あなたの受止め方に影
響を与えているのです。
また、
「お前の考え方はおかしい。」 と親から言われるのと、友人からいわれるのとは、受止め方が違うのではないで
しょうか。
親は考え方が古く、自分の考えを押し付けようとしている。友人は自分とは違う考え方でありアドバイスをしてくれ
ている。というように。
実際に言っていることが正しいかどうかではなく、先に入った情報やその人の印象が相手の判断の基準になって
しまうわけです。それを意識して無視することが、相手の真実の声を聞く基本となります。
それでは、コミュニケーションを効果的に行うためのコツを幾つか考えてみましょう。
■ 要求にかなった答えを考える
自分が当事者だと気付きにくいのですが、目の前で人が会話しているのを見ていると、会話がちぐはぐになって
いることに気付くことがあります。
片方の説明が、もう一人が質問している答えになっていない。質問している側の問いかけも具体性に欠けている。
つまりは、どちらも相手の目線になれていないのです。
コミュニケーションにおける相手の目線とは、相手の問いを共有し、問いの中での会話をしてみる。ということでし
ょう。
コーチングスキルの一つペーシング=相手の質問を繰り返すことで、相手の問いを明確にしていくことも効果が
あるかもしれません。
また、たとえば、
説明書きを細かく読まなければ分からない機械の分厚い操作マニュアルなんて、誰も最後までは読みません。
最近では、携帯電話やOA機器を購入すると、操作早見表みたいなものがついていて、電源ONはどこ、録画は
どこ、再生はどこ、とこちらの問いに簡潔に答えてくれるでしょう。
相手の質問にわかりやすく答える。それがコミュニケーションなのです。
■ 未来に向けて考える
人は、自己紹介をする時に過去の自分の経験を語るのが普通です。
こんな学校を出た、こんなスポーツをやった、こんな部署を経験した と。・・ある意味、それがその人の肩書きで
もあるからです。
学生の面接において、会社に入ってやりたいことを質問しても、中々興味を持てる答えは聞けません。
将来に向けてのビジョンが不明確だからです。
しかし、仮に過去の経験を訊ねたとしても、本当のところ聞きたいのは、その人の経験ではなく、今後、どういう能
力を発揮してくれるかです。
「でっ、君はどうしたいんだ?」 そんな質問をされたことがありませんか?
未来に向けて思考することは、コミュニケーションにおける一つの魅力となりうるのです。
■ 何故そう思うのかは重要です
「どうしてそう思うんだ?」
そう聞かれて、答えられない方を、時々見かけます。
過去の経験、先入観や思い込みだけで、自分の意見が構成されている方は、具体的事実の確認がおろそかに
なっているのでしょう。
具体的根拠のない意見を述べる方は、目がうろうろ泳ぎます。
目がうろうろしていては、同意してくれる方も少ないでしょう。
さらには、しゃべる順番も大事です。
「私は○○と思う。なぜなら□□だからです。」
自分の意見を簡潔に示し、その後で理由を示せば、相手にも話の脈略がわかりやすく、理解してもらいやすい
はずです。
■ 真実が基本となる
相手の言うことが自分の考えと違っていた場合、あなたはどうしますか。
意見が通るか通らないかは、先程の先入観にも左右されますし、発言者の地位や肩書きにも左右されます。
うそやおだてで相手を納得させたり、説得できても、真実でなければ必ずほころびが出ます。
たとえば、「私もそう思います。」 と自分の気持ちに嘘をつく場合も同じ。
相手に無理やり意見を併せた不満は拡大するでしょう。
とは言え、正論を言えと言っているのではありません。
どんなに正しい意見でも、相手の感情の逃げ場を奪ったり、相手の行動を否定しているようでは、協力は得ら
れません。
「私はこう考えてますが、その意見ももっともです。」
物事に正解は一つでないし、考え方は星の数ほど有ります。今回、ジャッジし、結果に責任を持つのは誰かと
考える。そんな考え方がコミュニケーションにストレスを貯めないコツでもあります。
コミュニケーションは義務ではなく権利。そして楽しむべきもの。
そんな考えがもてれば、もっともっと楽にコミュニケーションがとれるようになるのではないでしょうか。
是非、周囲との積極的なコミュニケーションを楽しんでみて下さい。
Mail39 当事者意識について考える
「当事者意識を持って欲しい。」近年、そんな訓示をよく聞きます。
多くの企業の経営陣が、社員が当事者意識を持って仕事や改革を進めることが、直面する問題を解決する手
段の一つだと考えているわけです。
でもそれにしては、業績の悪いままの企業が多い気がします。
そもそも、当事者意識って何なのでしょう。当たり前のように使用している言葉ですが、本当のところ何なのか、
ちょっと掘り下げてみます。
■ 自分の仕事だから頑張る
先日、本の買取、安売りで有名なブックオフコーポレーションの橋本真由美社長の記事を経済雑誌で見かけま
した。橋本社長はパート主婦としてBOOKOFF店舗に勤務している際、指示された一日の仕事が終わった後、
翌日の営業開始までに本棚のどことどこを入れ替えて整理すれば、お客様が見やすくなってもっと売れるはず
だという思いを抱えていたそうです。
結局、言われてない仕事はやる必要がないというパート仲間の忠告を無視し、上役の指示もなく時給も出ない
のに勝手に毎晩居残りしてその作業を行ない、実際に売上向上につながったそうです。
経営者でも店長でも、ましてや正規社員でもないパートの橋本さんが、そんな努力をした理由はただ一つ。
パートとはいえ、自分の仕事に誇りを持ち、出来る努力をして自分の職場の売上向上に貢献することに喜びと
満足を感じたからです。
勤務時間内に本を整理し、レジを打ち、時間が来たら帰る。それに対して時給を貰う。橋本さんにはそんな仕事
感は無かったのでしょう。
本を並べることだけが仕事ではなく、店舗を運営していくことが自分の仕事。
そして自分の仕事だから、人に言われなくても精一杯努力する。
そんな橋本さんの目線は最初から店長や経営者の目線だったのでしょう。
■ 経営者の目線 = 当事者意識か?
さて、経営者の目線で仕事を考えることが、当事者意識を持つこととほとんどイコールだったとして、店長のあ
なたは、自分の店のアルバイト社員に経営者の目線で仕事をさせることが出来ますか?
仮に店舗の売上が2倍になったら、時給を2倍にすると言ったら何人かのアルバイトの方々はやる気を出すで
しょう。それでも努力をいやがる方もいそうですし、時給を際限なく増やす事は不可能です。
目先の報酬や待遇でモチベーションを高めるには限界があるのです。
では、
会社の株を社員に持たせたら、経営者の目線になれるのでしょうか?
世間の投資家の方々が、全て経営者の目線であるとは思えませんし、それだけでは何かが足りない気がしま
せんか?
■ 自分で決めたことだから頑張る
アメリカの心理学者ド・シャ−ムは、人の行動心理をチェスにたとえ、指し手として思考する者、駒 (ポーン)
として思考する者の2種類の方がいるという学説を唱えています。
具体的には、
指し手思考の方 = 自分が状況を動かすと考える者
ポーン思考の方 = 状況が自分を動かすと考える者 となります。
ポーン思考の方は、たとえ経営者であっても会社の窮状を社会・経済環境のせいにしがちです。
指し手思考の方は、自分の立場に関わらず、経済環境が悪ければ、その中にこそチャンスがあると考える傾向
があるそうです。
そして、指し手思考の方の最大の特徴は、自己責任意識の強さです。つまりは、自分で決めたことだから頑張
るという強い当事者意識です。
これは単に一つの学説ですが、
前述の橋本社長のように、自分で考えて行動したがる方は、経営者・アルバイト、管理職・一般職の立場に関わ
らずに存在するそうです。
また、そんな指し手思考の方々には、より大きな権限と責任を与えて、自ら行動する機会を増やせば、更に強い
当事者意識を持って頑張ってくれるでしょう。
■ ポーンの当事者意識を鍛える
では、ポーン思考の方はダメなのか。・・そういう意味ではありません。
放っておいても当事者思考を持てる方がいる反面、当事者意識を持たせるための周囲の努力や環境がないと、
当事者意識が持てない方がいるわけです。
当事者意識を持たせるための方策としてまず考えられるのは、仕事の場面での、意思決定への参画です。
ポーン思考の方の行動に、先ほどの「自分で決めたことだから頑張る」を意識して組み込むのです。
とは言っても、
ポーン思考の方は、自分から仕事の方向性を考えることは苦手なので、「この仕事は君に任せたよ。」と言った
位では効果がありません。かえって重荷に感じるかも知れません。
また、人の心理は、防衛本能として急な変化を拒むので、急な変化を要求すればかえって身構えてしまいます。
急激な温度変化と一緒です。
会議や本人との打ち合せの場面で根気よく、
「君はどう思う?」 とか、
「どういう方向に仕事を進めるのがいいと思う?」、
「どうなやり方で進めていきたい?」、
「そのために必要な作業は何だと思う?」、
「君自身はどうしたいの?」
というような会話を繰り返すことで、自分自身の思考を促がして、仕事の進め方に対する自分なりのビジョンを
持ってもらうことが必要です。
時間をかけて少しずつ変化に慣れることで、自分で仕事の進め方を考える思考方法をしっかり身につけ、自分
には決定権も責任も無いという考えは完全に棄ててもらうのです。
■ 個人の成長が実感できる状況を作る
自分の成長を自分自身が事実として確認できることは、個人のモチベーションを著しく高めます。
その為には、自分なりの工夫をして、新しいことが出来た。ちょっと難しいと思っていたことが自分の努力で実現
出来た。という場面を増やすことが必要です。
上長が、本人の現在の仕事上の能力を正しく理解し、能力以上の目標、かつ本人が数歩踏み出せば手が届き
そうな目標をどんどん与えていくことで、ある程度の成長を感じさせることも可能になります。
でも、一方的に目標水準を上げられては、当事者意識など持てないし、真に能力を向上させようとすれば、本人
にとっては新しい立場、新しい分野での仕事への取組みも必要になり、成長へのコスト感をかなり感じることでし
ょう。
そこで必要となるは、成長の踊り場です。
新しいこと、一歩上のことが出来る様になったら、今の能力を安定的に発揮出来る様に地場を築かせます。その
上で、余力が持てるようになってから、もう一つ上の取り組みをさせるのです。
そして、仕事上の目標は出来るだけ本人の納得ずくで決定し、ここでも「自分で決めたことだから頑張る」を取り
込みます。
〆〆〆
実は世の中には、仕事の成果を誉めるとやる気を無くす方もいます。仕事をやり遂げるという自分の楽しみが、
上司から指示された仕事の完成。という図式に変わってしまうからだそうです。
難しいですが、当事者意識を維持するためには、あくまで自分で立てた目標を自分でクリアするという感覚が必
要なのです。
人の成長には時間がかかります。
でも時間をかけることで、数段上の当事者意識が確実に身に付くのです。
■ 前向き幻想 (ポジティブイリュージョン) を生かす
ほとんどの方は「君は能力があるねえ。」と人前で言われれば、「そんなことありません。」と謙遜するでしょう。
でも、「君は○○君より劣るねえ。」 と言われれば確実に腹が立ちます。
多くの方々が、実際に自分の能力が人に勝っているかどうかには関わらず、自分は人より上と思っていることは、
心理学的事実だそうです。
また、人が買った宝くじは当たりそうもないが、自分が買った宝くじは当たりそうな気がします。どの宝くじも確率
は同じなのに。
これを、前向き幻想 (ポジティブイリュージョン) と言います。
事実、仕事へのモチベーションが低い方が、自分には知識・経験や権限がないという言い訳をすることはあって
も、能力がないという言い訳をすることは少ないと思います。
この前向き幻想は、ある意味、勘違いでしかないのですが、裏を返せば、知識・経験、権限を与えられば、仕事
はきちんとこなすよという前向きな気持ちの現れでもあるわけです。
しかも、前向き幻想はほとんどの方に存在します。
是非、自分には能力はあると思い込んでいるあなたの部下に仕事の進め方、方向性を自分で考えさせてみて下
さい。
当然、失敗するかもしれませんので、進捗管理やサポートも必要です。
でも、自分で決めたスケジュールだから何とか実現する。自分で決めた目標だから達成のために今まで以上に
努力する。
そんな当事者意識を持てれば、一度でダメでも二度目、三度目には実現出来るかもしれません。その成長に投
資してみましょう。
〆〆〆
実は、私自身もこの文章を書いていて一つの気づきがありました。
もし私が、自分のチームメンバーの誰かの未熟さを嘆くのなら、私自身がポーンでしかないということです。
リスクはあっても、もっともっと若年層のメンバーに機会を与え、時間がかかっても確実に育てていく。
それがリーダーの使命であり、チームの成長を導くのでしょう。
Mail40 後輩・新人指導を見直す
後輩を指導することがあなた自身の成長につながる。そんな言葉で後輩の指導を任されたことはありませんか?
社員が社員を育てることは、企業の成長や戦力を維持する一つの柱です。誰でも一度ならず、部下や後輩の指
導を担当したことがあるでしょう。
でも、
@ 自分が教えるべきことが何かを理解し、
A どのような方法が効率的かを考えて、
B いつまでに、どこまで教えるかという計画を立て、
C 確実に全てを教えることが出来た。
そこまで言い切れる方は、多くはないでしょう。・・・私もそうです。
新人や転入者を迎えることの多いこの時期。今一度、部下・後輩の指導方法を再点検してみてはどうでしょうか?
■ はじめの一歩は、仕事のおさらい
習うより慣れろ。よく聞く言葉です。
でも、条件が揃わなければ指導の放棄にもなり得ます。
本人が基本を理解している。もしくは理解しかけている。
自ら学ぶ意思があり、経験によって応用方法をマスター出来そうである。
・・・・そんな相手ではないのなら、まずは指導計画を立ててみましょう。
例えば、
@ 仕事の意義を教える。
A 作業全体の流れを理解させる。
B その内、何の作業をどこまで一人で出来るようにするのかを確認する。
C どんなスケジュールで教える(覚える)のかを明確にする。
というような計画を立てることになりますが、
当然、教えるべき作業がマニュアル化されていない場合には、仕事をおさらいすることが必要になります。
・ 何故その仕事が必要なのか? どんな効果・成果につながるのか?
・ 前工程は何? 次工程は何? 気を付けるところは何処か?
・ どういう状態がその仕事・作業に求められるゴールなのか?
・ どんな問題が発生する可能性があるのか?
・ 誰が、仕事がうまく出来ているかを判断するのか?
これらの? の答えを、あなたの頭の中だけはなく、教える相手にも見えるような形にするのです。
〆〆〆
つまりは教える側が自分自身の仕事をきちっと理解し直し、仕事・作業の基本事項は何かを明確にすることが、指
導の第一歩ということです。
■ 自分の悪い部分を教えない
しかし、教える先輩の仕事の進め方が全て正しいとは限りません。
先輩が持てる全てを教えようとすれば、後輩は良いところも悪いところも全て見習います。
仕事のおさらいの際には、自分の仕事の問題点も十分チェックして、改善出来るのなら、後輩に教える前にきちん
と手直しましょう。
■ 自分には出来たことが後輩に理解出来るとは限らない
後輩を指導している方を見ていると、よく見かけるシーンがあります。
ぺらぺらと仕事の流れを一方的に説明した後、新人君に実際にやらせてみると、大した作業ではないのに中々う
まく出来ない。そんなことを繰り返した後、先輩は今年の新人は飲み込みが悪いと嘆く。
・・・でも、ちょっと待ってください。
自分が出来ることは、後輩にも出来る。とは限りません。
あなたは要点だけ教わって理解出来たかもしれないけど、新人君もそうだと決め付けるのは早計なのです。
例えば、
人を行動や反応の特性で幾つかのタイプに分けることが出来ますが、
アナライザータイプの方は、仕事の仕組み・全体像を理解して納得してからでないと、仕事をテキパキとはこな
せないし、説明を受ける際も、自分のペースで質問を挟みながらでないと十分に理解出来ません。
また、コントーラータイプの方は、自分のやり方でテキパキと仕事をこなしますが、人に指図されるのは嫌がり
ます。やり方も本人に任したほうがうまくやれるのです。
つまりは、能力の違いが大きいのではなく、性格の違いが大きいのです。とはいえ、難しい性格判断をしろと言
っているのではありません。
新人君が、説明されたことを簡単に理解するタイプなのか、
それとも自分なりに解釈し、質問しながら理解していくタイプなのか。
また、
言われたことをそのまま再現するタイプなのか、
それとも自分でやり方を工夫したがるタイプなのか。
・・・・・ そんな観察をした上で指導方法を考えてみて下さい。
〆〆〆
はじめに、仕事・作業の基本事項を教えた後、
・ 仕事・作業の流れの全てを細かく教えるのか、
・ それとも教えるのは基本事項にとどめ、自分で考えさせ、実際にやらせてからアドバイスを与えるのか 等、
相手によって教え方を変える必要があるということです。
■ うまくやれていることをフィードバックする
指導者が付くことの利点の一つは、自分では見えていない自分の行動の良し悪しを、客観的にフィードバックして
もらえることです。
例えば、ゴルフの上手な方から、君のスイングのどこそこが悪いよと言われても、本人は中々修正することは出来
ません。仮に、右足をどこそこに向け、重心はどこそこ、と具体的に言われても、まだ十分には改善出来ません。
ゴルフの上手い方が教え上手とは限りませんし、そもそも身体のパーツの長さ・重さ・バランスは個人個人違うの
です。
でも、スイングを繰り返す中で、今のスイングは良かったよとフィードバックしてもらえれば、そのスイングを思い出
して再現できる可能性は高まります。
仕事でも同じです。教える内容にもよりますが、
「うまく出来たじゃないか。」と事実を伝え、
「今、どうやったの?」と、うまく出来たやり方を再確認させて下さい。
うまくできた仕事のやり方の再現性が高まるはずです。
〆〆〆
何か (HOW T0) を教えるのではなく、本人に気付きを与える。・・・それも指導の一つです。
■ 相手の能力に合せた手本を示す
手本を示す。新人指導の基本ですが、実はうまく手本が示せていないことが多いような気がします。
ベテランがスムーズに作業をするのを見せて、さあやってごらんというだけでは、新人君には真似は出来ません。
ピアノの先生が上手に演奏しても、生徒が真似出来ないのと同じです。
大事なのは、相手の能力に合せて、ステップ(段階)を踏むことです。
出来そうなことからやらせて、一歩一歩マスターしてもらう。面倒ではありますが、本人にも一歩一歩進歩してい
ることが感じられて、新しい仕事を自分のものにしようという気持ちが持てるはずです。
〆〆〆
手本も相手の能力に合せて示しましょう。
■ コミュニケーションは相手の目線で
今回の幾つかの解説において共通していることがあります。それは相手の目線になることです。相手の目線で物
事を考えることはコミュニケーションの基本そのものでありますが、実際には難しかったりします。
現実には、自分と相手との考え方の違いを、つい、相手の考え違いと認識してしまうことも多いはずです。
相手の能力に合せて教える。そんなの当たり前じゃないか。と思っている方でも、自分の目線で相手を見ていて
は、この当たり前のことが絶対に出来ません。
乳幼児が怪我をする危険性を確認するため、親が実際に乳幼児の目の高さでハイハイしながら 家の中を確認
するCMがありましたよね。
特に若年層の方を指導する際には、最近流行りの 「鈍感力」 が大事だなどとは言わずに、自分が相手の立場
だったらどう思うか、自分が新人の時はどんな失敗をしたかと、考えを巡らせてみて下さい。
〆〆〆
「相手に伝わったこと」とは、あなたが伝えようとしたことではなく、相手が理解できたことなのですから。
指導方法を変えるのは面倒だと思う方もいるかもしれませんが、今回の説明内容は決して目新しいことでも、
面倒なことでもありません。
なんとなくやっていた指導をちょっとだけ効果を意識してみる。それで十分なのだと思います。
あなたの部署の新人君を指導するのが待ち遠しくなっていただければ幸いです。
Mail41 コミュニケーションをもう一歩
今まで、コミュニケーションを広げるためのヒントを何度かご紹介しましたが、今回は、コーチングスキルというほ
ど大袈裟ではなく、日頃の延長線上の行動で、コミュニケーションをもう一歩深めるためのヒントをご紹介します。
■ 伝えることがコミュニケーションの目的です
皆さんの周囲に、愛想が悪いとか、挨拶がきちっと出来ないと言われる方はいませんか?
ある時、そんな友人に 「こんにちは」 くらい言ったらどうか、と言うと、
彼は、「えっ、いつも、言っているよ。」 と言うのです。
そう、彼自身は周囲の方にきちんと挨拶しているつもりであり、愛想が悪いと思われているとは思ってもいなかっ
たようです。
でも例えば、
@ 相手の方も見ないで、頭も下げず、ぼそっと小さな声を出す。
A 笑顔で相手と目を合わせ、元気な声をきちんと出し、ちょっと手を上げるか会釈等のアクションを加える。
このどちらが、相手から好意的に受け止められるかは、説明するまでもないでしょう。
友人の挨拶は、@に近い状態でした。
挨拶とは、「お元気ですか、今日もよろしく」 という意思表示。そして同時に、相手の存在を認識していることの意
思表明でもあります。つまりは、挨拶しているのが相手に伝わらなければ、相手の存在を認めていないのも同じ
ということにもなるのです。
きちんと相手に伝わる挨拶は、コミュニケーションの基本。第一歩です。
■ 相手に心を開かれれば、自分も心が開ける
コミュニケーションの二歩めは相手に心をひらくこと。
でも、別に開けっぴろげになる必要はありません。まずは、心を開いて相手に接することを心がけてみましょう。
楽しかったときには 「楽しかった。」、 嬉しいときには 「嬉しい。」、助けられたときには「ありがとう。」、
そんな当たり前の言葉で自分の気持ちを表現してみましょう。
そんなの当然だろ。と思っている方も、
自分の家族や身近な部下に対しては案外、感情表現を省略したりしていませんか?
このような表現を I ( 私 ) メッセージと言います。
つまりは、私は助かった、私は感謝しているというメッセージです。
親しき仲にも礼儀有りです。頼んだ仕事が出来上がったら、きちんとお礼を言いましょう。
「お陰で、(私は)助かったよ。」という I メッセージが、仕事した本人にとっては、自分の仕事が役立っているのだ
という確認にもなるのです。
■ 会話にちょっとだけ共感を加えてみましょう
コミュニケーションの三歩めは相手への共感です。
とはいえ、相手の気持ちになりきって考えたり、相手の立場で思考するのも、相手をよく知らないうちは難しいで
しょう。
でも例えば、初対面のお客様に対して、
「はじめまして」 だけではなく、 「外は暑かったでしょう。」 と一言添えることがありますよね。
同じように、急ぎの仕事をしてくれた相手には、
「ありがとう。」 の後に 「大変だったでしょう。」 と加えるでしょう。
たった一言加えただけですが、 「暑かった」 も 「大変だった」 も相手の気持ちを想像した共感の言葉です。
この、もう一言があなたと相手の間の気持ちを繋ぐ手助けをしてくれます。
■ 全ての方の名前を覚えましょう
ところで、あなたは、人を名前で呼んでいますか? ・・・あたり前。
そう身近すぎると 「お前」 なんて呼ぶかもしれませんが、まあ身近な方を○○さんと名前で呼ぶのは当たり前
でしょう。
でも、あまり身近ではなく、名前もうる覚えの方っていませんか。
もしくは、名前は知っていても咄嗟に、名前を呼んでいない相手がいませんか。
老人だって、子供だって、名前を呼ばれるのを喜びます。
あなたも、誰かにそこの君と呼ばれるより、○○さんと呼ばれたほうが、親しみを感じるのではないでしょうか?
さらに、よく名前を読み間違えされるような方は、自分の名前を正しく呼びかけられれば、喜びます。
○○ざきではなく、○○さきだよ。なんて釣りバカ浜ちゃんのようなことをいつも言っている方が私の身近にも
居ましたが、その方は名前を正しく呼ばれるととても喜んでいました。
周囲の方とのコミュニケーションを増やしたい方は、まずは、周囲の方々の顔と名前をしっかり覚えてみましょ
う。
■ いいかげん、もう相手の話を聴きましょうよ
最近、コミュニケーションの基本として、相手の話をきちんと聴くことの効用が色々な媒体で紹介されています
が、いまだに人の話を最後まで聴けない方を見かけます。
しかも、
コミュニケーションの基本を学び、きちんと相手の話を聴いてあげようと思っている方に対して、一方的にしゃべ
りたい方が話し続けると、コミュニケーションは完全に一方通行になってしまいますからやっかいです。
人の話を聴けない場合の多くは、
@ 相手の話を遮って、自分の興味ある話題をしようとする。
A 最後まで待てずに結論をせまってしまう。
B 自分の自慢話を続け、相手に話させない。
C 相手の説明が言い訳に聞こえて怒ってしまう。 ・・・というような状況なのではないでしょうか。
たとえどの理由であっても、相手の話を最後まで聴けなければ、話を聴いてもらえない相手には、かなりの不満
がつのります。
きっとほとんどの方は、それ以降、話を聴いてくれなかった相手と接すること自体がいやになってしまうはずです。
そうなれば、次の機会には結論以外は何も言わなかったり、問題が発生しても再発防止目的の話し合いも行な
われなくなってしまうでしょう。
困ったことに、人の話を聴けない方が、劇的に話を聴けるような方法はまずありません。口にチャックでも掛けな
い限り。そう、まさに口にチャックを掛けない限り。
何となく行動していても、行動は変わりません。
自分は人の話が聴けてないなと思う方は、 誰かと会話を始める際に、自分の口にチャックを掛けるのだと、強く
意識してみて下さい。
例えば、今日のミーティングでは、決して口を挟まず相手の話を聴こうと決意する。
そして、相手の話へのうなづき等の相槌、相手の話の再確認等、相手の発言を促す以外の行為は決してしない
ことを試すのです。
■ 質問で会話を続けるためのヒント
コミュニケーションのヒントとして、質問が会話を作るとよく言われます。
ところが、相手を質問攻めにしてしまう方をよくみかけます。
以前私のところに売り込みにきた認定コーチの資格を持つコンサルタント会社の方も、私に矢継ぎ早に質問し、
質問の内容について考える時間も与えてくれません。一方的に責められている感じで、会話は全く進みません。
もし、質問で会話を進めようとするなら、相手の興味のある質問や相手に気付きを与える質問でなくては話がは
ずみません。また、考える時間を間(ま)として挟み込むことも必要でしょう。
そして、相手の返答が質問の意図とずれたって、根気よく聞かなければ会話は成立しません。結構大変です。
そこで、質問によってコミュニケーションを広げるためのヒントを三つ。
● 5W2Hで質問する
単純明快。5W2Hをキーワードにしたストーリーで質問を展開します。
Why (何故?、理由は?、目的は?)
What (何をやったの?、テーマは?、主題は?)
Who (誰が?、誰と?、どんな仲間と?)
When (何時の話か?、今後の予定は?)
Where (どこで?)
How to (方法は?)
How much (コストは?、成果は?)
深くは考えずに、5W2Hというキーワードさえ覚えていれば、質問を思い浮かべられるはずです。
● アンド・ユー (and you) で質問をつなげる
これも単純。相手の質問に対して、あなたはどうかという質問を投げ返すのです。
「昨日の休み、どこ行ったの?」 との質問に対し、
「○○○です。先輩はどこか行きましたか?」 と同じ質問を返します。
これも考えれば当り前の会話術なのですが、
とはいえ、会話が途切れる相手とは案外アンド・ユー出来ていないのです。
相手自身や相手の話に興味がなかったりすると、自然にはアンド・ユーが出来ません。
それでも会話を続ける必要があるのなら、アンド・ユーを思い出しましょう。
● 最近腹が立ったことを聞いてみよう
何かいいことあった?と訊かれると、中々いい出来事は思い出せなかったりします。そこで、腹が立ったことが
ないかと訊いてみてください。
腹が立った事件は、人に聞いてもらいたいことだったりもします。
うまいアドバイスが出来なかったとしても、人に話せれば、ストレスも薄れます。 相手の役に立てる質問にな
ります。もちろん、相手は選んで下さい。
〆〆〆
自分は部下・後輩と十分にコミュニケーションが出来ているとおっしゃる方も、部下にヒアリングすると、指示命
令は受けてるし雑談もしているけど、自分の意見や不満は聞いてもらっていないと言うことが多いものです。
そしてこれは世間的な傾向でもあります。
一方通行の会話はコミュニケーションとは言いません。双方向の意見交換、意思表示が出来てこそコミュニケ
ーションなのです。
徒然なるままに、コミュニケーションに関するヒントをご紹介しましたが、コミュニケーションを十分かつ双方向に
行なう最大のコツは、相手を自分と対等な仲間・パートナーとして扱うことです。
上司、部下と思えばコミュニケーションは一方的になりがちです。でも、仲間やパートナーとなら、対等に意見を
言い合えるでしょう。
それが出来れば、コミュニケーションはストレスにも、モチベーションにも上向きの影響を与えます。仕事上のミ
スの軽減や成果の向上にもつながるはずです。
でも、ヒントはヒントでしかありません。 あなたのやり方で、周囲とのコミュニケーションを深めてみてください。
Mail42 効果的な質問のテクニック
今回は、質問の仕方をちょっと工夫して、効果的なコミュニケーションを図る方法を考えてみます。
是非一緒に考えてみて下さい。
■ 質問の効果
コーチング関連の書物を開くと、質問の効果に関して頻繁に書かれていることがあります。
・ いい質問が気付きを産む。
・ 質問され、考えることで、自分自身の考えが明確になる。
・ 質問され、再確認することで、現状の認識が出来る。
質問は使い方次第で、思考を広げる為の便利な道具となるわけです。
また、そんな説明と共に、
大きな質問 (大雑把な問いかけ = チャンクアップ)、
小さな質問 (具体的な問いかけ = チャンクダウン) の使い分けの効果がよく紹介されています。
例えば、「新商品のアイデアはないかな?」という質問。
チャンクアップすれば、「次は何売りたい?何か考えある?」くらいの大雑把さで、自由な発想を促がします。
チャンクダウンすれば、「顧客のニーズは何?」 「ターゲット層は?」 「コスト的に見合う方法は?」と、幾らでも
着眼点を具体的に出来ます。
さらに、チャンクアップ、チャンクダウンは質問ばかりとは限りません。
「しゃきっとしなさい。」という声かけをチャンクダウンすれば、顔を上げ、相手の目を見て、大きな声で挨拶しなさ
い。」と、具体的な行動につながる指示が出来ます。
大雑把が良いか、具体的が良いかではなく、どちらが相手の思考や具体的行動を促がすか?と考えて質問や
指示を工夫してみて下さい。
■ 質問したら、考える時間を与える
コーチングを導入した企業でよく起こる弊害があるそうです。研修から戻った上司に質問攻めにされた。というも
のです。
研修で習った効果的な質問をしようとして、部下を質問攻めにしてしまうらしいのです。 質問攻めというより質問
責め。むしろ詰問です。
無闇やたらに質問された相手は、自分には主導権がないと思うでしょう。
質問された部下には、コーチング = 責め苦というイメージが残ります。
また、上司の側も、いやがる部下の反応を眼の当たりにして、コーチングは役に立たないというイメージが残るで
しょう。
効果的な質問をするためには、タイミングが重要であり、会話の流れを読み、適切なヒントを与えることが必要な
のです。返答する側には、じっくり頭の中を整理する時間 (間=ま) も必要です。
あせらず返事を 『待つ』 ことも、時には立派なコミュニケーションスキルなのだ考えてみて下さい。
■ 質問の真意を伝える
質問は、使い方を一歩間違えると、詰問だけでなく、否定の意味とも受け取られることもあります。
例えば、
「君、□□の件は、部長に報告したか?」
・ あなたの気持ち =部長のOK貰っておくと進めやすいよ。 (助言)
・ 相手の気持ち =部長に報告してないだろ。 (否定)
「このプロジェクト、○○の方法は試したか?」
・ あなたの気持ち =○○の方法も比較検討すると良いかもよ。 (助言)
・ 相手の気持ち =何で、○○は試さないんだ。 (否定)
両例とも、好意のつもりが逆効果。コミュニケーションで大事なのは、あなたがどう思ったかではなく、相手にど
う伝わったかです。
もし、質問の仕方を工夫し、「否定」という誤解を防ぎたいのなら、端折ったりせず、
「□□の件は、部長のOK貰っておくと、先々進めやすいよ。」とか、
「余裕があったら、○○の方法も比較検討すると良いかもよ。」と、あなたの気持ちそのままに伝えた方があなた
の真意が伝わります。
また、
「□□の件、良く頑張っているね。 部長のOK貰っておくと、先々進めやすいよ。」 とか
「色々検討してるみたいだけど、 余裕があったら、 ○○の方法も比較検討すると良いかもよ。」 と言えば、
質問の中に、
「君は頑張っている」 「君は色々検討している」 という、「肯定」 の意を含ませることも可能です。
あなたの真意がきちんと伝わるように、質問を工夫してみて下さい。
■ 質問の背景
子供から 「何故、勉強をしなくてはいけないの?」と質問があった時、最適な答えは何か?
「一生懸命勉強すれば、いい学校に入れるし、いい学校に入れれば、人生の選択肢も増えるからだよ。」
こんな答えは、子供には意味不明。 人生の選択肢なんて、理解してもらえるでしょうか?
いい学校やいい会社に入ったりするより、野球選手かアイドルになるほうがいい。なんて言われかねません。
「何故、勉強をしなくてはいけないの?」
「何故、この仕事をしなくてはいけないのですか?」
こんな質問への最適な対応は、質問の背景を考えることにあります。
その背景は、勉強をしたくないから、仕事をしたくないから、であったりするわけです。
であれば、「勉強が嫌なの?」とか「この仕事が嫌な理由でもあるの?」という質問を返し、相手の気持ちの背景
をもう少し探ってみることが必要です。
「子供は勉強をするものだ。」とか、「仕事が嫌なら会社を辞めろ。」と言ってしまえば、会話はそこで終わり、二
度とコミュニケーションが出来ないかもしれません。
上っ面だけの返答は、絶対にやめましょう。
きちんと質問をして、話を聞けば、、
「新しいゲームをやる時間が欲しい。」とか、「同じようなプロジェクトで頑張ったのに、うまく行かなかった。」とい
うような、真の理由が見えてくるかもしれません。
人が質問をするのには、理由があるのです。
■ 全ての質問に答えるべきか
良い質問は、思考を促がす。
そんなことを言うと、質問には全てきちんと答えなくてはならないかのように聞こえます。
もちろん、相手が良い質問者なら、あなたの答えに対して、更に思考を促がす質問をしてくれるでしょう。
「君がこんな失敗をするのは変だ、何か理由があったのだろ。聞かせてくれないか。」
なんて落ち着いた声で聞かれたら、あなたの考えをきちんと伝えましょう。
でも、常にそうとは限りません。
例えば、
「どうしてこんなことしたんだ?」と高いトーンで叱責された場合、「他に良い方法が無かったのでやりました。」と
返答しても、
「お前が考えつかなかっただけだろ。何で相談しなかったんだ?」と、更なる怒りを買うかもしれません。
つまりは、質問しているのではなく、怒りをぶつけているだけ。
「結果は失敗だったけど、プロセスは間違いではなかった。」あなたがそう思っても相手はそう思ってくれません。
こんな時は、まずは謝って、時間を置いて相手が冷静になってからきちんと話すしかないでしょう。
でも何故? 自分は正しい(と思っている)のに。・・・では、わかりやすい話。
あなたが毎晩飲み会が続いていて、奥様が不機嫌だとしましょう。(我が家ではそんなことないですよ。)
そんな時に、
「何で、今日も午前様なの?」 と奥様に言われ、
「取引先の接待だったんだよ。仕方ないだろ。」 と毎回返事をしてたら、
「それじゃあ、しょうがないわね。」 と奥様の怒りはおさまりますか?
感情的な奥様なら、
「私と仕事のどちらが大切なの?」 と怒りが拡大するかもしれません。
家族と仕事。比べるものじゃないよ。なんて理屈は通りません。
冷静に考えてみれば、「何で、今日も午前様なの?」は、質問しているのではなく、怒りをぶつけているだけなの
だとわかります。
「申し訳ない。」その一言で、「しょうがないわね。」となるかもしれません。(もちろん保証はしませんよ。)
■ 会話の上滑りを防ぎましょう
盛り上がる会話、上滑りな会話。会話にも色々あります。
相手が話したいことについて、あなたがピタっとはまる質問をすれば、相手の方は、ストライクとばかりに、話が
はずむでしょう。
そうなれば、あなたは聞き手に徹しているだけで、十分なコミュニケーションが成立するかもしれません。相手も
話を聞いてもらって大満足。
でも、相手が話したくないことを質問すれば、相手はいやいや答え、上っ面だけなぞるような返事しかしてくれな
いでしょう。
「ああ」とか「そうだね」で終わるかもしれません。
こんな状況を、あなたと相手の気持ちで分析すると4通りに区分出来ます。
A : あなたが聞きたい、相手が話したい (つまりストライク)
B : あなたが聞きたい、相手が話したくない (話してもらう努力が必要)
C : あなたが聞きたくない、相手が話したい (あなたに我慢が必要)
D : あなたが聞きたくない、相手が話したくない (日を改めたほうが良いかも)
Aは盛り上がり、Bは相手が上滑り、Cはあなたが上滑る。Dはコミュニケーションが不成立。
今から会話しようとする相手、題材がどのケースに当てはまるのか?
なんて真剣に考える方は、たぶんいないでしょう。
でも、BとCのケースでどうしてもコミュニケーションを成立させたいのなら、あなたにも努力が必要です。
何となく思いついたことをそのまま質問するなんて、ビジネスマンの会話ではありません。
[Bのケース]
仕事上のどうしても聞きたいことなら、
「色々訊きたいのだけど、忙しそうだから一つだけ教えてよ。」と、頭を下げてでも何でも、まずは相手に口を開い
てもらいましょう。
[Cのケース]
口をはさんだり、しかめっつらをしたりせず、きちんと相手の話を聞いてあげましょう。
話をきちんと聞いて貰えて満足だと相手が思えば、次回からは、もっと話しやすくなるかもしれません。
〆〆〆
コミュニケーションは気分や興味に左右されるのです、相手の気持ちをきちんと見極めましょう。
■ テクニックをちょとだけ
コミュニケーションは関係作りでもあります。
上記Bのケースで相手の気分を害していては、元も子もありません。
何回かご説明した以下の会話術、覚えていますか? 再確認してみましょう。
【ペーシング】
「私は、○○と思っているんだ。」 「○○と思っているのですね。」
「そう。○○なんだ。 (・・分かってくれてるな。) 」
適度な相槌や、相手の言葉の繰り返しによる確認は、話が相手に理解されているという安心感を与えます。
【右側からのアプローチ】
人は左側から話しかける相手には断りやすく、右側から話しかける相手は受け入れやすい。
どうやら、心臓の位置と関係しているようです。
加えて、正面に向かい合う相手とは対立しやすく、手を伸ばせば届く距離内に入る相手には抵抗を感じます。
(もちろん、恋人を除いてですが!)
さらに、相手とに間に、カップや灰皿、カバン等が置かれると、親しみを感じる上での物理的な壁となるのです。
相手の話を聞きたい時、聞いてもらいたい時、聞きたくない時・抵抗したい時、どうすればいいのか考えてみて下
さい。相手の左側(相手から見て)からパソコン越しに会話しているようでは、まとまる話もまとまりにくいというこ
とです。
【ドア・イン・ザ・フェイス】
「今から緊急の会議があるので、報告をして欲しいのですが。」
「そんな急に言っても、無理だよ、君。」
「そうですよねえ。すみません。 では、会議の前に5分だけ、私に説明してくれませんか。」
「しょうがないなあ。」
最初に、相手が断るしかない無理なお願いをして、その後、受け入れられる小さなお願いをする。
大きなお願いを断った後だからこそ、小さなお願いはきいてあげようという気持ちが生まれます。
【フット・イン・ザ・ドア】
「一つだけ、教えて欲しいことがあるのです。」
「ああ、ちょっとなら。」
「ありがとうございます。あっ、あともう一つだけ。」
コロンボ刑事風のこの会話。まずは、相手がそのくらいならいいやと思う小さなことをお願いし、徐々に色々お願
いしてしまう立派な会話術です。
● 会話術の前にWin−Win
「協力してくれてありがとう。今からあなたを助けに行きます。」長久手の立てこもり事件の交渉役が言っていま
したねえ。
双方が協力して、お互いの利益になることを目指そうという考え方こそ、コミュニケーションに限らず、全ての人
間関係の基本です。
テクニック的な会話術以前に大事なのは、相手のことを考える気持ちです。相手の気分や興味をきちんと考え
た上での質問をすることによって、相手の心も開いてくるのです。
当然、そのためには相手に興味を持ち、しっかり観察することも必要です。
スキルやテクニックはそんなあなたを助けてくれるでしょう。
Mail43 報・連・相を科学する
「報・連・相」 。ご存知、報告、連絡、相談。
新人が着任したらまず教えることであり、誰でも聞いたことがある言葉です。
でも、誰でも知っている割には、報・連・相が出来ていないとなげく方を頻繁に見かけます。何故でしょう。
今回は、「報・連・相」の問題点。そして、うまく 「報・連・相」 を行なうコツを考えてみます。
■ 報・連・相にフィードバックをしていますか?
● コミュニケーションはキャッチボール(双方向)。
● 一方通行の会話はコミュニケーションとは言えない。
しかも、報・連・相は上司と部下とのコミュニケーションの典型なのです。
部下からの報告があれば、上司は的確な判断をして、仕事の方向性を示さなくてはなりません。
部下からの報告や相談を受けても、「うんうん、そうか。」とか、「じゃあ、考えとくよ。」で会話が終わる日常であれば、
部下は真剣に報告する気にはなれないでしょう。
実際、
「うちの親分、反応無いから、報・連・相する気も無くなるよ。」と嘆く同期社員がおりましたが、40才超えてもそうな
のですから、ほとんど全員が報・連・相への適切なフィードバックを求めているとも言えるでしょう。
興味の無いことは聴けてない。
これもコミュニケーションでよくある現象ですが、部下にしてみれば、自分からの報告には興味はないのか。と自然
に思えてしまいます。
部下からの報・連・相には、それが些細なこと、あなたが気にしていないことであっても、きちんとフィードバックする。
それが、報・連・相 を日常風景とするための最低条件のようです。
■ あなたはきちんと報・連・相をしていますか?
では、あなた自身は上司にきちんと報・連・相をしていますでしょうか?
報・連・相は、情報共有に留まらず、重要な判断をお願いする前のステップ作りにもなり、その効果はあなた自身
が理解しているはず。
でも、些細なこと、方向性や結論が不明確なことは、すぐには伝えなかったりはしませんか?
特に、マイナス情報であれば、事実関係、被害影響、原因等をきちんと確認してから伝えようと思ったりもします
よね?
それでも、あなたの上司から見ればすぐにも知りたいことかも知れません。
長い付き合いなら、そのへんが阿吽の呼吸になるのでしょう。
でも、部下にしてみれば、あなたとはまだ、阿吽の呼吸ではないのです。
■ 何故、報・連・相が出来ないのか?
つまり、阿吽の呼吸でない部下や後輩が、あなたにうまく報・連・相が出来ない理由はずばり、何と何を報告す
ればよいのか、何と何を報告しなくてよいのか、その区別がついていないからです。
従って、あなたが部下・後輩に的確な報・連・相を期待するのなら、何と何を報告すればよいのか、何と何を報
告しなくてよいのかを、相手に明確に示す必要があるのです。
そんなこと、普段一緒に仕事をしていれば判る筈。
いいえ、判らないからこそ、報・連・相が不十分なのです。 ・・・・・ きっと。
コミュニケーションは、あなたがどう言ったかではなく、相手にどう伝わったかが全てです。
まして、あなたが思っただけのことは相手には伝わっていないと思って間違いないでしょう。
・ この件とこの件は些細なことでもすぐに報告して欲しい。
・ この件は問題になりそうな時だけ報告してくれ。
・ このレベルは口頭で、このレベルは報告書で経緯がわかるように。
・・・ 機会を捉えて、あなたのそんな考えを話してみましょう。
相手が若年層であれば、より具体的に列挙しないと伝わりませんよ。
■ 何の為に、報・連・相が必要なのですか?
あなたは何の為に、報・連・相をして欲しいのでしょうか?
@ 部下の仕事の進捗状況を把握したい。
A チームの仕事の方向性が間違った方向に進んでいないか確認したい。
B 問題が起きる前に未然に防ぎたい。
C 問題が起きたら、早急に対処して拡大を防ぎたい。
D チーム内の仕事の配分に問題がないか確認したい。
E 情報を共有し、他のチームとの連携を保ちたい。
F 他部門との調整等、手伝えることがあれば手伝いたい。
G 部下の心身の健康状態を知っておきたい。
他にもあるかも知れませんが、つまるところ、自分の権限下・責任下にある人間・仕事を把握し、時にコントロ
ール、時に支援したいというのが実際でしょう。
気配り上手な方は、当然、そんなあなたの気持ちを察し、適切なタイミング、適切な内容で報・連・相をしてくれ
るでしょう。でも、そんな方ばかりではありません。
それに、あなたの部下全員が、各々10 ある毎日の出来事の全てをあなたに報告し、 あなたの指示を求めら
れても困るでしょう。
それなら、あなたが報・連・相をして欲しい目的をはっきり伝えればいいのです。(若年層の社員は別として、)
もちろん、君たちを管理したいとか、コントロールしたいとか言ったら誤解を招きます。
でも、中堅社員に上記の @ 〜 G をはっきりと伝えれば、あなたが何をどういうタイミングで報・連・相をして
欲しいのかが理解出来るでしょう。
これもまた、そんなこと皆、判っているだろ。と思うかもしれませんが、知らないからこそ、報・連・相が不十分
なのです。
■ その件、権限委譲したのでは?
上司として知っておきたいことが色々ある。私も同じです。
でも、ちょっと待って下さい。
□□の件は、○○君に権限委譲し、任せたはずではありませんか?
まあ、それでも、知っておきたい。リーダーであれば当然です。
そんな時は、
「仕事の進め方は任せるが、責任者として進捗・方向性の確認をしたいので、
○○の時点と△△の時点で(or週に1度)報告してくれないか。」と、具体的に報告に関する取り決めをし
てはいかがでしょう。
そんなに細かく取り決めるのはチョット。と思うかも知れませんが、任された仕事に頻繁に口出しされるのは
モチベーションを損なう原因ともなります。
だったら最初にはっきり指示したほうがお互いにスッキリします。
■ 相手への気配りが、適時・適切な報告を誘います
気配り上手な方は、あなたの気持ちを察すると言いましたが、逆も真なり。
あなたも相手が報・連・相をしやすいように気配り、努力する必要があります。
例えば、
・ 日頃からルーチンも含めた部下の仕事に興味を持ち、任せた仕事に干渉 しない程度に仕事に関する
雑談をする。
・ 相談事項であれば、相手が話しやすいように場所を替え、時間をとってゆっくり話しを聴く。
・ 途中で口を挟まず、まずは相手の話を最後まで聴く。
・ 部下の失敗に対して、感情的にならずに、原因や問題点・対策等に的を絞って冷静に話しをする。
・ 権限で部下を指導するだけでなく、担当業務に関する知識や問題発生時の対応能力で部下に指導する。
・ ノーと言うことがあっても、より良い部下の提案は受け入れるという姿勢を事実で示す。
等々、ケースにもよりますが、
相手が相談しようか、どうしようかと迷う場面で、やっぱり相談してみようとスムーズに思わせるのは、上司の
コミュニケーション能力に左右されるところ大なのです。
■ コミュニケーションは楽しむもの
今までの説明は、あなたのコミュニケーションスタイルとは違う部分も多々有るかも知れません。
報・連・相を始めとする円滑なコミュニケーションは、チームの仕事をスムーズにするだけでなく、お互いのモ
チベーションを確実に高めます。
但し、部下のモチベーションを高めるのは上司の義務だからやれ、と言う為に、このメール通信で作っている
のではありません。
チーム内の 円滑なコミュニケーション と 円滑ではないコミュニケーション。
どっちが仕事が楽しくなりますか?
・・・・ そう言いたいだけなのです。
Mail44 段取り力を考える
段取り8分。業界によっては後輩指導の際に、合言葉のように使われる言葉です。
文字通り、仕事の成否は段取りで決するという意味ですが、では、段取りの中身って何ですか、と訊かれる
と、すんなりとは答えが出てきません。 ちょっと考えてみましょう。
■ 段取り力はプロの証明
段取り8分と言う言葉は元々職人言葉。段取りをきちんとこなし、仕事の完遂に目安がつけられる一人前の
職人が使うのです。
仕事が段取り通り進めば、それで良し。
もし、仕事がうまくいかなかった時は、自分の段取りに問題ありと考え、仕事の進め方における問題点を再
確認し、同じ間違いは繰り返さない。 そんなプロ意識が段取り力の証明となるのです。
想定外。昨年流行ったこの言葉も、自らの段取りの反省としての言葉です。
「想定外だった。」というセリフも、仕事の進め方やその結果について、具体的なイメージとビジョンを描き、
問題点やその対処法を想定出来る方のみが使える言葉です。
だって、何も想定しなかった方が 「想定外だった」 というのはおかしいでしょう。
■ マニュアルは段取りにとって換われるか
「この件、処理マニュアルは有りませんか?」 という質問を若手社員から受けることがあります。
疑問なことは自分で調べて、次に悩む方々のためのマニュアルを作ってあげたらどうかとアドバイスしま
すが、本人自身もその作業に慣れてしまい、結局、マニュアルは作らないなんてことも度々です。
もちろん、マニュアルがあれば仕事の処理は分かりやすいし、処理基準も明確になります。
でも、ほとんどの社員が当たり前のこととして出来ている作業については、マニュアルが存在しないことの
方が多いはずです。
ではもし、きちんと説明が書かれたマニュアルがあったら、段取り力を鍛えなくても大丈夫なのでしょうか?
公開会社の株主想定問答集などQ&Aが網羅された特殊なものは別として、マニュアル類の多くは、作業
の基本形を解説することはあっても、イレギュラーな処理が全て網羅されていることは、まず有りません。
また、1回限りの作業 (ワン・オフ) に近い複雑な仕事なら、マニュアルなど作りようもないでしょう。
そう。仕事の流れを追っただけの、簡単なマニュアルでは、例外処理への応用は全く効きません。突然の
事態への対処が出来ないのです。つまりは、机上の空論だけではダメ。ということ。
〆〆〆
突然の障害を色々と想定した上で、仕事の進み方・ゴールを十分に考え、更には、経験にも裏打ちされた
段取り力は、薄っぺらいマニュアルでは敵わない力を発揮するのです。
■ その段取り、トラブルを想定していますか?
誰かのミスや勘違い、想定外の事件の発生、利害関係者の横やリ等々、仕事におけるトラブルの原因は千
差万別。何が起こるか予測がつきません。
そんな時、トラブルを乗り越える原動力となるのは何か?
もちろん咄嗟の判断力は重要です。 現状を正確に把握し、適切な対応をするためには欠かせません。
しかし、それ以前に重要なのは、事前にどこまでトラブルを予想し、対応の準備をしてあるかです。
もっとも単純な例では、行事の際、雨を予測し傘を用意しておくこと。突然の雨だって、傘さえ有れば、うろ
たえることはありません。
中々予測がつかないトラブルを出来るだけ想定して備えて置く。 それが段取り力の基本です。
当然、雨くらい予測が付くし、傘くらいなら準備もた易いでしょう。
でも、重要な仕事の場面では、今考えている方法とは全く違った代替案を用意することだって必要かも知
れません。
現地現物を十分に確認することや、同様な仕事の経験者の意見や反省を聞くことも、トラブルを想定する
役に立つでしょう。
〆〆〆
重要な仕事であればあるほど、あらゆるトラブルを想定し、その回避方法や代替策を検討してみて下さい。
■ 段取りは仕事の設計図
先々の見通しの十分でないプロジェクトは、スムーズに進まないばかりか、たとえゴールに到達しても、十
分な成果を上げられません。
ミスの少ない仕事の出来る方とは、十分な段取り力のある方、トラブルを想定出来る方。つまりは、仕事の
設計図を明確に描ける方なのです。
そんな方は、仕事の筋・流れをきちんと把握し、仕事を進める上での軸 = 価値観を明確にしています。
明確な軸を持っていれば、前述のような予想外のトラブルに置いても、本末転倒した判断にはならないでし
ょう。
〆〆〆
今、あなたが抱えている仕事においても、何の為にその仕事を行うのか、仕事のゴールはどうあるべきかと
いう仕事の軸や、仕事の進め方のビジョンを明確にすれば、仕事の設計図がより明確になってくるはずです。
■ 段取りはゴールのイメージを描くことから始まる
段取りとは、ゴールを想定し手順を準備すること。そして手順の変更を想定し備えること。
そんな話の流れになってはおりますが、仕事の段取りに置いては、無駄を省いて効率的な作業を計画する
ことも必要です。もちろん、その無駄の中にも大事な備えが有るのかも知れません。
無駄なのか?必要なのか?・・その判断は、その作業・行動がゴールを目指す作業となっているかを考える
ことで、ある程度可能です。
〆〆〆
どんな段取りでも、まずは自分の仕事のゴールを明確にイメージしてみて下さい。
そして、一生懸命働いていると思っていることが、自分たちのゴールを目指すことにつながっているのか、単
なる自己満足なのか、今一度考えてみて下さい。
■ イメージでリハーサルしてみよう
レーサーのインタビュー等で良く聞く言葉。イメージトレーニング。
本コースを走れる機会が制約されているレーサーは、かつての記憶や実際に足で歩いて確かめたコース
の状況を思い出し、頭の中で走行をシュミレーションしてトレーニングするのだそうです。
どこそこのコーナーでブレーキを踏み2速に落とし、ここで加速、という具合のシュミレーション1周分をやっ
てみて実際にタイムを計ったりもするようです。それを繰り返し、現実の感覚に近づけていくわけです。
そんなことで効果があるのでしょうか。
もちろん、イメージはイメージ。本番とは異なります。
でも、現に多くのレーサーがイメージトレーニングでそれなりの効果を上げているようです。
イメージトレーニングは、ある意味行動のリハーサル。 疑似体験が行動をスムーズにするのです。
そうそう、実際の行動をイメージする効果に加えて、うまく行った後の自分や仲間をイメージすることも、目
標達成にかなりの効果があるそうです。
〆〆〆
一旦、仕事の流れを考えてみたら、イメージの中で自分の段取りをもう1回、なぞってみましょう。
いや1回と言わず、 2回でも3回でも。
■ 十分な段取りには、裏を知ることも必要
仕事の流れを十分にイメージし、細かな段取りが出来た。今回は完璧だ。と思ったのに何故か失敗。
そんな経験はないですか?
もちろん、世の中に完璧などありません。でも、少しでも完璧な段取りに近づけるためには、もっともっ
と仕事の裏側を理解することが必要です。
例えば仕事に関係するA社の動向を把握する場面において、
A社は○○しようとしている。・・・・ そんな事実だけを把握するのではなく、
何故A社は○○したいのか?
○○によって何が得られるのか?
A社が得たいものを、もっと効率よく手に入れる方法は何か?
・・・という裏側。つまり、行動の背景を十分に理解するのです。
〆〆〆
そんな行動の背景や、物事の裏での出来事、関係者の思惑を十分に見通すことが出来れば、
あなたの段取りはより完璧に近づくでしょう。
そんなに簡単じゃない。 そう、簡単ではないからこそ一歩でも二歩でも努力する必要があるのです。
■ ファシリテーションの活用
以前ご紹介した、ファシリテーション。
会議やプロジェクトを整然と進める手法です。その中で、考えや流れを整理する方法としてご説明したの
が、チャート、フロー図等の活用です。
QCで使ったことのある方も多いでしょう。QCというと拒否反応を起こす方も多いかもしれませんが、書店
の店頭にも、新しい考え方として、チャートや図式を活用して自分の発想を整理する手法の紹介本が並ん
でいます。 (決して新しくはないのですが。)
たまにはパソコンから離れて、頭でイメージした仕事の流れを、紙上に書きなぐってみて下さい。
行動と結果との関係を □ → □ → □ と箱と矢でつないだりしているうちに、
仕事の流れや、ボトルネック(問題点)がよりはっきりと見えてくるかもしれません。
A → B → C ・・・工程Bの処理能力を上回る部品を工程Aから流しても無駄だったのか。
・・・なんて感じです。
■ 段取り力は伸ばすもの
今回は、細かな段取りのテクニックをご紹介するというよりは、段取りの発想法というような内容でした。
と言うのも、各人の段取り方法には、自分の性格や仕事にあったスタイルがあるからです。
例えばある方は、段取りとは順番を入れ替えることと明言しているし、またある方は、メリハリを持って
エネルギーを
使うことが段取りだと言います。 中には、最低限やるべきことだけを決めるのが段取りだと言う方もおり、
自分の段取り方法に一家言を持っている方が多いのです。
自分の得意な段取りスタイルで、自分の段取り力を伸ばし、他の仕事にも応用していく。
それでいいのではないでしょうか。
また、会議等の身近で小さな段取りから、段取り力を慣らし、だんだんと大きな段取りを学んでいくのも
良いかも知れません。
〆〆〆
何となく、仕事を繰り返すのではなく、自分の段取り力を伸ばすために目の前の仕事をこなすのだと思
えば、仕事も今までとはちょっと違って見えてくるかも知れませんよ。
Mail45 言葉を効果的に使う
今回は、コミュニケーションにおける「言葉」の威力について考えてみました。
■ 言葉が与える印象
「大変だけど、頑張りました。」
「頑張ったけど、大変でした。」
この2つの言葉は意味はほとんど同じですが、前者は頑張りが強調され、後者は大変さが強調されています。
しかも、上司が任せた仕事に対しての部下の発言であれば、
前者は努力 = 前向きさ、 後者は不満 = 後ろ向きさ が強調されてしまいます。
本人は気づかなくても、いつもマイナス部分が強調された発言を繰り返していれば、マイナス思考なやつだと
いうレッテルを貼られかねません。
言葉の使い方や、言葉が与える印象はコミュニケーションの成否を左右するのです。
言葉が与える印象を大事にしない方は、
「起きちゃったことは元には戻せない。 気持ちを切換えてこれから先のことを考えよう。」 と言ったつもりが、
「戦争なんだからしょうがないよ。犠牲はつきものだ。」 と受け取られるのかもしれません。
コミュニケーションでは、伝えたかったことではなく、伝わったことが全てです。 言葉を大事にしましょう。
■ 言葉が行動を変える
以前にご紹介したリンゲルマン効果。 覚えてますか?
人が倒れた時、自分一人が居合せたのなら助けるのに、大勢の方がいると助ける方がいない。
つまり、一人なら本気を出せるのに、大勢だとやる気が出ないという集団的怠慢効果です。
これは心理学的事実なので、仕事の場面でも同じ現象が起こります。
会議の席で 「この件、皆で考えてくれ!」なんて言っても、皆である一人一人からは、中々意見が出てこな
いわけです。
あなたのチームで、リンゲルマン効果を極力排除したいのなら、メンバー全員に何かしらの役割を与えるとい
う方法もあります。
小学校の学級委員。覚えてますか? 図書委員、給食委員にはじまって美化委員、朝礼委員まであったり。
そう、小学校の先生は、リンゲルマン効果を排除し、幼かったあなた方に自律心を芽生えさせたかったので
しょう。・・・たぶん。
でも、今回のテーマは言葉なので、言葉で、個々人からリンゲルマン効果を排除する手段をご紹介します。
相手との会話の中で、相手の名前を呼ぶ回数を意識的に増やすのです。
例えば、
「おはようございます。」 ではなく、
「○○さん、おはようございます。」 と言う。
「仕事の進み具合はどう。」 ではなく、
「○○君、仕事の進み具合はどうかな?」 と、名前を加えます。
ちょっとした会話の際に、相手の名前を呼ぶ。 あなたが常にそんな態度で接すれば、あなたが相手を単な
る一担当者ではなく、○○さんという個人と認識しているのだと、相手に伝わります。
そうなればもう、お互いの関係においても、相手はその他大勢の中の一人ではなく、特定の○○さんです。
もちろん、一日で急に関係が変わることはありませんが、
「○○さん、この仕事頼むよ!」 と言えば、目を輝かせてやってくれる日が、きっと来るでしょう。
言葉には、人の行動を変える可能性があるのです。
時間はかかりますが、是非、皆さんの周囲のリンゲルマン効果をやっつけてみて下さい。
■ 言葉は記憶される (繰返しによる暗示効果)
親から、おまえは優秀だと日々声をかけられて育った子供は、実際はどうであれ、自分は優秀だと思い込
んでしまうそうです。しかも、いつのまにか、本当に優秀な子供と同じように行動し、結果、本当に優秀にな
ってしまう子供もいるとか。
これは、同じ商品のCMを日々目にしていると、店頭でついその商品を選んでしまうのと同じく、繰り返しに
よる暗示効果のなせる技。 脳に記憶として刻み込まれたイメージが、事実とは関係なしに安心感を産む
のです。選挙で候補者名を連呼するのも、この効果を狙っているのでしょう。
そんなに効果があるなら、我々も使ってみましょう。
例えば、新規プロジェクトの為に集まったメンバーに対し、リーダーがプロジェクト達成時の効果を、何度も
繰り返し説くのです。
「このプロジェクトが軌道にのれば、会社の業績に貢献できる。その上、 困難を乗越えた君らの能力だって
格段に向上するし、 チームワークだって強くなるはずだよ。皆の力でやり遂げよう。」
もちろん、繰り返すのはリーダー自身が本当に信じている効果です。
たとえ徐々にであっても、 メンバーもその気になってくれるでしょう。
そして何よりも、リーダーである あなた自身がその気になるはずです。
繰り返し、口に出す言葉の暗示力。利用してみて下さい。
■ 言葉が相手の心を開く
「間違っているかもしれませんが。」 という前置きをしてから発言する方をよく見かけます。
彼らは自分の意見にそんなに自信がないのでしょうか? いいえ、
自分と違う意見の方との無用な争いを避けている。それが本音でしょう。
つまり、口に出さない想い、
「あなたの考え方の背景の中では、間違いと受け取られるかも知れませんが。」を略しているのに過ぎま
せん。
結果、自分と異なった意見の相手から、「自分の意見をゴリ押ししないヤツだ。」と好意的に耳を傾けても
らえる可能性が高まるわけです。
〆〆〆
「間違っているかもしれませんが。」 には、もう一つ効果があります。
『私も間違っているかもしれませんが、 あなただって間違ってるかもしれませんよ。
あなたの意見が絶対に正しいと言い切れますか?』
という相手への強い否定を内包しているのです。
「自分が常に正しいわけではなない。」
具体的にそうは意識しなくても、深層心理の中で相手がそう思っていれば、既に、相手の心はかなり開か
れているのです。
■ 直接的対決を言葉で迂回する (間違いの指摘)
もちろん、誰にでも間違いはありますが、その間違いが議論の本質には関わらないのに、話の腰を折って、
ことさら大きく指摘すれば、相手の気分は悪くなるでしょう。
多くの方は、小さな間違いは無視し、会話の本質的な流れ(ストーリー)を追いかけるものです。
でも、その間違いが、会話のストーリーの根本に関わり、仕事の進め方や成果を左右することであれば、
相手の間違いを指摘せざるを得ません。
いきなり話の腰を折って、「違いますよ。」なんて言ったら、相手が怒り出しそう。とは言え、間違ったまま話
が先に進むのも困ります。
そんな時は、
「えっ!何て言ったのですか?」
「今のところ分からなかったのですが?」と明確に言ってみましょう。
聞こえなかった、分からなかったと言われれば、相手も説明し直さなければと思うでしょう。
しかも、前よりゆっくり、判り易く話してくれるでしょう。
そこで、丁寧に間違いを指摘すれば、相手も受入れ易くなるでしょう。
それでも、怒りだすようなら仕方ありませんが。
■ 言葉が攻撃を協調に変える
立場を代えて、あなたが話の腰を折られ、間違いを指摘される側だったらどうしますか?
多分、怒らないにしても気分が悪くなるでしょう。
でも、間違いを指摘してくれたのは、話をきちんと聞いてくれた証拠。と考えることさえ出来れば、
「ああ、その通りだね。いいところに気づいたね。」
「君の言う通りだ。しっかり聞いてくれてたんだね。うれしいよ。」と、誉めてしまうことだって可能です。
相手に感謝し、誉めてしまえば、仮に相手が、間違いをネタに議論を挑もうとしていたとしても、攻撃のエネ
ルギーが緩和されるはずです。
言葉づらだけでなく、本当に相手を誉める気持ちを持てれば、争いの場を協調の場に変えることも可能なの
です。
〆〆〆
更に、間違いや問題点を相手の不満と置きかえれば、交渉術としてもえます。
取引先などから自社の製品の納品価格が高いという不満が出た場合、「ご不満はごもっともです。」と不満
の原因があることを認めるのです。
「いい製品なので、価格にご不満があるのは当然かも知れません。」
「あなたは、お目が高い、この商品の価値が分かるからこそ、細部に不満を感じられるのでしょう。」
ドラマなどでよく聞くこのセリフ。前項と同様に、相手や製品を誉めてしまい、相手の攻撃をそらすのです。
人を騙せ、なんてことではありません。交渉の場面で、言葉をうまく使って無用な争いは避け、その上で、
フェアーな交渉を進めましょう。
■ 言葉を発しないのもテクニック (話 し 癖)
「あー」 とか 「えーと」 という言い淀み。
これって、本人は気にならないでしょうが、会議での報告の場面では、聞いてる側はとっても気になります。
聞き手は、頻繁に「あー」と言われると注意を奪われて、話の内容に集中出来なくなったりも。結果、話し手
の真意が伝わらないなんてことも。
また、間に 「あー」 「えーと」が入るので話も長くなり、的を得ていない説明だという印象を相手に与えかね
ません。そう言われても、言い淀みが直らない方。癖ですから、いきなり流れるようにしゃべるのは難しいで
しょう。
そこで、言い淀みの間(ま)は、「間」として取っておき、声を出すのだけをやめてみてはいかがでしょうか?
頭の中で「えー」と言うわけです。試してみて下さい。
〆〆〆
また、話し癖には、「○○でえ」と語尾を延ばすイントネーション癖もありますが、これも落ち着きのなさを強
調し、ビジネスの場面では違和感があります。
では、どんな話し方が良いのか?
お手本にするのなら、ズバリ、ニュースでのアナウンサーの話し方。
ニュースキャスターの話は、ストレートに伝わってくるでしょう。
■ 言葉にも表情が必要
イントネーションとはちょっと違いますが、言葉にも表情は必要です。
例えば、客先からの難しい要求に対し、「出来ません。」と 冷たく断ち切る一言で返してしまえば、客先から
は何だコイツはと思われるでしょう。
人は言葉の伝える事実だけに反応するわけではないのです。
そして、「何だコイツは!」 = 「何だこの会社は!」 でもあります。
最低限、申し訳無さそうな顔をして、「出来ないのです。」と伝えたり、
「申し訳ありません。現状は出来ないのです。でもご希望に沿える可能性がないか、至急確認してみます。」
と、実際に口に出して誠意を示すことも、時には必要でしょう。
言葉に表情をつける。
言われなくてもあたり前と思うようなことですが、心から申し訳ないと思ってなかったり、忙しくてそれどころじ
ゃないと思っていると、そんな感情が表に出てしまったりもします。
言葉は嘘をつく為ではなく、自分の感情を適切に表現する為にある。
そう思っていたほうが良さそうです。
〆〆〆
自分の主張を思っているままに相手に伝えるのは、結構難しいことです。
そして、話し方を大幅に変えることは、誰にとっても困難です。
でも、自分の考えがどうもうまく伝わらないなと思うことがあるのなら、言葉の使い方や、使う言葉そのもの
をちょっとだけ見直して、自分に出来る範囲で、コミュニケーションを改善してみてはいかがでしょうか。
Mail46 判断の敵を排除する
判断ミス。・・・ 良く考えて判断したはず、皆で話し合ったはず。そう思っていても、後で考えると何でこんな
決断をしたのかと思うような経験は、誰にでもあるはずです。
そんな判断ミスを防ぐためには、判断の際に、どこかで自分達の判断が歪められていないかと検証するこ
とも必要です。何が判断を迷わすのか、それを退治する方法はないか、考えてみましょう。
■ 自分の意見が多数派だと思う誤り
世の中には、自分の意見が絶対正しいと信じている方がいます。
時には、第三者がみれば明らかに間違いがあるのに、本気で正しいと信じていることも。何故でしょう。
これは、別に自信過剰などではなく、 自分が多数派だと思い込んでしまうという心理学上の 認知の歪み
(フォール・コンセンサス)なのです。
考えが似た方、価値観が近い方はどうしても集まりやすく、更には、同じ業界や同じ会社で、同じような仕
事を長年していると、どうしても価値観が似てくるので、自分の意見が大多数の意見と同じだと思い込んで
しまうのです。
結果、自分の意見や行動を多くの者が受け入れてくれると信じ、井の中の蛙となり、自分の仲間以外は受
け入れてくれない考えだとは、気付かないのです。
適切な判断を下すには、自分が井の中の蛙であることをきちんと認識し、自分の意見は世間一般でも正
しいのかと客観的に物事を考え、仲間内だけではなく外部の意見を取り込むことも必要なわけです。
■ 人は100、0思考に誘導される
9.11以降の米国での世論。日本国内での核問題における発言。
全ては、善と悪のどちらか、是か否で判断されがちです。
当然、善でもないし、是ではないが、それには理由があったという論理はかき消されます。
100、0思考は、完璧主義と言えば聞こえがいいですが、ある意味破局思考です。
100でなければ、0。・・・世の中それだけではないはずです。
例えば、不祥事を起こした会社でも、これがバレたらもうだめだ隠さなきゃ、と考える前に、出来ること、する
べきことは色々あったはずです。
正しい判断を行うためには、100と0の間の考え方に重要な意味がないかと振返り、自分達に出来ることは
ないかと模索することが必要なのです。
■ ハロー効果に気をつけましょう
ハロー効果。 聞いたことありますか?
例えば、
難しい大学にストレートで入学したAさんは、学力が優れている。・・これは、あきらかな事実でしょう。
でも、具体的根拠もないのに、難しい大学に入ったAさんは、学力だけでなく、人格的にも優れていると、思
い込んでしまうことがあります。
つまり、Aさんは、学力が優秀。 それならきっと人格的にも優れているはず。これがハロー効果。
ハロー効果によって、人を実際より良く見てしまうなんてことが起るわけですが、当然、仕事の場面でも頻
繁に起こります。
例えば、きちんと挨拶できて明るい社員は、それだけで優秀だと思われます。
逆に、ボサボサ頭で無愛想な社員が実績を上げていても、評価の面ではさえなかったりも。
また、記憶への刷り込み効果も相まって、
B君は、昨年は頑張って実績を上げた、だから今年もいい評価をつけよう。・・・なんてことも。
能力があるのと、今期実績を上げているのとは別のことなのに。
時には、
仕事は人任せでいいかげんだけど、会議の席では自分の意見を、自部門を代表する意見として主張する
方が、頑張ってると思われたりすることもあります。その方の一面だけを見て、全体を判断してしまうわけ
です。
色々例を上げましたが、多くの方がハロー効果に基づいて人を判断・評価していると言っても過言ではな
いでしょう。
もちろん、何かで優れている方が、他のことでも優れている可能性はあります。
でも、人ではなく、プロジェクトの実行成否を判断する場面に置き換えたらどうでしょうか?
売上ではどうか、利益面ではどうか、将来性はどうか、他のプロジェクトへの影響はどうか、メンバーの教
育面ではどうか、と多面的に判断するのが当たり前です。
〆〆〆
人や物事の色々な面を、個別に適切に評価した上で総合的な判断を下す。
そんな姿勢が正しい判断につながるのです。
■ レッテル貼りは止めましょう
C君は、前回失敗したから、今回も失敗するだろう。
現在のC君の実力を確認せずに、過去の事実にのみ基づいて判断する。そんな経験はありませんか?
もちろん、前回失敗したC君が今回も失敗する可能性は確かにあります。
でも、その考えの中では、前回からのC君の成長の可能性は全く無視されているわけです。つまり、C君
にはダメなやつだというレッテルが貼られてしまっているのです。
時に、レッテル貼りは、○○人だから、男だから、AB型だからという、科学的根拠がなく、偏見とも言える
価値観に基づく判断・決め付けであったりもして、非常に危険です。
また、固定観念に基づくレッテルもあります。
・不良は髪を染めている。
・D君は髪を染めているから不良だ。
今時なら、髪を染めている方は多いですが、ちょっと前なら、この考えが、普通に正しいと思っていた方も
多いでしょう。
D君が不良だという証拠はこの2行の文章の中には無いのですが、髪を染めているやつは不良だという固
定観念に支配されていたわけです。
レッテルは、現在の本人に関する客観的事実には基づいていない判断です。
つまりは、
@現状を見ず、過去の事実にのみ基づいた判断
A人の判断、風聞等に基づいた判断
B自分だけの価値観、特定の集団内のみで通用する価値観
C固定観念に基づいた判断
であるということです。
それなのに、事実よりレッテルのほうが、価値有る情報に思えてしまうという錯覚を招いたりもします。
もし、人の能力を活かし、伸ばしていきたいのなら、そして、人を正しく評価をし、本人のやる気を引き出し
たいのなら、
・ A君は、前回は頑張ったけど、最近は不調なので、十分なサポートが必要。
・ B君は、この間失敗したけど、前向きに原因追求しているので、今回は大丈夫。
というように、今の相手が、どういう状態で、どんな行動が出来ているのかときちんと観察して、相手の今
を正しく判断をすることが必要です。
〆〆〆
過去ではなく、現在を見ること。 人との関わりの中で最も大事なことだと私は思います。
■ 極端な理想、固定観念は、強いレッテルとなり、判断を誤らせる
・ 一人前の社会人は○○すべき。
・ 当社の技術は常に他社を凌駕し、顧客に指示されている。
そんな固定観念を自分自身や、自分の会社にレッテルとして貼り付けていませんか?
・ 彼はこの仕事を嫌っている。 とか、
・ D社はこの手の案件は不得意だ。 というような思い込みも同じ。
自分や自社への極端な理想や固定観念は、強いレッテルとなってあなたの判断を狂わせます。
ところが、思い込みは、それが思い込みであるとは気付かないところが悪質なのです。
自分の考えが正しいと信じることが、時には、あなたの力強さ、説得力となることは認めますが、まずは、
自分の考えが本当に正しいのかと、合理的な根拠を探る癖をつけましょう。
■ 思い込み・決め付けは、何故やめれないのか?
〆 人が思い込みをする理由 〆
人は何故、思い込み・決め付けをするのでしょうか?
実は、思い込み・決め付けは我々の思考・行動の効率化に役立っているのです。
人は普通、建物に扉があれば入口だと理解して中に入ることが出来ます。同じように、帽子を見れば頭
に被る物。靴は、足に履くものと一瞬で理解して、スムーズに身につけることが出来ます。また小銭があ
れば、自販機から飲み物を買うことも簡単に出来るでしょう。
でも、喉が渇いた発展途上国の方を連れてきて、小銭を与えて自販機の前に立たせても、飲み物を購
入する以前に、その自販機に並んでいる見本が飲み物とは理解すら出来ないかも知れません。
何故一瞬で理解し、スムーズに行動出来るかと言えば、経験から、扉や帽子、靴、自販機を知っている
からです。そして、そんな経験から身に付いた考え方・行動=思い込み・決め付けがあるからこそ、窓か
らビルに入いったり、自販機を叩いたりせずにスムーズな行動が出来るのです。
そう、思い込み・決め付けは人間にとって理解・行動をスムーズにするための自然な行為であり、必要
なもの。だからこそ、無くならないのです。
〆 人は、スキーマ (認知パターン) に縛られる 〆
このような思い込みを単純な思い込みとは、区別して心理学ではスキーマ(認知パターン)と呼びます。
例えば、「人と合う時には、フォーマルな服装でなければいけない。」
これは、常識というだけではなく、その方のスキーマとなっているのです。
こんなスキーマがあるからこそ、会社にスーツを着ていこうと思うわけです。
でも、その思い込みが過度になってしまい、
「外出する時は、スーツでなければならない。」 となってしまうと、
今度は、そのスキーマに行動が縛られて、不自由になってしまいます。
〆 レッテルは便利だけど、信用できない 〆
レッテルも同じ。 レッテルはある意味、決め付けそのものですが、
オランダ語のレッテルを英語で言えばラベルです。
瓶や入れ物にラベルが有るからこそ、砂糖か塩か一々味見しなくても済んでいるのです。
でも、入れ物自体に砂糖と塩を入れ間違え、そのまま使って失敗した経験がある方は、ラベルがあって
も使う前に味見をするでしょう。その方には、ラベルは信用出来ないという思い込みがあるからです。
そこで思いつく、思い込み・決め付けを無くす方法。
思い込み・決め付けで人や物事を判断して失敗した自分の経験を思い出し、それを、心や胃の痛み等自
分自身のつらさとして強くイメージします。
つまり、思い込み・決め付けは危険でつらいものだという思い込みを自分自身に無理やり植え付けるの
です。うまく行くかなあと思う皆さん。私自身にはその効用はありますよ。
■ 属人主義は危険
・ ○○さんの意見なら安心。
・ 平社員の意見を取り入れるのは危険。
提案 ・ 発言の内容が、その中身の良し悪しではなく、誰の提案・発言なのかで、是非や採否が決まっ
てしまうのが属人主義。これもレッテルの一種です。
もちろん、色々な議論、可能性の検討をした後で、キーマンが決断を下すというのは合理的です。
しかし、議論そのものを封じ込め、特定の方が主張する意見のみで結論を下すのなら、 正しい判断な
ど出来ないでしょう。
また、親分的なリーダーが、自分の周囲にイエスマンだけを集めたような集団においても、結局誰も意
見を言えないので、たった一人の主観によって判断が下されてしまいます。
そんな閉鎖的な考えでは、適切な判断など出来ないでしょう。
たとえ、誰の意見であっても、いい意見なのか、うまく行くのかという検証は必要ですし、他の意見と比
較して積極的に客観性を求めることは、正しい判断のための最低条件なのです。
■ 自分の価値観と異なる情報、信じたくない情報を切り捨てない
人は固定観念にこだわると同時に、自分の価値観と違う情報や、明らかに自分や自社にマイナスとな
る情報を信じない傾向があります。
「そんなことあるはずがない。冗談だろ。」
情報がマイナスであればあるほど、そんな感情が芽ばえるので、固定観念と相まって、正しい判断をし
ようという気持ちを抑えこんでしまうのです。
自分の価値観に合わない情報や、マイナス情報であっても、正しい情報である可能性はないかと、検
証する習慣を作りましょう。
■ 集団で正しい判断が出来ますか?
何度もご紹介した リンゲルマン効果 (集団的怠慢効果)。
役割が不明確な大勢で話し合っても、意見は出にくいものです。
たとえ、ブレーンストーミングの場面であっても、 その場で意見を求めただけでは、中々斬新な意見
がでないのは、リンゲルマン効果があるからです。
そんな場面で誰かが強く意見を言えば、それが通ってしまいがちになります。また、色々意見が出た
としても、誰かの突出した意見があればそれに引きづられてしまいます。
従って、大勢でのミーティングは、結論を出す場ではなく、多面的な意見を出す場、もしくは情報共有
の場と割切って行うか、あるいは、各人に、 事前に自分のアイデアや意見をその実現性や根拠も含
めて考えてきてもらわないと、適切な判断は出来ないのです。
結果、議論に参加出来ているのは、大勢のうち、役割が明確な数人だけ、なんてことになるのです。
■ 過去の経験が邪魔していませんか?
〆 成功体験を忘れる 〆
過去に輝ける成功体験がある方は、以前うまくいった方法を繰り返したがるものです。
でも、以前うまくいった方法が今回も成功を導くとは限りません。
何故なら、当時とは状況が違っているかもしれないからです。
正しい判断を下すためには、一旦、成功体験から離れ、現状をしっかり見つめなおすことが必要で
しょう。
〆 失敗をおさらいする 〆
失敗には触れたくない。誰でも同じ気持ちでしょう。でも、そうはいきません。
同じ失敗を繰り返さないためには、失敗の過程を再確認し、原因を見つけ出すことが必要です。
そんな当たり前なことは誰でも知っている。そう思っているうちは、失敗を繰り返すのです。
■ 気持ちに、ちょっと、バイアスかかっていませんか?
不都合なこと、面倒なことはやりたくない。それは誰も同じ。 誰でも、面倒な作業をすることにつな
がる意見は言いたくないでしょう。
そんな自分の気持ちに忠実である時点で、すでにあなたの考え方にはバイアスがかかってしまっ
ているのです。
でもビジネスの場面での判断を冷静に考えてみれれば、自分がやりたいかどうかではなく、
・ 仕事としてすべきかどうか。
・ 投資 (インプット) に見合う リターン (アウトプット) があるか。
・ 将来に向けて必要か。
そんな判断が求められているはずです。
だって、社員誰もがやりたいことだけやっていればいいハッピーな会社なら、きっと3ヶ月で倒産し
てしまうでしょう。
正直、そんなバイアスのかかった考え方は、ビジネスマンとしてふさわしくありません。
自分の考え方に何かしらのバイアスがかかって、判断が狂っていないかと、時には振返ってみて
下さい。
■ その考え、一般化し過ぎていませんか?
皆が○○と思っている。
専門家が○○と言っている。
議論の場で多数意見であることや、社会的事実であることを強調する方が多いですが、
・ そもそも皆ってどの皆なのでしょうか?
・ 何人中、何人がそう言っているのでしょうか?
・ 専門家って、どの程度権威のある専門家なのでしょうか?
・ 本当にそう言っているのでしょうか?
これは過度の一般化や社会的証明による思考の誘導です。
そんな発言で、周囲を誘導しようとする方がいたら、数字や権威の裏付け=証拠や、理論が書か
れた文献等の証明により、事実を明確にすることを求めましょう。
■ 世の中や周囲の流れに逆らえませんか?
皆やっているから。世の中の趨勢だから。 だから自分たちも同じ方法でやろう。なんて考えも一般
化の例です。
実際に皆がやっているからと言って、正しいとは限らないし、成功するとは限りません。
バブル時代に皆の真似をして、投資に血眼になった企業がどうなったかは誰でも知っているでしょう。
今、やろうとしていることが正しいかどうか、うまくいくかどうかは、周囲の流れとは関係なしに、きちん
と判断すべきでしょう。
■ 一を聞いて十を知る・・・実は危険かも
一を聞いて十を知る。
良いことのように思われますが、時と場合によります。
相手の話の後半に、そのストーリーが成立する条件の説明があったりと、大事な部分があるかも知れ
ません。
結果、一から想像した皆さんの十は、極めて例外的なことだったり、勝手な解釈になっていたりするの
かもしれません。
原則、人の話は最後まできちん聞きましょう。
■ 心理技に騙されるな
今や、オレオレ詐欺のような手口が後を絶たない世の中。
詐欺は論外としても、心理技を駆使して交渉を有利に行うとする相手への防衛策くらいは考えておいた
ほうが良さそうです。
そこで、幾つか、心理的交渉術の実例をご紹介します。
★ 段階的説得法 (フット・イン・ザ・ドア) ・ 譲歩的説得法 (ドア・イン・ザ・フェイス) の罠 ★
最初に小さな要求をしてそれがOKなら、次はもっと大きな要求をしていく。
それを段階的に積み重ねることで、何時の間にか、あいての懐に入っている。
フット・イン・ザ・ドア と呼ばれる交渉術です。
逆に、わざと大きな要求をして、断られたら小さな要求をする。
「5万円貸して?」、 「ダメ。」
「じゃあ、5千円だけ貸してくれない?」、 「5千円ならいいか。」 と、
相手は、一度断った後なので、小さな要求ならOKしてもいいかと思ってしまう。でも、実はその小さな要
求こそ本来のターゲット。 ドア ・ イン ・ ザ ・ フェイス という交渉術です。
ビジネスの場面であるのなら、
要求の大小に関わらず、NOならNO。その理由は○○。という自分の態度・判断基準を明確にしておく
べきです。
★ 明示的説得、暗示的説得の罠 ★
理由を説明した後、相手の取るべき行動を示すのが明示的説得法。
これに対し、理由を説明後、相手に取るべき行動を考えさせるのが暗示的説得法です。
判断力に自信の無い方は、明示的説得に従いやすいですが、判断力に自信があり、疑り深い方は、暗
示的説得に従いやすいのです。
「A社との間で、○○という出来事があったみたいだけど、
わが社が馬鹿にされているみたいだね。君はどうすればいいと思う。」
「A社に抗議すべきじゃないですかね。」
「じゃあ、君、抗議してきてよ。」
自分で判断して決めた行動だから、積極的にやる。という考え方はコーチングの基本的考え方でもあり
ますが、そもそも判断の過程で心理誘導されていれば、騙されたのも同じです。
交渉の場面においては、自分の判断そのものが誘導されたものではないか、と疑ってかかることも必要
なのです。
★ 両面表示の罠 ★
何度も出てくる両面表示。
「値段は高いが、品質も良い。」
「日持ちしないが、その分美味しい。」
物事の相反する特徴、2面を示して、悪い面を誤魔化す交渉術です。
本当に品質がいいのか、それに見合う価格なのか、他にもっと良い品物がないか。 というように、品物や
サービスの特性・価値をしっかり見極める習慣をつけましょう。
★ 希少性の罠 ★
「残りはあと一個。」
「キャンペーンは今日で最後。」
そんな希少性があなたの判断を誤らせます。
機会を失うことへの不安、限定品は良品だという思い込み。
そんな気持ちに付け込まれないためには、本当のその品物が欲しいのか、本当に良いものなのか、それ
が何に役立つのかと、冷静な思考をするしかありません。
★ 極論法の罠 ★
反対意見を持つ方への説得法として、
「それを行うことは100%無理なのか?」とか
「可能性はゼロか?」と極論のみで問いかけ、
「絶対無理ということは有りません。」とか、
「可能性がないわけでは有りません。」と、
相手の返答の選択肢を肯定的意見のみに制限する方法があります。
極論法を仕掛けられたあなたは、自分が反対であるかどうかではなく、出来る可能性があるかどうか思考
に引っ張り出されてしまうのです。
これに対抗するには、冷静さと客観性を保ち、出来るか出来ないかではなく、やるべきかどうか、やってい
いのかどうか、実行後の影響はどうか、投資に対するリターンはどうか、と思考を元に戻すことが必要です。
■ 客観性を維持する為に
皆さん、自分は常に客観的で正しい判断をしていると、言い切れますか?
今までご紹介した事例のほとんどは、冷静で客観的、かつ実証的な判断力さえ維持出来ていれば、正しい
判断が可能な事例です。
これから決定しようとする行動について、判断に必要な要素(価値観)は何かと考えて、その要素毎に、プラ
ス面、マイナス面をきちんと整理してみることが、正しい判断への近道なのです。
感情に左右されるなんてことも、当然ながらご法度です。
多くの反対意見を聞くことも必要かもしれません。
面倒くさい。そう、もちろん面倒くさいのです。
でも、仕事の場面であれば、
占いの結果や宝くじの賞金を信じるような、根拠が希薄な判断は持ち込めないでしょう。
皆やっているから。世の中の趨勢だから。なんて理由で行動すること出来ないでしょう。
何故なら、仕事での判断には責任が付いてくるからです。
皆さん、是非、客観的、正しい判断を目指して下さい。
Mail47 指導の基本の 「き」
今回は基本に戻り、コーチング、ティーチングをうまく活用した部下・後輩指導の基本をおさらいをしてみます。
■ コーチングとティーチング
自分で考えさせるコーチングに対して、行動に対する明確な指示を与えるのがティーチング。
この2つは、一見正反対の指導法のように思われますが、誰でも、相手や状況によって使い分けているはず
です。
また、コーチングの説明をすると、何で部下にそこまで気を使わなければならないのか、指示・命令でいいじ
ゃないかという意見をよく聞きますが、言うべき時は言う、考えさせる時は考えさせる。その使い分けが大事な
のだと思います。
【 ティーチング 】
誰でも、正に崖から落ちそうな相手に、「端を歩くとどうなると思う?」なんて聞いたりはせず、「危ない!」と声
をかけるでしょう。
仕事に不慣れな新入社員の指導や、緊急の場合などは、まず指示・命令し、理由を考えさせるのは後という
のは当たり前です。
命令すべき時は、命令する。だからコーチングが生きてくるのです。
【 コーチング 】
自分で考えて、ある程度の行動が出来る方に対しては、仕事やゴールの方向性、クリアすべき目標、締切り
等を明確にした上で、進め方は本人に任せれば、自分で考えるくせがつくでしょう。
しかも、本人の能力をきちんと観察した上で、本人の能力より高い仕事を任せるなら、成長が期待出来、かつ
本人の達成感も増すでしょう。
また、指示ばかり求めてくる部下にも、
「君はどう思うんだ?」、「君はどうしたいんだ?」と本人の思考をうながす質問をするのも立派なコーチングで
す。
〆〆〆
やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ。
この、旧海軍の山本五十六元帥の部下指導哲学を示す言葉も、
・ お手本を見せて (ティーチング)
・ 基本を説明して (ティーチング)
・ 自分でやらせてみて (コーチング)
・ うまく出来たらほめる(コーチング) と分解できます。
まさにコーチング、ティーチングの使い分けです。
■ 部下の成長・育成のイメージを持つ
コーチングにせよ、ティーチングにせよ。 大事なことがあります。
自分の部下にどう成長して欲しいか。 その為にどんな教育が必要か。 自分が協力できることは何か。
上司自身がそんなイメージを持つことです。
漫然と仕事を与えたり、感情にまかせて叱っても、部下・後輩が1人前に育つには膨大な時間がかかるでし
ょう。
A君は今、○○は得意だが、□□はうまく出来ない。
だから、○○はもっと伸ばして、□□は改善し、正しくマスターさせる。
そんなイメージを、部下の成長・育成に対して持てれば、より教育的な指導が出来るはずです。
もちろん、その為には部下をしっかり観察し、得意 ・ 不得意、 向き ・ 不向きを把握したり、本人にヒアリン
グしてどう成長したいと思っているのかを確認することも必要となります。
■ 報告させよう
部下 ・ 後輩にきちんと報告をさせることは、コミュニケーション、指導の第一歩です。当り前ですが、きちん
と聞くことからはじめましょう。
話をさえぎらない。話題を変えない。いきなり否定しない。落ち着きのない態度をしない。
・・・・ それはもう立派なコーチングスキルです。
でも、的を得ない報告をする部下にはティーチングも必要です。
最初に結論を明確に。 ポイントを絞って理由 ・ 経緯を説明する。 自分がどう対応したいのかを考える。
マイナスな結果の報告は早めに。・・・そんな注意事項をしっかり教えておきましょう。
本人だって、報告がスムーズに理解されれば満足し、今後も上司ときちんとコミュニケーションをとろうと努
力するでしょう。
■ 報 ・ 連 ・ 相 への正しい対処
報告と言えば、誰でも知っている 「報告 ・ 連絡 ・ 相談」。上司の側としても正しい対応が必要です。
忙しい時にやってきたタイミングの悪い部下の話を、上の空で聴いていては、正しい判断は出来ないし、記
憶にも残らないかも知れません。
大事なルールはたった3つ。
・ タイミングが悪ければ、仕事の区切りまで待ってくれと言いましょう。
・ そして、仕事の手を止めて、報告する部下のほうをきちんと向く。
・ きちんと考えて、適切なフィードバックをその都度与える。
適切なフィードバックがなければ、きちんと報告する気は起きなくなります。 それは誰でも同じです。
■ 事実をフィードバックする
コーチングでは、事実をそのままフィードバックすることが大事だと言います。事実を伝えることは、現状把
握の単純明快な手段だからです。
本人が気付かなかった事実を客観的に伝えることで、本人が成長を確認出来たり、時には失敗や能力不
足に気付いたりも出来るのです。
怒るでもほめるでもなく、責めるでもなく、
出来ている。出来ていない。締め切りに遅れている。10分遅刻した。前回より早く完成した。客先が喜んで
いた。
そんな事実の確認が、本人のやる気を引き出したり、反省を促したりするのです。
時には事実をそのまま、フィードバックしてみましょう。
■ 叱る目的を明確にする
とはいえ、ほめたり、叱ったりは部下 ・ 後輩指導の重要なスキルです。
もちろん、ほめればやる気が出る方もいれば、うぬぼれる方もいます。叱れば、やる気を失う方も、なにくそ
と頑張る方だっているでしょう。
部下がどんな反応をする人間なのかは、仕事や行動を共にして、きちんと観察していれば、理解出来てくる
でしょう。
叱る時は、後ではなく今その場で、くどくど言わず簡潔に叱りましょう。
決して、部下の性格や、過去の失敗を責めたりしてはいけません。また、怒るのではなく叱るのです。感情を
交えず、失敗した事実、間違えた事実を問題とし、再発防止を考えさせましょう。
仮に、感情を交えてきつく叱るとしたら、きちんとフォロー出来る信頼関係がすでにあり、問題・失敗の大きさ
と叱る効果を考えて、相手の成長を願った上で叱るべきです。
〆〆〆
もちろん、「ここ間違ってるじゃない。」と事実のみを指摘しただけで、相手が2度と失敗しなかったり、自分
で原因を確認するのが理想ですが、中々そうは行きません。
相手や状況によっては、叱りとほめをうまく混ぜて、叱りを強調したり、事実をうまく伝える工夫をすることも
必要になります。
【 ほめ ⇒ 叱り ⇒ 励まし 】
「良く頑張ってくれたね。でも、ここを工夫するともっと良くなる。次は気をつけてもっと良い成果を出してくれ、
期待してるよ。」
・ 間違いに気付かせることが目的の場合、最初にほめることで、叱りをマイルドにします。
【 叱り ⇒ ほめ ⇒ 叱り ⇒ 励まし 】
「これはきちんとやらないとダメだよ。いつも頑張ってくれてるけど、基本部分が間違っていると仕事が無駄
になるよ。頑張って。」
・ ミスによる再発防止が目的の場合、 最初に強く叱って、ほめでショックを緩和し、ミスを注意されたとい
うイメージを強く残します。
もちろん、どちらがいいか悪いかではなく、ケースバイケース。
叱る目的を明確にして、効果的に叱りましょう。
■ 任せるのと放置するのは違います、だから声をかける
コーチングでは、一旦、部下に任せた仕事に細かく指示を与えるのはタブーと言います。 それでは任され
た気はしないし、自律的な思考 ・ 行動も生まれにくいからです。
でも、任せたからと言って、締切りまで待つ必要はありません。
あなたが上司かつその仕事の責任者なのですから、仕事の進捗、方向性を確認することは当然の職務
です。
「進んでいるか」 と声をかけ、定期的に進捗を確認したっていいし、経過報告の期日を決めておいてもいい
のです。きちんと仕事の進捗 ・ 出来を確認する上司・先輩であることを示しましょう。
その為に大事なことがもう一つ。
「やっています。」とか、「ほぼ、出来ています。」と相手が答えるその言葉の中身・事実をあなたの目で確
認することです。
その上で、進捗していなかったり、間違った方向に進んでいれば、ティーチングで、仕事の方向性や進め
方を再確認しましょう。
■ 反論に対処する
何かと反対意見を言う方って結構いますよね。
交渉術の基本からすると、まず、お互いの意見の中の一致している部分(共通部分)を見つけて確認し、
それ以外の部分について、妥協出来る部分、出来ない部分を確認しながら歩み寄るというのがセオリー
です。
でも、上司と部下の関係なら、仕事の結果に責任をとるのは部下ではなく上司。 譲る必要の無い部分も
あります。
黙って言う通りにしろ。と言いたいところですが、それでは正しい意見まで潰してしまいます。
まずは、相手に反対意見があるという事実を認め、その上で、上司としての考え方を明確に伝える。
でも、結論は上司が出す。・・・時にはそんな姿勢を明確に示すことも必要でしょう。
@ 「君がそう考える理由を説明してくれ。」
・ まずは意見をしっかり聴く。コーチングです。
正しい意見なら受け入れますが、間違いは指摘します。
・ でも単に考え方の違いであることも多いものです。 そんな時は、細かく反論するのではなく、指示
命令しましょう。
A 「君が反対なのは分かった。」
・ 反対意見があるという事実を認める。
B 「私の考え方は○○であり、□□の理由でこうすべきと思っている。」
・ でも、しかしは使わずに、上司としての考えを明確に伝えます。
C 「ありがとう。今後も率直に意見を言ってくれ。」
・ 感謝する。
反論への対処は、もやもやとした気持ちを残さないことが基本です。
コーチングとティーチングの使い分けを中心に、部下 ・ 後輩指導の基本部分を幾つか解説しましたが、
決して、今の自分の指導方法を変えろということではありません。
自分の指導スタイルをもう少し効果的にするにはどうすればいいか、そんな目線で読んでいただければ
幸いです。
Mail48 社員の成長を考える
■若手社員が会社を辞める理由
まずはこの数字を見てください。
● 自分が成長している実感が持てない 50%
● 上司の指示、指導に不満 42%
新聞に掲載されていた 「若手社員が会社を辞める理由」 です。
これは人材会社の調査結果で、若手社員の忍耐力の無さを責める前に、社員を育てられない会社・上司
の問題をクローズアップすべきと結んでいました。
さらに具体的な内容では、
● 先輩を見ていると、自分が成長するとは思えない。
● ここにいたら時間がもったいない。
● 自分が必要とされているようには思えない。
そんな悲観的な理由で転職する方も多く、もはや 「石の上にも3年」なんて言葉が通用する時代ではない
ようです。
一般論ではありますが、昨今は若者の価値観が多様化し、自分の価値観とマッチする仕事への願望が強く、
将来に展望が持てなければさっさとチャンネルを切換えるということのようです。
また、上記の不満・悩みの裏返しですが、経済誌で見つけた社会人3年目調査において、「仕事を通じて得た
いものは何か?」との質問への回答が、
1位 成長、自分の価値が向上
2位 充実感を得る
3位 良い給料
4位 知識・技術を身につける
5位 認められ、尊敬される
6位 社会に貢献、人を喜ばせたい (複数回答有り)
となっており、単純に給料だけでなく、自分の成長や価値向上が若者の意識の中で、高く位置付けられている
のが判ります。
■ 働く女性の悩み
そして実は、働く女性が抱える悩みをまとめた書物を読んだのですが、若手社員が辞める理由と極めて似た
内容が書かれていました。
● 自分の未来像が描けない。
● 自分が何になりたいのか、何に向いているのか分からない。
● 自分にどんな可能性があるのか分からない。
● 仕事もしたいが結婚もしたい。
● 頑張る前に、女だからと芽を詰まれている気がする。
● お手本になる先輩や相談相手となる先輩がいない。
どうです、ほとんどは将来や成長に関する不安、一人前の社会人として扱って欲しいという希望なのです。
そして、そのほとんどは、社員の側ではなく、会社や上司の側に真剣に対応する気があれば、情報提供や、相
談相手(メンター)の存在、適切な仕事の配分と課題設定、指導教育等によって払拭出来そうな内容です。
拡大解釈すれば、女性社員を活かすのも、男性社員を活かすのも、根っ子は同じ、会社・上司も出来ることか
ら手をつけたほうが良いと思いませんか?
■ 部下の行動をどう考えるか (加点主義、減点主義)
○○君にはこんな行動をしてもらいたい。
上司であれば当たり前のように考えることですが、もし上司が部下のあるべき姿像を強く持ち過ぎている場合、
その部下に対する評価は、上司の考える 100点からどんどん減点されてしまいます。
もちろん、 制度上の評価の話ではなく、頭の中での評価の話ですが、 人をプラス部分で判断するか、マイナ
ス部分で判断するかは難しい問題です。
そして、減点法の場合、部下を計画的に育成する努力を怠ると、あなたの中での部下の価値はあなたが初め
て会った時から下がり続けることになります。 当然、 「何やってんだ」 「また失敗したのか」 という想いも強ま
るでしょう。
ターゲット ( = 成果や成長の基準 ) を低めに設定すれば加点部分での評価も出来ますが、本人の成長は
まず期待出来ないでしょう。
また、上司の考える「こう育って欲しい」と、部下自身の考える「こう成長したい」が食い違った場合、教育効果
も低くなる上、減点だらけの苦痛の日々となるかも知れません。
部下の成長を期待するなら、両者で話し合い、例えば1年後(or 3年後 or 5年後)に「こんなことが出来る社
員になって欲しい」という期待と、「こんなことが出来る社員になりたい」という本人の希望を十分に刷り合せる
ことが不可欠です。
その上で、例えば、努力や成長に対してはプラス部分、成果に対してはマイナス部分にフォーカスし、加点、
減点ではなく、プラス部分をもっと伸ばし、マイナス部分を改善するというような指導が必要なのでしょう。
直接的な指導法として、
● プラス的行動に対しては、
「よく出来た。」 「頑張ったね。」と積極的に伝えたり、「○○に力を入れたのが良かったね」と具体的に良かっ
た所を伝えたりと、部下本人がプラス的行動が出来たことを確認してあげるのが良いでしょう。
それにより、部下自身も成長の手ごたえを実感出来るはずです。
● マイナス的行動に対しては、
ダメな部分は、どうすれば改善されるのかというヒントを与えたり、いきなり難しい課題(ハードル)を与えるの
ではなく、ちょっとずつハードルを上げて能力を伸ばしていくような仕事の与え方も必要です。
しかし実際には、指導スキルどうこうというよりは、前述のように、相手の行動をどう考えるかという思いが大
切なのです。
■ 上司自身が前向きになる
社員にとっては、上司イコール会社です。
つまり、社員という「人」が見るのは、会社ではなく上司という「人」。
部下に対して、仕事上の上下関係はあるとしても、対等な人間としての思いやりや、礼儀正しさを持って接す
ることも当然必要です。
また、上司自身が機知に富み、仕事にひたむきに取組む姿勢が重要であり、上司の日常的な前向きさこそ、
部下の前向きさや成長への意欲を引出します。
そして、なによりも大事なのは、部下を育てることで自分も成長すると信じることです。
■ やる気の素は有限です
とは言え、社員のやる気は決して無限ではありません。
社員の前向きさを持続させるためには、給料や処遇だけでなく、社員の仕事上の 満足=自己実現をかなえ
る必要があります。
前述の調査から推察すれば、
・創造力、能力が発揮出来て、成長につながる仕事がしたい
・自分の好きな仕事、面白い仕事、重要な仕事がしたい
・自分の生き方(価値観)やビジョンにあった仕事がしたい
・意見や主張を自由に発言できる環境が欲しい
というような要望を満たす必要があるわけですが、当然ながら、すべての要望をかなえることは不可能です。
また、若年層の社員であれば、実現できることは皆無かも知れません。
それをわがまま要求と言ってしまえば、それで終わりです。
上司であれば、部下にどのようなキャリア(仕事経験)を積ませて、どのような能力を伸ばしたいかをきちんと
考え、部下の現在の能力の過不足をきちんと理解した上で仕事を与えることで、一つでも二つでも上記の要
望を実現していくことが絶対に必要なのです。
また、部下から少しでも実現可能性のあるアイデアが上がれば、積極的に支持し、社内の決裁プロセスを通
過させる面倒を見て、部下のアイデアを埋もれさせず、最初の提案者として育てていくのも上司の役目です。
そして、そのベースには、「どうせ無理、前例がない、反対されるかもしれない」という考えを上司・部下の双方
が排除し、「絶対、出来る」という発想で取組むことが必要です。
■ カウンセリングマインドを持って部下に接する
すぐれたカウンセラーは、ほとんどアドバイスをしないと言います。
アドバイスによりクライアントが自分で考えることをせず、常に解決をカウンセラーに求めてしまい、いつまで
も自立出来なくなるからです。
上司と部下の関係も同じ。大事なのは部下本人が自分の考えを持ち、行動出来るようになることです。
よく耳にする 「傾聴」 も、単に口をはさまずしっかり聞けば良いという理解は間違いであり、
相手が、率直に意見を言い、自分で考え答えを導くためのアクティブなリスニングであることが必要なのです。
その為には、
● 先入観、批判的態度は持たず、今の相手の考え・意見をしっかり 「聴く」。
● 途中で、自分の意見を言って、相手の考えを誘導しない。
● 言葉そのものだけでなく、相手の考えの背景の理解に努める。
● 途中で、自分が相手の話の意味を理解しているかを確認をする。
そんなカウンセリングマインドを持ったコミュニケーションが必要です。
きちんと聴けば、きちんと話せるし、
きちんと話そうと思えば、自分の意見を組み立てて、自分自身の考えをまとめることにも繋がるでしょう。
■ 上司としての気配り
コミュニケーションを通じて社員のモチベーションを向上したいのなら、 単純に 各種コミュニケーションスキル
に頼る前に、上司としての気配りを持つことも必要でしょう。
例えば、上司と部下が話をするときに部下がメモを取るのは当然ですが、部下の話をしっかりとメモを取りなが
ら聴く上司もいます。
また、報告しにきた部下には、よほど急ぎの仕事をしていない限り、仕事を中断して話を聴く、そして、部下の
報告書には、 出来る限り早めにフィードバックする。そんな気配りが、君の仕事(成果)を待っていたよ、という
明確な意思表示にもなります。
やり方は、人それぞれですが、上司が部下にどのように気配りをするかで、部下との信頼関係、リーダシップ
の濃度は変わります。
■ チャレンジのミスは許容する
部下に仕事を任せる、権限委譲をするということは、失敗も許容するといことです。
もちろん、本人が精一杯前向きに努力していることと、客先に迷惑がおよばないことが大前提ですが、どんな
時も本人の努力とプロセスについては適正に評価すべきです。
その上で、成功は本人のもの、失敗の責めは上司が負うというのが、権限委譲するということです。
そして、失敗からは学ぶものが沢山あります。
部下の成長を願うなら、次で頑張ればいいじゃないかと失敗を忘れさせるのではなく、きちんとした振り返りを
行なわせ、同じ間違いを繰り返さないよう確認と、次回の再発防止策を双方で確認しましょう。
失敗は、その経験を活かし、糧としてこそ許容出来、本人の成長にも繋がるのです。
このメール通信でお伝えすることのほとんどは、誰もが当たり前のこととして知っていることですが、中々実行
されていないことでもあります。
つまり、知っていることと、実行出来ることは全く別ということです。
そして、一歩踏み出すか、そのままでいるかで、会社やチームのモチベーションや成長は全く変わってくるの
です。
是非、ちょっとずつ、自分の出来ることから一つでも二つでも実行してみて下さい。
Mail49 自尊心を逆手に取ったコミュニケーション
人と話をする際、「この人と話すのはおっくうだなあ」と思ったことはありませんか?
仕事上のやっかいな調整をする時や、明らかに嫌いな相手と話す場面はもちろんですが、時には、ただ単に
会話をすること自体が億劫になる相手も存在します。・・・何故でしょう?
あなた自身に問題があり、周囲の誰とも話したくないのなら、カウンセラーのお世話にでもならなければ救い
ようはありません。でも、相手の態度やしゃべり方に原因がある場合も多々あります。
当然、態度やしゃべり方に問題がある方は、誰にとっても声をかけづらい相手に違いないのですが、そんな相
手にあなたの話し方はおかしいよと真っ向から伝えても、逆ギレされることはあっても改善されることはまずあ
りません。
本日は反面教師としてその原因を探るとともに、あなた自身の言動をチェックし、カウンセラーのお世話になる
前に、あなたが周囲の方々から声をかけずらいと思われない方法を考えてみましょう。
世の中にはずけずけしゃべるのに気に入られる方、丁寧にしゃべっているのに嫌われる方がいます。
ということは、話す内容よりも、話し方のほうが相手に与える印象や影響が強いのではないかと想像できます。
つまりは何を話すかよりも、どんな話し方をするかが重要なのです。
例えば、私が話づらいなと思う方のほとんどは、こちらが何か話すとすぐ否定する方や、人の話を遮って自分
の話をしたがる方です。
話しかけた後の第一声が、
「そうじゃないよ。」 「ちがうよ。」 「それはさー・・・」となる方って結構いますよね。
しかも何故かそういう方に限って、思い込みや自分の立場や経験の範囲内での視野の狭い意見でしかないこ
とがほとんど。
そもそも人の話を遮って、最後まできちんと聞けていない方なので、報告・相談の正確な内容や議論の本質や
話の本題などを理解していないことが多く、つまるといころ、「こいつと話すのは時間の無駄だな。」という気にさ
せられます。
そうなるとコミュニケーションは成立せず、「報 (ほう) ・ 連 (れん) ・ 相 (そう) は大事だ。」 など
と言われても、誰もそばに寄らなくなったりします。
また、言っていることは正しいけど、常に正論のみ主張し、実際の仕事に当てはめると無理のあることばかりで、
理屈は合っていても運用としてはNGな方もいます。こんな方とは、話をするのが億劫なだけでなく、常に仕事
の障害となっているような方もいますよね。
また、こちらの話の途中でタイミングを考えずに、「何故」、「どうして」と細かな内容を聞いてくる相手も、その都
度、話の腰を折られて調子が狂ったり、否定的にしか受け取ってもらえないのなら話しても無駄かなと思い、
会話をするのが億劫になります。
中にはいつも怒った顔で人の話を聴く方がいますが、これも会話をする気が削がれますよね。にこやかに、あ
なたの話はきちんと聴きますよという表情でいて欲しいものです。
これらの状況はすなわち、「双方向の会話」、「相手の話は最後まできちんと聴く」、「表情や姿勢など言葉以外
の要素が会話を促す」というコミュニケーションの大原則が守られていない状況であり、誰にとっても会話が億
劫になる原因なのですが、自分自身を振り返ってみると、あてはまるような言動があったりしませんか?
中々自分自身では気づかないことも多いですが、是非自分の言動を点検してみてください。
点検した結果、
自分にもあてはまるな。とか、
何だか皆、俺とは話しずらそうだな。とか、
いつも怒っているわけでもないのに、部下が寄り付かないな。
でも、何とかしたいな、なんて思っている皆さんに良いヒントがあります。
そのキーワードは「自尊心」。
かつて、心理学者ウィル・シュッツは、人の自尊心を3つに分類しました。
@自己有能感 ・・・・自分は有能であると周囲の方に思われている。
A自己重要感 ・・・・価値がある人間として周囲の方から扱われる。
B自己好感 ・・・・皆から愛されている。
前述の、
話を最後まで聞いてもらえない、途中で遮られる。
話をすぐに否定される。
仏頂面で応対され、拒絶されているような気がする。
という状況は、すなわちこの3つの自尊心を真っ向から否定するような態度と言えます。
君は有能だ、役に立っているよ。
君は大事な存在だよ。
君は皆に好かれているよ。
・・・・ 人と接するとき、そんな接し方を心がけてみてください。
きっと、周囲とのコミュニケーションが円滑に進み、周囲のモチベーションも向上してくるはずです。
いやあ、とは言っても、有能でも、大事でも、好かれてもいない方っているよね。
同感です。排除できるなら、そんな相手は排除したほうが皆のためですが、中々そうもいかないのが世の中です。
出来れば名前を呼んで、挨拶などきちんと声をかける。
ちょっとでも成果があったら、当人ががんばったことを褒める。
そのくらいはやってみましょうよ。 ・・・ 是非。
Mail50 発想を切り換える
「それを言っちゃ、お終いだよ。」
会議や議論の最中に、話の前提を覆すような企業や組織の本質的問題を言い出す方に、このセ
リフを投げかけたことはありませんか?
そんな方は空気が読めないというより、むしろ現実的なのでしょうけど、自分達の努力や範疇
で出来ることを話しあっているのに、そんなの無駄だよ的な発言があれば、他の方々は白けて
しまうでしょうね。
しかし、ビックチャンク(大きい塊=大雑把に考える)、スモールチャンク(小さな塊=具体
的に考える)の質問で相手の発想を促すのはコーチングの基本的なグスキルです。
それを考えれば、議論の前提を見直すのは、考え方の視点を変えるためには効果的な方法です。
例えば、「夕飯は何が食べたい。」というビッグチャンクな質問をしてもアイデアが出てこな
い旦那には「イタリアンだったら何がいい。」とスモールチャンクな質問をぶつけて意見を引
き出すというような使い方が出来ます。
ちなみに質問の具体化(チャンクダウン)はメンタルヘルスMental22でも解説している心理学
でいうところのダブルバインドにも応用されていて、「デートしない?」と直接的に誘うので
はなく、「イタリアン?それともフレンチ? どっちがいい?」と問いかけて思考をデートす
るorしないではなく、デートで何を食べるかに切り替えさせるなんてことにも使用されます。
おっと発想の転換に話を戻します。
当然のことと思っていた大前提を覆すことで、例えば、別な業界や社風の違うライバル会社だ
ったらどうするか、とか。もし資金を幾ら使ってもよかったら何ができるか、とか。女性(男
性)だったらどう考えるか、とか。まずは枠や制約(だと思っていること)を一旦取っ払って
考えてみて、奇想天外なアイデアを思いついたら、そのアイデアを実現するための具体的な制
約をクリアする方法を考えてみるということも可能性を探る意味では効果的な手法です。
一歩間違えると、法律の抜け穴を探すのに似たような話になってしまいますが。新たな発想が
湧いてくる可能性は大です。
とは言え、時と場合を考えずに勝手な発言をしていては、冒頭の話のようにそれまでの議論は
無駄になりますし、気分を害する人も出てくるでしょう。
会議や打合せの場面で新たな発想を促したいのなら、ファシリテーターのような議事進行係を
決めて、議論の最初に、「○○と□□の制約は取りあえず無しにして考えてみてくれないか。
そんなの無理だと言う意見は取りあえず後にしてアイデア出しをしよう。」ときちんと仕切る
ことが必要でしょうね。
しかもその場で急に言われても困るという方もいるはずなので、事前にこの形式で話し合うこ
とを伝えておくことも必要でしょう。それさえ出来れば発想は自由に広げられるでしょう。
Mail 51
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